前回の記事(「蛇の目」の意味や語源、用例・使われ方を深掘りレポート)に引き続き、今回も蛇ネタで恐縮です。
今回の「生き物にまつわる言葉を深掘り」のテーマは、「j蛇腹」です。
「蛇腹」の意味やそもそもの語源、「蛇腹」を戴く言葉の使われ方などについて、以下の目次に沿って深掘りしてみました。
蛇腹(じゃばら)とは?
蛇腹(じゃばら)とは、紙、布、プラスチック、金属などの膜ないしは板状の部材で作られる、山折りと谷折りの繰り返し構造です。
英語では「Bellows」と呼ばれます。
その形状がヘビの腹に似ていることから、蛇腹と呼ばれています。近年では自由に曲げが効くことからフレキシブル / フレキもしくは、楽器からアコーディオン構造とも呼ばれています。
蛇腹は、伸縮性と柔軟性に優れているため、様々な用途に使用されています。
ヘビの腹部の特徴
ヘビの腹部を「蛇腹」と呼称するのはいわゆる俗称であって、正しくは「腹板」または「腹鱗」と呼ばれます。
長いヘビの大半を占めている「咽頭部から総排出腔まで」の横節に分かれている部分が、腹板(腹鱗)です。
蛇の下腹部
腹板は、一枚一枚の鱗が連なってできており、横方向に広がる筋肉と密接に繋がっています。この構造により、ヘビは以下のような特徴を持つことができます。
- 伸縮性:腹板と筋肉が伸縮することで、ヘビは自分の平常の腹回りよりも太い獲物を飲み込むことができます。また、狭い穴や岩の隙間なども通り抜けることができます。
- 推進力:腹板の筋肉を波打たせるように収縮させることで、ヘビは前進することができます。
- 方向転換:腹板の筋肉を左右非対称に収縮させることで、ヘビは左右に方向転換することができます。
- 登攀:腹板の縁を壁や木などの表面に引っかけることで、ヘビは登ることができます。
腹板の数は、ヘビの種類によって異なりますが、一般的には100枚以上あります。腹板の形状や模様も、ヘビの種類によって様々です。
腹板は、ヘビにとって非常に重要な器官であり、生存に不可欠な役割を果たしています。
蛇腹の用途
蛇腹(構造)は、その伸縮性と柔軟性を活かして、様々な用途で使用されています。
<蛇腹(構造)の主な用途>
- カメラ
- 提灯
- アコーディオン
- 蛇腹式ホース
- 風袋
- 曲がるストロー
- 鞴(ふいご)
- 列車の貫通幌
- 建築
- 蛇腹切り
- ハリセン
以下では、蛇腹の具体的な使用例と、それぞれの分野における役割、代表的な製品をご紹介します。
カメラ
写真機において、蛇腹はレンズと本体をつなぐ重要な役割を担っています。レンズを伸縮させることで、ピント合わせが可能になり、被写体の大きさや距離に合わせて画角を調整することができます。
蛇腹は、以下の利点からカメラに適しています。
- 伸縮性:レンズの伸縮に合わせて自由に伸縮するため、様々な焦点距離に対応できます。
- 遮光性:光漏れを防ぎ、フィルムやデジタルセンサーを保護します。
- 柔軟性:様々な角度に曲げることができるため、自由度の高いフレーミングを実現できます。
代表的な製品としては、以下のものがあります。
- ライカ M型:レンジファインダーカメラの代名詞ともいえるライカ M型には、布製の蛇腹が採用されています。
- ハッセルブラッド:中判フィルムカメラのハッセルブラッドには、金属製の蛇腹が採用されています。
提灯
古くは小田原提灯などの提灯に円筒形蛇腹構造を見ることが出来る。
アコーディオン
アコーディオンは、蛇腹構造を活かした代表的な楽器です。蛇腹を伸縮させることで、空気の流れを制御し、音色や音量を変化させて演奏します。
蛇腹は、アコーディオンに以下の利点をもたらします。
- 音色:蛇腹の形状や素材によって、音色に微妙な違いが生まれます。奏者は、蛇腹の操作によって音色を調整することができます。
- 音量:蛇腹を大きく広げることで、大きな音を出せるようになります。逆に、小さく縮めることで、小さな音を出せるようになります。
- 表現力:蛇腹の操作によって、音色や音量を自在に変化させることができるため、豊かな表現力が可能になります。
代表的な製品としては、以下のものがあります。
- バンドネオン:アルゼンチンタンゴで使われるアコーディオンです。
- ボタン式アコーディオン:ボタンを押すことで音が出るアコーディオンです。
- ピアノ式アコーディオン:ピアノの鍵盤のように鍵盤を弾くことで音が出るアコーディオンです。
蛇腹式ホース
蛇腹式ホースは、伸縮自在なホースとして、様々な用途で使用されています。
蛇腹式ホースは、以下の利点があります。
- 伸縮性: 自由に伸縮するため、狭い場所や可動部にも設置できます。
- 柔軟性: 様々な方向に曲げることができるため、取り回しがしやすいです。
- 耐久性: 耐久性に優れた素材で作られているため、長期間使用できます。
代表的な製品としては、以下のものがあります。
- 換気扇用ホース:換気扇と屋外をつなぐホースとして使用されます。
- 掃除機用ホース:掃除機のヘッドと本体をつなぐホースとして使用されます。
- 圧縮空気用ホース:コンプレッサーから圧縮空気を送るホースとして使用されます。
- 電気配管などに使用されるフレキシブルチューブ:
風袋
風袋は、換気扇などで空気の流れを制御するために使用されます。蛇腹構造によって、風向や風量を調整することができます。
風袋は、以下の利点があります。
- 風向調整:蛇腹の向きを変えることで、風向を調整することができます。
- 風量調整:蛇腹の広さを変えることで、風量を調整することができます。
- 省エネ:風向や風量を調整することで、効率的に換気を行うことができます。
代表的な製品としては、以下のものがあります。
- 丸型風袋: 円筒形の風袋です。
- 角型風袋: 四角形の風袋です。
- フレキシブルダクト: 蛇腹状のダクトです。
曲がるストロー
鞴(ふいご)
列車の貫通幌
建築
蛇腹は、建物の軒や壁などの装飾として使用されることがあります。独特な形状がアクセントとなり、建物の外観を華やかにすることができます。
また、蛇腹構造を活かした雨樋や雪止めなども開発されています。
蛇腹は、以下の利点があります。
- デザイン性: 独特な形状が、建物の外観にアクセントを加えます。
- 機能性: 雨樋や雪止めなど、機能的な用途にも使用できます。
- 加工性: 様々な素材で作ることができるため、デザインの自由度が高いです。
上記以外にも、蛇腹は様々な用途で使用されています。
また、蛇腹という料理法を使用したものでは、蛇腹キュウリが一般的です。
蛇腹切り
蛇腹切り(じゃばらぎり)は、主にきゅうりに用いられる切り方です。
きゅうりの両面に斜めに細かく切れ込みを入れることで味が染み込みやすくなります。酢の物や和え物などに使用されます。
ハリセン
ハリセンは、日本の漫才・コントなどで用いられる小道具の一つです。主にツッコミ役がボケ役を叩いたり、勢いよく振ったりして、笑いを演出するために使われます。
ハリセンは、昭和期にお笑いグループ「チャンバラトリオ」のメンバー・南方英二さんが考案したと言われています。当時は「張り倒すための扇子」を略して「張り扇」と呼ばれていたようですが、次第に「ハリセン」という呼び方が定着しました。
まとめ
「蛇腹」の意味やそもそもの語源、蛇腹(構造)の用途について、深掘りしてみました。
生物学的には、ヘビの腹部は蛇腹とは呼ばず、蛇腹はいわゆる俗称であることも知りました。
興味深いですよ!「蛇腹」。