今回の「生き物にまつわる言葉を深掘り」のテーマは、「猪口」です。
日本酒をたしなむための「お猪口(おちょこ)」や、そばつゆ入れの「蕎麦猪口(そばちょく)」としてなじみがあります。
「猪口」の定義や、読みや当て字?の由来などについて、深掘りリサーチし、その結果を以下の目次に沿ってまとめました。
「猪口」の深掘り:読み方、当て字、そしてその由来
「猪口」は、日本酒を飲む際に用いられる小さな器として馴染み深い言葉ですが、その語源や読み方、そして様々な種類の「猪口」には、興味深い歴史と文化が隠されています。
「猪口」の読み方と意味
- 読み方: 一般的には「ちょこ」と読みます。
- 意味: 酒器の一種で、通常、陶磁器でできた小さな杯を指します。
猪口(ちょく、ちょこ)とは、小さな器のことで、一般的に酒を飲む為の小型の器(盃)、または、蕎麦をそばつゆ(汁)につけるための容器(蕎麦猪口)のことをいう。
佳字を選んで「千代口」の字を当てることもある。また、お猪口(おちょこ)と表記される場合もある。
猪口
蛇の目猪口
「猪口」の当て字と由来
「猪口」の漢字自体、その由来については諸説あり、はっきりとしたことはわかっていません。しかし、一般的な説としては以下のものが挙げられます。
- 「鍾」の呉音、福建音、朝鮮音: 新井白石の説によると、「猪口」の「ちょく」は、中国語で「鍾」を意味する言葉(「鍾甌(チョク/チョング)」)の呉音、福建音、朝鮮音に由来すると言われています。
- 「直」: 飾り気のない、素朴なという意味の「直」が語源という説もあります。
これらの説から、当初は「猪口」は、金属製の酒器や杯を指していた可能性があり、それが転じて、現在のような陶磁器製の小さな杯を指すようになったと考えられています。
イノシシとの関係は?
上記の一般的な説では、「猪口」は、「チョク」という音に「猪」「口」の2字が当て字としてあてられたものですが、猪口はイノシシとは無関係という理解は、完全に正しいとは言えません。
なぜそう言えるのか、詳しく解説します。
「猪」の字の由来:
「猪」の字が「チョク」の音を表すようになった経緯は、諸説あり、定説はありません。
「鍾」の呉音、福建音、朝鮮音に由来するという説が有力ですが、確証は得られていません。
イノシシを連想させる字を当てたのは、器の形がイノシシの牙に似ていた、あるいは、素朴で飾り気のない様子をイノシシに重ねて表現したなど、様々な解釈が考えられます。
「猪口」とイノシシの関係:
「猪口」がイノシシと全く無関係というよりは、「猪」の字が持つイメージが、器の形状や用途に重ね合わされてきたという側面があります。
例えば、素朴な器、小さな器といったイメージが、イノシシの素朴なイメージと結びついた可能性も考えられます。
「猪口」の「猪」の字は、必ずしもイノシシを直接指しているわけではありませんが、その字が持つイメージが、器の形状や用途に影響を与えたと考えられます。
より正確な理解のために、以下の点を補足しておきます。
- 当て字の多様性: 日本語の漢字には、音や意味を直接表すものだけでなく、比喩や連想によって当てられたものも多く存在します。
- 歴史的な変遷: 「猪口」という言葉も、長い歴史の中でその意味や用法が変化してきたと考えられます。
結論として、「猪口」は、「チョク」という音に「猪」「口」の2字が当てられた当て字であるという点は正しいですが、その由来については、様々な解釈が可能です。
「猪口」の種類と特徴
「猪口」には、様々な種類があり、それぞれ特徴を持っています。
- 蕎麦猪口: 蕎麦を食べる際に蕎麦つゆを入れるための小さな器です。形状は様々ですが、一般的に少し深めの形状をしています。
- ぐい呑み: 日本酒を飲むための器で、「猪口」よりも少し大きめのものが一般的です。
- 利き猪口: 日本酒の香りを楽しみ、味を比較するために用いられる器です。内側に青い蛇目(じゃのめ)が描かれていることが多く、形状も様々です。
「猪口」にまつわる言葉
「猪口」に関連する言葉には、以下のようなものがあります。
- 埴猪口(へなちょこ): 粘土で作った粗末な猪口という意味で、明治時代の狂歌師野崎左文の造語です。
- 猪口才(ちょこざい): 「小さく動く」という意味の「ちょこちょこ」「ちょこまか」に由来し、「猪口」とは直接の関係はありません。
まとめ
「猪口」は、一見シンプルな言葉ですが、その語源や種類、そして言葉に込められた意味は奥深く、日本の文化や歴史と深く結びついています。
「猪口」を通して、日本の食文化や酒文化に触れるきっかけになれば幸いです。
興味深いですよ!「猪口」。