過去の「生き物にまつわる言葉を深掘り」投稿の中に、「蓮華」をテーマにしたものがありました。そこでは、青蓮華(しょうれんげ)の代用として樒(しきみ)が密教の修行に用いられた歴史に言及してあります。
今回の「生き物にまつわる言葉を深掘り」のテーマは「榊」です。
平安時代以前には、樒(しきみ)は神事にも盛んに使われていたとのことですので、この「『榊』を中心とした神事での植物の用い方」をも整理したく、「榊」まわりを深掘りリサーチし、その結果を以下の目次に沿ってレポートとしていきます。
榊と呼ばれる種名
「榊」と呼ばれる植物は、厳密には「サカキ(Cleyera japonica)」を指しますが、地域や時代、用途によって、他の植物も「榊」と呼ばれることがあります。
サカキ (Cleyera japonica):
本来の榊。神事に使われる代表的な植物です。
サカキ(榊・賢木・栄木、学名: Cleyera japonica)は、モッコク科サカキ属の常緑小高木。
日本の神道においては、神棚や祭壇に供えるなど神事にも用いられる植物。
別名、ホンサカキ、ノコギリバサカキ、マサカキともよばれる。
ヒサカキ (Eurya japonica):
サカキと混同されやすい植物。サカキが手に入らない地域で代用として使われることも。
ヒサカキ(姫榊、学名: Eurya japonica var. japonica)は、モッコク科ヒサカキ属の常緑小高木である。
和名「ヒサカキ」は、サカキに比べて小さいことから「姫サカキ」が転訛してヒサカキになったという。 ホソバヒサカキの別名のほか、ビシャコ、ビシャ、ヘンダラ、ササキ、シャシャキなどの地方名がある。中国名は「柃木」。
墓・仏壇へのお供え(仏さん柴)や玉串などとして、神仏へ捧げるため宗教的な利用が多い。
これは、「サカキ」が手に入らない関東地方以北において、サカキの代用としている。
名前も榊でないから非榊であるとか、一回り小さいので姫榊がなまったとかの説がある。
ハマヒサカキ (Eurya emarginata):
ヒサカキの仲間で、海岸近くに生えます。
榊に関する言葉とその意味、語源・由来
真榊
真榊は、神事の場で祭壇の左右に立てられる祭具です。
緑・黄・赤・白・青の五色絹の幟の先端に榊を立て、三種の神器(剣、鏡、勾玉)を掛けたものが一般的です。
- 五色絹: 天地万物を構成する5つの要素(木・火・土・金・水)を表し、宇宙のすべてを象徴しています。
- 榊: 神聖な木とされ、神様と人との境、あるいは神が宿ると考えられてきました。
- 三種の神器: 天皇家の象徴であり、日本国家の根源を象徴する神器です。
真榊が持つ意味
真榊は、単なる飾り物ではなく、深い意味を持っています。
- 国家の象徴: 三種の神器が掛けられていることから、国家そのものを象徴しています。
- 神への敬意: 神聖な儀式に用いられることから、神様への最大の敬意を表すものです。
- 宇宙との繋がり: 五色絹が宇宙のすべてを象徴していることから、神と宇宙との繋がりを表しています。
靖国神社における真榊
靖国神社では、例大祭など重要な神事の際に、真榊が奉納されます。
真榊は、国家のために殉職された方々の霊を祀る靖国神社において、その霊威を顕彰し、国家安泰を祈るための重要な儀式の道具となっています。
真榊は、神道における重要な祭具であり、その荘厳な姿は、神聖な儀式にふさわしいものです。靖国神社で奉納される真榊は、国家と神との繋がりを象徴し、人々の心を鎮め、安らぎを与える役割を果たしています。
真榊は、その形状や飾り付けなどが、時代や地域によって異なる場合があります。
真榊の奉納は、一般の参拝者ではなく、国家や宗教団体などによって行われることが多いです。
真榊と玉串の違い
形状:
- 真榊: 緑・黄・赤・白・青の五色絹の幟の先端に榊を立て、三種の神器を掛けた神事の場で祭壇の左右に立てる祭具です。非常に格式が高く、大規模な祭祀で用いられます。
- 玉串: 榊の枝に紙垂をつけたもので、参拝者が神前に奉納する際に用いられます。真榊に比べて簡素な作りです。
使用される場面:
- 真榊: 大規模な祭祀や国家的な儀式など、非常に重要な神事で用いられます。
- 玉串: 一般的な参拝や、比較的小規模な神事で用いられます。
意味合い:
- 真榊: 国家や朝廷を象徴し、神に対する最大の敬意を表すものです。
- 玉串: 参拝者が神様へ捧げるものであり、個人的な願いや感謝の気持ちを込めます。
真榊料と玉串料は、それぞれ真榊と玉串を奉納する際の費用です。
真榊は、非常に格式の高い祭具であり、大規模な神事で用いられます。一方、玉串は、一般的な参拝者が用いる簡素な祭具です。
どちらも神様への敬意を表すために用いられますが、その意味合いや使用される場面は異なります。
また、玉串料と初穂料との違いは以下のようです。
- 玉串料: 玉串は、神様への捧げ物の一つであり、神様と参拝者をつなぐ媒介となるものです。玉串料は、その玉串を神様へ奉納する際に納めるお金です。
- 初穂料: 初穂とは、その年の最初の収穫物を意味します。初穂料は、その年の最初の収穫物を神様へ捧げる際に納めるお金であり、神様への感謝の気持ちとともに、今後の豊作を祈る気持ちを表します。
- 神前での祈祷: 玉串料が一般的ですが、初穂料でも問題ありません。
- お守りやお札を授かる: 初穂料が一般的です。
- 慶事: 初穂料が一般的ですが、玉串料でも問題ありません。
- 弔事: 玉串料が一般的です。
どちらを使うか迷った場合は、神社の受付に尋ねるのが確実です。
真榊(まさかき)とは、神事の場で祭壇の左右に立てる祭具。
緑・黄・赤・白・青の五色絹の幟(のぼり)の先端に榊(さかき)を立て、三種の神器を掛けたもの。
向かって左側に剣を掛けたもの、右側に鏡と勾玉を掛けたものを立てる。
全体を真榊台と呼ぶこともある。
マサカキ
- 意味: 本物の榊、すなわちサカキを指すことが多いです。
- 由来: 「真」は「本当」という意味で、サカキが神事に最も適した植物であることを強調する言葉です。
和名サカキの語源は、神と人との境であることから「境木(さかき)」の意であるとされる。
常緑樹であり、さかえる(繁)ことから「繁木(さかき)」とする説もあるが、多くの学者は後世の附会であるとして否定している。
「榊」という文字は平安時代に日本で会意で形成された国字である。
上代(奈良時代以前)では、サカキ、ヒサカキ、シキミ、アセビ、ツバキなど、神仏に捧げる常緑樹の総称が「サカキ」であったが、平安時代以降になると「サカキ」が特定の植物を指すようになり、本種が標準和名のサカキの名を獲得した。
類似植物と混同されやすいので、サカキは「ホンサカキ」(本榊)や「マサカキ」とも呼ばれ、近縁のヒサカキについては、「シャシャキ」「シャカキ」「下草」「ビシャコ」「仏さん柴(しば)」「栄柴(サカシバ)」などと地方名で呼ばれることもある。
学名(Cleyera japonica)は、植物学者で、江戸時代に出島オランダ商館長を務め、サカキをヨーロッパに紹介したアンドレアス・クレイエルにちなむ。
ヒサカキ
- 意味: サカキと似た植物で、サカキの代用として使われることもあります。
- 由来: 葉が細く、ひさしのように見えることから「ヒサカキ」と呼ばれるようになったという説が有力です。
シキミ
- 意味: 強い毒性を持つ植物。かつてはサカキの代用として使われたこともありましたが、現在は神事に使うことはほとんどありません。
- 由来: 悪臭を放つことから「悪しき実」が転じて「シキミ」になったという説があります。
シキミ(樒、学名: Illicium anisatum) は、マツブサ科シキミ属に分類される常緑性小高木から高木の1種である。
葉は枝先に集まってつき、春に枝先に多数の黄白色の花被片をもつ花をつける。
本州から沖縄諸島および済州島に分布する。
アニサチンなどの毒を含み、特に猛毒である果実が中華料理で多用される八角に似ているため、誤食されやすい危険な有毒植物である。
ときに仏事や神事に用いられ、しばしば寺院や墓地に植栽されている。
また材や抹香、線香として利用されることもある。
別名が多く、「シキビ」「ハナノキ」「ハナシバ」「ハカバナ」「ブツゼンソウ」「コウノキ」「コウシバ」「コウノハナ」「マッコウ」「マッコウギ」「マッコウノキ」などがある。
シキミと榊の違い
シキミ: 仏教の儀式で用いられる常緑樹。葉の形が青蓮華に似ていることから、仏教で特別な意味を持つ。全株に毒性がある。
榊: 神道で用いられる常緑樹。神聖な木として、神棚や神社に供えられる。
なぜ混同されるのか?
見た目が似ている: どちらも常緑樹で、葉が緑色であるため、一見すると区別がつきにくい。
地域差: 一部の地域では、古くからシキミを榊の代用として用いていた歴史がある。
どちらをどこで使うのか
- シキミ: 仏教の儀式(葬儀、法要など)、お墓参り
- 榊: 神道の儀式(神社での参拝、神棚への供え物など)
シキミと榊は、見た目が似ており、地域によっては混同されることもありますが、全く異なる植物です。どちらをどこで使うのかを理解し、間違えないように注意しましょう。
シキミは毒性があるため、誤って口にしたりしないよう注意が必要です。
どちらの植物をどこで手に入れることができるかについては、地域の生花店や園芸店に問い合わせるのが確実です。
榊にまつわる言葉や言い伝え
- 神聖な木: 榊は、古くから神聖な木として崇められてきました。
邪気を払い、神を招き入れる力があると信じられており、神社や仏閣に植えられたり、神事に使われたりします。 - 常緑樹: サカキは常緑樹であり、一年を通して緑の葉を茂らせることから、生命力や永遠の象徴とされています。
- 葉の形: サカキの葉は、先が尖っていて、縁がギザギザしているのが特徴です。この形は、魔除けの意味があるとされています。
また、
- 榊の葉の用途: 榊の葉は、神事に使うほか、お茶として飲んだり、薬用として利用されたりもします。
- 地域差: 榊の呼び方や、神事に使う植物の種類は、地域によって異なります。
- 時代による変化: 昔は、シキミも榊の代用として使われていましたが、毒性があることが分かり、現在はほとんど使われなくなりました。
まとめ
「榊」という言葉は、植物の種類だけでなく、神聖な木、生命力、魔除けなど、様々な意味を含んでいます。
サカキ、ヒサカキ、シキミなど、榊と呼ばれる植物にはそれぞれ特徴があり、それぞれの地域や文化の中で、人々に親しまれてきました。
興味深いですよ!「榊」。