マタタビ科マタタビ属のつる性植物の果実であるキウイフルーツ。ビタミンC、食物繊維、カリウムなどの栄養素が豊富に含まれているため、高血圧予防効果を期待し、私もキウイフルーツをよく摂っています。
6月の中旬以降は、ニュージーランド産のキウイフルーツの最盛期となり、農産物売り場ではさかんにPOP販促が実施されています。
キウイフルーツの存在で身近なものとなっているマタタビ属の種名の語源や、植物・果実としての特徴、そして「猫に木天蓼」といわれる「ネコのマタタビ反応」などを、以下の目次に沿って深掘りしてみました。
マタタビ属とは?
マタタビ属(木天蓼属、Actinidia)は、マタタビ科に属する3つの属のうちのひとつ。
マタタビ属には、サルナシ・マタタビ・キウイフルーツなど、アジア東部に分布する約40から60種の低木あるいはつる植物が含まれます。
日本には4種が自生していますが、キウイフルーツなどは各地で栽培も盛んになってきました。
マタタビ属の主要種
日本に自生する4種も含め、マタタビ属の主要種を以下に例示します。
DREAMS COME TRUE の「晴れたらいいね」という楽曲に、「一緒に行こうよ "こくわ"の実また採ってね♪」という件がありますが、おそらくこの”こくわ”はサルナシ(猿梨)のことですね。それも含め以下で紹介します。
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シマサルナシ Actinidia rufa
※シマサルナシは,紀伊半島東南部を東限として,四国の太平洋岸,淡路島東南部,九州の沿岸地域,山口県の島嶼部,南西諸島に自生分布しています.
国外では朝鮮半島南部の島嶼部,台湾にも一部自生が報告されています。
※別名:ミニキウイ、ナシカズラ,ヤマナシ,コッコー,コクモンジ,クガなど。
※シマサルナシを台に、キウイフルーツを接ぎ木した苗がよく流通しています。 -
サルナシ Actinidia arguta
※サルナシ(猿梨、学名: Actinidia arguta)は、マタタビ科マタタビ属の雌雄異株または雌雄雑居性のつる植物で、落葉性植物。山地に生える。
※別名:シラクチカズラ、シラクチヅル、コクワ(小桑)、シラクチ、ヤブナシ、ベビーキウイ、ミニキウイなど。※果実はキウイフルーツを小さくしたような外見で、酸味と甘味があり食べられる。
※和名「猿梨(サルナシ)」は、サルがこの実を食べるということで名付けられたもの。
※日本列島、朝鮮半島、中国大陸などの東アジア地域、サハリンに分布し、日本では北海道、本州、四国、九州に分布する。特に、北海道や東北地方に多い。 -
マタタビ Actinidia polygama
※マタタビ(木天蓼、学名: Actinidia polygama)は、マタタビ科マタタビ属の落葉つる性の木本。
※別名:ナツウメ(夏梅)。
※山地に生える。夏に白い花が咲くころに、枝先の葉が白くなるのが特徴。※果実は虫こぶができることもある。
※ネコの好物、鎮痛・疲労回復の薬用植物としてもよく知られている。※和名のマタタビの表記は、古くは『本草和名』(918年)に「和多々比」(わたたひ)、『延喜式』(927年)に「和太太備」(わたたび)の名で見える。
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ミヤママタタビ Actinidia kolomikta
※ミヤママタタビ(深山木天蓼、学名:Actinidia kolomikta)は、マタタビ科マタタビ属に属する落葉つる性木本。雌雄異株。
※日本では、北海道、本州中部以北に分布し、山中に自生する。東アジアでは樺太、南千島、アムール、中国に分布する。
※果実は甘酸っぱく生食に利用され、果実酒としても利用される。
※マタタビとは違い、ネコ科の動物が特別な反応をみせることはない。 -
キウイフルーツ Actinidia deliciosa ←後述
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オニマタタビ(シナサルナシ) Actinidia chinensis Planch.
※オニマタタビ(鬼木天蓼、学名: Actinidia chinensis)は、中国原産の果樹・薬用植物である。蜂によって受粉する。
※別名:シナサルナシ(支那猿梨)、ゴールドキウイ、ゴールデンキウイ。
※クルミほどの大きさの果実は食用となる。初めて商業的に栽培されたのはニュージーランドであった。
※A. chinensis の果実表面は軟かい疎毛で覆われ(果肉は黄色いことが多いが、黄緑色や赤色が混じるものもある)、2000年より販売の始まったゴールドキウイ(ゼスプリ ゴールド、ホート16A種)は A. chinensis 種である。 -
タイワンサルナシ Actinidia callosa Lindl.
キウイフルーツとは?
キウイフルーツは、マタタビ科マタタビ属のつる性植物の果実です。中国が原産で、現在は日本を含む世界中で栽培されています。
楕円形の果実には、ビタミンC、食物繊維、カリウムなどの栄養素が豊富に含まれています。ビタミンCは、美肌効果や免疫力向上効果があり、食物繊維は、便秘解消や腸内環境改善効果があり、そして、カリウムは腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制して、尿中への排泄を促進するため、高血圧予防やむくみ解消効果があることで知られています。
Actinidia deliciosa の最も一般的な栽培品種であるヘイワード種の果実(グリーンキウイ)は、鶏卵程度の大きさを持つ楕円体で、皮が茶色く毛状の繊維に覆われています。この植物および果実自体もキウイ(またはキーウィー、キーウィ、キウィ)と略して呼ばれる場合があります。
kiwifruit(キウイフルーツ)の語源
野生種のサルナシの近縁にあたり、中国に分布するオニマタタビ(シナマタタビ)からニュージーランドで改良されて作出された栽培品種であり、ニュージーランドの国鳥キーウィに因んで命名されました。
販売促進を狙い、現地の輸出商社によってキーウィフルーツ(kiwifruit)の愛称を与えられたのは、1959年のこと。
ニュージーランドではkiwiはあくまでも鳥の名およびニュージーランド人(キーウィ (人))、または「ニュージーランドの」という形容詞のことであり、kiwifruitをkiwiと呼ぶことはしません、為念。
kiwifruitの日本語での表記・呼称
「キウイフルーツ」「キーウィーフルーツ」「キーウィフルーツ」「キウィフルーツ」などと表記の揺れがみられます。それらを略した「キウイ」などという表現も使用される。
「猫に木天蓼(ネコにマタタビ)」を深掘り
「猫に木天蓼」は有名なことわざです。
愛猫のおもちゃとしてマタタビも製品化されています。このことわざは、辞典によると以下のような意味と説明されています。
「猫に木天蓼」の用例・使われ方
「猫に木天蓼(またたび)」の意味:大好物のたとえ。また、非常に効き目があることのたとえ。
<「猫に木天蓼」の意味>
- 大好物のたとえ。また、非常に効き目があることのたとえ。
<「猫に木天蓼」の類義語>
- 猫に木天蓼お女郎に小判
- 猫に木天蓼泣く子に乳房
- 泣く子に乳
- 泣く子に飴
上記、マタタビ Actinidia polygamaの項でも、「ネコの好物」と書きましたが、マタタビを食べるわけでもない肉食のネコが、なぜしきりにマタタビの葉を舐めたり噛んだりするのでしょう?そのあたりのことを深掘りしてみました。
マタタビ反応とは?
ネコ科動物の多くが、マタタビを見つけると、葉を舐めたり噛んだり、葉に顔や頭をこすり付けたり、葉の上でゴロゴロ転がる、といった特徴的な行動を示します。
これが、マタタビ反応といわれる行動です。
マタタビに含まれるマタタビラクトンと呼ばれる化学成分を、ネコが嗅ぐと起きる現象と1950年代に報告されました。
ただ、ネコはマタタビの葉を食べたり味わったりしないので、いわゆる「好物」という訳ではなさそうですが、それでは、なぜネコ科動物だけがマタタビラクトン類に反応するのか、一連の行動に何か意義はあるのかなどの謎が残されていました。
マタタビに含まれる蚊の忌避成分を効果的に利用するよう進化したネコ
岩手大学は2021年1月21日、科学雑誌『Science Advances』に、名古屋大学・京都大学・英国リバプール大学との共同研究で、ネコのマタタビ反応が蚊の忌避活性を有する成分ネペタラクトールを体に擦りつけるための行動であることを解明したと発表しました。その研究内容・成果は、以下のページを確認ください。サマリー部分を以下にも引用します。
岩手大学は2021年1月21日、科学雑誌『Science Advances』に、名古屋大学・京都大学・英国リバプール大学との共同研究で、ネコのマタタビ反応が蚊の忌避活性を有する成分ネペタラクトールを体に擦りつけるための行動であることを解明したと発表した。
本研究では、まずマタタビの抽出物からネコにマタタビ反応を誘起する強力な活性物質「ネペタラクトール」を発見。さらにこの物質を使ってネコの反応を詳しく解析し、マタタビ反応は、ネコがマタタビの匂いを体に擦りつけるための行動であることを突き止めた。
また、ネペタラクトールに、蚊の忌避効果があることも突き止め、ネコはマタタビ反応でネペタラクトールを体に付着させ蚊を忌避していることを立証した。
ネペタラクトールは、蚊の忌避剤として活用できる可能性があるとしている。この研究チームによる2022年6月の発表によると、マタタビ反応で葉を噛むことにより、葉からの蚊の忌避物質(ネペタラクトールとマタタビラクトン類)の放出量が10倍以上に増えることも判明した。
以上の研究結果は、ネコがマタタビに含まれている蚊の忌避成分を最も効果的に利用できるように巧みに進化してきたことを示していると考えられます。
キウイフルーツを猫に与えると?
キウイフルーツはマタタビ科マタタビ属の植物であり、キウイフルーツの木にはしばしばネコが集まり、キウイフルーツの幼木や若葉はネコ害を受けることもある。
では、キウイフルーツ(の実)を、ネコに与えるとどうなるのでしょう?
市販されているキウイフルーツに含まれるマタタビラクトンは微量であるため、キウイフルーツを食べてマタタビと同じ反応をするネコと、全く反応しないネコもいるとのこと。
やはりマタタビ反応を顕著にするのは、「マタタビ反応で葉を噛むこと」であり、果実を摂ることでないようです。
「葉を嚙むことで、葉からの蚊の忌避物質(ネペタラクトールとマタタビラクトン類)の放出量が10倍以上に増える」という研究結果にも頷けます。
動物園で「ネコにマタタビ」
ネコのマタタビ反応の謎を解いた上記の共同研究に、天王寺動物園も協力していたとのこと。
そのジャガーの「ロン」と「ルース」のマタタビ反応の様子がYOUTUBEにアップされていましたので、天王寺動物園の公式サイトの該当ページとともに、そのYOUTUBE動画も以下に紹介します。
【共同研究】「ネコにマタタビ」理由を解明!! | 地方独立行政法人天王寺動物園
マタタビに含まれる「ネペトラクトール」という成分がネコのマタタビ反応を誘起し、さらにこの成分には蚊を忌避する効果があることから、ネコはマタタビに体をこすりつけ、ネペトラクトールを体につけることによって蚊を忌避しているとのこと。
当園は、ジャガーのルースをはじめ、数種類のネコ科動物がこの研究に協力させていただきました。
私が興味を抱いたのは「マタタビ反応中のネコでは多幸感に関わる神経系であるμオピオイド系が活性化している」の部分です。
まとめ
キウイフルーツの流通で、日本人にとっても改めて身近な存在となっている「マタタビ(属)」の種名の語源や「猫に木天蓼」の意味、用例・使われ方などについて、深掘りしてみました。
「猫に木天蓼」は、”大好物であること”の例えとしてよく使われる諺ですが、マタタビの実や葉、樹液を好物として摂取する訳ではないのに、どうして反応するのか?疑問でした。最近の研究から、蚊を寄せ付けないための「技」を身につける進化の結果ということがわかってきたとのことで、「へえ~」がいくつあっても足りない感じです。
興味深いですよ!マタタビ属。