前回の「生き物にまつわる言葉を深掘り」のテーマは「お辞儀」でした。
その執筆のためにオジギソウについて深掘りリサーチしていたところ「ミモザ」というオジギソウの学名に出会いました。
ミモザという名は、フサアカシアやギンヨウアカシアの名として誤用されていることは、以前から知っているのですが、このアカシアまわりの「混沌とした誤用の実態」を整理したく、今回の「生き物にまつわる言葉を深掘り」のテーマをその「アカシア」と設定しました。
深掘りリサーチした結果を、以下の目次に沿ってレポートしていきます。
アカシアとは?
アカシアは、マメ科ネムノキ亜科アカシア属に属する植物の総称です。
1,000種を超える非常に大きな属で、オーストラリアやアフリカを中心に熱帯から温帯にかけて広く分布しています。
アカシア (金合歓、Acacia) は、マメ科ネムノキ亜科アカシア属の総称。
アカキア、アカシヤ、アカシャ、アケイシャとも言う。広葉樹。
日本においては、明治時代に輸入されたニセアカシアを当時アカシアと称していたことから現在でも混同される。
たとえば「アカシアはちみつ」として販売されている蜂蜜はニセアカシアの蜜である。
また、花卉栽培されるフサアカシアなどがミモザと呼ばれるが、本来ミモザはオジギソウを指す言葉である。
街路樹などからアカシアの名を冠した地名や通りも、実際に植えられている樹種はニセアカシアであることが多い。
主な種
日本では関東以北では栽培が困難であるものが多い。比較的温暖な所で栽培されるものに、下記の種類がある。
偶数羽状複葉のアカシア
・フサアカシア Acacia dealbata:フランスのミモザ祭に使われる。
・ギンヨウアカシア A. baileyana:葉が小ぶりで、生花に使われる。
以上、ともに花期 3 - 4月、花の色は輝く黄色。特に早い春に、黄色の1cm未満の球状の花がたわわに咲く。
特徴
- 花: 小さな黄色い花が球状に集まり、房状に咲く種類が多いです。
- 葉: 羽状複葉で、ミモザ(オジギソウの仲間)のように繊細な葉を持つ種類もあります。
- 樹高: 低木から高木まで、種類によって大きく異なります。いわゆる草ではなく広葉樹です。
羽状複葉
羽状複葉(うじょうふくよう、pinnate leaf, pinnate(ly) compound leaf)は葉軸が伸びて3個以上の小葉を付ける複葉である。
ギンヨウアカシア、フサアカシアやオジギソウなどは偶数羽状複葉、ニセアカシア属は奇数羽状複葉。
アカシアの分類と定義
アカシアは、学術的にはマメ科ネムノキ亜科アカシア属に分類されます。
しかし、一般的には以下の3つの種類が混同されることがあります。
- アカシア属の植物: 本来のアカシアで、オーストラリアやアフリカ原産のものが多く、ミモザと呼ばれることもあります。
- ニセアカシア: ハリエンジュのことで、北アメリカ原産のマメ科植物です。
葉がアカシアと似ているため、誤ってアカシアと呼ばれることがあります。 - ミモザ:
(1)オジギソウなどのマメ科オジギソウ属(学名 Mimosa)の植物の総称。
原義=葉に刺激を与えると古代ギリシアのミモス(mimos、パントマイムのもとになった身振り劇)のように動くことから。
(2)フサアカシア、ギンヨウアカシアなどのマメ科アカシア属の植物の俗称。イギリスで南フランスから輸入されるフサアカシアの切花を"mimosa"と呼んだことから。アカシア属の葉は刺激を与えても動かないが、葉や花の様態はオジギソウ属とよく似ることから誤用された。今日ではこの「アカシア属の俗称」の意味で「ミモザ」がよく用いられる。
→春に黄色い花を咲かせるアカシア属の植物の俗称として、日本においてミモザが広く使われています。特に、(切り花などとして流通する)ギンヨウアカシアがミモザとされてしまう代表的な種類です。かつて、アカシアの葉がオジギソウ(ミモザプディカ)の葉に似ていることから、「ミモザアカシア」とヨーロッパで呼ばれていたことが、この混同の原因(震源地)の一つと考えられています。
アカシアの語源と由来
アカシアの語源は、古代ギリシャ語の「akis(棘)」に由来すると考えられています。
多くのアカシア属の植物が棘を持っていることから、この名がついたと言われています。
アカシアの用例
アカシアは、その美しい花や芳香から、文学や音楽など様々な分野で題材として扱われてきました。
- 文学: 詩や小説の中で、アカシアは春の訪れや、愛、友情などを象徴する花として描かれることがあります。
- 音楽: アカシアを題材にした歌は数多く存在し、日本の歌謡曲でも「アカシアの雨がやむとき」など、有名な曲が多数あります。
- その他: 絵画、香水など、様々な分野でアカシアがモチーフとして用いられています。
ミモザやニセアカシアとの誤用の歴史と背景
アカシア、ミモザ、ニセアカシアが混同されるようになった背景には、以下の理由が考えられます。
- 葉の形が似ている: 3つの植物とも、羽状複葉で、繊細な葉を持つ種類が多く、一見すると非常に似ています。
- 流通の過程での誤表記: 植物の流通過程で、学名や品種名が誤って表記されることがあり、それが定着してしまったケースも考えられます。
ミモザとの誤用の歴史と背景
歴史的な経緯:
アカシアがヨーロッパに渡来した際、現地ではオジギソウ(ミモザ)の葉に似ていることから「ミモザアカシア」と呼ばれ、それが略されて「ミモザ」と呼ばれるようになったという経緯があります。
特に、アカシアの葉がミモザの葉に似ていることから、「ミモザ」という言葉がアカシア属の植物全般を指す言葉として定着してしまいました。
ニセアカシアが日本でアカシアと呼ばれるようになった歴史と背景
ニセアカシアが日本でアカシアと呼ばれるようになったのは、その名前から想像できるように、歴史的な経緯と植物学的な特徴が複雑に絡み合った結果です。
歴史的な経緯
- 明治時代の導入: ニセアカシアは、明治時代に北アメリカから日本に導入されました。その際、学名や植物学的な分類がまだ十分に確立されていなかったこともあり、単に「アカシア」と呼ばれることが多かったのです。
明治時代に日本に導入されたニセアカシアが、「北アメリカ産のアカシア」や単に「アカシア」として紹介されていた可能性は非常に高いです。 - 定着した呼称: その呼び名が日本に定着し、一般の人々にはニセアカシアが「アカシア」として広く知られるようになりました。
- 真のアカシアの導入: 後に、オーストラリア原産の本来のアカシア属の植物が日本に入ってきたことでニセアカシアがアカシア属の植物ではないことがわかり、学名「pseudoacacia」の部分を直訳して「ニセアカシア」としました。しかし、一般の人々には「アカシア」の方が馴染み深かったため、ニセアカシアがアカシアと呼ばれることが定着してしまっているのかもしれません。
植物学的な特徴
- 葉の形状の類似性: ニセアカシアの葉は、アカシア属の植物の葉と似ている点がいくつかあります。この類似性も、ニセアカシアがアカシアと呼ばれる一因となったと考えられます。
- 成長の早さ、繁殖力: ニセアカシアは成長が早く、繁殖力も強いため、日本各地に広がり、人々の目に触れる機会が多かったことも、この呼び名が定着した理由の一つと考えられます。
誤用の背景
- 学術的な知識の不足: 当時は、植物学的な知識が一般の人々には普及しておらず、学名や分類よりも、見た目や利用価値で植物を区別することが一般的でした。
- 流通の簡略化: 市場や園芸店で、学名ではなく、一般的に呼ばれている名前で植物が販売されることが多く、このことが混乱を招いたと考えられます。
ニセアカシアが日本でアカシアと呼ばれるようになったのは、歴史的な経緯、植物学的な特徴、そして当時の社会状況が複雑に絡み合った結果です。
現在では、学術的にはニセアカシアとアカシアは異なる植物であることが知られていますが、一般的には「アカシア」という呼び名が定着してしまっているため、両者を混同してしまうことがあります。
なぜ混同が問題なのか
- 生態系の変化: ニセアカシアは繁殖力が強く、日本の生態系に影響を与える可能性があります。
- 誤った情報伝達: ニセアカシアの蜂蜜がアカシアの蜂蜜として販売されるなど、誤った情報が伝わる可能性があります。
正確な呼び名を使うことの重要性
植物の正確な名前を知ることは、生態系への理解を深め、適切な保全を行う上で非常に重要です。ニセアカシアとアカシアは異なる植物であることを認識し、それぞれの特性を理解することが大切です。
ミモザやニセアカシアとの誤用の補足
アカシアは、その美しい花や多様な種類から、古くから人々に愛されてきた植物です。しかし、アカシア、ミモザ、ニセアカシアの3つの植物が混同されることが多く、正確な呼び方については注意が必要です。
日本への伝来と呼び名の変化
- 「ミモザアカシア」の伝来: ヨーロッパから「ミモザアカシア」という名前とともに、アカシア属の植物が日本に導入されました。
- 「ミモザ」の定着: 日本でも、この呼び名が定着し、特にギンヨウアカシアが「ミモザ」と呼ばれるようになりました。
- ニセアカシアとの混同: 一方で、日本にはすでにニセアカシアが「アカシア」と呼ばれており、この呼び名の混乱に拍車をかけました。
「ミモザアカシア」という呼び名は、歴史的な経緯と植物の形状の類似性から生まれたものであり、現在でも広く使われている呼び名です。
ただし、学術的には正確な呼び方とは言えず、植物の正確な種類を特定する際には、学名や属名を用いることが重要です。
- ミモザ: 春に黄色い花を咲かせるアカシア属の植物の総称として、日本において広く使われてしまっています。
- アカシア蜂蜜: アカシアの花から採れる蜂蜜は、香りが穏やかで、クセが少ないことから、人気があります。しかし、ニセアカシアの花から採れる蜂蜜も「アカシア蜂蜜」として販売されています。
- アカシアの木材: 一部のアカシアの樹木は、家具や楽器の材料として利用されます。
- アカシアの文化: オーストラリアでは、アカシアは国の象徴的な植物であり、国花にもなっています。
楽曲「アカシアの雨がやむとき」のアカシアとは?
アカシア、ミモザ、ニセアカシアの名称は、確かにややこしいですよね。
楽曲「アカシアの雨がやむとき」のアカシアは、日本で一般的な白い花を咲かせるニセアカシアを指している可能性が高いです。
なぜ混乱が起こるのか?
ミモザの誤用:
ヨーロッパでアカシアが「ミモザアカシア」と呼ばれていたことから、日本ではアカシア属を「ミモザ」と呼ぶことが一般的になってしまいました。
しかし、本来のミモザはマメ科オジギソウ属の植物で、花の色はピンク色です。
ニセアカシアの登場:
日本に最初に導入されたアカシアが、後に本物のアカシアと区別するために「ニセアカシア」と呼ばれるようになったため、さらに混乱を招いています。
楽曲の歌詞:
「アカシアの雨がやむとき」の歌詞では、アカシアの花の色や風景描写が具体的ではありません。
「アカシアの雨がやむとき」が作詞された当時、日本において「アカシア」と言えば、一般的にニセアカシアを指していました。この歌の歌詞に登場する「アカシア」も、当時の一般的な呼び方に従い、ニセアカシアを指していると考えられます。
歌詞の世界観の中で、「アカシア」は、失われた愛や切ない別れなどを象徴する、より広い意味を持つ言葉として捉えられている可能性も考えられます。
作詞された当時、いわゆるミモザと呼ばれる華やかな黄色い花を咲かせるフサアカシアやギンヨウアカシアの樹木は、街路や公園には稀だったと考えられます。
「アカシアの雨がやむとき」のアカシアは、白い花を咲かせる(当時アカシアとして一般的に呼称されていた) ニセアカシアを指している可能性が高いです。
まとめ
アカシアは、その美しい花や多様な種類から、古くから人々に愛されてきた植物です。しかし、アカシア、ミモザ、ニセアカシアの3つの植物が混同されることが多く、正確な呼び方については注意が必要です。
興味深いですよ!「アカシア」。