弊ブログに「”生き物にまつわる言葉”を深掘り」というカテゴリーを新設してから、今回の投稿が第三弾です。
今回のテーマは「フリース」。
フリースのどこが「生き物にまつわる言葉」なのかって?
「フリース」の意味やそもそもの語源などについて、以下の目次に沿って深掘りしてみました。
フリースとは?
「フリース」という言葉は、もともと英語の「fleece」に由来します。
この「fleece」そのものも、以下の4点のように、時代とともに指し示す意味の広がりがみられます。
- 1頭の羊から刈り取られた1つながりの羊毛を意味する「fleece」
- モコモコした羊毛状のモノ全般を指す「fleece」
- PET(ポリエステルの一種)で作られた起毛処理された繊維素材(生地)
- フリース生地で作られたプルオーバーなどフリースアイテムの略
この4つの意味の広がりを順番に深掘りしていきましょう。
1.1頭の羊から刈り取られた1つながりの羊毛を意味する「fleece」

「fleece」の原義は、1頭の羊から刈り取られた1つながりの羊毛を意味します。
羊を保定し、羊の毛をバリカンや大きなはさみで刈り取ると、1頭分の毛が自然に絡み合い、1枚(ひとかたまり(塊))の毛皮状になります。これががフリースです。フリースウールとも言います。
このひと塊のフリース(ウール)から、細かい異物を除いたり、毛を洗ったりなど様々な工程を経て、ウールの糸が作られていきます。そして、織物や編物、服になっていくのです。
北海道白糠町の羊まるごと研究所の酒井さんが、Facebookで、きれいに整えられた「フリース(羊毛)」の梱包について言及されています。
羊まるごと研究所には、私もお邪魔して酒井さんからお話をうかがったことがあります。
2.モコモコした羊毛状のモノ全般を指す「fleece」
「1頭の羊から刈り取られた1つながりの羊毛」という本来のフリースの意味から、柔らかな毛の絡み合った、モコモコと柔らかな生地のことを、フリーシー(fleecy)と形容するようになりました。
フリースが、毛足が長く、ボリューム感のある風合いの織物や編物の代名詞だったといえましょう。

こういったことから、羊毛に限らず、毛布のような感じで、織物が見えないぶ厚く起毛した布地全般をフリースが指すようになり、また、布地以外の羊毛状のもの(頭髪・雲など)」にもフリースという言葉の意味・用途が広がってきています。
化学繊維を起毛仕上げした繊維素材(生地)をfleeceと呼ぶようになったのも自然のことだったといえましょう。
3.PET(ポリエステルの一種)で作られた起毛処理された繊維素材(生地)

フリース(fleece)とは、ポリエチレンテレフタラート(PET、ポリエステルの一種)で作られた柔らかい起毛仕上げの繊維素材(生地)です。フリースの起毛は、ポリエステルの繊維を軽い布地に織り込ませる形で処理されています。
起毛処理された布は、繊維と繊維の間に空気の層を保つことができます。
フリースとボアとの比較

フリースににた生地にボアがあります。
ラテン語の「大蛇(boa)」が語源で、ボア生地のストールを首に巻くと”大蛇”のように見えることから、この名前がつけられたといわれています。
毛足が長く、保温性の高さが特長のボア。ボア生地は主にアクリル素材で作られており、ぬいぐるみの素材としてもよく使われています。
ジャケットやコートの裏地、靴の裏地などにボアは使われることが多いですが、表地にボアを使用した「ボアコート」や、衿・袖口にボアをつけたものなど、デザインとして取り入れられることもあります。
フリース生地の生みの親「ポーラテック」
合成繊維ポリエステルを起毛させたフリース生地は、1979年にモルデン・ミルズ社(現ポーラテック社)によって開発され、同社の商標として「ポーラテック(Polatec)」がローンチされました。
いまでこそフリースというと「ポリエステルの防寒着」のイメージが強いですが、「フリースの話 - Patagonia Stories」によると、パタゴニア社の創業者マリンダ・シュイナードが、1970年代初期にロサンゼルスのファッション地区に出向いて社に持ち帰ったのは、便座カバーに使われるポリエステル製の生地とのことです。
起源
フリース誕生の物語は、イヴォン・シュイナードが愛用していたウールのセーターからはじまります。丈夫で温かいセーターは防寒用のレイヤーとして好んで使われましたが、濡れると重くなり、乾きにくく、洗濯も容易ではありませんでした。そこでイヴォンはウールと同等の保温性と耐久性を備えながら軽量ですばやく乾く、化繊という奇跡の素材を探しはじめました。1970年代初期、イヴォンはカナダの布地販売店でアクリルのパイル生地を見つけました。見た目も匂いも悪い生地でしたが、水を嫌うという点で将来性がありました。この発見をきっかけに、マリンダ・シュイナードはロサンゼルスのファッション地区に出向いて似たような生地を探しました。彼女がそこで持ち帰ったのは、便座カバーに使われるポリエステル製の生地でした。セーターになる可能性を見出したからです。そのひと巻きの生地はそれまでに収集された他のサンプルとともにしばらく眠っていましたが、ある日イヴォンによって再発見され、裁縫室に持っていかれました。
ペットボトル再生品としても注目

フリース(生地)がポリエステルの一種であるPETでつくられていいますが、PETといえば、清涼飲料水で使われているペットボトルが有名です。
1リットル未満の清涼飲料水のボトルに対し、ペットボトルに使用がに認可されたのは1982年。その後、1996年には、飲料業界が1リットル未満のボトル使用の自主規制を撤廃しています。
1993 年、パタゴニア社とポーラテック社は、ペットボトルなどのリサイクル素材からフリースを作る方法の研究を始め、2006 年までには、オリジナルと同等のコストでリサイクル生地を作ることができるようになりました。
現在は、比較的高額な一部のブランド(パタゴニア等)を除き、リサイクルポリエステル繊維素材のフリースではなく、石油から生成されたフリース繊維で衣料を製造している場合が多くなっています。ただし、着なくなったフリースを回収して、断熱材や固形燃料の材料にリサイクルしたり、発電施設で燃焼させて電気エネルギーをつくったりして、フリースは、リサイクルにもよく対応できる繊維といえそうです。
4.フリース生地で製造されたジャケットなどのフリースアイテムの略

現在、フリースと言えば、ポリエステルの防寒着が有名です。
これが登場し始めたのは、70年代。まさに、フリーシーな生地を使った高機能アウターとして開発されました。
シンチラ(合成チンチラ)と呼ばれる第一世代のフリース
パタゴニアは、モルデン・ミルズと共同開発で「シンチラ(合成チンチラ)」(現フリース)を開発。特許申請せず2年間の専売権のみで販売権を広く世界に公開しました。
シンチラ(合成チンチラ)と呼ばれる第一世代のフリースは、パタゴニアの代表的なスナップT プルオーバー(1985年)に使用され、その後、アメリカ北東部一帯への家族スキー旅行などでの着用が流行となり有名になりました。
日本では1994年にユニクロがカジュアルウェアとして販売
パタゴニア社製の防寒用アウトドア着をパイオニアとして、限られたシーンに向けて流通していたフリースでしたが、日本では1994年にユニクロがカジュアルウェアとして販売し、一挙に市場を拡大しました。
まとめ

フリースの語源は、1頭の羊から刈り取られた1つながりの羊毛を意味する英語の「fleece」です。
その後、「fleece」は羊毛に限らず、毛布のような布地全般、モコモコしたモノ全般を指すようになりました。
現在、一般的に「フリース」と呼ばれるものは、ポリエステルの一種で作られた化学繊維PET製のものです。
興味深いですよ!「フリース」。
