今回の「生き物にまつわる言葉を深掘り」のテーマは、その標準和名(カタカナ表記)にムシ(虫)がつく生き物です。
以下の「動植物名シリーズ4部作」の中から、ムシ(虫)が引用されている例を抜き出し、改めて再編集したものです。
「動物名が冠されている植物」に関しては、以下のリンク先にまとめレポートしてありますので参照ください。
「他の動物名が冠されている動物」に関しては、以下のリンク先にまとめレポートしてありますので参照ください。
「植物名が冠されている動物」に関しては、以下のリンク先にまとめレポートしてありますので参照ください。
「他の植物名がついた植物」に関しては、以下のリンク先にまとめレポートしてありますので参照ください。
「熟字訓(漢字表記)で表わされる生物名」に関しては、以下のリンク先にまとめレポートしてありますので参照ください。
生き物(動植物等)の和名には、(昆虫ではないのに)ムシ(虫)が冠されているものが数多く存在します。それは、その生き物とムシ(虫)との間に何らかの関係性が見られる場合に名付けられることが多いです。
また、以下のブログ記事にもあるように、「虫」は昆虫以外の意味でも、古くから使われてきたことがわかります。
以下に、「和名にムシ(虫)がつく(昆虫以外の)生き物」を列挙し、その動物の特徴やそれぞれの命名の由来を説明します。
- イカリムシ(錨虫):
- イモムシ(芋虫):
- ウズムシ(渦虫):
- カイセンチュウ(疥癬虫):
- カイチュウ(回虫):
- カイムシ(貝虫):
- カニムシ(蟹虫):
- カワムシ(川虫):
- 寄生虫:
- ギョウチュウ(蟯虫):
- クマムシ(熊虫):
- ケムシ(毛虫):
- サナダムシ(真田虫):
- ゾウリムシ(草履虫):
- ダンゴムシ(団子虫):
- 爬虫類
- ハリガネムシ(針金虫):
- ヒモムシ(紐虫):
- フナムシ(船虫):
- マムシ(蝮):
- ミドリムシ(緑虫):
- ムシカリ(虫狩):
- ムシクイ(虫食い):
- ヤドカリ(寄居虫):
- ユムシ(螠虫):
- ワラジムシ(草鞋虫):
- まとめ
「和名にムシ(虫)がつく(昆虫以外の)生き物」を五十音順に掲載してあります。
イカリムシ(錨虫):
イカリムシ(錨虫、学名:Lernaea cyprinacea)は、淡水魚に寄生する甲殻類(カイアシ類)の一種です。
- イカリムシの主な特徴:イカリムシは、甲殻類の仲間でありながら、寄生生活に適応して成体の姿が大きく変形しています。
- 形態的特徴
- 分類: 節足動物門甲殻綱カイアシ亜綱ウオジラミ目イカリムシ科に属する。ミジンコ類に近い仲間です。
- 寄生するのは雌成体: 肉眼で見られるのは主に雌の成体です。雄は交尾後に脱落し、幼生はケンミジンコのような形をしています。
- 体型: 雌成体は体長数ミリから1cm(4〜12mm程度)の棒状で、魚の体から白いひも状に突き出たように見えます。
- 名前の由来となる頭部: 体の前端には、船の錨(いかり)のような形をした突起(角状突起)があり、これを魚の皮膚や組織に深く突き刺して固着・寄生します。この錨状の構造があるため、一度刺さると抜けにくいのが特徴です。
- 卵嚢: 寄生した雌成体は、体の後端に一対の卵嚢(らんのう)を持ちます。
- 生態的特徴
- 寄生部位: コイ、フナ、キンギョ、ウナギ、メダカなどの淡水魚の体表、鱗、鰓(えら)、口腔などあらゆる場所に寄生します。
- 被害: 寄生された部位は炎症や出血を起こし、この傷口から細菌などが二次感染して穴あき病などの重篤な病気を引き起こすことがあります。多数寄生すると魚は食欲を失い、衰弱死することもあります。
- 形態的特徴
- 和名に「虫」がつく由来:イカリムシが昆虫ではない甲殻類であるにもかかわらず和名に「虫」がつくのは、日本語の「虫(むし)」という言葉が元々持つ広い意味合いに由来します。
- 古代から日本では、「虫」という語は、現代の生物学的な昆虫類に限定されず、小さくて(多くは這い回る)生き物全般を指す言葉として使われてきました。
- イカリムシの場合、寄生生活を送る小さな動物であり、肉眼では細長い紐のような形に見えるため、当時の広い「虫」の概念に当てはめられて命名されたと考えられます。
イカリムシが1925年頃に日本で発見され、命名された際(松田・熊田により1928年に命名)、その形と生態から「錨」と「虫」を組み合わせて名付けられました。
イカリムシ(雌成体)
イモムシ(芋虫):
イモムシ(芋虫)は、チョウやガの幼虫の中でも特定の外見を持つものを指す俗称です。
- イモムシは、チョウ目(鱗翅目)に属する昆虫の幼虫の一形態を指します。
- 和名に「虫」がつく由来:イモムシは昆虫なので、「虫」という和名がつくのは自然なことに思えますが、特に「芋」という漢字と「虫」という漢字の組み合わせには、以下のような由来があります。
- 1. 「芋」の由来:「イモムシ」という名前は、その見た目がイモに似ているからではありません。
- 芋類の葉につく虫: 元来、「イモムシ」は、サトイモ、サツマイモ、ヤマノイモなどのイモ類の葉を食べるスズメガ科の幼虫(セスジスズメ、エビガラスズメなど)を指す言葉でした。
- 伝統的な日本人の食生活において、イモ類は穀物に次ぐ重要な作物であり、その葉につく虫として名前が付けられました。
- 2. 「虫」の由来:「虫」の一般的な概念: マムシやウズムシで説明したように、日本語の「むし」という言葉は、古くから「這い回る小動物」全般を指す広い概念でした。
- 1. 「芋」の由来:「イモムシ」という名前は、その見た目がイモに似ているからではありません。
- 昆虫: イモムシは、現代の生物学でいう昆虫(体が頭・胸・腹の三つに分かれ、脚が6本ある動物)のライフサイクルの一部(幼虫)です。そのため、「ムシ」という言葉がそのまま適用されています。
- したがって、「イモムシ」という和名は、「芋という植物につく虫」という意味で名付けられ、それが転じて、毛やトゲが少ないチョウやガの幼虫全般を指す俗称として広まりました。
ウズムシ(渦虫):
ウズムシ(渦虫)は、扁形動物門に属する動物群の総称であり、特にプラナリアやヒラムシといった自由生活性の種を指します。
- ウズムシの主な特徴:ウズムシは、寄生性の吸虫や条虫と同じ扁形動物の仲間ですが、自由生活(寄生しない生活)を送るグループを指します。
- 形態的な特徴
- 体の構造: 左右相称で、体は背腹に扁平で柔らかく、体節がありません(無体腔)。紡錘形、葉状、ひも状など多様な体形を持ちます。
- 大きさ: 小さなものでは1mm以下、大型のプラナリア類で20mm〜30mm、海産のヒラムシ類では30cmに達するものもいます。
- 移動: 体表の全体または一部が繊毛(せんもう)で覆われており、この繊毛の運動により移動します。粘液を分泌しながら、滑るように動きます。
- 消化器系: 肛門がなく、口から取り入れた餌は腸内で消化され、排出も口から行われます。口は通常、体の腹面中央よりやや前方(プラナリアの場合)に位置し、餌を食べる際に咽頭(いんとう)を伸ばして吸い込みます。
- 神経系: 脳(頭神経節)を中心とした原始的な「梯子状(はしごじょう)神経系」を持ちます。
- 感覚器: 頭部に眼点(がんてん)を持ちます。これは視力はなく、主に光の明暗を感じる程度です。
- 生態的な特徴
- 生息環境: 淡水、海水、湿度の高い陸上(コウガイビルなど)など、世界各地に生息します。特に淡水に生息する三岐腸目(プラナリア類)は、水質のきれいな川の石の裏などでよく見られます。
- 再生能力: 驚異的な再生能力を持つことで有名です。体を切断しても、それぞれの断片が元の体全体を再生することができ、再生実験によく用いられます。
- 生殖: ほとんどが雌雄同体ですが、通常は2匹で交接(有性生殖)を行います。また、横分裂や破片分裂といった無性生殖でも増殖できます。
- 食性: ほとんどの種が肉食で、水生昆虫やミミズ、動物の死骸などを食べます。
- 形態的な特徴
- 和名に「虫」がつく由来:ウズムシが昆虫や甲殻類ではない扁形動物であるにもかかわらず和名に「虫」がつくのは、和名の「むし」という言葉の伝統的な広い概念に由来します。
- 「渦」の由来: 「ウズムシ(渦虫)」という名前の「渦」は、移動の際に腹面にある繊毛を動かすことで、水面に小さな渦ができることに由来します。
- 「虫」の由来: 日本語の「むし」という大和言葉は、生物学的な昆虫類に限定されず、「小さくて細長く、這い回る小動物」全般を広く指す言葉として古くから使われてきました。
- ウズムシはその体が柔らかく細長いことから、当時の「むし」の概念に当てはめられ、その特徴的な動きと合わせて「渦虫」と名付けられました。
カイセンチュウ(疥癬虫):
カイセンチュウ(疥癬虫)は、皮膚に寄生する非常に小さな生物であるヒゼンダニの和名です。
- カイセンチュウ(ヒゼンダニ)の主な特徴:「疥癬虫(かいせんちゅう)」の正体は、節足動物門クモ形綱ダニ目に属するヒゼンダニ(学名:Sarcoptes scabiei)という種類のダニです。このダニがヒトや動物の皮膚に寄生して起こる病気が「疥癬(かいせん)」です。
- 分類 ダニ(クモ形綱)であり、昆虫(六本脚)ではありません。
- 大きさ 非常に小さく、雌成虫で体長は約0.4mm(400 μm)程度で、肉眼ではほとんど見えません。
- 外見 ほぼ卵形あるいは円板状の体を持ち、脚は前方に2対、後方(腹面)に2対の計4対(8本)あります。
- 生態 ヒトの皮膚の最も外側にある角質層に寄生し、雌は皮膚に「疥癬トンネル」と呼ばれる横穴を掘りながら生活し、その中に卵を産み付けます。
- 栄養源 吸血性ではなく、角質層にある滲出液や組織液などを栄養源とすると考えられています。
- 症状 ダニの虫体やその糞、脱皮殻などに対するアレルギー反応として、非常に激しいかゆみ(瘙痒)と赤い丘疹などが生じます。
- 感染力 主に人から人への直接的な皮膚接触によって感染します。
- 和名に「虫」がつく由来:カイセンチュウ(ヒゼンダニ)は分類学上はダニ(クモの仲間)であり、昆虫綱の「虫」ではありません。しかし、その和名に「虫」の字が使われるのは、日本語の「むし」という言葉の歴史的な背景に基づいています。
- 「虫」の広い概念:古来、日本語の「むし」という言葉、および漢字の「蟲(虫)」は、現代の「昆虫」という厳密な生物学的な定義よりも遥かに広い意味で使われていました。
- 「地を這い、小さく、うごめく生き物」や、「病気の原因となる微小な生物(病原体、寄生虫など)」を総称する言葉として使われていました。
- 「疥癬(ひぜん)」という病気の原因:
- カイセンチュウは、皮膚病である「疥癬」の病変部(かゆみを伴う発疹など)から検出される極小の寄生生物です。
- 古代の人々は、このダニの存在を知らなくても、「疥癬という皮膚病を引き起こす、目に見えないほど小さな生物」として、慣習的に「虫」という言葉を当てました。
- したがって、カイセンチュウの「虫」は、特定の分類群(昆虫綱)を示すのではなく、「非常に微小で、病気を引き起こす(または不快な)小動物」という、古くからの日本語の広い概念に基づいています。
カイチュウ(回虫):
カイチュウ(回虫)は、ヒトを含む多くの哺乳動物の小腸に寄生する寄生虫です。
- カイチュウ(回虫)の主な特徴
カイチュウ(蛔虫とも書く)は、分類学上は線形動物門(線虫)に属し、昆虫やダニの仲間ではありません。- 分類 線形動物門(線虫)に属する寄生虫です。
- 外見 細長い線状の体を持ちます。ヒトに寄生するヒトカイチュウは特に大型で、雌成虫は体長22cm~35cm、幅5mmにもなります。
- 生息地 成虫は主に哺乳類の小腸に寄生します。
- 繁殖力 雌成虫は1日あたり約20万個もの卵を産むと言われており、卵は糞便と共に排出され、土壌中で長期間生存できます。
- 複雑な体内移行(回遊) 幼虫は小腸で孵化した後、血管に入り込み、肝臓を経て肺へ移動します。その後、気管支を上がって喉から再び飲み込まれ、小腸に戻って成虫になります。この複雑な体内移動経路をたどるのが大きな特徴です。
- 和名に「虫」がつく由来:カイチュウの和名に「虫」がつく由来は二つあります。
- 1. 「回」の由来:体内の"回"遊
まず、「回」という漢字は、この生物が宿主の体内で複雑な経路を巡る(回遊する)という生態を表しています。- 回虫(カイチュウ): 幼虫が小腸(→)肝臓(→)肺(→)気管支(→)小腸、というように体内を「回る」ことに由来します。
- 2. 「虫」の由来:古代の「寄生虫」概念
カイチュウは、カイセンチュウやサナダムシなどと同様に、日本語の「むし」という言葉の古い概念に基づいて「虫」という名が使われています。- 「虫」の広い概念: 古代の日本語や東洋医学における「蟲(むし)」という言葉は、ミミズやヘビなどの這う小動物の他、人の体内に潜んで病気や不調の原因となる寄生生物(寄生虫)を広く指していました。
- カイチュウは、その大きさや動き、そして宿主の健康を害する寄生性の高さから、まさにこの「体内を蝕む蟲」という認識に当てはまるため、「虫」の和名が付けられました。
- したがって、カイチュウの「虫」は分類学的な昆虫(六本脚)を意味するのではなく、体内で複雑な経路を「回」る「寄生性の小動物(蟲)」という意味で名付けられました。
- 1. 「回」の由来:体内の"回"遊
カイムシ(貝虫):
カイムシ(貝虫)は、エビやカニと同じ甲殻類の仲間で、微小な水生動物です。
- カイムシ(貝虫)の主な特徴
- カイムシ(貝虫、または貝形虫・カイミジンコ類とも呼ばれる、学名:Ostracoda)は、節足動物門甲殻亜門に属する生物群です。
- 分類 甲殻類(エビやカニの仲間)の一群で、貝虫綱に分類されます。昆虫(六本脚)でも、軟体動物の貝(巻貝や二枚貝)でもありません。
- 外見 左右に分かれた二枚貝のような硬い殻(背甲)で全身が完全に覆われています。この殻の中に体や付属肢(脚など)を収めることができます。
- 大きさ 一般に0.5〜2.5mm程度の微小な甲殻類です(深海種では30mmに達するものもいます)。
- 生息地 海水域、汽水域、淡水域(池、沼、水田など)に広く生息しています。
- 重要性 カンブリア紀以降の地層から多くの化石が発見されており、その殻の形や彫刻が時代や環境によって異なるため、地層の対比や油田探査の指標として重要です。
- 和名に「虫」がつく由来:カイムシの和名(漢字表記は「貝虫」または「介形虫」)に「虫」の字が使われる由来は、その大きさと古代の言葉の概念にあります。
- 1. 「貝」の由来
「貝」は、その外見が二枚貝そっくりであることに由来します。 - 2. 「虫」の由来
「虫」の古い概念: マムシやカイセンチュウ(ヒゼンダニ)の場合と同様に、日本語の「むし」や漢字の「蟲(虫)」は、古代において現代の「昆虫」に限定されず、「小さく這い回る小動物」や「微小な生物」全般を指す非常に広い概念でした。 - 微小な甲殻類: カイムシは体長が1mm程度と非常に小さく、水中でうごめく微小な生き物であるため、この広範な「むし」の概念に含められ、「貝」の形をした「むし」として「貝虫」と名付けられました。
- したがって、カイムシの「虫」は、その微小なサイズと動きから、古くからの「むし」という言葉が当てられたものであり、昆虫の仲間であることを示しているわけではありません。
- 1. 「貝」の由来
カニムシ(蟹虫):
カニムシ(蟹虫)は、尾のないサソリに似た姿が特徴のクモやサソリの仲間であり、昆虫ではありません。
- カニムシの主な特徴:カニムシは、節足動物門クモ形綱(クモガタ綱)に分類されるカニムシ目(擬蠍目:ぎけつもく、学名: Pseudoscorpiones)に属する小動物です。
- 分類 クモやサソリの仲間(鋏角亜門クモ形綱)。昆虫ではないため、脚は8本(4対)です。
- 外見 尾(毒針のある後腹部)がないサソリに似ています。また、大きなハサミを持つことからカニにも例えられます。
- 大きさ ほとんどが数mm程度(体長1~7mm)の微小動物です。
- 最大の特徴 一対の大きなハサミ型の触肢(しょくし)を持つこと。この触肢を前方に伸ばして歩く姿が特徴的です。
- 毒腺 触肢の先端に毒腺が開口している種もおり、小型の昆虫やダニなどを捕食します。
- 生息地 土壌、落ち葉、樹皮の裏、石の下、鳥獣の巣、家屋内など、極地や水中を除く多様な環境に広く生息しています。
- 和名に「虫」がつく由来:カニムシの和名「カニムシ(蟹虫)」の「虫」は、その生物学的な分類(クモ形綱)とは関係なく、日本語の伝統的な語彙に基づいています。
- 「カニ」の由来:大きなハサミ
- カニムシの最大の特徴である、カニのハサミに似た大きな触肢(しょくし)に由来しています。
- 「虫」の由来:小さく、うごめく動物
- 古来、日本語の「むし」や漢字の「蟲(虫)」は、現代の「昆虫」という狭い定義に限定されず、「小さく這い回る小動物」や「微小な生き物」全般を指す非常に広い概念でした。
- カニムシは体長数mmと非常に小さく、土壌中などでうごめく姿から、この広い意味での「むし」のカテゴリに含められました。
- 「カニ」の由来:大きなハサミ
したがって、カニムシは「カニのようなハサミを持つ、微小な生き物」という意味で名付けられ、その「虫」は、生物学的な昆虫(六本脚)を指しているわけではありません。
ちなみに、カニムシの別名には、サソリに似ていることから漢字で「擬蠍(ぎけつ)」と書かれたり、後ずさりするような歩き方から「アトビサリ」と呼ばれることもあります。
カワムシ(川虫):
「カワムシ(川虫)」は、特定の単一種の生物名ではなく、川に生息する水生昆虫の幼虫を総称する俗称です。特に渓流釣りにおいて、魚の餌として使われる水生昆虫の幼虫を指すことが多いです。
- カワムシの主な特徴(含まれる生物)カワムシと呼ばれる生物の多くは、以下の昆虫の幼虫です。これらの幼虫は、成虫になると陸上で生活します。
- トビケラの幼虫 トビケラ目 砂や小石、小木片などで筒状の巣(ミノ)を作る。クロカワムシ、イシムシなどとも呼ばれ、特にカワムシと言うとこれを指すこともある。
- カゲロウの幼虫 カゲロウ目 体が扁平なものや細長いものがある。水中生活に適応した気管えらを持つ。チョロムシなどの別名がある。
- カワゲラの幼虫 カワゲラ目 幼虫が肉食性のものもいる。一部地域ではガアムシなどとして食用にされる。オニチョロなどの別名がある。
- ヘビトンボの幼虫 アミメカゲロウ目 マゴタロウムシ(孫太郎虫)とも呼ばれ、古くは疳の薬として用いられた。
- その他 カメムシ目など アメンボ、タガメ、ミズカマキリなどの水生昆虫の成虫や幼虫も、広義には「川虫」に含まれることがあります。
- 和名に「虫」がつく由来:カワムシの和名に「虫」がつくのは、これまで挙げてきた生物と異なり、比較的シンプルです。
- 「川」の由来:「川」底の石の下などに生息する、その生息場所そのままに由来しています。
- 「虫」の由来:カワムシに含まれるトビケラ、カゲロウ、カワゲラなどは、分類学上、現代でいう「昆虫」(体が頭・胸・腹の三つに分かれ、脚が6本ある動物)に属します。
- そのため、「川虫」の「虫」は、他の例(カイチュウ、カニムシなど)で挙げたような広範な「蟲(むし)」の概念に由来する側面もありますが、これらの生物が「昆虫」の幼虫であるため、現代的な意味での「虫」という言葉の使用とも一致しています。
- つまり、「川に棲む(昆虫の)虫」という意味で「川虫」という和名が付けられました。
寄生虫:
寄生虫の意味:寄生虫(きせいちゅう、英語: Parasite)とは、他の生物(宿主)の体表または体内に生息し、そこから栄養を摂取して生活している生物のことを指します。
- 定義 宿主から利益(栄養、住処など)を得る一方で、宿主に不利益や害(障害、病気など)を与える関係にある生物です。
- 分類 寄生虫は分類学的に多様で、主に以下のグループに分けられます。
- 1. 原虫(げんちゅう): 単細胞生物。非常に小さく顕微鏡でしか見えません。(例:アメーバ、マラリア原虫)
- 2. 蠕虫(ぜんちゅう): 多細胞生物。比較的大きく、肉眼で見えるものも多いです。線虫(回虫、フィラリア)、条虫(サナダムシ、エキノコックス)、吸虫などに分けられます。
- 3. 節足動物(外部寄生虫): 体表に寄生または一時的に付着し、吸血などを行うもの。(例:ノミ、シラミ、ダニ)
- 寄生部位
- 内部寄生虫: 消化管や臓器など体内に寄生するもの。(蠕虫、原虫など)
- 外部寄生虫: 皮膚や体毛など体表に寄生するもの。(節足動物など)
- 分類 寄生虫は分類学的に多様で、主に以下のグループに分けられます。
- 和名に「虫」がつく由来
寄生虫の和名(漢字:寄生虫)に「虫」の字が使われるのは、生物学的な分類(昆虫)とは異なる、歴史的な言葉の概念に基づいています。- 1. 「虫」の広範な意味(「蟲」の概念)
古代の日本語や東洋医学において、漢字の「蟲(むし)」は、現代の生物学でいう「昆虫」(六本脚の動物)よりも遥かに広い概念を持っていました。- 「小さな動物全般」: ミミズ、ヘビ、カエルなどの小さな動物や、這い回る小動物全般を指しました。
- 「体内に潜む不調の原因」: 特に、人の体内に潜んで病気や不調(疳の虫など)を引き起こす得体の知れない生物、つまり寄生生物(蠕虫や原虫)に対しても、「蟲」という言葉が用いられました。
- 2. 「寄生虫」への適用
サナダムシや回虫(線虫)といった蠕虫は、体が細長かったり、動き回ったり、肉眼で見えるサイズであったことから、この「体内にいる不気味な小動物=蟲」という概念に完全に一致していました。- 現代の「寄生虫」という言葉は、この伝統的な「蟲」の概念が、外部・内部の様々な寄生性動物に適用され、定着したものです。
- 1. 「虫」の広範な意味(「蟲」の概念)
- したがって、寄生虫の「虫」は、「昆虫綱に属する」という意味ではなく、「体に害を及ぼす小さくうごめく生物(蟲)」という意味で使われています。
- この言葉の歴史的背景があるため、分類上は昆虫ではないカイチュウ(線虫)やカニムシ(クモの仲間)にも「虫」という字が使われています。
ギョウチュウ(蟯虫):
ギョウチュウ(蟯虫、学名:Enterobius vermicularis)は、ヒトの消化管、特に盲腸や大腸に寄生する線虫(ぜんちゅう)の一種です。寄生虫の中でも最も一般的なものの一つで、特に小児に多く見られます。
- ギョウチュウの主な特徴
- 分類 線形動物門(線虫)に属する内部寄生虫です。回虫も同じ線虫の仲間ですが、ギョウチュウのほうが遥かに小さいです。
- 外見 白色の細長い紡錘形(糸状)をしています。
- 大きさ 非常に小さく、雌成虫で8〜13mm、雄成虫で2〜5mm程度です。
- 寄生部位 主にヒトの盲腸、虫垂、上行結腸(大腸の一部)に寄生します。
- 産卵方法 雌虫は腸管内では産卵せず、夜間に肛門から這い出して、その周辺の皮膚に大量の卵(約6千~1万個)を産み付けます。
- 主な症状 雌虫が肛門周囲を刺激することによる激しいかゆみ(そう痒症)が特徴的です。
- 感染経路 産み付けられた卵が衣服、寝具、指などを介して口に入る経口感染(糞口感染)によって感染が広がります。
- 和名に「虫」がつく由来:ギョウチュウの和名「蟯虫」の「虫」は、他の多くの寄生性動物と同様に、その生物学的な分類(線虫)よりも古い言葉の概念に基づいています。
- 「蟯(ギョウ)」の由来:
「蟯」という漢字は、「うねる」「細く曲がる」といった意味合いを持つとされます。ギョウチュウの成虫は細長い糸状で、雄の尾端は腹側に曲がっています。この細くてうねるような形状や動き、特に雌虫が夜間に肛門周囲を這い回る様子から、この漢字が使われたと考えられます。 - 「虫」の由来:ギョウチュウは線虫というれっきとした「動物」ですが、名前の「虫」は、古代における漢字の「蟲(むし)」が持つ「小さく這い回る小動物」、特に「人の体内に潜んで不調や病気の原因となるもの」という広範な意味から来ています。
- ギョウチュウは微小で、体内に寄生し、夜間の肛門掻痒という明確な害を及ぼすため、「体内にいる、厄介な蟲」として古くから認識されていました。
- したがって、ギョウチュウの「虫」は、「細くうねり、体内に寄生して害をなす微小な生き物(蟲)」という意味で付けられたものであり、現代の昆虫(六本脚)を指すわけではありません。
- 「蟯(ギョウ)」の由来:
クマムシ(熊虫):
クマムシは、分類学上は緩歩(かんぽ)動物門に属する微小な動物の総称です。その驚異的な耐久性から「地上最強生物」とも呼ばれています。
- クマムシの主な特徴
- 分類 緩歩動物門という独自の動物門に分類されます。昆虫(六本脚)やクモ(八本脚)の仲間ではなく、節足動物や線形動物に近いとされています。
- 外見 4対8本のずんぐりとした短い脚を持ち、太い胴体と相まって、顕微鏡下で小熊が歩いているように見えます。
- 大きさ ほとんどが0.1〜1mm未満の微小なサイズで、肉眼で確認することは困難です。
- 生息地 海洋、淡水、そして陸上(特にコケや地衣類の中)など、極地から深海まで地球上のほぼ全ての環境に生息しています。
- 「最強生物」の所以 環境が悪化すると、体内の水分を数パーセントまで減らし、乾眠(クリプトビオシス)という仮死状態になります。この状態では、以下の極限環境に耐えることができます。
- 超高温・超低温: 150℃の高温から絶対零度に近い極低温
- 高圧・真空: 深海や宇宙空間に相当する高圧・低圧
- 放射線: 人間の致死量の1,000倍以上の放射線
- 和名に「虫」がつく由来:マムシ(熊虫)の和名に「虫」の字が使われているのは、「クマ」に似た外見と、「虫」の持つ古い言葉の概念に由来します。
- 「クマ(熊)」の由来:
- 顕微鏡で見たときのずんぐりとした体形と、8本の短い脚でゆっくりとよちよちと歩く様子が、まるで小さな熊のように見えることから名付けられました。英名も「ウォーター・ベア(Water bear)」です。
- 「虫」の由来:
- これまでの生物と同様に、漢字の「蟲(むし)」は、古代において「小さく這い回る小動物」や「微小な生物」全般を指す、広範な概念でした。
- クマムシは体長1mm未満の微小動物であり、コケの中などでうごめく姿から、分類とは関係なく、この「小さな生き物」を意味する「虫」という言葉が当てられました。
- したがって、クマムシは「熊のような姿をした小さな生き物」という意味で名付けられ、その「虫」は、昆虫の仲間であることを示しているわけではありません。
- 「クマ(熊)」の由来:
ケムシ(毛虫):
ケムシ(毛虫)は、分類学上の特定の目や綱を指す名称ではなく、チョウ目(鱗翅目)の昆虫の幼虫のうち、体表に毛(毛やトゲ)が生えているものの総称です。
- 特徴:
- 分類 昆虫綱に属し、チョウ目(鱗翅目)のアゲハチョウ、ガ、シャチホコガなどの幼虫です。
- 外見 細長い円筒状の体をしており、体表に細かな毛や毒針のようなトゲ(毒針毛)が生えているのが大きな特徴です。毛のない幼虫は一般的にイモムシと呼ばれ、ケムシとは区別されます。
- 生息地 主に樹木や草花の葉の上で生活し、植物の葉を食べて成長します。
- 毒性 種類によっては、触れると皮膚炎や激しいかゆみを引き起こす毒針毛(どくしんもう)を持つため、注意が必要です。(例:ドクガの仲間、チャドクガなど)
- 和名に「虫」がつく由来:ケムシ(毛虫)の和名に「虫」の字が使われるのは、その生物が「昆虫」に属することと、外見的な特徴に由来します。
- 「毛」の由来:外見的な特徴
- 「毛」は、そのまま、幼虫の体に毛やトゲが生えているという外見上の特徴を表しています。
- 「虫」の由来:分類学的な昆虫
- ケムシは、チョウやガの幼虫であり、成虫・幼虫ともに節足動物門・昆虫綱に属する、現代の定義でいう「昆虫」です。
- これまでに見てきた回虫やカニムシのように、「虫」が「小さな生き物全般(蟲)」という広範な意味で使われている側面もありますが、ケムシの場合は、分類学上も「昆虫」であるため、「毛の生えた昆虫の幼虫」という意味で「毛虫」と名付けられました。
- つまり、ケムシの「虫」は、「川虫」と同様に、分類学的な昆虫であることを示しています。
- 「毛」の由来:外見的な特徴
サナダムシ(真田虫):
サナダムシ(真田虫)は、ヒトや動物の腸管に寄生する条虫(じょうちゅう)の総称です。その分類学的な名は扁形動物門に属し、古くから知られている内部寄生虫の一つです。
- サナダムシの主な特徴
- 分類 扁形動物門(へんけいどうぶつもん)の条虫綱に属する内部寄生虫です。線虫(回虫や蟯虫)とも、昆虫とも異なります。
- 外見 体は細長いテープ状またはリボン状で、頭節(頭)の後に多数の片節(体節)が連なっています。この片節一つ一つに生殖器官があります。
- 大きさ 種類によって非常に差があります。長いものでは数メートルに達するものもいます(例:無鉤条虫、日本海裂頭条虫など)。
- 寄生部位 魚介類や獣肉を介して感染し、主にヒトや動物の小腸に寄生し、宿主の栄養を吸収します。
- 排泄 繁殖を終えた片節(卵が詰まっている)は、ちぎれて糞便と共に排出されます。
- 和名に「虫」がつく由来:サナダムシの和名「真田虫」は、その特徴的な外見と、「虫」の持つ伝統的な広い概念に由来します。
- 「サナダ(真田)」の由来:織り紐
- 「真田」とは、戦国武将の真田氏とは関係なく、細く平たい紐を編んだもの、つまり「真田紐」のことを指します。
- サナダムシの体が平たく細長いテープ状で、多数の片節(節)が連なっている様子が、この真田紐に似ていることから名付けられました。
- 「虫」の由来:体内に潜む生物
- これまでの寄生虫(回虫、蟯虫など)と同様に、サナダムシの「虫」は、分類学的な「昆虫」を意味するのではなく、「人の体内に潜み、病気や不調を引き起こす微小な(または細長い)生物」、すなわち「蟲(むし)」という古い概念から来ています。
- したがって、サナダムシは「真田紐のように平たく細長い、体内に寄生する生物」という意味で名付けられました。
- 「サナダ(真田)」の由来:織り紐
ゾウリムシ(草履虫):
ゾウリムシ(草履虫、学名:Paramecium)は、池や水たまりなどの淡水中に生息する単細胞生物(原生生物)の仲間です。
- ゾウリムシの主な特徴
- 分類 原生生物界の繊毛虫(せんもうちゅう)というグループに属する単細胞生物です。エビやカニ、昆虫などの多細胞動物ではありません。
- 外見 体全体が、日本の履物である草履(ぞうり)のような、細長い楕円形をしています。
- 大きさ 一般に0.1〜0.3mm程度で、肉眼では見えません。顕微鏡で観察されます。
- 移動と摂食 全身の表面に生えた無数の繊毛(せんもう)を波打たせて水中を泳ぎます。繊毛で水流を起こし、口の溝にバクテリアなどの餌を流し込んで捕食します。
- 生活 池や沼、水田など、汚れた水域にも広く生息しており、非常に身近な原生生物です。
- 和名に「虫」がつく由来:ゾウリムシの和名「草履虫」の「虫」は、その分類学的な立ち位置(単細胞生物)とは関係なく、「虫」の持つ最も古い、広範な言葉の概念に由来します。
- 「ゾウリ(草履)」の由来:外見的な形
- 「草履」は、その細長い楕円形で、片方がやや丸みを帯びた形が、昔ながらの履物である草履の形に似ていることから名付けられました。
- 「虫」の由来:微小な生物全般
- これまでの例と同様に、漢字の「蟲(むし)」は、古代の日本語において、「微小で、うごめく生き物」や「得体の知れない小動物」を広く指す言葉でした。
- ゾウリムシは極めて小さく、水中で活発に動き回ることから、「草履のような形をした微小な(目に見えない)生き物」という意味で「虫」という言葉が当てられました。
- このように、ゾウリムシの「虫」は、昆虫や多細胞動物を示すのではなく、単にその微小なサイズと動きから来た、伝統的な表現です。
- 「ゾウリ(草履)」の由来:外見的な形
ダンゴムシ(団子虫):
ダンゴムシ(団子虫、学名:Armadillidium vulgare など)は、陸上に生息する甲殻類(エビやカニの仲間)の一種です。一般的に「虫」と呼ばれますが、昆虫ではありません。
- ダンゴムシの主な特徴
- 分類 節足動物門・甲殻亜門の等脚目(とうきゃくもく)に属します。ワラジムシやフナムシ、エビ、カニなどと同じ甲殻類の仲間です。
- 外見 灰色の楕円形で、背中が硬い殻(背甲)で覆われています。大きな特徴は、外敵に襲われると体を丸めてボール状(団子状)になることです。
- 脚の数 14本(7対)の歩脚を持ちます。昆虫(6本)やクモ類(8本)とは異なります。
- 生態 腐葉土や石の下、朽木の中など、湿度の高い日陰を好み、主に落ち葉や枯れた植物などの有機物を食べています。
- その他 同じ等脚目にワラジムシがいますが、ワラジムシは体を丸めることができません。
- 和名に「虫」がつく由来:ダンゴムシの和名「団子虫」の「虫」が使われるのは、分類学的な事実(甲殻類)とは関係なく、これまでに挙がった他の多くの生物と同様に、伝統的な言葉の概念に基づいています。
- 「ダンゴ(団子)」の由来:防御行動
- 「団子」は、ダンゴムシが外敵から身を守るために、体を球形に丸めるというユニークな行動に由来しています。
- 「虫」の由来:小さな生き物全般
- 漢字の「蟲(むし)」は、古代の日本語において、「小さく這い回る小動物」や「微小な生き物」を広く指す言葉でした。
- ダンゴムシは、昆虫ではないものの、一般の人々にとっては「地面を這い回る小さな生き物」であり、この広範な「蟲」の概念に当てはまったため、「団子のように丸くなる虫」という意味で「団子虫」と名付けられました。
- ダンゴムシのように、分類上は昆虫ではないにもかかわらず「虫」という名を持つ生物は、日本の生物名において非常に多く見られます。
- 「ダンゴ(団子)」の由来:防御行動
爬虫類
- 「虫」という漢字は、現在の「むし」という小さな生き物を指す意味とは異なり、ヘビ(蛇)をかたどった象形文字として成り立ちました。
- 「虫」の成り立ち
もとの意味:- 古代の「虫」は、ヘビ、特にマムシのような毒ヘビの形を象った文字でした。
- 文字の形は、鎌首をもたげたヘビの姿を表していたと考えられています。
- この当時の読みは「キ」で、ヘビを意味する独立した漢字でした。
- 「蟲」との関係:
- 現在「むし」全般を意味する旧字体は「蟲」でした。
- 「蟲」は「虫」を三つ集めた会意文字で、「小さな生き物がたくさんうごめく様子」を表し、昆虫など小さな生き物全般を指しました(読みは「チュウ」など)。
- 意味の変化:
- 長い歴史の中で、「蟲」の字が複雑で書きにくいことから、「虫」が「蟲」の簡略形(新字体)として使われるようになり、「むし」全般を指す意味も引き継ぎました。
- そのため、現代の「虫」は、もとの「ヘビ」の意味と、小さな生き物全般を指す「むし」の意味の両方を持つようになったのです。
- 「虫」の成り立ち
- 豆知識:「虫」がヘビを意味する例
現在でも、「虫」がもともとヘビを意味していた名残として、爬虫類(はちゅうるい)という言葉が挙げられます。- 爬虫類(はちゅうるい): 「爬」は「地を這う」という意味で、「虫」は「ヘビ」を表しているため、「地を這うヘビの仲間」という意味になります。
- また、「虹」(にじ)という漢字に「虫偏」がついているのは、古代中国で虹を空をつらぬく巨大な龍(大蛇)の一種と考えていたためです。
ハリガネムシ(針金虫):
ハリガネムシ(針金虫)は、分類学上は類線形動物門というグループに属する動物の総称です。その名の通り、非常に細長く、水中や昆虫の体内で生活する寄生虫として知られています。
- ハリガネムシの主な特徴
- 分類 類線形動物門のハリガネムシ綱に属します。蟯虫やサナダムシとは別の、独自の動物門です。
- 外見 体は円筒形で、体長は10cmから長いもので1m以上に達しますが、直径は1〜3mm程度と非常に細く、黒褐色をしています。
- 「針金」の由来 表面が硬いクチクラで覆われているため、乾燥すると文字通り針金のように硬くなります。この外見と質感から「針金」の名が付きました。
- 生態 幼虫は水生昆虫などに寄生した後、カマキリ、カマドウマ、コオロギなどの陸生昆虫の体内で成虫になります。
- 成虫の脱出 成熟すると、宿主(寄生された昆虫)の行動を操作して水辺に向かわせ、宿主の体外から脱出して水中で自由生活を送り、産卵します。
混同されるもの コメツキムシ科の昆虫の幼虫も、細長い形をしているため、俗に「針金虫」と呼ばれることがあります。
- 和名に「虫」がつく由来:ハリガネムシの和名「針金虫」の「虫」は、その細くてうごめく形状と、寄生という生態から、伝統的な「蟲」の概念に基づいて名付けられました。
- 「ハリガネ(針金)」の由来:外見
- 「針金」は、上述の通り、細く長く、乾燥すると硬くなるという、ハリガネムシの際立った物理的な特徴に由来します。
- 「虫」の由来:細長い生物・寄生生物
- ハリガネムシは昆虫(六本脚)ではありませんが、その細い体は、古代から「細長いもの」や「体内で病や不調を引き起こすもの」を指す「蟲(むし)」の範疇に入りました。
- 特に、生物の体内に潜み、時に長く伸びる寄生性の動物は、分類に関わらず「〜虫」と名付けられることが多く、ハリガネムシもこの例に当てはまります。
- つまり、ハリガネムシの「虫」は、「針金のような形をした、うごめく小さな(細長い)生き物」という、広い意味での「蟲」を指しています。
- 「ハリガネ(針金)」の由来:外見
ヒモムシ(紐虫):
ヒモムシ(紐虫)は、紐形動物門に属する無脊椎動物の総称です。その名の通り、体が細長く紐状をしているのが最大の特徴です。
- ヒモムシの主な特徴
- 分類 紐形動物門(ひもがたどうぶつもん、Nemertea)という独自の動物門に属します。線虫や扁形動物(サナダムシなど)とも異なる独立したグループです。
- 外見 紐のように細長く、体節構造や付属器官(脚など)を持たず、滑らかで柔らかい体をしています。多くは背腹が扁平です。
- 大きさ 一般的な種は5〜30cm程度ですが、伸縮性が非常に富んでおり、種によっては巨大化するものもあります。
- 生息地 大部分の種が海産で、沿岸の岩の下や砂の中、海藻の間などに生息しています。ごく少数ですが、淡水産や熱帯の陸生種も知られています。
摂食 体の前端にある吻(ふん)と呼ばれる長く伸びる器官を伸ばして、獲物を捕らえたり、移動に使ったりします。この吻の先端に針を持つ種もいます。 - 生態 ほとんどが底生性で、海底や底を這い回って生活する自由生活を送っていますが、一部に他の動物と共生・寄生するものもいます。
- 和名に「虫」がつく由来:ヒモムシの和名「紐虫」の「虫」は、他の細長い動物や寄生虫の例と同様に、その外見的な特徴と伝統的な言葉の概念に由来します。
- 「ヒモ(紐)」の由来:外見的な形
- 「紐」は、ヒモムシの体が極端に細長く、紐状をしているという、最も分かりやすい外見の特徴をそのまま表しています。
- 「虫」の由来:細長い生き物
- 漢字の「蟲(むし)」は、古代の日本語において、「細長い生き物」や「這い回る小動物」を広く指す言葉でした。
- ヒモムシは、昆虫ではないものの、その細長い体と蠕虫(ぜんちゅう)的な動きから、広範な「蟲」の概念に当てはまると見なされました。特に、同じように細長い体を持つ線虫(回虫、蟯虫)や環形動物(ミミズ、ゴカイ)など、多くの非昆虫が「〜虫」と名付けられたのと同じ理由です。
- したがって、ヒモムシの「虫」は、「紐のような形をした、うごめく(細長い)生き物」という、広い意味での「蟲」を指しています。
- 「ヒモ(紐)」の由来:外見的な形
フナムシ(船虫):
フナムシ(船虫、学名:Ligia exotica)は、海岸の岩場や防波堤でよく見られる、等脚目(とうきゃくもく)に属する甲殻類の一種です。ダンゴムシやワラジムシと同じ仲間にあたりますが、完全な陸生ではなく、湿度の高い高潮線付近で生活しています。
- フナムシの主な特徴
- 分類 節足動物門・甲殻綱の等脚目に属します。エビやカニの仲間であり、昆虫(六本脚)ではありません。
- 外見 体長は3〜5cmほどで、体は扁平な小判形をしています。鈍い光沢のある黒色や暗褐色をしており、長い触角と7対14本の脚、そして2本に枝分かれした長い尾肢(しっぽ)が目立ちます。
- 生態 主に岩礁の隙間や割れ目などに大群で生息しています。雑食性で、打ち上げられた海藻や魚などの死骸を食べる「海の掃除屋」としての役割を果たしています。
- 行動 非常に逃げ足が速いのが特徴です。その素早い動きと平たい体から、英語では「Wharf Roach(埠頭のゴキブリ)」と呼ばれることもあります。
- 和名に「虫」がつく由来:フナムシの和名「船虫」の「虫」は、その生息環境と伝統的な「蟲」の概念に由来します。
- 「フナ(船)」の由来:生息場所
- フナムシは、船の停泊する埠頭や船着き場、防波堤など、人間が船で海を行き来する場所に多く生息し、時に船に侵入することもありました。
- このように「船の周り、船のある場所」に多く見られることから、「船」の字が冠されました。
- 「虫」の由来:小さな、うごめく生き物
- フナムシは分類上は甲殻類(エビ・カニの仲間)ですが、体長が小さく、多数で群れをなして地面を素早く這い回るその姿は、古代から使われてきた「微小で、うごめく生き物」を意味する「蟲(むし)」の概念に当てはまりました。
- 「船の周りを這い回る、小さな生き物」という意味で、「船虫」という名前が定着したと考えられます。
- フナムシはダンゴムシと同様に、分類的には昆虫ではないものの、日本の伝統的な和名においては、そのサイズと行動様式によって「虫」として認識されています。
- 「フナ(船)」の由来:生息場所
マムシ(蝮):
ニホンマムシは日本本土に広く分布する毒蛇で、その特異な体形と習性、そして和名に使われる「虫」の字には、古代からの深い歴史があります。
- マムシ(蝮)の主な特徴
- マムシ(ニホンマムシ, 学名:Gloydius blomhoffii)は、爬虫綱有鱗目クサリヘビ科マムシ亜科に分類される毒蛇です。
- 1. 形態と生態
体形: 全長は40〜60cmと比較的小さいですが、胴体が太短いずんぐりした体形をしています。- 頭部: 三角形をしており、首との境がくびれています。
- 斑紋: 体色(灰褐色~暗褐色)は変異に富みますが、背中には銭形(ぜにがた)と呼ばれる楕円形の暗色斑紋が並んでいるのが典型的です。
- 感覚器官: 目と鼻の間にはピット器官(熱感知器官)があり、夜間でも獲物(ネズミ、カエル、小鳥など)の体温を感知して正確に捕らえることができます。
- 生息地: 平地から山林、特に水辺に近い草むらや田畑を好みます。
- 習性: 他のヘビと異なり、人が近づいても逃げずにとぐろを巻いてじっとしていることが多いため、誤って踏んでしまい咬まれる事故が起こりやすいです。
- 繁殖: 卵胎生で、夏に交尾し、翌年の晩夏から秋にかけて幼蛇を産みます。
- 2. 毒性
毒牙: 上顎の先端に鋭い2本の毒牙(管牙)を持っています。- 毒の種類: 主に出血毒ですが、少量の神経毒も含まれます。
- 症状: 咬まれると激しい痛みと腫れ、内出血、筋肉の壊死などを引き起こし、重篤な場合は死に至るため、非常に危険です。
- 1. 形態と生態
- マムシ(ニホンマムシ, 学名:Gloydius blomhoffii)は、爬虫綱有鱗目クサリヘビ科マムシ亜科に分類される毒蛇です。
- 和名「虫」がつく由来:マムシの漢字表記は「蝮」であり、部首に「虫(むしへん)」が使われています。これは、現代の生物学的な分類とは異なる、古代の言葉や漢字の成り立ちに深く関連しています。
- 1. 漢字「虫」の本来の意味
古代中国の漢字において、「虫(むし)」という漢字は、元々ヘビ(特にマムシ)をかたどった象形文字であるとされています。- つまり、「虫」の字のルーツはヘビであり、それが後に「小さく這い回る動物」全般、そして昆虫を指す言葉へと変化していきました。
- 2. 和名の「マムシ」の由来
「マムシ」という和名は、「真虫(まむし)」が語源の一つであるという説があります。この場合の「真」は「本当の」「本物の」という意味で、「虫」の字が元々指していたヘビ(毒蛇)の代表であったことから、「真の虫」という意味で「マムシ」と呼ばれたと考えられています。 - また、ヘビは古くから「長虫(ながむし)」とも呼ばれており、体が細長く地を這う動物は、昆虫・非昆虫を問わず広範に「むし」として認識されていたことの現れです。
- 1. 漢字「虫」の本来の意味
このように、マムシの漢字に含まれる「虫」は、ヘビそのものを指す古い概念の名残であり、ウズムシなどのように「小さくて這うもの」という意味で後からつけられたものとは、歴史的な経緯が異なります。
ミドリムシ(緑虫):
ミドリムシ(緑虫、学名:Euglena)は、池や沼などの淡水に生息する単細胞生物(原生生物)の総称です。その名前の通り、体が緑色をしていることが最大の特徴です。
- ミドリムシの主な特徴
- 分類 原生生物界のミドリムシ植物(ユーグレナ藻)というグループに属する単細胞生物です。動物でも植物でもない、独自のグループです。
- 外見 体は細長い紡錘形をしており、多くは鮮やかな緑色をしています。細胞内には葉緑体を持ちます。
- 大きさ 一般に0.03〜0.05mm程度で、肉眼では見えず、顕微鏡で観察されます。
- 栄養摂取 葉緑体で光合成を行うため、栄養学的には植物的な性質を持ちます。しかし、暗所では他の有機物を取り込んで成長する動物的な性質も併せ持っています。
- 移動 体の先端から伸びる鞭毛(べんもう)を動かして水中を活発に泳ぎます。
- 和名に「虫」がつく由来:ミドリムシの和名「緑虫」の「虫」は、その生物学的な分類(原生生物)とは関係なく、これまでの例と同様に、「虫」の持つ最も古い、広範な言葉の概念に由来します。
- 「ミドリ(緑)」の由来:外見的な色
- 「緑」は、ミドリムシが体内に葉緑体を持ち、細胞全体が緑色に見えるという、最も際立った特徴を表しています。
- 「虫」の由来:微小な生物全般
- 漢字の「蟲(むし)」は、古代の日本語において、「微小で、うごめく生き物」や「得体の知れない小動物」を広く指す言葉でした。
- ミドリムシは極めて小さく、鞭毛を使って水中で活発に動き回る姿から、「緑色をした、目に見えない小さな生き物」という意味で「虫」という言葉が当てられました。
- つまり、ミドリムシの「虫」は、ゾウリムシと同様に、分類的な意味ではなく、その微小なサイズと運動からきた、慣習的な呼称です。
- 「ミドリ(緑)」の由来:外見的な色
ムシカリ(虫狩):
ムシカリ(虫狩)は、落葉低木の一種で、和名ではオオカメノキ(大亀の木)の別名として知られています。
- ムシカリの主な特徴
- 分類 レンプクソウ科(旧スイカズラ科)のガマズミ属に属する植物です。これまでの例とは異なり、動物ではありません。
- 別名 オオカメノキ(大亀の木)が正式な和名として使われることが多いです。葉の形が亀の甲羅に似ていることに由来します。
- 花 春にアジサイに似た白い花をつけます。中心に実になる小さな両性花、周囲に装飾花が並びます。
- 特徴 葉が大きく、虫が好んで食べるため、野生のムシカリの葉には、しばしば虫食いの穴が見られます。
- 和名に「虫」がつく由来:植物であるムシカリの和名に「虫」がつく由来は、その葉が虫に食べられやすいという、外見的な特徴にあります。
- 「ムシ」の由来:虫による食害
- ムシカリの葉は、特にハムシの仲間など特定の昆虫に好まれ、よく食べられます。そのため、葉が葉脈だけを残してボロボロになるほど激しく食害されることがよくあります。
- 「カリ」の由来:転訛(なまり)
- 最も有力な説は、「ムシカリ」は「虫食われ」(虫に食われる)という言葉が転訛(なまって)したものである、というものです。
- 一部の植物図鑑などでは、漢字を「虫狩」と書くことがありますが、これは単に当て字であり、「虫を狩る」側ではなく、実際には「虫に狩られる(食べられる)」側であるという解釈が一般的です。
- また、「虫が好む(食べたい)木」という意味の「虫好む木」から転訛したという説もあります。
- ムシカリは、「虫」という言葉が、動物そのものではなく、その動物が引き起こす現象(食害)を指す例として、和名に使われている点が特徴的です。
- 「ムシ」の由来:虫による食害
ムシクイ(虫食い):
ムシクイ(虫食い)は、鳥類の一種を指す和名です。分類学上は、スズメ目ムシクイ科ムシクイ属に属する鳥の総称で、日本ではセンダイムシクイ、メボソムシクイなどが知られています。
- ムシクイの主な特徴
- 分類 鳥綱スズメ目に属する野鳥です。これまでに挙げた生物と異なり、昆虫や微小生物ではありません。
- 外見 スズメよりも小さく、地味な暗緑色やオリーブ色の羽毛を持ちます。種を見分けるのが非常に難しいほど、互いによく似ています。
- 食性 枝から枝へとすばやく動き回り、葉や枝についている昆虫やクモ、その幼虫を主食とします。
- 行動 葉が生い茂った樹冠部で活動するため、姿を見つけるのは困難ですが、さえずりが種を特定する大きな手がかりになります。
- 和名に「虫」がつく由来:ムシクイ(虫食い)の和名に「虫」の字が使われるのは、その鳥の食性に由来しています。
- 「ムシクイ(虫喰い)」の意味:餌
- 「虫食い」とは、「虫を食う(食べる)」、つまり「昆虫食である」という性質をそのまま表しています。
- この鳥が、葉の裏や枝の間にいる小さな昆虫やクモを、器用な嘴(くちばし)で素早く捕らえて食べることから、この名前が付けられました。
- 「虫」の由来:分類学上の昆虫
- ムシクイの「虫」は、他の例に見られた「微小な生き物全般(蟲)」という広範な意味も持ちますが、ここでは特に「(餌となる)昆虫やクモ類」を指しています。
- したがって、ムシクイの和名は、「(その鳥自身が)虫である」のではなく、「虫を主食として食べる鳥である」ということを明確に示しています。
- ちなみに、「ムシクイ」は、葉が虫に食べられて穴が開いた状態である「虫食い(虫が食うこと)」という名詞・状態名としても使われます。植物のムシカリ(虫狩、オオカメノキの別名)の和名が「虫食われ」の転訛であるのと対照的で面白いですね。
- 「ムシクイ(虫喰い)」の意味:餌
キタヤナギムシクイ
ヤドカリ(寄居虫):
ヤドカリ(寄居虫)は、分類学上は甲殻綱(こうかくこう)に属するエビやカニの仲間です。軟らかい腹部を外敵から守るため、他の巻貝の貝殻に隠れて生活する習性を持つことからこの名があります。
- ヤドカリの主な特徴
- 分類 節足動物門・甲殻綱(こうかくこう)の十脚目(エビ・カニと同じ)に属します。昆虫(六本脚)ではありません。
- 外見 頭胸部と胸脚(特に大きなハサミ)は硬い殻で覆われていますが、腹部(お腹)は非常に軟らかく、ねじれた形をしています。
- 生態 軟らかい腹部を、巻貝の空き殻の中に入れて隠し、殻ごと移動して生活します。成長に伴い、より大きな貝殻を探して引っ越します。
- 「寄居」の意味 「居(い)を寄せる」、つまり「仮の住まい(貝殻)に身を寄せている」という習性を表しています。
- 生息地 ほとんどが海産で、潮間帯から深海まで広く生息しています。ヤシガニなどの一部の種は陸上生活をしています。
- 和名に「虫」がつく由来:ヤドカリの和名「寄居虫」の「虫」は、その分類(甲殻類)とは関係なく、その外見と伝統的な言葉の概念に由来します。
- 「ヤド(寄居)」の由来:貝殻に身を寄せる習性
- 「ヤドカリ(宿借り)」という呼び名が、そのまま「宿(貝殻)を借りる」という彼らの独特な生態を表しています。
- 「虫」の由来:伝統的な「蟲」の概念
- 漢字の「蟲(むし)」は、古代の日本語において、「小さく這い回る小動物」や「得体の知れない小動物」を広く指す言葉でした。
- ヤドカリは、カニやエビに比べて体が小さく、岩場や砂地を這い回り、その姿や生態が古来の「蟲」のイメージに合致したため、「虫」という言葉が当てられました。
- ヤドカリは、ダンゴムシやフナムシと同様に、分類的には甲殻類ですが、「小さな生き物」という広い意味で「虫」という名前を持っています。
- 「ヤド(寄居)」の由来:貝殻に身を寄せる習性
ユムシ(螠虫):
ユムシ(螠虫、学名:Urechis unicinctus)は、主に浅い海の砂泥中に生息する海産無脊椎動物の一種です。独特な外見と、食用・釣り餌としての利用で知られています。
- ユムシの主な特徴:
- 分類 環形動物門(多毛類)のグループに属するユムシ動物です。古くは独立した門とされていましたが、現在は環形動物門の一部(ユムシ綱)と見なされることが一般的です。
- 外見 体長は10〜30cmほどで、円筒状またはソーセージ状をしています。体は柔らかく、赤みがかった乳白色またはピンク色をしています。体の前端に短い吻(ふん)を持ちます。
- 「ユムシ」の漢字 螠虫と書き、部首に「虫」が使われます。
- 生態 沿岸の干潟や砂泥中に、深さ50cmにも達するU字型の巣穴を掘って棲んでいます。巣穴で水流を起こし、水中のデトリタス(有機物)をろ過して餌としています。
- 利用 韓国や中国では「ケブル」や「ハイチャン(海腸)」として食用とされ、日本でも一部地域で刺身や煮物として食べられます。また、釣り餌としても使われます。
- 和名に「虫」がつく由来:ムシの和名「ユムシ(螠虫)」の「虫」は、その細長い蠕虫的な姿と、別の和名が転訛(てんか、なまり)した説に由来します。
- 「虫」の由来:細長い生き物(蠕虫)
- ユムシは、硬い殻や脚を持たず、ミミズやゴカイのように細長い円筒形をしています。
- これまでに見てきたように、漢字の「蟲(むし)」は、古代において「蠕動(ぜんどう)する細長い小動物」を広く指す概念でした。ユムシもこの「蠕虫的」な外見から「虫」の字が当てられました。
- 「ユムシ」の名の由来(転訛説)
- ユムシの名前の由来については諸説ありますが、その一つに、ユムシがもともと「イムシ(縊虫)」と呼ばれていたものが転訛した、という説があります。
- 「縊(い)」は「くびれる」や「首をくくる」という意味を持ちます。ユムシの姿が「首を吊った人間を思わせる」という連想から名付けられたという見解もあります。
- いずれにせよ、ユムシの「虫」は、その分類上の門(環形動物門)を示すものではなく、「体形が柔らかく、細長いうごめく動物」という伝統的な和名のルールに沿って付けられたものです。
- 「虫」の由来:細長い生き物(蠕虫)
ワラジムシ(草鞋虫):
ワラジムシ(草鞋虫)は、ダンゴムシと同じく、陸上に生息する甲殻類(エビやカニの仲間)の一種です。湿った場所を好み、世界中に広く分布しています。
- ワラジムシの主な特徴
- 分類 節足動物門・甲殻綱の等脚目(とうきゃくもく)に属します。ダンゴムシと同じ仲間ですが、昆虫ではありません。
- 外見 体は平たく細長い楕円形で、多くの節に分かれています。体色は灰色や褐色です。
- 「ワラジ」の由来 体の形や質感が、日本の伝統的な履物である草鞋(わらじ)に似ていることから名付けられました。
- 脚の数 14本(7対)の歩脚を持ちます。
- ダンゴムシとの違い ダンゴムシと異なり、外敵に襲われても体を完全に丸める(団子状になる)ことができません。
- 生態 朽木や石の下、落ち葉の中など、湿度の高い日陰に生息し、主に腐敗した植物などの有機物を食べています。和名に「虫」がつく由来:ワラジムシの和名「草鞋虫」の「虫」は、その生物が「昆虫」ではないにもかかわらず、日本の伝統的な「蟲(むし)」という言葉が持つ広範な概念に由来します。
- 「ワラジ(草鞋)」の由来:外見
- 「草鞋(わらじ)」は、その体が平たく、節が多く、質感が粗いという外見上の特徴を、草で編まれた履物であるワラジになぞらえて表現しています。
- 「虫」の由来:小さく這い回る小動物
- 漢字の「蟲」は、古来より、「小さく這い回る小動物」や「得体の知れない微小な生き物」全般を指す言葉でした。
- ワラジムシは、地面を這い回り、サイズも小さいため、分類学的な事実(甲殻類)に関係なく、この広範な「蟲」の概念に当てはめられました。
- ワラジムシは、ダンゴムシやフナムシと同様に、分類上の厳密な「昆虫」という意味ではなく、「ワラジのような形をした、地面を這う小さな生き物」という意味で「虫」という名前を持っています。
- 「ワラジ(草鞋)」の由来:外見
まとめ
wikipediaには、「虫」について、次のように記されています。
虫(蟲、むし)の意味は次の通りである。
- (本草学)人類・獣類・鳥類・魚類以外の小動物の総称[1][2]。昆虫[2]、秋に鳴く虫を限定して指すこともある.
- 蠕形動物のこと。なかでも回虫。
回虫などによって起こると考えられていた腹痛などのこと。
潜在する意識。昔は(体内の)虫が人の心の中に考えや感情を引き起こすと考えられていた。
蠕虫(ぜんちゅう)とは、「体が細長く蠕動により移動する虫(小動物)の総称。ワーム (worm)。」とのことですが、上記に列挙した例からわかるように、ムシ(虫)が和名につき(昆虫以外の)生き物」の例は、蠕虫以外にもたくさんあることがわかりました。
また、
そもそも漢字の「虫」という字は、ヘビを象形文字としてかたどったものが原形であり、もともとヘビを指す漢字でした。また、ヘビの異称として「長虫(ながむし)」という古い言葉もあります。特にヘビは、「虫」という漢字のルーツそのものであり、現代の和名に「ムシ」がつかなくても、「虫」とは切り離せない関係にあるのです。
中には諸説あるものもありますが、それぞれの名前に込められた意味を考えるのも興味深いですね。
興味深いですよ!「ムシ(虫)が和名につく(昆虫以外の)生き物。






