朝日新聞の天声人語は、ニューラルネットワークの基礎的研究者がノーベル物理学賞を受賞したことに関する内容でした。
その記事の書き出しに、自然界にあるものをまねして、科学技術に生かす例示としてロータス効果のことが引用されていました。
今回の「生き物にまつわる言葉を深掘り」のテーマは、その「ロータス効果」です。
「ロータス効果」の意味とその科学的根拠、由来・語源や応用例などをまとめ、さらに「ロータス効果と他の撥水技術の違い」「ロータス効果を日常生活で利用できる製品」などまで、下の目次に沿って深掘りしてみました。
- ロータス効果とは?
- ハスとスイレンの違い・見分け方と、ロータス効果について
- ロータス効果の科学的根拠
- ロータス効果の由来・語源
- ロータス効果の応用例
- ロータス効果と他の撥水技術の違い
- ロータス効果を日常生活で利用できる製品
- まとめ
ロータス効果とは?
ロータス効果とは、ハスの葉のように、表面に水滴が付きにくく、汚れも簡単に落とせる現象のことです。
この自浄作用は、ハスの葉の表面が持つ独特の構造と性質によるものです。
ハス(蓮、学名: Nelumbo nucifera)は、インド原産のハス科多年性水生植物。別名、ハチス。中国名は蓮。
地下茎は「蓮根」(れんこん、はすね)といい、野菜名として通用する。
名称など
日本での古名「はちす」は、花托の形状を蜂の巣に見立てたとするのが通説である。「はす」はその転訛。
水芙蓉(すいふよう、みずふよう)、もしくは単に芙蓉(ふよう)、不語仙(ふごせん)、池見草(いけみぐさ)、水の花などの異称をもつ。
漢字では「蓮」のほかに「荷」または「藕」の字をあてる。
ハスの花と睡蓮(スイレン)を指して「蓮華」(れんげ)といい、仏教とともに伝来し古くから使われた名である。
属名 Nelumbo はシンハラ語から。種小名 nucifera はラテン語の形容詞で「ナッツの実のなる」の意。
英名 Lotus(ロータス)はギリシア語由来で、元はエジプトに自生するスイレンの一種「ヨザキスイレン」 Nymphaea lotus を指したものという。
多年草で、春に地中の地下茎から芽を出して茎を伸ばし、水面に葉を出す。草高は約1メートル、茎に通気のための穴が通っている。はじめは浮葉になるが、のちに長い葉柄をもって水面よりも高く出る葉もある。
葉は直径40 - 50センチメートル (cm) の円形で、葉柄が中央につき、撥水性があって水玉ができる(ロータス効果)。
ハスとスイレンの違い・見分け方と、ロータス効果について
ハスとスイレンはどちらも水辺に咲く美しい花ですが、いくつかの点で異なります。ロータス効果についても詳しく解説します。
ハスとスイレンの違い
特徴 |
ハス | スイレン |
---|---|---|
葉 | 丸くて大きく、表面が滑らかで水をはじく。葉は水面から立ち上がる | 丸いが切れ込みがあり、光沢がある。葉は水面に浮かぶ |
花 | 大きく、水面から高い位置に咲く | 比較的小さく、水面に浮かぶように咲く |
根 | 蓮根と呼ばれる地下茎を持つ | 根茎は短く、泥の中にある |
開花時期 | 夏(7〜8月頃) | 春から秋まで長く咲く種類もある |
属 | ハス属 | スイレン属 |
ロータス効果
ロータス効果とは、ハスの葉のように表面が水をはじき、汚れも付きにくい現象のことです。
ハスの葉の表面には微細な突起があり、その上に水が乗ると丸い水滴となり、汚れを包み込んで転がり落ちる仕組みになっています。
ロータス効果はスイレンにもあるのか?
スイレンにもロータス効果はありますが、ハスほど顕著ではありません。
スイレンの葉はハスよりも表面が滑らかで、水滴は丸くなりやすいですが、ハスの葉のように汚れを完全に弾き飛ばすことは難しいです。
ハスとスイレンは、葉の形や花の咲き方、ロータス効果の度合いなど、様々な点で異なります。
- ハス: 葉が大きく水面から立ち上がり、ロータス効果が強い。
- スイレン: 葉が水面に浮かび、ロータス効果はハスほどではない。
これらの特徴を覚えておくと、水辺で見かける花を見分ける際に役立ちます。
ロータス効果の科学的根拠
ハスの葉の表面は、微細な凹凸構造とワックス状の物質で覆われています。この構造が、水滴が葉の表面に広がらず、丸まって転がり落ちる原因となっています。
- 微細な凹凸構造: 水滴が葉の表面に触れると、凹凸の間には空気が入り込みます。この空気の層が、水滴と葉の表面との接触面積を小さくし、水滴を球状に保ちます。
- ワックス状の物質: ワックスは水をはじく性質(疎水性)を持っているため、水滴が葉の表面に吸い込まれるのを防ぎます。
これらの要素が組み合わさることで、ハスの葉は高い撥水性と自浄性を獲得しています。
ロータス効果の由来・語源
ロータス効果は、この現象が最初に発見されたハスの属名「Lotus」に由来しています。
ハスは、泥の中に生えていながら、その花や葉が常に清浄な状態を保つことから、古くから人々に崇拝されてきました。
ロータス効果の応用例
ロータス効果は、その優れた特性から、様々な分野で応用されています。
建築材料:
外壁や屋根材にロータス効果を応用することで、雨水による汚れやコケの発生を防ぎ、建物の美観を保つことができます。
繊維製品:
衣類や傘などにロータス効果を施すことで、汚れが付きにくくなり、洗濯の手間を減らすことができます。
自動車:
車のボディにロータス効果を応用することで、洗車が楽になり、燃費の向上にもつながることが期待されています。
電子機器:
スマートフォンやタブレットなどの表面にロータス効果を施すことで、指紋や汚れが付きにくくなり、清潔に保つことができます。
ロータス効果と他の撥水技術の違い
ロータス効果は、他の撥水技術と比べて、以下の点が特徴です。
- 耐久性: 微細な凹凸構造が物理的な耐久性をもたらし、長期間にわたって撥水効果を維持できます。
- 自浄性: 汚れを水滴と一緒に洗い流すことができるため、定期的なメンテナンスが不要です。
- 多様な素材への応用: プラスチック、金属、繊維など、様々な素材に適用することができます。
ロータス効果を日常生活で利用できる製品
撥水スプレー:
様々な素材にスプレーすることで、一時的に撥水効果を得ることができます。
撥水加工の衣類:
雨の日でも快適に過ごせる撥水加工のジャケットやパンツなどがあります。
撥水加工の靴:
雨の日でも足元を濡らさない撥水加工のスニーカーやブーツなどがあります。
まとめ
ロータス効果は、自然が作り出した驚異的な現象であり、その原理は様々な分野に応用されています。
私たちの生活をより便利で快適にするために、今後もロータス効果の研究開発が進められていくことが期待されます。
興味深いですよ!「ロータス効果」。