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「動物名が冠されている植物」を深掘りリサーチ!特徴や命名の由来をまとめレポート

今回の「生き物にまつわる言葉を深掘り」のテーマは、「動物の名前が冠されている植物」です。

植物の和名や俗名には、動物の名前が冠されているものが数多く存在しますね。それは、その植物と動物との間に何らかの関係性が見られる場合に名付けられることが多いです。

以下に、「動物種名のあとに草や木、花などがついた植物名(和名・俗名)」「和名や俗名に動物名が冠された植物」を列挙し、その植物の特徴やそれぞれの命名の由来を説明します。

五十音順で動物種ごとに掲載してありますので、まずは「アリ(蟻)」からご確認ください。

 

アリ(蟻)

アリドオシ(蟻通し): 

  • 特徴:アリドオシは、アカネ科アリドオシ属の常緑低木です。日本から中国南部、台湾、東南アジアにかけて広く分布し、日本では主に本州の関東地方以西から九州、琉球列島にかけての暖地の林床に自生します。

    一年を通して光沢のある緑色の小さな葉をつけ、初夏には目立たない白い小さな花を咲かせます。秋から冬にかけては、赤くて丸い可愛らしい実をつけ、これがクリスマスの飾りなどにも使われることがあります。

  • 命名の由来:「アリドオシ」という名前は、の非常に鋭く、硬い棘(とげ)に由来します。

    • 鋭い棘があり、蟻さえも通り抜けられないほどであることから。

    • 「蟻(アリ)も通り抜けられないほど」: アリドオシの枝には、葉の付け根に長さ1~2cmほどの鋭い棘が対になって生えています。この棘が非常に硬く、密生しているため、どんな小さなアリであっても、この棘を避けて通るのは困難だろう、あるいは、アリさえも刺し貫いてしまうほどの鋭さである、という様子を誇張して表現したものです。

→アリさえも通り抜けられないという意でしたら、アリガエシとかアリトオサズあたりのほうが適切かとも思いましたが、アリドオシの解説は以上です。

アリノスダマ(蟻の巣玉):

  • アリノスダマ(蟻の巣玉、学名:Hydnophytum formicarum)は、東南アジア原産のアカネ科ヒドノフィツム属に属する常緑小低木で、「アリ植物(Ant plant)」と呼ばれるユニークな植物の一種です。
  • アリノスダマの特徴
    • 着生植物: 湿地のマングローブの幹や枝、あるいは岩の裂け目や岩上に着生して生育します。
    • 肥大した塊茎(かいけい): 幹の基部が球状に肥大し、まるでジャガイモのような形になります。この肥大した部分が最大の特徴です。
    • アリとの共生: 塊茎の内部には、植物自身が作り出す複雑な迷路状の空洞があります。この空洞をアリの巣として提供し、アリがその中に住み着きます。
    • 栄養供給のメカニズム: アリは、この空洞に食べ残し、糞、死骸などを運び込みます。アリノスダマは、これらの有機物を分解・吸収することで、乏しい着生環境下で不足しがちな栄養分(特に窒素やリンなど)を得ています。また、アリの出す二酸化炭素も炭素源として利用するという研究報告もあります。
    • 防衛共生: アリは巣を提供される代わりに、アリノスダマを他の昆虫や動物からの食害、あるいは他の植物の侵略から守る役割を果たすと考えられています。
    • 葉と花: 枝は塊茎から数本伸び、緑色の卵型をした革質の葉を対生に出します。葉腋に小さな白い花を咲かせ、花後には赤い実をつけます。
    • 栽培: 熱帯の植物なので、高温多湿を好みます。日本では冬場は15℃以上を保てる暖かい室内での管理が必須です。直射日光は避けて明るい日陰が適しています。
  • 命名の由来:アリノスダマという和名、そして学名の種小名「formicarum」はいずれも、この植物が持つアリとの共生関係に由来しています。
    • 和名「蟻の巣玉」: 球状に肥大した茎(塊茎)の内部が、まるでアリの巣のように空洞になっていることに直接由来しています。アリに住処を提供している様子をそのまま表した名前です。
    • 学名「Hydnophytum formicarum」:
    • 属名「Hydnophytum」は、古代ギリシャ語の「hydnon(塊茎)」と「phyton(植物)」の合成語で、その特徴的な塊茎を表しています。
    • 種小名「formicarum」は、ラテン語で「アリの」という意味を持ちます。これもアリとの共生関係を明確に示しています。

      このように、アリノスダマは、その見た目の特徴と、他の生物(アリ)との間に築かれた独特な共生関係が、そのまま植物の名前の由来となっています。

 

イヌ(犬)

オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢):

  • 特徴:オオバコ科。
    明治時代にヨーロッパから「オオイヌノフグリ」が日本に持ち込まれました。この植物は、日本にもともとあったイヌノフグリと似た花をつけますが、花や草姿がより大きいことから、「大きいイヌノフグリ」という意味で「オオイヌノフグリ」と名付けられました。
    ちなみに、オオイヌノフグリの可憐な青い花からは想像しにくい名前ですが、「星の瞳」や「瑠璃唐草」といった別名もあります。
    現在では、在来種のイヌノフグリは生育地を奪われ、ほとんど見られなくなっており、一般的に春先に見かけるのはオオイヌノフグリの方が多いです。
  • 命名の由来: 果実の形がイヌの陰嚢に似ていることに由来するという説が有力です。直接的に「大きな犬の睾丸に似ている」わけではなく、「イヌノフグリの実が犬の睾丸に似ており、そのイヌノフグリよりも大きい」という意味合いで「オオイヌノフグリ」という名前が付けられたということです。
    「イヌノフグリという植物の実が犬の陰嚢(いんのう、睾丸のこと)に似ていることから名付けられ、それよりも大きい花をつけるから」という複合的な意味合いを持っています。

オオイヌノフグリ - Wikipedia

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/7c/VeronicaPersicaFruit.jpg

イヌタデ(犬蓼):

  • 特徴:タデ科。
  • 命名の由来:タデ(蓼)に似ているが、役に立たない(=犬)ことから。

    「タデ食う虫も好き好き」ということわざにもあるように、タデの仲間には古くから食用や染料として利用されてきた植物が多くあります。特にヤナギタデは、葉に辛味があり、刺身のつまや薬味として重宝されてきました。

    一方で、イヌタデはヤナギタデに姿が似ているものの、葉に辛味がなく、食用としての価値がほとんどないとされました。そのため、「役に立たないタデ」「食べられないタデ」という意味合いで、蔑称の「イヌ」が冠されて「イヌタデ」と名付けられたと言われています。

    この「イヌ」という言葉は、植物名に使われる場合、「有用なものに似ているが、実際は価値がない」「偽物」といった意味で用いられることがよくあります。例えば、「イヌムギ」や「イヌホオズキ」なども同様の理由で名付けられています。

イヌビワ(犬枇杷):

  • 特徴:クワ科。
  • 命名の由来:ビワに似ているが、果実が小さく食用に適さない(=犬)ことから。

イヌツゲ(犬柘植):

  • 特徴:モチノキ科。
  • 命名の由来:ツゲに似ているが、材がツゲほど利用価値がない(=犬)ことから。

イヌザクラ(犬桜):

  • 特徴:バラ科。
  • 命名の由来:サクラに似ているが、果実が美味しくない(=犬)ことから。

イヌムギ(犬麦):

  • 特徴:イヌムギは、イネ科スズメノチャヒキ属の越年草、または多年草です。原産は南アメリカですが、牧草として世界各地に導入され、日本には明治時代に渡来しました。現在では、北海道から沖縄まで全国の道端、畑、荒地、河川敷など、様々な場所でごく普通に見られる帰化植物となっています。
  • 命名の由来:「イヌムギ」という名前は、その見た目が「麦(ムギ)」に似ているが、人間にとって食用などには利用価値がない、という意味に由来します。
    植物の和名において「イヌ(犬)」という接頭語は、動物のイヌそのものを指す場合(例:オオイヌノフグリ)もありますが、多くの場合、「役に立たない」「劣る」「類似品」「野生の」といった意味合いで使われます。
  • イヌムギは、大麦や小麦などの「麦」に草姿や穂の形が似ていますが、人間が食べたり利用したりする植物ではないため、「ムギに似ているが、役に立たない麦」という意味で「イヌムギ」と名付けられました。

イヌホオズキ(犬酸漿):

  • 特徴:イヌホオズキは、ナス科ナス属の一年草です。畑や道端、荒地など、いたるところに生えるごく一般的な雑草で、世界中に広く分布しています。
    • 草丈と姿: 草丈は30cmから60cmほどで、茎はよく枝分かれし、全体的に雑然とした印象を与えます。
    • 葉: 卵形から広卵形で、縁にはゆるい波状のぎざぎざ(鋸歯)があります。葉や茎には毛がないか、あってもわずかです。
    • 花: 夏から秋(7月から10月頃)にかけて、葉の付け根から出た柄の先に、小さな白い花を数個ずつ咲かせます。花の直径は1cmにも満たないほどで、黄色い雄しべが目立ちます。
    • 果実: 花が終わると、球形をした小さな液果(実)をつけます。直径5mm~8mmほどで、最初は緑色ですが、熟すと黒紫色になります。この実を潰すと、中にたくさんの小さな種子が入っています。
    • 毒性: イヌホオズキの実は、ナス科の植物に共通するアルカロイド系の毒性物質(ソラニンなど)を含んでいます。そのため、食用にはできません。熟した実を子供が口にしないよう注意が必要です。
  • 命名の由来:「イヌホオズキ」という名前は、その果実がホオズキに似ているが、食用にならないという点に由来します。
    植物の和名において、「イヌ(犬)」という接頭語が使われる場合、多くは「食用にならない」「役に立たない」「劣る」「野生の」といった意味合いで使われます。
    • 「ホオズキ」の類似: イヌホオズキの実は、ナス科のホオズキの実に形が似ています。ホオズキは食用になる品種もあり、観賞用としても親しまれています。
    • 「イヌ」の意味: イヌホオズキはホオズキに似ているものの、人間が利用したり食べたりする価値がないため、「ホオズキに似ているけれど、役に立たない(犬の)ホオズキ」という意味で「イヌホオズキ」と名付けられました。

イヌシデ(犬四手):

  • 特徴:イヌシデ(学名:Carpinus tschonoskii)は、カバノキ科クマシデ属の落葉高木で、日本の本州(岩手県・新潟県以南)、四国、九州の他、朝鮮半島、中国に分布し、山地や丘陵の雑木林などで普通に見られます。
    • 樹形・樹皮: 高さ15~20メートルになる落葉広葉樹です。樹皮は灰色でなめらかですが、老木になると縦に濃灰色の筋ができ、凹凸になります。
    • 葉: 葉は互生し、長さ4~8cmの卵形~倒卵形で、縁には不規則な細かい重鋸歯があります。葉柄が短く、若枝や葉に白い毛が密生しているのが特徴です。秋には黄色く紅葉します。
    • 花: 4~5月頃に開花します。雌雄異花で、雄花序は前年の枝の葉腋から垂れ下がり、長さ4~5cmの黄褐色をしています。雌花序は新枝に頂生し、目立ちにくいです。
    • 果実: 花後にできる果実は堅果で、苞に包まれます。この果穂が、長さ4~12cmほどに垂れ下がります。
    • その他:
      • 雑木林を構成する主要な樹種の一つです。
      • しばしば沢沿いに出現する樹種としても知られています。
      • 冬芽は長楕円形をしており、アカシデよりも芽鱗の数が少ないです。
      • 幹にややねじれ気味の縦縞模様があるのも特徴です。
  • 命名の由来:イヌシデの「シデ」と「イヌ」にはそれぞれ以下のような由来があります。
    • シデ(四手): 花が終わり、果実が熟して垂れ下がった果穂の様子が、神社のしめ縄や玉串などに使われる、白い紙や布を「四手(しで)」と呼ぶ飾りに似ていることに由来します。
    • イヌ(犬): 「イヌ」という接頭語は、植物名の場合に、しばしば「役に立たない」「劣る」「似ているが本物ではない」といった意味合いで用いられます。イヌシデの場合、アカシデやクマシデといった近縁種に比べて、材の特性が劣るとされたり、新芽や紅葉の美しさがアカシデほどではないとされたりすることから、この名が付けられたと考えられています。
      また、牧野富太郎博士は垂れ下がる雄花序に基づくかとも述べていますが、これは他のシデ類にも共通するため、確定的ではありません。別名として「シロシデ」と呼ばれることもあり、これはアカシデの花が赤いことに対して、イヌシデの花が白っぽいことに由来します。

 

インコ

インコアナナス:

  • 特徴:インコアナナス(学名:Vriesea carinata)は、ブラジル原産のパイナップル科インコアナナス属の常緑多年草です。鮮やかな花苞(花のつけ根にある葉が変化したもの)が特徴で、観葉植物として広く栽培されています。
    • 草姿: 高さ30〜100cmほどになり、葉は薄緑色で薄く柔らかい質感です。根はあまり発達せず、樹木や岩の上に着生して育つ着生植物です。
    • 葉: 葉は細長く、放射状に広がり、葉の基部が重なることで水を貯める「タンク」のような構造を作ります。このタンクに溜まった水から養分を吸収します。白い粉を吹いたような鱗片毛があるのも特徴です。
    • 花苞と花: インコアナナスの一番の見どころは、その鮮やかな花苞です。赤やオレンジ、黄色などの鮮やかな色が組み合わさり、扁平な穂状になります。この花苞の基部は鮮やかな赤、先端付近から半ばは緑っぽい黄色で、先端は尖って上に向かって曲がるのが特徴です。
      苞の間から、小さな黄色い筒状の花が顔を出しますが、本当の花はあまり目立ちません。花そのものの寿命は短いですが、美しい花苞は数ヶ月間鑑賞できます。
    • その他:
      • 空気を浄化する特性を持つとされています。
      • 比較的低メンテナンスで育てやすい植物です。
      • 冬に開花することが多いですが、不定期に咲くこともあります。
      • 花後に株元に子株ができ、株分けで増やすことができます。
  • 命名の由来:インコアナナスの命名は、その特徴的な花苞の色彩と形状に由来しています。
    • インコ: 鮮やかな花苞の色合いが、鳥のインコの羽や頭部の色合いに酷似していることから「インコ」という名前が付けられました。特に、赤い苞と黄色い花弁の組み合わせが、インコの頭部に似ていると言われます。
    • アナナス: 「アナナス」は、もともとパイナップルのことを指す言葉ですが、園芸上ではパイナップル科の植物全体の総称としても使われます。ポルトガル人がアメリカ大陸でパイナップルを発見した際に、原住民が「ナナス(亀の実)」と呼んでいたことに由来するとされます。

このように、インコアナナスは、その見た目の華やかさが鳥のインコを連想させること、そしてパイナップル科の植物であることから名付けられた、非常に分かりやすい名前を持つ植物です。

 

ウグイス(鶯)

ウグイスカグラ:

  • 特徴:ウグイスカグラ(学名:Lonicera gracilipes var. gracilipes)は、スイカズラ科スイカズラ属の落葉低木です。日本各地の山野に自生し、春先に他の植物に先駆けて花を咲かせることで知られています。
    • 樹形と枝: 高さ1~3mになる落葉性の低木です。株立ち状に枝を多く出し、細い枝がよく分枝します。若い枝は褐色を帯び、毛が生えていることがあります。
    • 葉: 葉は対生し、長さ3~7cmの卵形~楕円形で、先端は尖り、基部は丸みを帯びます。葉の表面は暗緑色で光沢があり、裏面は淡い緑色で、どちらにも毛が生えていることがあります。葉縁は全縁です。
    • 花: 3月~5月頃、葉が出るか出ないかの時期に、前年枝の葉腋から淡紅色の筒状の花を2個ずつ咲かせます。花冠は長さ1~1.5cmほどで、先が5裂し、やや反り返ります。雄しべと雌しべは花冠から突き出るのが特徴です。花の時期が早く、野山に彩りを与えます。
    • 果実: 花後にできる果実は直径1cmほどの球形の液果で、6月頃に赤く熟します。この果実は甘酸っぱく、食べることができます。
    • その他:
      • 早春に咲く花は、ウグイスが鳴き始める時期と重なることから、名前の由来にもなっています。
      • 庭木や盆栽としても利用されます。
  • 命名の由来:ウグイスカグラの命名は、その花が咲く時期と、ある伝承に由来すると言われています。
    • ウグイス: 花が咲く時期が、ウグイスが鳴き始める早春(旧暦の2月頃)とほぼ一致することから、「ウグイス」の名が冠されました。
    • カグラ(神楽): 「カグラ」は「神楽(かぐら)」、つまり神に奉納する歌舞を指します。この木にウグイスがとまって、まるで神楽を舞っているかのようにさえずる、という風流な情景を連想させることから付けられた、という説が有力です。
      また、花の形が神楽鈴(かぐらすず)に似ている、あるいは果実の赤色が巫女の衣装に似ている、といった説もありますが、ウグイスが鳴く時期に咲く花の美しさや、その実をウグイスが好んで食べに来る様子から名付けられたという説が一般的です。

このように、ウグイスカグラは、早春の訪れとともにウグイスがさえずる情景と結びついた、日本の豊かな自然と文化を感じさせる植物名と言えます。

 

ウサギ(兎)

ウサギギク(兎菊):

  • 命名の由来: 葉の形がウサギの耳に似ていることに由来すると言われています。高山植物の一種です。

ウサギゴケ:

  • 特徴:ウサギゴケ(学名:Utricularia sandersonii)は、タヌキモ科タヌキモ属の食虫植物です。オーストラリア原産で、その非常に特徴的な花の形から、観賞用として世界中で人気があります。
    • 草姿: 茎は地中に埋もれていて、地上部にはごく小さな葉と花茎を伸ばすだけです。コケという名前がついていますが、コケ植物の仲間ではなく、れっきとした被子植物です。
    • 葉: 地中または水中に細い糸状の葉を展開します。地上にはごく小さく、目立たない葉がまばらに生える程度です。
    • 花: ウサギゴケの最大の特徴は、何といってもそのユニークな花の形です。花茎を伸ばして、白く小さな花を咲かせます。この花は、上下に唇弁が分かれており、特に上唇弁がウサギの耳のように長く伸び、下唇弁の中央には黄色い斑点があります。まるで小さなウサギが跳ねているかのような姿に見えるため、非常に愛らしい印象を与えます。
    • 捕虫嚢(ほちゅうのう): 地中や水中に発達した根のような部分に、小さな袋状の「捕虫嚢(ほちゅうのう)」を持っています。この捕虫嚢は、水中の微生物や線虫などを吸い込んで捕獲する、食虫植物ならではの器官です。
    • 生育環境: 湿度の高い環境を好み、ミズゴケなどを敷いた湿った土壌で育ちます。
    • 栽培: 観賞用として栽培されることが多く、その可愛らしい姿から特に人気があります。ただし、適切な湿度管理が重要です。
  • 命名の由来:ウサギゴケの命名は、その花が持つ特徴的な形状に直接由来しています。
    • ウサギ: 花の形が、まるで跳ねるウサギの耳のように見えることから、「ウサギ」の名前が付けられました。特に、上唇弁が長く伸びて左右に分かれ、ウサギの耳を彷彿とさせる点が大きな理由です。
    • ゴケ: 「コケ」という部分は、その草丈が低く、地面に這うように広がる様子が、コケ植物に似ていることから付けられたと考えられます。しかし、前述の通り、分類学上はコケ植物とは全く異なる植物です。

このように、ウサギゴケは、その花のユニークで愛らしい姿がウサギを連想させ、かつ低く広がる草姿がコケに似ていることから名付けられた、非常に視覚的な特徴を捉えた名前と言えます。

 

ウシ(牛)

ウシノシッポ(牛の尻尾):

  • 特徴:イネ科の植物。
  • 命名の由来:穂が牛の尻尾のように見えることから。

ウシノケグサ(牛の毛草):

  • 特徴:イネ科の植物。
  • 命名の由来:細い葉が牛の毛のように見えることから。

オオウシノシタ(大牛の舌):

  • 特徴:オオウシノシタ(大牛の舌、学名:Sansevieria pearsonii、シノニム:Sansevieria cylindricaの一部品種、Dracaena pearsonii など)は、キジカクシ科(旧リュウゼツラン科)ドラセナ属(旧サンスベリア属)に分類される多肉植物の一種です。特にそのユニークな葉の形状から「牛の舌」という和名が付けられています。オオウシノシタは、独特のフォルムを持つサンスベリアの仲間として、観葉植物として人気があります。
    • 葉の形状: 最大の特徴は、その平たくて幅広い舌状の葉です。多くの場合、地面に這うように広がり、その姿が動物の牛の舌に似ていることから名付けられました。葉の先端はやや尖り、縁は波打つことがあります。
    • 葉の色と模様: 葉は肉厚で硬く、濃い緑色をしていますが、品種によっては不規則な濃淡の模様や、赤みがかった縁取りが見られることがあります。表面は光沢があるものと、ややざらつくものがあります。
    • 草姿: 地下茎から葉を伸ばし、群生することが多いです。草丈はあまり高くならず、地を這うように横に広がります。
    • 耐乾燥性: サンスベリアの仲間であるため、非常に乾燥に強い性質を持ちます。水やりは控えめでよく、乾燥気味に管理することが重要です。
    • 生育環境: 明るい場所から半日陰まで適応しますが、日当たりの良い場所の方が葉の色つやが良くなります。寒さにはやや弱いですが、通常の室内環境であれば問題なく越冬できます。
    • 花: めったに咲きませんが、稀に花茎を伸ばし、白っぽい小さな花を咲かせることがあります。
  • 命名の由来:オオウシノシタという名前は、その植物の葉の形状に直接由来しています。
    • オオ(大): 同じくサンスベリア属には「ウシノシタ」という和名を持つ小型の種もありますが、本種はそれよりも葉が大きく、より幅広いため「大(オオ)」が冠されています。
    • ウシノシタ(牛の舌): 葉が、まるで牛の平たくて幅広い舌のように見えることから名付けられました。

このように、オオウシノシタは、その特徴的な葉の形が「大きな牛の舌」を連想させるという、非常に分かりやすい命名がされた植物です。

ウシコロシ:

  • 特徴:ウシコロシは、植物の正式名称ではなく、**カマツカ(鎌柄)**という植物の別名です。バラ科カマツカ属の落葉小高木で、日本各地の山野に自生しています。
    • 樹高: 3〜4m程度の落葉小高木です。
    • 葉: 葉は互生(茎に対して一枚ずつ互い違いにつく)し、卵形から倒卵形をしています。縁には細かい鋸歯(ギザギザ)があります。若い葉には毛が多いですが、夏にはほとんど無毛になります。
    • 花: 4月から5月にかけて、白い小さな花が多数集まって咲きます。バラ科らしい可愛らしい5枚の花弁を持ち、多数の雄しべが特徴的です。
    • 実: 秋(10月から11月頃)には、直径1cm弱の楕円形の赤い実が熟します。この実は鳥の餌となり、多少の苦味はあるものの人間も食べることもできます。
    • 材: 最大の特徴は、その材が非常に硬く、粘り強いことです。これが命名の由来にも大きく関わっています。
  • 命名の由来:「ウシコロシ」という、一見すると穏やかではない名前の由来には、いくつかの説がありますが、共通しているのはその材の強靭さにあります。
    • 牛の鼻輪(鼻木、鼻ぐり)に使われたから:
      この説が最も有力とされています。昔、牛を引く際に鼻に通す輪(鼻輪、鼻木)や、その鼻輪を通すために牛の鼻に穴を開ける際の道具として、カマツカの硬い材が使われたことから、「牛を制御する」「牛を動けなくする(動きを殺す)」という意味合いで「ウシコロシ」と呼ばれるようになりました。
    • 牛追い棒として使われたから:
      牛を追い立てたり、制御したりする際に使う棒として、この木の丈夫な枝が使われたためという説もあります。
    • 牛が枝に角を挟まれて動けなくなるから:
      牛がこの木の茂みに突っ込んだ際、枝が非常に頑丈なため、角が挟まって身動きが取れなくなることがあった、という説も一部で言われています。
  • いずれの説にしても、「ウシコロシ」という名前は、この木の材が持つ並外れた丈夫さと硬さに由来しています。

ちなみに、もう一つの和名である「カマツカ(鎌柄)」も、同じく材の用途に由来します。その名の通り、この丈夫な材が鎌や鍬の柄として重宝されたことから名付けられました。

つまり、ウシコロシ(カマツカ)は、小さな白い花と赤い実をつける可愛らしい植物ですが、その内側に秘めた材の強靭さが、やや物騒な別名を与えたと言えるでしょう。

ギュウシンリ(牛心梨):

  • 特徴:ギュウシンリ(牛心梨、学名:Annona reticulata)は、熱帯地域で広く栽培されるバンレイシ科の果樹です。
    • 小高木: 高さ最大10メートルほどの小高木で、幹は太く、枝は横に広がります。
    • 落葉性または半落葉性: 環境によって葉を落とすか、一部の葉を残すことがあります。
    • 葉: 長披針形(細長い楕円形)をしており、揉むとミョウガのような独特の香りを放つのが特徴です。
    • 花: 芳香があり、外花弁は細長く、肉厚です。
    • 果実:
      • 形: 最も特徴的なのは、その名の通り、心臓形の集合果です。形は多様ですが、しばしば心臓形をしています。
      • 色: 熟すと赤褐色になり、表面には網目状の模様が見られます。
      • 果肉: 白くクリーム状で、甘く、カスタードのような食感を持つことから、英名で「カスタードアップル(Custard apple)」とも呼ばれます。ただし、チェリモヤやバンレイシに比べて品質は劣るとも言われます。
      • 種子: 黒褐色から黒色の光沢のある種子を多数含みます。この種子は有毒とされています。
      • 用途: 果実は生食されるほか、果実酒やジュース、デザートなどに利用されます。また、若い果実や樹皮、葉、根は民間薬としても使われることがあります。
    • 耐寒性: 比較的に耐寒性があり、-3℃程度までは耐えられるとされていますが、霜や凍結には弱いです。
  • 命名の由来;「ギュウシンリ(牛心梨)」という和名、および英語名の「bullock's heart(雄牛の心臓)」や「ox-heart(雄牛の心臓)」は、熟した果実が赤褐色で、その形が「牛の心臓」に似ていることに由来します。
    • 学名についても見てみましょう。
      • Annona(アンノナ): 属名で、ハイチでのバンレイシの現地名「anon」に由来すると言われています。また、ラテン語の「Annona(一年中採れる)」という意味に由来するという説もあります。
      • reticulata(レティキュラータ): 種小名で、ラテン語で「網目状の」という意味です。これは、果実の表面に見られる網目模様を指していると考えられます。

このように、ギュウシンリはその特徴的な果実の形から、直感的に理解しやすい名前が付けられています。

 

 

ウマ(馬)

ウマノアシガタ(馬の足形):

  • 特徴:キンポウゲ科。
  • 命名の由来:葉の形が馬のひづめに似ていることから。  
    花の形や葉の切れ込みが、ウマのひづめに似ていることに由来すると言われています。キンポウゲ科の植物で、黄色い光沢のある花を咲かせます。


ウマノスズクサ(馬の鈴草):

  • 特徴:ウマノスズクサ科。
  • 命名の由来:花の形が馬の首につける鈴に似ていることから。


ウマノミツバ(馬の三つ葉):

  • 特徴:セリ科。ウマノミツバは、セリ科ウマノミツバ属の多年草です。日本全国の山野の比較的湿った場所、林の縁、道端の草陰など、半日陰の場所に自生しています。地味な植物なので、あまり意識して見られることは少ないかもしれません。草丈と姿: 草丈は30cmから80cmほどになり、茎は細く、上部でよく枝分かれします。
    • 葉: 葉は長い柄があり、多くは3枚の小葉からなる複葉(三出複葉)です。この「三葉」が名前の由来の一部になっています。小葉は卵形から広卵形で、縁には鋭い鋸歯(のこぎりの歯のようなギザギザ)があります。
    • 花: 夏から秋(6月から9月頃)にかけて、茎の先端や枝先に、白い小さな花を多数つけます。セリ科特有の、小さな花が集まって傘のような形になる「複散形花序(ふくさんけいかじょ)」を形成しますが、他のセリ科植物に比べてまばらで、花数が少ないことが多いです。花弁は5枚で、内側に曲がっています。
    • 果実: 花後に、表面に細かい突起(毛状の突起やとげ)がある卵形の果実をつけます。この果実は衣服などによくくっつくことがあります。
      毒性: 一般的には無毒とされていますが、食用とされることはありません。セリ科には有毒植物も多いので、安易な判断は避けるべきです。
  • 命名の由来:「ウマノミツバ」という名前は、その葉の形と、日本における「ウマ(馬)」という言葉の使われ方に由来します。
    • 「三葉(ミツバ)」の由来: これは単純に、葉が3枚の小葉からなる(三出複葉である)という植物の特徴そのものを指しています。
    • 「ウマ(馬)」の由来: 植物の和名において「ウマ」という接頭語が使われる場合、いくつかの意味合いがあります。
    • 馬が食べる: その植物を馬が好んで食べる、または馬の餌になる、という場合。
    • 馬の体の一部に似ている: 馬の顔や足などに、植物の形が似ている場合(例:ウマノアシガタ)。
    • 大きい・粗野・劣る: 「イヌ」と同様に、人間にとっての利用価値が低い、粗野である、という意味合いで使われる場合。
  • ウマノミツバの場合は、特に3番目の「食用にならない」「役に立たない」「見劣りする」といった意味合いで「ウマ」が使われた可能性が高いと考えられています。
    食用にされるミツバ(セリ科ミツバ属)に似ていますが、食用には適さないため、「食用にならないミツバ」「ミツバに似ているが見劣りする」といった意味で「ウマノミツバ」と名付けられたのでしょう。

アセビ(馬酔木)

  • 特徴:アセビ(馬酔木)は、日本原産の常緑低木で、ツツジ科に属します。その特徴と命名の由来は以下の通りです。
    • 樹形と葉:
      • 樹高は1.5mから5mほどになります。
      • 葉は厚みがあり、光沢のある濃い緑色で、枝先に束になって互生します。
      • 新芽は赤みを帯びて美しいです。
      • 常緑のため、冬でも葉をつけたままであるため、庭木や公園樹としてよく利用されます。
    • 花:
      • 早春(2月下旬~4月上旬頃)に開花します。
      • 枝先に鈴や壺のような形をした小さな花を多数ぶら下げるように咲かせます。
      • 花の色は白が一般的ですが、ピンク色の花を咲かせる園芸品種(ベニバナアセビなど)もあります。
    • 毒性:
      • アセビは植物全体に強い毒性を持っています。特に葉や樹皮、根皮、花、果実に含まれる「グラヤノトキシン(アセボトキシン)」という有毒成分が知られています。
      • この毒は、馬や鹿などの動物が誤って食べると、酩酊状態になったり、足が麻痺したり、重症の場合には死に至ることもあります。そのため、野生のシカなどが食べ残すことが多く、林内でアセビが目立つことがあります。
      • 人間にとっても有毒であり、誤って口にすると、しびれ、唾液過多、鼻水、涙目、吐き気、嘔吐、下痢、発汗、胃痛、頭痛、心不全、痙攣などの症状が現れ、致命的になる可能性もあります。
      • 過去には、葉を煎じて殺虫剤やウジ虫駆除に使われたこともあります。
    • 育てやすさ:
      • 日本の気候に合い、耐暑性・耐寒性に優れており、比較的乾燥にも強いため、育てやすい植物です。
      • 成長が遅いため、手入れの手間もあまりかかりません。
  • 命名の由来:アセビ(馬酔木)という名前は、その強い毒性に由来しています。
    • 「馬酔木」の漢字の由来: アセビの葉を食べた馬が、毒によってまるで酒に酔ったかのように足がふらついたり、麻痺したりする様子から「馬酔木」と名付けられました。
    • 和名の由来: 「アセビ」という和名も、「足がしびれる」を意味する「足痺(アシジヒ)」が転訛して「アシビ」となり、さらに「アセビ」になったという説や、「悪い実(あしみ)」から転訛したという説があります。

      このように、アセビは可憐な花を咲かせますが、その名前は植物が持つ毒性と、それによる動物への影響に由来しているのです。

 

エビ(海老)

エビネ:

  • 特徴:エビネ(Calanthe discolor)は、ラン科エビネ属に分類される地生の多年草で、日本の山野に自生しています。その控えめながらも美しい姿から、古くから多くの人々に親しまれてきた山野草です。
    • 生育場所: 丘陵地帯の落葉広葉樹林やスギ林など、比較的明るい半日陰の林床に自生します。風通しの良い場所を好みます。
    • 草丈: 30〜50cm程度の中型のランです。
    • 葉: 地際から3〜4枚の葉が広がるように出ます。葉は倒披針形または長楕円形で、縦に葉脈が走り、光沢のある濃緑色をしています。多くは常緑で、冬も葉を保ったまま越冬します。
    • 花茎と花: 春(4月〜5月頃)になると、葉の間から花茎が直立して伸び、その先端に5〜20個程度の花を総状に咲かせます。花は直径約4cmで、萼片と側花弁が黄緑色から茶褐色、唇弁が白やピンク、紫など、品種によって非常に多様な色彩を見せます。
    • 多様な品種: エビネは交雑しやすい性質があるため、野生でも多くの変異種や自然交雑種が存在します。また、園芸品種も非常に多く作出されており、花の色や形、咲き方などに豊富なバリエーションがあります。代表的なものに、黄色の「キエビネ」、夏に咲く「ナツエビネ」、猿の顔に似た唇弁を持つ「サルメンエビネ」などがあります。
    • 偽鱗茎(バルブ): 地中には「バルブ」と呼ばれる肥大した偽鱗茎(ぎりんけい、別名:偽球茎)があります。このバルブに養分を蓄え、冬を越します。
    • 生態的地位: 派手さはありませんが、楚々とした独特の風情があり、山野草として人気が高いです。しかし、近年では乱獲や自生地の減少により、多くの自生種が絶滅危惧種に指定され、レッドリストに掲載されています。
  • 命名の由来:「エビネ」という和名は「海老根」と書き、その名の通り、植物の地下にある特徴的な部分に由来しています。
    • 偽鱗茎(バルブ)の形状から: エビネの地中にある偽鱗茎が、エビの胴体や、エビの尾が連なったような形をしていることから、「エビ(海老)」の「根」に例えられて「海老根」と名付けられました。古い偽鱗茎が連珠状に横に繋がり、そこから多数の根が生えている様子が、特にエビに似ているとされます。

このように、エビネはその地下部分の形態が、古くから親しまれてきた甲殻類のエビに似ているという、ユニークな視点から名付けられた植物です。

 

 

オオカミ(狼)

オオカミヤシ:

  • 特徴:オオカミヤシは、ヤシ科フェニックス属の植物で、主にアフリカやマダガスカル原産の常緑低木です。学名は Phoenix reclinata といいます。和名では「セネガルヤシ」とも呼ばれ、別名として「ソテツヤシ」と呼ばれることもあります。
    • 樹形と幹:
      • 株立ちになることが多く、ときに単一で生育します。
      • 高さは8〜12m(最大で15m前後)に達することがありますが、成長は比較的遅いです。
      • 幹の表面には、葉柄が落ちた痕が模様のようについています。
      • 「シンノウヤシ(フェニックス・ロベレニー)」によく似ていますが、シンノウヤシよりも幹が太く、葉も長いのが特徴です。
    • 葉:
      • 葉は羽状複葉(鳥の羽のように小葉が並ぶ形)で、弓状に曲がり先端が下垂します。
      • 葉の付け根には茶褐色の繊維があります。
    • 花と果実:
      • クリーム色の花を咲かせ、果実は楕円形で赤褐色に熟します。
    • 耐寒性:
      • 比較的耐寒性があり、-3℃くらいまで耐えることができます。防寒対策をすれば-5℃くらいまで耐えるとも言われています。このため、日本の温暖な地域であれば庭植えも可能です。
    • 用途:
      • 観賞用として庭園樹や鉢植えで利用されます。
      • ヤシの芯(パルミット)は食用になり、サラダや加熱調理(ラザニア、スープ、グラタンなど)にも使われます。
  • 命名の由来:オオカミヤシという和名の直接的な由来については、明確な文献が見当たりませんでしたが、いくつかの可能性が考えられます。
  • 「狼」のイメージ:
    • 「オオカミ」という言葉が持つ力強さ、野生的なイメージ、あるいはその樹形や幹の様子、葉の力強い広がり方が、何らかの形でオオカミを連想させたのかもしれません。例えば、葉が大きく広がる様子や、幹のゴツゴツとした質感などがそう感じられた可能性です。
    • 動物の名前を持つ植物は他にも存在するため(例:キリンソウなど)、同様に特定の連想から名付けられた可能性があります。
  • 別名「セネガルヤシ」の由来:
    • 英名が "Senegal Date Palm" や "Wild Date Palm" であることからもわかるように、原産地であるセネガルに由来します。
    • 「セネガルヤシ」という和名も広く使われています。
  • 学名 "Phoenix reclinata":
    • 属名 "Phoenix": ギリシャ神話に登場する不死鳥フェニックスに由来すると言われています。ヤシ科の植物の多くは長寿で、再生力があることから名付けられたとされます。また、この属にはナツメヤシも含まれます。
    • 種小名 "reclinata": ラテン語で「反曲した」「下曲の」という意味を持ちます。これは、葉が弓状に曲がり先端が下垂する特徴を指していると考えられます。

現状では、「オオカミヤシ」という名前の由来について、植物学的な明確な記述は少ないようです。しかし、その力強い姿や、他の「キリン」とつくヤシと同様に、何らかの連想によって名付けられた可能性が高いと考えられます。

 

オケラ

オケラ:

特徴:オケラは、キク科オケラ属の多年草で、日本の本州から九州、朝鮮半島、中国東北部などに分布し、やや乾いた草原や明るい林内、林縁などに生育します。

  • 草丈と茎: 高さ30〜80cm(時に1mまで)に成長し、茎はまっすぐに立ち、堅く、無毛またはわずかに毛があります。単生または数本が叢生します。
  • 葉: 葉は互生し、堅い紙質で、緑色です。単葉のものから、しばしば3〜5裂するものまで形に変化があります。縁には刺状の鋸歯があります。基部の葉は花時には枯れて落ちることが多いです。
  • 花: 花期は9月から10月頃で、茎の先端や上部の葉腋に、白から淡紫紅色の頭花(アザミに似た筆のような小花が集まったもの)をつけます。
  • 総苞(そうほう): 頭花を包む総苞は、魚の骨のように細かく裂けた苞葉が特徴的です。
  • 根茎: 地下には太く短い根茎があり、芳香があります。この根茎は「白朮(びゃくじゅつ)」という生薬として、健胃、整腸、利尿などの目的で古くから利用されています。正月の屠蘇(おとそ)にも含まれることがあります。
  • 利用: 若い芽はアクが少なく、特有の香りがあり、山菜として食用になります。天ぷらやおひたしなどで食べられます。
  • 命名の由来:オケラの名前の由来には諸説ありますが、最も有力なのは以下の説です。
    • 古名「ウケラ」の転訛: 『万葉集』にも「宇家良(ウケラ)」として詠まれており、古くから親しまれてきた植物です。この古名である「ウケラ」が転じて「オケラ」になったと考えられています。
    • 「おけらになる(無一文になる)」との関連説: 昆虫のオケラ(ケラ)を前から見ると万歳をしているように見えることから「お手上げ」状態を連想させ、植物のオケラも、根を薬用とする際に皮を剥ぐことから「身ぐるみ剥がされる」ことを連想させ、「無一文になる」ことを指す「おけらになる」という言葉と関連付けられたという説もあります。
      ただし、植物と昆虫のオケラに直接的な関係はないとされています。

オケラは、薬用や食用として人々の生活に深く関わってきた植物であり、その名前も古くからの歴史の中で形成されてきたものと言えるでしょう。

 

カエル(蛙)

オタマジャクシソウ(お玉杓子草):

  • 命名の由来: 小さな花を咲かせ、その花の形がオタマジャクシに似ていることに由来すると言われています。

カエルノアシ(蛙の足):

  • 特徴:イノモトソウ科のシダ植物の一種
    • 学名: Pteris cretica var. nervosa など、フタバハハシダの変種とされたり、独立種とされる場合もあります。分類には諸説あるようです。生育環境: 山地の湿った場所や渓流沿いなどに自生することが多いです。
    • 日本での分布: 主に本州、四国、九州の比較的暖かい地域で見られます。
  • 命名の由来:その特徴的な葉の形が、文字通りカエルの足のように見えることからこの和名がつけられました。

カタツムリ

エスカルゴ・ベゴニア:

  • 特徴:エスカルゴ・ベゴニア(Begonia rex 'Escargot')は、シュウカイドウ科シュウカイドウ属に属するレックスベゴニアの一品種です。その独特な葉の模様と形状から、世界中で人気の観葉植物となっています。エスカルゴ・ベゴニアは、主にその葉の美しさで鑑賞されます。
    • 葉の形状と模様: 最大の特徴は、その名の通り、まるでエスカルゴ(カタツムリ)の殻のように渦巻く葉です。葉の付け根から中央に向かって、葉が内側に大きく巻き込むように成長します。
      葉の表面は、メタリックな光沢のあるシルバーグレーと、深い緑色や黒っぽい赤色の脈が入り混じった複雑な模様が特徴です。このコントラストが非常に印象的で、光の当たり方によって様々な表情を見せます。
    • 草姿: 地中から根茎を伸ばし、そこから葉が立ち上がるように茂ります。草丈は比較的小さく、鉢植えで楽しむのに適しています。
    • 質感: 葉の表面には、細かい毛が生えているため、ビロードのような独特の質感があります。
    • 花: 葉が主役の植物であるため、花はあまり目立ちません。ピンクがかった白い小さな花を咲かせますが、観賞価値は葉に比べて劣ります。
    • 栽培: 比較的管理がしやすく、室内での観葉植物として人気があります。高温多湿を好み、直射日光を避けた明るい場所での管理が適しています。
  • 命名の由来:エスカルゴ・ベゴニアの命名は、その最も顕著な特徴である葉の形状に由来しています。
    • エスカルゴ: 葉の中央部がまるでフランス料理のエスカルゴ(食用カタツムリ)の殻のように、螺旋状に内側に向かって渦を巻いていることから、「エスカルゴ」の名前が付けられました。この特徴的な巻き込みが、この品種の代名詞となっています。
    • ベゴニア: シュウカイドウ科シュウカイドウ属の植物であるため、属名の「ベゴニア」がそのまま使われています。ベゴニアという名は、17世紀のフランスの植物学者ミシェル・ベゴン(Michel Bégon)にちなんで名付けられました。

このように、エスカルゴ・ベゴニアは、そのユニークで特徴的な葉の巻き込みがカタツムリの殻を連想させることから、非常に直感的で覚えやすい名前が付けられました。

 

カニ(蟹)

カニクサ(蟹草):

  • 特徴:シダ植物。シダ植物の一種で、細いつるが這い、蟹が這うように見えることに由来すると言われています。
  • 命名の由来:つるが這う様子が蟹に似ていることから。 葉が伸びる様子がカニの足に似ている、あるいはカニが生息するような湿った場所に生えることに由来すると言われています。

 

カメ(亀)

キッコウチク:

  • 特徴:キッコウチク(亀甲竹)は、そのユニークな見た目から観賞用としても珍重される竹の一種です。
    • 稈(かん)の形状: 最大の特徴は、稈(茎や幹にあたる部分)の下部の節間が交互に膨らんでおり、節が斜めになっている点です。この特異な形状が、あたかも「亀の甲羅」が連なったように見えることから、この名が付きました。特に、地上3mほどまでの部分でこの特徴が顕著に見られます。
    • モウソウチクの突然変異種: キッコウチクは、一般的に見られるモウソウチクの突然変異によって生じたとされています。上部にいくにつれて、元のモウソウチクのようなまっすぐな形状に戻る傾向があります。
    • 用途: その独特の見た目から、庭園の観賞用として植えられるほか、床柱、花器、茶道の結界など、伝統工芸品や装飾品に利用されます。特に京都では「京銘竹」として、火であぶり磨き上げたものが伝統工芸品に指定されています。有名なテレビドラマ「水戸黄門」に登場する水戸光圀の杖もキッコウチク製であったと言われています。
    • 希少性: 開花は非常に稀で、日本国内での記録は少ないです。
  • 命名の由来:キッコウチクという名前は、その稈の節が亀の甲羅のように見えることに由来します。
  • 「キッコウ」は「亀甲」と書き、亀の甲羅を意味します。この特徴的な見た目から、そのまま「亀甲竹」と名付けられました。日本では古くから亀は縁起の良い生き物とされており、その甲羅を模した形状を持つキッコウチクも縁起物として扱われることがあります。

キッコウリュウ:

  • 特徴:キッコウリュウ(亀甲竜)は、そのユニークな見た目から多肉植物愛好家の間で非常に人気の高い植物です。特に塊根植物(コーデックス)と呼ばれるグループに属します。
    • 塊根(かたね)の形状: 最大の特徴は、土中または地上部に形成される大きな塊根(塊茎)。成長するにつれて塊根の表面がひび割れ、まるで亀の甲羅のようなゴツゴツとした模様が現れます。この模様が、キッコウリュウの最大の魅力であり、人気の理由です。
    • 葉とツル: 塊根から細いつる性の茎を伸ばし、ハート型の可愛らしい葉をつけます。つるは長く伸びることがあるため、支柱に絡ませて楽しむこともできます。
    • 原産地と生育型: 主に南アフリカの乾燥地帯が原産で、日本とは気候が異なります。
    • アフリカキッコウリュウ: 一般的に流通しているのはこちらで、日本の夏にあたる時期(6月〜8月頃)に葉を落として休眠し、秋から春にかけて成長する冬型の植物です。
    • メキシコキッコウリュウ: こちらは夏型で、日本の夏に成長し、冬に休眠します。
    • 花: 小さな黄緑色の花を咲かせますが、塊根のインパクトが強いため、花はあまり目立ちません。雄花と雌花が別の株に咲く雌雄異株です。
    • 生長速度: 塊根が大きく成長するまでには、長い年月がかかります。数十年かけて大きく育つこともあります。
  • 命名の由来:キッコウリュウという名前は、その塊根が亀の甲羅に似ていることに由来しています。
    • 「キッコウ(亀甲)」: 亀の甲羅を意味します。
    • 「リュウ(竜)」: 塊根から伸びるつる性の茎が、まるで竜のように見えることから「竜」の字が当てられたと言われています。
    • 学名の Dioscorea elephantipes も、その特徴を表しています。
    • Dioscorea(ディオスコレア属)は、古代ギリシャの植物学者ディオスコリデスに由来します。
    • elephantipes(エレファンティペス)はラテン語で「象の足」を意味し、これもまたその塊根の大きさとゴツゴツした質感を表しています。

このように、キッコウリュウはその見た目の特徴がそのまま和名や学名に反映されている植物です。

 

カモシカ(羚羊)

カモシカソウ(羚羊草):

  • 特徴:キンポウゲ科。カモシカソウは、主に高山帯や亜高山帯の林床に自生するキンポウゲ科の多年草です。カモシカソウは、春には淡い黄緑色や白色の小さな花を咲かせます。目立たない花ですが、高山植物の愛好家にはよく知られた植物です。
  • 命名の由来:その名前の由来は、カモシカがその葉を好んで食べることにあります。具体的には、カモシカは冬場など、他の植物が少ない時期に、このカモシカソウの葉を重要な食料源として利用することが知られています。厳しい環境の中で生きるカモシカにとって、貴重な栄養源となる植物だったことから、その名が付けられました。
    また、地域によっては「シカソウ」や「オオカメノキグサ」などと呼ばれることもありますが、いずれもカモシカとの関連性を示す名前が多いです。

 

カラス(烏)

カラスノエンドウ(烏の豌豆):

  • 特徴:マメ科。
  • 命名の由来:スズメノエンドウより大きく、カラスが好んで食べることから。スズメノエンドウよりも少し大きく、やはり豆果をつけます。カラスがこの豆果を好んで食べること、またはカラスが食べるのにちょうど良い大きさの豆であることに由来すると言われています。

カラスウリ(烏瓜):

  • 特徴:ウリ科。
  • 命名の由来:カラスが好んで食べるウリであることから。

カラスムギ(烏麦):

  • 特徴:イネ科。
  • 命名の由来:カラスが好んで食べる麦であることから。

カラスザンショウ(烏山椒):

  • 特徴:ミカン科。
  • 命名の由来:カラスが実を好んで食べることから。

 

カリガネ(雁金)

カリガネソウ:

  • 特徴:カリガネソウは、シソ科の多年草で、その特徴的な花の形と独特の匂いが知られています。漢字では雁金草または雁草と表記されます。
    • 花の形が特徴的: 最も目を引く特徴は、そのユニークな花の形です。青紫色の花弁は、下方の一枚が特に大きく広がっており、そこから長く突き出た雄しべと雌しべが弓なりに上方に湾曲しています。この形状が、まるで鳥の「雁(ガン)」が羽を広げて飛ぶ姿や、頭をもたげた姿に見立てられます。別名を「帆掛草(ホカケソウ)」ともいい、帆を張った船にも例えられます。
    • 独特の匂い: 葉や茎に触れたり傷つけたりすると、硫黄のような、あるいは独特の不快な臭気を放ちます。この臭いは、害虫を遠ざける役割があると考えられています。
    • 草丈: 成長すると、高さが60cmから1mほどになります。
    • 葉: 葉は茎に互い違いに対生し、卵形から広卵形で、縁には細かいギザギザ(鋸歯)があります。
    • 開花期: 夏の終わりから秋にかけて、具体的には8月から9月頃に、青紫色の花を咲かせます。
    • 分布: 日本の北海道から九州まで、そして朝鮮半島や中国の低山や林縁などに自生しています。
  • 命名の由来:「カリガネソウ」という和名は、その独特な花の形状が、渡り鳥の「雁(カリガネ)」に似ていることに由来しています。
    • 「雁が飛ぶ姿」に例えられる花: 花冠から長く伸びて弓なりに曲がる雄しべや雌しべ、そして左右に広がる花弁の様子が、空を飛ぶ雁の姿を連想させるとされています。
    • 家紋の「結び雁金」との関連: 日本の家紋でよく見られる「結び雁金」の意匠の形に、花が似ているという説も有力です。

このように、カリガネソウは、その視覚的に印象的な花の姿から、渡り鳥の「雁」にちなんで名付けられた植物です。

 

カンガルー

カンガルー・ポー:

  • 特徴:カンガルー・ポー (Anigozanthos spp.) は、オーストラリア原産のユニークな植物で、その独特な花の形から世界中で愛されています。
    • カンガルーの足のような花: カンガルー・ポーの最大の特徴は、その名前の由来にもなっている、カンガルーの前足(Paw)にそっくりな形をした花です。花茎から伸びる細長い筒状の花は、先端が6つに裂けており、その形がまさにカンガルーの指のように見えます。また、花や茎には細かい毛が密生しており、ベルベットのような質感を持っています。
    • 鮮やかな花色: 赤、黄、緑、オレンジ、ピンク、白など、非常に多彩な花色があり、中には赤と緑のツートンカラーになる品種もあります。これらの鮮やかな色は、鳥を引き寄せて受粉を助ける役割も果たしています。
    • 葉の形状: 葉はアヤメのような細長い剣状で、地際から放射状に伸びます。
    • 草丈: 品種によって異なりますが、草丈は20cmから1.5mと幅広く、園芸品種では50cm~90cm程度のものが多く流通しています。
    • 多年草: 多くは常緑の多年草ですが、一部の種は夏に休眠するものもあります。
    • 切り花やドライフラワーに人気: そのユニークな見た目と花持ちの良さから、切り花やドライフラワーとしても非常に人気があります。
    • 耐寒性・耐湿性: オーストラリアの乾燥した気候が原産のため、日本の高温多湿な夏や冬の寒さにはやや弱く、特に多湿は苦手とします。日本では鉢植えで管理されることが多いです。
  • 命名の由来:「カンガルー・ポー」という名前は、その花の形がオーストラリアの有袋類であるカンガルーの「前足(paw)」に酷似していることに由来します。
    • Kangaroo(カンガルー): オーストラリアを代表する動物。
    • Paw(ポー): 動物の足(特に指のある肉球のある足)を意味する英単語。
  • この直感的な命名は、植物の見た目の特徴を非常によく捉えています。
  • ちなみに、カンガルー・ポーの学名は Anigozanthos(アニゴザントス)と言います。この学名の語源はギリシャ語で、「ανοίγω (anoigo) = 開く」と「άνθος (anthos) = 花」を組み合わせたもの、あるいは「ανισος (anisos) = 不等な、斜めの」と「άνθος (anthos) = 花」を組み合わせたものとされており、花の開いた形や非対称な形に由来すると考えられています。

カンガルー・ポーは、その個性的な姿から、西オーストラリア州の州花にも指定されています。

 

キジ(雉)

キジカクシ(雉隠し):

  • 特徴:ユリ科(現在はキジカクシ科)。
  • 命名の由来:葉が茂ってキジが隠れてしまうほどになることから。

 

キツネ(狐)

キツネノカミソリ(狐の剃刀):

  • 特徴:ヒガンバナ科。キツネノカミソリは、ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草です。日本固有種とも言われ、本州の関東地方以西、四国、九州の山林のやや湿った場所や林縁などに自生します。夏のお盆の頃に、葉がない状態で花だけが茎先に咲くという、ヒガンバナの仲間らしい特徴を持っています。
    • 「葉見ず花見ず」: ヒガンバナと同じく、花が咲く時期には葉が枯れてなく、葉が出ている時期には花がないという、いわゆる「葉見ず花見ず」の性質を持っています。春先に葉が出て、夏には枯れて姿を消し、その後に花茎が伸びて花を咲かせます。

    • 花期: 主に8月から9月頃、ちょうどお盆の時期に花を咲かせます。

    • 花の色と形: 花茎の先に数個のオレンジ色から赤みがかったオレンジ色の花をつけます。花弁は6枚で、筒状に咲き、先端がやや反り返ります。雄しべと雌しべは花弁から長く突き出ています。

    • 毒性: ヒガンバナ科の植物であるため、鱗茎(りんけい:球根)や葉、花など植物全体にリコリンなどの有毒成分を含んでいます。誤って口にすると、吐き気、下痢、麻痺などの症状を引き起こす可能性があるため、絶対に食べないでください。

  • 命名の由来:「キツネノカミソリ」という名前は、その花の鮮やかな色と形、そしてその花が咲く場所や時期にまつわる「キツネ」のイメージに由来すると言われています。

    • 「カミソリ(剃刀)」の由来: 花弁が鋭く反り返り、全体的にシャープで切れ味の良いカミソリの刃に似ていることから名付けられました。特に、オレンジ色の花弁が光を反射する様子が、鋭利な刃物のように見えたのかもしれません。

    • 「キツネ(狐)」の由来: 植物の和名で「キツネ」が冠される場合、いくつかの意味合いがあります。

      • 人里離れた場所: キツネが出没しそうな、人目につきにくい山中の林縁や湿った場所などに自生することから。

      • だます、化かす: 人を惑わすような、どこか神秘的で少し不気味な雰囲気を持つ花であることから。また、一般的な花のように葉と花が同時に見られない「葉見ず花見ず」の性質も、キツネに「化かされた」ような感覚を与えるかもしれません。

      • 色: キツネの毛色(特に赤褐色)に花のオレンジ色が似ているという説も稀にあります。

    • これらのうち、「人里離れた場所に生える」という場所的な要素や、「葉がない状態で突然花が咲く」という神秘的で少し不思議な生態が、キツネのイメージと結びつき、「キツネノカミソリ」という名前になったと考えられています。夏の終わり、森の中で鮮やかなオレンジ色の花が突然現れる姿は、まさにキツネに化かされたような、ハッとする美しさがありますね。

キツネノボタン(狐の牡丹):

  • 特徴:キツネノボタンは、キンポウゲ科キンポウゲ属の越年草(または一年草)です。日本全国の道端、畑の縁、水田のあぜ道、湿った草地など、日当たりの良い場所でごく普通に見られる雑草の一つです。春から初夏にかけて、光沢のある黄色い花を咲かせます。
  • 「キツネノボタン」という名前は、その花の形と、特定の場所やイメージに結びつく「キツネ(狐)」という言葉の使われ方に由来します。

    • 「ボタン(牡丹)」の類似: 花弁が光沢のある黄色で、丸く開いた花の形が、豪華な園芸植物であるボタンの花に似ていると見立てられました。もちろん、本物のボタンに比べればずっと小さいですが、その鮮やかさから「ボタン」と名付けられたのでしょう。

    • 「キツネ(狐)」の意味: 植物の和名で「キツネ」という接頭語が使われる場合、いくつかの意味合いがあります。

      1. 人里離れた場所: キツネが出没しそうな、人目につきにくい場所や、少し荒れた場所に生えることに由来する。

      2. だます、偽る: 本物に似ているが、本物ではない、あるいは利用価値がない、といった意味合い(例:キツネノカミソリ)。

      3. 特定の動物のイメージ: キツネの毛色や尻尾など、キツネそのものの特徴を連想させる場合。

    • キツネノボタンの場合は、1の「人里離れた場所に生える」、あるいは2の「本物のボタンとは異なり、役に立たない」といったニュアンスが強いと考えられています。特に、畑の縁や草むらといった、少し荒れた場所に咲く様子が、キツネが現れそうな雰囲気と結びつけられたのかもしれません。このように、キツネノボタンという名前は、その花の美しさと、どこかミステリアスな「キツネ」のイメージを重ね合わせてつけられた、想像力豊かな和名と言えるでしょう。

キツネノマゴ(狐の孫):

  • 特徴:キツネノマゴ科。
  • 命名の由来:小さな花を咲かせ、全体の姿が狐の尻尾に見え、それが転じて「狐の孫」になったとも言われる。

キツネノヒガサ(狐の傘):

  • 特徴:キツネノヒガサ(狐の傘)は、野山でよく見かけることのできる可愛らしいキノコの一種です。一般的に毒キノコとして知られていますが、その特徴と名前の由来を見ていきましょう。
    • カサの形状と色: カサは直径2〜5cm程度で、若い時は卵形や釣鐘型をしていますが、成長すると次第に平らに開きます。色は鮮やかな黄色から黄褐色で、表面には細かい繊維状の鱗片があることもあります。水分が多いとやや粘り気が出ることがあります。
    • ヒダ: カサの裏側には、密生した黄色いヒダがあります。成長すると褐色を帯びることもあります。
    • ツカ(柄): カサと同色かやや淡い色の細長いツカが伸びています。ツカの表面はなめらかで、中身は空洞のことが多いです。根元には菌糸が伸びていることがあります。
    • 発生時期と場所: 春から秋にかけて、広葉樹林や針葉樹林の地上、あるいは朽ち木の上などに群生して発生します。比較的日当たりの良い場所を好みます。
    • 毒性: 残念ながら、キツネノヒガサは毒キノコです。食べると消化器系の症状(嘔吐、下痢など)を引き起こします。食用には向かないので、採取しても決して食べないでください。
  • 命名の由来:キツネノヒガサという名前は、その見た目の特徴と日本の民話に登場する「キツネ」に由来しています。
    • 「キツネ(狐)」: 夜中にキツネが集まって宴を開く際に、このキノコを傘として使うという、昔からの言い伝えや民話にちなんで名付けられたとされています。キツネは古くから神秘的な生き物として、人里離れた場所や夜間に現れるイメージがあり、そのような場所でひっそりと生えるこのキノコにキツネを結びつけたのでしょう。
    • 「ヒガサ(日傘)」: カサの形が、ちょうど日差しを遮る「傘」のように見えることから来ています。特に、地面からひょっこりと伸びた様子は、小さな日傘がそこにあるかのようです。

このように、キツネノヒガサは、その可愛らしい見た目と、昔から語り継がれるキツネの民話が結びついて名付けられた、趣のあるキノコの名前と言えるでしょう。

 

キリン(麒麟)

オオバキリン(大葉麒麟):

  • 特徴:オオバキリンは、サボテン科ペレスキア属の植物で、ブラジル原産の半落葉広葉低木です。一見するとサボテンには見えないような、大きな葉を持つことが特徴です。
    • 葉と茎: サボテン科としては珍しく、大きな葉を持ちます(最大で30cmにもなることがあります)。この葉は楕円形から槍倒卵形で、羽状の葉脈が目立ちます。また、幹や葉の付け根にはサボテン特有の鋭い刺があります。特に古い枝には多数の刺が密生します。
    • 花: 夏の昼間だけ、濃いピンク色の花を多数固まって咲かせます。花の直径は3〜5cm程度です。
    • 果実: 花後に梨に似た果実をつけます。
    • 用途: 自生地では葉が野菜として食用に供されることもあります。また、観賞用としても栽培されます。
    • 生育環境: 乾燥した森林やサバンナに自生し、排水性の良い土壌と十分な日光を好みます。一定以上の乾燥や低温にさらされると葉を落としますが、条件が良くなると急速に葉を茂らせます。
  • 命名の由来:オオバキリンの和名と学名は、その特徴的な「大きな葉」に由来しています。
    • 和名「オオバキリン(大葉麒麟)」:
      • この植物と同じペレスキア属には、先に日本に導入されていた「モクキリン(木麒麟)」や「サクラキリン(桜麒麟)」といった種があります。これらの「キリン」という名に準じ、本種が特に大きな葉を持つことから「大葉」が加えられ、「オオバキリン」と名付けられました。
  • 学名「Pereskia grandifolia」:
    • 属名 "Pereskia": フランスの植物学者ニコラ=クロード・ファブリ・ド・ペーレスク(Nicolas-Claude Fabri de Peiresc)への献名です。
    • 種小名 "grandifolia": ラテン語の "grandis"(大きな)と "folia"(葉)を合成したもので、「大きな葉の」という意味になります。これも、その特徴的な大きな葉に由来しています。

このように、オオバキリンはその見た目の特徴がそのまま名前の由来になっている植物です。

キリンカク(麒麟角):

  • 特徴;キリンカク(麒麟角、学名:Euphorbia neriifolia)は、トウダイグサ科ユーフォルビア属の多肉植物です。
    • 多肉質の茎: サボテンのように多肉質の茎を持つのが最大の特徴です。よく分枝し、高さ2~6メートルにも成長する常緑小低木です。主幹や大きな枝は丸く、比較的若い小枝には5つの稜(角)があります。
    • 葉: 卵形や長楕円形、またはへら状の葉を枝の先端につけます。
    • 花: 小さな杯状花序(はいじょうかじょ)と呼ばれる独特な形の花を咲かせます。花弁は存在せず、総苞(そうほう)と呼ばれる部分が赤く色づきます。花期は一般的に2月から3月とされますが、環境によっては長く咲くこともあります。
    • 樹液: トウダイグサ科の植物全般に言えることですが、白い乳液状の樹液を出します。この樹液には刺激性があり、皮膚に触れると炎症を起こすことがあるため注意が必要です。
    • 耐乾性: 乾燥に非常に強く、水やりの手間があまりかからないため、育てやすい植物とされています。
    • 観賞用: そのユニークな姿から、観葉植物として人気があります。特に、斑入りの品種や、綴化(てっか:成長点が帯状になったもの)した個体は、彫刻のような芸術的な姿で珍重されます。
  • 命名の由来:「キリンカク(麒麟角)」という名前は、その植物の姿が、伝説上の動物である「麒麟(きりん)」の角や、その堂々とした姿を連想させることに由来すると考えられています。
    具体的には、以下の点が関連している可能性があります。
      • 茎の形状: 多肉質の茎が直立し、力強い印象を与える姿が、伝説の麒麟の威厳ある姿に例えられた。
      • 「角」の表現: 若い枝に見られる稜(角)や、全体的な力強い印象から「角」という言葉が使われた。
    • また、学名についても見てみましょう。
      • Euphorbia(ユーフォルビア): 属名で、ローマ時代のモーリタニアの医師エウフォルブス(Euphorbus)の名に因んでいます。彼はこの植物の樹液を薬として使っていたとされています。
      • neriifolia(ネリイフォリア): 種小名で、「キョウチクトウのような葉の」という意味があります。これは、葉の形がキョウチクトウに似ていることに由来します。

このように、キリンカクは、その特徴的な見た目から想像力を掻き立てる名前が付けられています。

キリンカン(キリン冠):

  • 特徴;キリンカン(麒麟冠、学名:Euphorbia grandicornis)は、トウダイグサ科ユーフォルビア属に属する多肉植物です。その特徴と命名の由来について詳しく見ていきましょう。
    • 多肉質の茎と鋭いトゲ: 最大の特徴は、硬く鋭いトゲに覆われた多肉質の茎です。茎は通常3つの稜(角)を持ち、翼状に張り出していることが多く、これが植物全体に独特のゴツゴツとした印象を与えます。トゲは対になって双方向に出ているため、英名では "Big Horned Euphorbia" や "Cow's Horn"(牛の角)とも呼ばれます。
    • 草丈: 高さ2メートルほどに成長する小低木です。
    • 葉: 小枝の先に小さな葉をつけますが、葉はあまり目立たず、サボテンのように見えることが多いです。
    • 花: 小さな杯状花序(はいじょうかじょ)と呼ばれる独特な構造の花を咲かせます。花弁はなく、総苞が黄色などに色づきます。花は茎の稜に沿ってひっそりと咲き、5ミリメートル程度と非常に小さいため、ほとんど目立ちません。
    • 樹液: トウダイグサ科の植物に共通して、白い乳液状の樹液を出します。この樹液には刺激性があり、皮膚に触れるとかぶれることがあるため、取り扱いには注意が必要です。
    • 耐乾性: 乾燥に非常に強く、多肉植物として育てやすい部類に入ります。
    • 観賞用: そのユニークな姿から、観葉植物として栽培されます。特に、その力強い姿は独特の存在感を放ちます。
  • 命名の由来:「キリンカン(麒麟冠)」という和名、および「麒麟角」と同様に、伝説上の動物である「麒麟(きりん)」に由来すると考えられます。
    •  具体的には、以下のような理由が挙げられます。
      • 「冠」の意味: キリンカンの茎に見られる複数の稜(角)が、まるで麒麟の頭に戴く「冠」のように見えることから、「麒麟冠」と名付けられた可能性があります。
      • 麒麟のイメージ: 麒麟が持つ威厳や力強さ、あるいはその姿が持つ独特の美しさが、この植物の多肉質の茎と鋭いトゲが織りなす独特の造形に重ね合わされたのかもしれません。
    • 学名についても見てみましょう。
      • Euphorbia(ユーフォルビア): 属名で、ローマ時代のモーリタニアの医師エウフォルブス(Euphorbus)の名に因んでいます。彼はこの植物の樹液を薬として使っていたとされています。
      • grandicornis(グランディコルニス): 種小名で、ラテン語の「grandis(大きな)」と「cornu(角)」が合わさった言葉で、「大きな角を持った」という意味です。これは、植物の茎に生える大きなトゲや稜をよく表しています。

このように、キリンカンは、その特徴的な見た目から、伝説の生き物である麒麟の「冠」や「角」を連想させる名前が付けられました。

キリンソウ:

  • 特徴:キリンソウ(麒麟草、学名:Phedimus aizoon、シノニム:Hylotelephium aizoon)は、ベンケイソウ科ムラサキベンケイソウ属(またはキリンソウ属)の多年草です。その特徴と命名の由来について解説します。
    • 多肉質の葉と茎: ベンケイソウ科の植物らしく、多肉質の葉と茎を持ち、乾燥に強いのが特徴です。水分を蓄えることができるため、岩場や乾燥した日当たりの良い場所でも生育できます。
    • 草丈: 10cmから50cm程度になりますが、環境によって大きく異なります。
    • 花: 星形をした黄色い小さな花が、茎の先端に多数集まって咲きます。花期は一般的に5月から7月頃で、鮮やかな黄色が目を引きます。
    • 生育環境: 日当たりと水はけの良い場所を好み、日本の山野の岩場や傾斜地、河原などに自生しています。
    • 耐寒性・耐暑性: 日本の気候に適応しており、非常に丈夫で、耐寒性も耐暑性も兼ね備えています。
    • 用途: 乾燥に強く、丈夫であることから、ロックガーデンや屋上緑化、グランドカバーなどによく利用されます。また、古くから薬草としても用いられてきました。
  • 命名の由来:「キリンソウ(麒麟草)」という名前の由来には、いくつかの説があります。
    • 「黄輪草(きりんそう)」からの転訛説: 最も有力な説とされています。キリンソウの鮮やかな黄色い花が輪のように集まって咲く様子を「黄輪」と表現し、それが転じて「キリンソウ」となったというものです。その後、縁起の良い伝説の動物「麒麟」の漢字が当てられるようになったと考えられます。
    • 麒麟のイメージとの関連説:姿が麒麟に似ている説: 伝説の麒麟は草を食べる慈悲深い動物とされており、その穏やかな姿と、キリンソウが群生する様子が結びつけられたという説です。
    • 縁起の良い植物であること: 麒麟が吉兆の象徴であることから、生命力が強く丈夫なこの植物に縁起の良い名前が付けられたという見方もあります。
    • 学名についても見てみましょう。
      • Phedimus(フェディムス) または Hylotelephium(ヒロテルフウム): 属名ですが、分類が流動的で様々な説があります。
      • aizoon(アイズーン): 種小名で、ギリシャ語の「aei(常に)」と「zoon(生きている)」に由来し、「常に生きている」「不死身の」といった意味があります。これは、キリンソウの非常に強い生命力や丈夫さを表しています。

これらの説から、キリンソウの名前は、その特徴である「黄色い花」と「丈夫な生命力」が合わさって付けられた可能性が高いと考えられます。

 

金魚

キンギョソウ:

  • 特徴:キンギョソウ(金魚草、学名:Antirrhinum majus)は、オオバコ科キンギョソウ属の一年草または多年草です(園芸的には一年草として扱われることが多いです)。
    • 独特な形状の花: 最も特徴的なのは、その名前の由来にもなっている、ユニークな形の花です。唇形花(くちびるけいか)と呼ばれる形状で、花を横から見ると、まるで金魚が口を開けているか、あるいは金魚の尾ひれのように見えることから、この名が付けられました。花の基部を軽く押すと、金魚が口をパクパクさせるように開閉するのも面白い特徴です。
    • 豊富な花色: 白、黄、ピンク、赤、オレンジ、紫、複色など、非常に幅広い花色があります。グラデーションの美しい品種も多く、園芸品種が豊富です。
    • 咲き方: 一本の花茎に多数の花が穂状に咲き上がります。草丈や咲き方によって、高性種(切り花向き)、中性種(花壇、鉢植え向き)、矮性種(鉢植え、寄せ植え向き)などがあります。
    • 草丈: 品種によって様々ですが、15cmほどの矮性種から、1m近くになる高性種まであります。
    • 花期: 主に春から初夏にかけて(4月~6月頃)が最盛期ですが、品種によっては秋にも咲き、比較的長く花を楽しむことができます。
    • 葉: 披針形(細長い楕円形)で、対生または互生します。
    • 耐寒性: 比較的耐寒性があり、暖地では冬越しして多年草となることもありますが、一般的には一年草として扱われます。霜に当たると枯れてしまうことがあります。
    • 用途: その豊富な花色と可愛らしい花の形から、花壇、鉢植え、寄せ植え、切り花として非常に人気があります。
  • 命名の由来:「キンギョソウ(金魚草)」という名前は、花一つ一つの形が、日本の観賞魚である「金魚(きんぎょ)」にそっくりであることに由来しています。
  • 特に、以下の点から金魚が連想されます。
    • 花の形: 花弁が上下に分かれ、まるで金魚の口のように見える部分や、下側の花弁が金魚の尾ひれのように見える部分があります。
    • 全体の印象: 穂状に咲く花が、群れをなして泳ぐ金魚の姿を思わせる、という解釈もあります。
  • 学名についても見てみましょう。
    • Antirrhinum(アンティリナム): 属名で、ギリシャ語の「anti(~のような)」と「rhin(鼻)」に由来します。「鼻のような」という意味で、花の形が動物の鼻に似ていることに因むとされています。
    • majus(マユス): 種小名で、ラテン語で「大きい」という意味です。
  • 英名では「Snapdragon(スナップドラゴン)」と呼ばれますが、これは花の形が竜(ドラゴン)の口に似ており、花を閉じると「カチッ(snap)」と音がする(ような動きをする)ことに由来しています。

このように、キンギョソウは、その特徴的な花の形が様々な生き物に例えられ、世界中で愛されている植物です。

 

クマ(熊)

クマドウジ(熊童子):

  • 特徴:クマドウジ(熊童子、学名:Cotyledon tomentosa)は、ベンケイソウ科コチレドン属の多肉植物です。そのユニークな見た目から非常に人気があります。
  • クマドウジの最も大きな特徴は、その愛らしい見た目です。
    • 肉厚で毛深い葉: 葉は肉厚でぷっくりとしており、全体が白い短毛で覆われています。この毛があることで、触るとフェルトのような優しい感触がします。
    • 「熊の手」のような形: 葉の先端には、赤褐色または茶色のギザギザした爪のような突起が数個あります。この毛深い葉と先端の突起が、まるで**小さな熊の手(あるいは肉球)**のように見えることから、その名前が付けられました。
    • 生育形態: 一般的には、草丈が低く横に広がるタイプが多いですが、環境によってはやや立ち上がることもあります。株が成長すると、枝分かれして群生します。
    • 花: 春から初夏にかけて、釣鐘状の可愛らしい花を咲かせます。花の色はオレンジや黄色が多いです。
    • 耐乾性: 多肉植物なので乾燥には非常に強く、頻繁な水やりは不要です。過湿を嫌うため、水はけの良い土壌と日当たりの良い場所を好みます。
    • 耐寒性: 比較的耐寒性がありますが、冬場は霜に当てないように注意が必要です。日本の多くの地域では、冬は室内での管理が推奨されます。
  • 命名の由来:「クマドウジ(熊童子)」という和名は、その植物の葉の形が「熊の小さな手や肉球」に似ていることに由来します。
    • 「熊」: 葉全体を覆う白い毛と、葉の先端のギザギザした部分が、熊の毛並みや爪を連想させます。
    • 「童子」: 「童子」とは、子供や幼いものを指す言葉です。葉のサイズが比較的小さく、可愛らしい印象であることから、「熊の子供の手」という意味合いで「童子」が使われたと考えられます。
  • 学名の「Cotyledon tomentosa」についても見てみましょう。
    • Cotyledon(コチレドン): 属名で、ギリシャ語の「kotyle(カップ、くぼみ)」に由来すると言われています。これは、葉の形状や、一部の種子の形に由来すると考えられます。
    • tomentosa(トメントーサ): 種小名で、ラテン語の「tomentosus(綿毛の多い、軟毛のある)」という意味です。これは、クマドウジの葉を覆う白い毛の特徴をよく表しています。

このように、クマドウジは、その見た目の特徴が名前にも直結しており、多くの人に親しまれる理由の一つとなっています。

クマノミズキ(熊野水木):

  • 特徴:クマノミズキ(熊野水木、学名:Swida macrophylla または Cornus macrophylla)は、ミズキ科ミズキ属の落葉高木です。日本原産で、白い花と特徴的な樹皮が魅力の植物です。
    • クマノミズキは、その季節ごとの美しい姿が特徴です。
      • 白い小さな花の集合: 5月から7月頃にかけて、枝先に多数の白い小さな花が密集して咲きます。これらの花が集まって、直径10〜20cmほどの大きな円錐状の**白い花序(かじょ)**を形成し、樹冠全体が白く覆われたように見えます。この花序は遠目にも非常に目立ち、庭木や公園樹として人気があります。
      • 大きな葉: ミズキの仲間の中でも特に葉が大きく、長さは10〜20cmほどになります。葉脈がはっきりしており、秋には美しく紅葉します。
      • 樹形: 樹高は10〜20mにもなる高木で、樹形は整った広卵形になります。
      • 果実: 花後に小さな球形の実をつけます。最初は緑色ですが、晩夏から秋にかけて黒紫色に熟し、鳥たちの餌となります。
      • 樹皮: 成木になると、樹皮が縦に深く裂けて独特の模様を見せます。この樹皮も観賞価値があります。
      • 生育環境: 日当たりの良い場所から半日陰まで適応し、比較的湿潤な土壌を好みます。日本の山地や丘陵地によく自生しています。
  • 命名の由来
    「クマノミズキ(熊野水木)」という和名は、主に以下の2つの要素から構成されていると考えられます。
    • 「熊野」について:
      • 熊野地方に多いから: 最も有力な説は、紀伊半島南部の「熊野地方」に多く自生していた、またはそこで初めて発見・認識されたため、「熊野」の名が冠されたというものです。
    • 「クマ」は大きい意味: 「クマ」という音が、植物の名前において「大きい」や「強い」といった意味合いで使われることがあります。この場合、葉が大きいことや樹高が高くなることから、「大きなミズキ」という意味で「クマ」が用いられ、それに当て字として「熊野」の漢字が使われた可能性も考えられます。しかし、地域との結びつきが強い「熊野」説の方が一般的です。
    • 「ミズキ」について:
      • 「ミズキ」は、ミズキ科ミズキ属の植物に共通する名前で、春先に枝を切ると、切り口から水が滴り落ちるほど多くの水液を吸い上げることに由来します。クマノミズキもこの特徴を持つため、「水木」の名が付けられました。
    • したがって、「クマノミズキ」は、「熊野地方でよく見られる(または、葉が大きいなどの特徴を持つ)水分の多い木」という意味合いで命名されたと考えられます。
    • 学名の「Swida macrophylla」や「Cornus macrophylla」についても見てみましょう。
      • Swida(スウィダ) または Cornus(コルヌス): いずれもミズキ属の学名です。分類体系によってどちらの属名が使われるか異なります。
      • macrophylla(マクロフィラ): 種小名で、ラテン語の「macro(大きな)」と「phylla(葉)」から成り、「大きな葉の」という意味です。これは、クマノミズキの葉が大きいという特徴を正確に表しています。

このように、クマノミズキはその自生地や植物の特性が名前によく表れていますね。

 

クジャク(孔雀)

カブダチクジャクヤシ:

  • 特徴:カブダチクジャクヤシ (Caryota mitis) は、ヤシ科の植物で、特にその特徴的な葉の形と株立ちする性質から、観賞用として人気があります。
  • 葉の形(最も特徴的): 最大の特徴は、その小葉が魚の尾びれ(fishtail)のような形をしていることです。通常のヤシの葉は細長い羽状ですが、カブダチクジャクヤシの小葉は幅が広く、上端が不規則にギザギザと切れ込んでおり、まるで魚の尾びれや孔雀の羽を広げたように見えます。葉全体としては「2回羽状複葉」と呼ばれる複雑な構造をしています。
  • 株立ち性: 成長すると、地際から複数の幹が立ち上がり、株立ち状になるのが特徴です。この点が、一本の幹が伸びる一般的なクジャクヤシ (Caryota urens) との大きな違いです。
  • 樹高: 屋外で生育すると高さ10mにも達しますが、鉢植えや室内では数メートル程度に収まります。
  • 幹: 幹は細く、直径8~20cmほどの円柱形です。葉が落ちた跡が環状に残り、竹のような見た目になることもあります。とげはありません。
  • 花と実: 葉の間から下垂する肉穂花序(にくすいかじょ)に、雄花と雌花が多数密に咲きます。花の後には、直径2cmほどの球形の赤い実が熟します。
  • 生態: 幹が花を咲かせ、実を結ぶと、その幹は枯れてしまいます(単子葉植物に多い性質です)。しかし、株立ち性であるため、他の新しい幹が成長を続けることで、植物全体としては生き続けます。
  • 耐寒性: 比較的寒さに弱く、日本では屋外での越冬は沖縄などの温暖な地域に限られます。一般的には、冬は10℃以上を保てる屋内で管理されます。
  • 命名の由来:
    • 「カブダチ(株立ち)」の和名:
      • これは、上記の特徴である、根元から複数の幹が立ち上がる性質に由来しています。一本幹のクジャクヤシと区別するために付けられたものです。
    • 「クジャクヤシ(孔雀椰子)」の和名:
      • これもその特徴的な葉の形に由来します。広げた孔雀の羽のような葉の姿から名付けられました。英名でも「Fishtail Palm(フィッシュテールパーム)」と呼ばれ、魚の尾びれに見立てられています。
    • 学名 Caryota mitis について:
      • Caryota(属名): ギリシャ語の「karyon(堅果)」に由来するとされており、これは果実の形状がクルミに似ていることにちなむと考えられています。
      • mitis(種小名): 「柔和な」「温和な」といった意味を持ちます。とげがないことや、比較的管理しやすい性質を指している可能性も考えられますが、詳細な命名意図は不明瞭な部分もあります。

総合すると、カブダチクジャクヤシはそのユニークな「魚の尾びれ」のような葉と、根元から多数の幹が伸びる「株立ち」の性質が、和名や英名、そして視覚的な特徴の由来となっています。

 

クモ(蜘蛛)

クモキリソウ(蜘蛛切草、雲切草):

  • 特徴:ラン科の植物で、独特な花を咲かせます。
  • 命名の由来:植物の和名には、しばしば複数の解釈や由来が存在することがあります。これは、特定の文献に明確な記載がない場合や、観察者によって感じ方が異なるためです。
    クモキリソウの場合、以下の二つの由来が有力視されています。
    • 「蜘蛛が糸を切る(切り裂かれる)ような花形」説: 花弁の複雑な形が蜘蛛やその体が切られたように見えるという説です。これは花の具体的な形状に注目したものです。
    • 「雲を切るように(雲がかる場所で)咲く」説: 自生地の環境や花茎の伸び方に注目した説です。
  • どちらの説も、クモキリソウの神秘的な雰囲気によく合っており、和名の奥深さを示していると言えるでしょう。特に、山地の湿った林床に自生し、薄暗い中でひっそりと咲く姿を考えると、「雲を切るように咲く」という表現も非常に詩的で、その情景をよく捉えていると感じられます。

 

サギ(鷺)

サギソウ(鷺草):

  • 特徴:ラン科の植物。湿地や水辺に自生し、夏の終わりから秋にかけて可憐な花を咲かせます。その優雅な姿から、園芸植物としても非常に人気があります。
  • 命名の由来:その名の通り、シラサギ(白鷺)が空を飛ぶ姿にそっくりな花を咲かせることから名付けられました。
    特に、白い花びらが鳥の羽根のように広がっており、下唇弁(かしんべん)と呼ばれる部分が細かく裂けてフリルのようになっているのが特徴です。
    このフリルが、シラサギが翼を広げて舞う姿や、脚を伸ばして飛ぶ姿に見立てられたと言われています。

 

サル(猿)

サルナシ(猿梨):

  • 命名の由来: 果実が熟すと甘くなり、サルが好んで食べること、あるいは、サルが食べるような小さな梨、という意味で名付けられました。

サルスベリ(百日紅):

  • 特徴:ミソハギ科。「サルスベリ」は、夏から秋にかけて長く美しい花を咲かせる落葉性の花木です。漢字では「百日紅(ひゃくじつこう)」と書かれることもあり、これはその開花期間の長さに由来します。
  • 命名の由来:幹が滑らかで猿も滑り落ちそうに見えることから。サルスベリの名前の由来は、ご想像の通り、そのつるつるとした幹の表面にあります。
    • 「猿も滑る(サルスベリ)」: 木登りが得意な猿でさえ、この木の幹はあまりに滑らかで、滑り落ちてしまうだろうという意味で名付けられました。実際に猿が滑るかどうかはともかく、それほどつるつるしているという様子を表現したものです。
    • また、別名である「百日紅(ひゃくじつこう)」の由来は、以下の通りです。
      • 「百日間紅い花を咲かせる」: 夏から秋にかけて約100日間にわたって、鮮やかな紅色の花(他の色の花もありますが、代表的な色が紅色であったため)を咲かせ続けることから、この漢字が当てられました。
  • このように、サルスベリという和名は幹の特徴から、百日紅という漢字名は開花期間の長さと花の色から名付けられています。

 

シカ(鹿)

カゴノキ(鹿子の木)

カゴノキ(鹿子の木、Litsea coreana) は、クスノキ科の常緑高木で、その名の通り特徴的な樹皮と、他のクスノキ科の植物とは少し異なる性質を持っています。

  • 特徴:樹皮: カゴノキの最大の特徴は、成長するにつれて樹皮が薄くはがれ落ち、その跡が鹿の子(かのこ)模様になることです。淡い灰黒色から茶褐色の樹皮に、剥がれた部分の赤褐色や緑色、淡黄色などが混じり合い、まるでジグソーパズルのような独特の斑模様を形成します。この模様は、特に成木で顕著に見られます。
    • 樹形: 暖地に自生する常緑高木で、高さは15m〜20m、大きなものでは胸高直径60cm以上にもなります。
    • 葉: 葉は枝先に集まって互生し、長楕円形から倒卵状披針形です。縁はなめらか(全縁)で、葉の表面は光沢のある緑色、裏面は白っぽい粉白色をしています。薄い革質で、クスノキのような樟脳の匂いはありません。
    • 花: 雌雄異株(雄株と雌株がある)で、9月ごろに葉の脇に淡黄色の小さな花を咲かせます。雄花は雄しべが伸びてやや目立ちますが、雌花は控えめです。
    • 実: 雌株では、翌年の7月〜8月ごろに直径8mmほどの楕円形の赤い実が熟します。花が咲いてから実が熟すまでに約1年かかるため、花と実を同時に見ることができます。
    • 材: 材は硬く緻密で、床材、建材、楽器、太鼓や鼓の胴などにも利用されます。特に、鹿の子模様の樹皮は床柱などにも生かされます。
  • 命名の由来:カゴノキ(鹿子の木)という和名は、その最も特徴的な樹皮の模様に由来します。
    • 「鹿の子(かのこ)模様」に似ているから: 樹皮が薄く剥がれ落ちた跡が、子鹿の背中に見られる白い斑点模様(鹿の子模様)にそっくりであることから、「鹿の子の木」と呼ばれるようになりました。これが転じて「カゴノキ」となりました。
    • カゴノキは、そのユニークな樹皮のおかげで、山の中でも比較的容易に識別できる植物として知られています。

 

スズメ(雀)

スズメノエンドウ(雀の豌豆):

  • 特徴:マメ科。小さな豆果がスズメが食べるエンドウ豆に似ていることから。
  • 命名の由来: マメ科の植物で、小さな豆果をつけます。
    この豆果が、スズメが食べるエンドウ豆に似ていること、またはスズメがこの植物の種子を好んで食べることに由来すると言われています。

スズメノカタビラ(雀の帷子):

  • 特徴:イネ科。
  • 命名の由来:スズメが着る帷子(かたびら)のように薄い葉を持つことから。

スズメノテッポウ(雀の鉄砲):

  • 特徴:イネ科。スズメノテッポウは、イネ科の越年草(秋に芽生え、冬を越して翌春に花を咲かせ、夏には枯れる植物)です。水田のあぜ道や畑、道端など、湿り気のある場所に普通に生え、春先に目にする機会が多い雑草です。
  • 命名の由来:
    • 穂の形が鉄砲に似ており、スズメが隠れるのに適していることから。
    • 「スズメノテッポウ」というユニークな名前は、その花穂(かすい)の形と、日本で身近な鳥である「スズメ」との関係に由来すると言われています。
    • 「鉄砲(テッポウ)」の由来: 春になると、細長い茎の先に棒状の細長い穂をつけます。この穂が、昔の火縄銃や火打ち石式の「鉄砲」の銃身(銃口の部分)に似ていることから、「テッポウ」と名付けられました。特に、穂の先端が少し膨らんで見える様子が、火縄銃の先端に似ているとされたのかもしれません。

スズメノヤリ(雀の槍):

  • 特徴;イネ科。
  • 命名の由来:穂の形が槍に似ていることから。

スズメウリ(雀瓜):

ウリ科。
小さなウリで、スズメが好むことから。

スズメガヤ(雀茅):

  • 特徴:イネ科の植物で、小さな穂をつけます。
  • 命名の由来:スズメがこの穂をついばむこと、またはスズメが隠れるのにちょうど良い大きさの草であることに由来すると言われています。

 

ゾウ(象)

エレファントアップル:

  • 特徴:エレファントアップル(学名:Dillenia indica)は、ビワモドキ科ビワモドキ属の常緑高木で、和名では「ビワモドキ」とも呼ばれます。インド、東南アジアの熱帯・亜熱帯地域が原産で、その名の通り、ゾウが好んで食べる大きな果実が特徴的な植物です。
    • 樹形・樹皮: 高さ15〜30メートルにもなる大きな木です。樹皮は赤褐色で、剥がれやすい性質があります。
    • 葉: 長さ15〜36cm(大きいものでは75cmにもなる)と非常に大きな葉を持ちます。葉は厚く革質で、表面にはくっきりとした平行な葉脈が多数あり、波打つような独特の形状をしています。その見た目が日本の「枇杷(ビワ)」の葉に似ていることから、和名で「ビワモドキ」と呼ばれています。
    • 花: 直径15〜20cmにもなる大きな白い花を咲かせます。5枚の白い花弁と多数の黄色い雄しべが特徴的です。花は夕方には花弁が落ちることがあります。
    • 果実: エレファントアップルの最も特徴的な部分です。直径5〜12cmの丸くて大きな緑色の果実をつけます。この果実は、萼(がく)が肥大して多肉質になったもので、中に食用になる繊維状の果肉と多数の種子が含まれています。未熟な果実は酸味が強く、熟すと甘酸っぱくなり、インドや東南アジアではカレーやジャム、チャツネなどに利用されます。
    • 生態: 原産地では、特にゾウやサルなどの大型の草食動物がこの果実を食料としており、ゾウは種子散布において重要な役割を果たしています。
  • 命名の由来:エレファントアップルという名前は、その果実と、それを食べる動物に直接由来しています。
    • エレファント(Elephant): その名の通り、**ゾウ(Elephant)**がこの植物の大きな果実を非常に好んで食べることから来ています。原産地であるインドの保護林などでは、ゾウにとって重要な食料源となっており、「ゾウのリンゴ」と呼ばれています。
    • アップル(Apple): 大きな丸い果実が、リンゴ(Apple)を連想させることから名付けられました。

このように、エレファントアップルは、その大きな果実がゾウの主要な食料となっているという生態的な特徴が、そのまま植物名になった、非常に分かりやすい名前です。

エレファントイヤー:

  • 特徴:エレファントイヤー(Elephant Ear)は、特定の植物の種名ではなく、サトイモ科(Araceae)のいくつかの属に属する植物で、特に非常に大きな葉を持つものの総称として使われる園芸名です。主なものとしては、以下の属の植物が「エレファントイヤー」と呼ばれることが多いです。
    • コロカシア属(Colocasia):タロイモなどが含まれる。
    • アロカシア属(Alocasia):クワズイモなどが含まれる。
    • キサントソーマ属(Xanthosoma):
    • フィロデンドロン属(Philodendron)の一部
    • モンステラ属(Monstera)の一部(ただし、こちらは「モンステラ」と個別で呼ばれることが多い)
    • これらの植物は、熱帯・亜熱帯地域が原産で、湿度の高い環境を好みます。
  • 「エレファントイヤー」と呼ばれる植物に共通する主な特徴は以下の通りです。
    • 巨大な葉: 最大の特徴は、その名の通りゾウの耳のように非常に大きな葉を持つことです。葉の大きさは品種や生育環境によりますが、小型のものでも数十センチ、大きいものでは1メートルを超えることもあります。
    • 葉の形状: 葉は一般的に卵形やハート形をしており、多くは光沢があり、葉脈がはっきりしています。品種によっては、葉の色が緑だけでなく、黒っぽい紫色、赤みがかった色、斑入りなど多様です。また、葉の表面に独特の質感を持つものもあります。
    • 地下茎(球茎・塊茎): 多くは地下に球茎や塊茎(イモのような部分)を持ち、そこから葉や根を伸ばします。この球茎は食用となる種類(タロイモなど)もありますが、観賞用の品種は有毒なものが多いので注意が必要です。
    • 生育環境: 高温多湿を好み、日当たりが良い場所から半日陰でよく育ちます。多くの品種は湿潤な土壌を好みます。
    • 観葉植物としての利用: その圧倒的な存在感と美しい葉のため、庭園のアクセント、鉢植えの観葉植物として広く利用されています。トロピカルな雰囲気を演出するのに最適です。
  • 命名の由来:「エレファントイヤー」という名前は、その植物が持つ最も顕著な特徴である葉の大きさや形が、まるでゾウの大きな耳にそっくりであることに直接由来しています。
    • エレファント(Elephant): ゾウを指します。
    • イヤー(Ear): 耳を指します。

このように、複数の植物の総称として、その見た目の特徴を非常に分かりやすく表現した園芸名として定着しています。

 

タヌキ(狸)

タヌキモ(狸藻):

  • 特徴:タヌキモ科。食虫植物の一種です。
  • 命名の由来:捕虫嚢がタヌキの尻尾のように見えることから。茎の途中に捕虫嚢(ほちゅうのう)という袋があり、これがタヌキの腹袋に似ていることから名付けられました。

 

チョウ(蝶)

コチョウラン(胡蝶蘭):

  • 特徴:コチョウラン(胡蝶蘭、学名:Phalaenopsis aphrodite など、属名:Phalaenopsis)は、ラン科コチョウラン属に属する着生ランの総称です。主に熱帯アジア原産で、その優雅で美しい花姿から「洋ランの女王」とも称され、贈答用や観賞用として世界中で非常に人気があります。コチョウランの主な特徴は以下の通りです。
    • 着生植物: 樹木などに根を張り付かせ、空気中の水分や枯葉から養分を得て生育する着生植物です。そのため、根は光合成を行い、水分を吸収する特殊な構造を持っています。
    • 葉: 肉厚で光沢のある楕円形の葉が数枚、根元から放射状に伸びます。水分を蓄える能力が高く、乾燥に耐えることができます。
    • 花: コチョウランの最大の魅力は、その美しい花です。
    • 花茎の伸長: 長くしなやかな花茎を伸ばし、その先に多くの花をつけます。
    • 花形: 花びらは厚く、光沢があり、左右対称に広がります。特に、上側の花弁(背萼片と側花弁)と、下側の大きな唇弁(リップ)が特徴的です。唇弁は中央が突き出ていたり、複雑な模様が入っていたりします。
    • 色彩: 白が最も一般的ですが、ピンク、紫、黄色、緑、斑入りなど、非常に多様な花色や模様があります。
    • 花持ち: 一度咲くと非常に花持ちが良く、適切な管理をすれば1ヶ月から数ヶ月にわたって咲き続けるため、長く観賞を楽しむことができます。
    • 開花時期: 自然界では春に開花することが多いですが、温室栽培では年間を通して開花調節が可能です。
    • 根: 太く白い根が特徴で、空気中に出る根(気根)もあります。この根が健全であることが栽培の成功の鍵となります。
  • 命名の由来:コチョウラン(胡蝶蘭)という名前は、その花が持つ特徴的な形状に直接由来しています。
    • コチョウ(胡蝶): コチョウランの花が、まるでひらひらと舞う蝶(胡蝶)の群れのように見えることから、「胡蝶」という言葉が使われています。特に、左右に広がる大きな花弁と、中央の唇弁が蝶の胴体や触角を連想させるため、この名が付きました。
    • ラン(蘭): ラン科の植物であるため、そのまま「蘭」という漢字が使われています。
      • 学名である「Phalaenopsis(ファレノプシス)」も、ギリシャ語の「phalaina(蛾)」と「opsis(~のような)」に由来し、「蛾のような」という意味を持ちます。これは、夜間に飛ぶ蛾の姿に似ていると感じられたためと言われています。
        日本語名としては「蝶」の方がより優雅で美しい印象を与えるため、「胡蝶蘭」という名前が定着しました。

オウコチョウ(黄胡蝶):

  • 特徴:オウコチョウ(学名:Caesalpinia pulcherrima)は、マメ科ジャケツイバラ属の常緑小高木です。西インド諸島が原産とされ、その鮮やかで美しい花から、世界の熱帯から亜熱帯地域で観賞用に広く栽培されています。沖縄県では「沖縄の三大名花」の一つとしても知られています。
    • 樹形・樹皮: 樹高は2~5メートルほどになる小高木です。主茎は真っ直ぐに伸びず、不規則に曲がるのが特徴です。枝には下向きの鋭いトゲがあります。
    • 葉: 長さ30cmにも達する偶数二回羽状複葉で、シダのような繊細な印象を与えます。6~9対の羽片に、さらに10~12対の小さな小羽片が付きます。
    • 花: 6月~10月頃(暖かい地域では年間を通して咲くことも)に、茎の先端や葉の腋から総状花序、あるいは円錐花序を形成し、直径約5cmの鮮やかな花を多数咲かせます。
      花弁は5枚で、橙色から黄色、または濃桃色~赤色のものがあり、花弁の縁には黄色の襞(ひだ)があるのが特徴です。
      花の中心からは、長く伸びた10本の雄しべと花柱(雌しべ)が突き出ており、これが非常に印象的で、孔雀の羽や蝶の触角のようにも見えます。
      特に、橙色や黄色の花弁と、そこから長く突き出す紅色の雄しべや花柱のコントラストが美しいとされています。
    • 果実: 花後にできる果実は扁平な豆果(マメ科植物の果実)で、長さは10cmほどになります。黒褐色に熟します。種子にはタンニンが含まれ、有毒です。
    • その他:
    • 日光と暖かい温度を好み、十分な水やりが必要ですが、排水が良い土壌を好みます。
    • 耐寒性はある程度ありますが、日本本土では温室栽培されることが多いです。沖縄など南西諸島では露地で栽培されています。
    • カリブ海の島国バルバドスの国花でもあります。
  • 命名の由来:オウコチョウの命名は、その花が持つ視覚的な特徴に由来しています。
    • オウ(黄): この植物には、鮮やかな黄色や橙色の花を咲かせる品種が多いことから、「黄」の字が使われています。実際に「黄花の黄胡蝶(キバナノオオゴチョウ)」という変種もあります。
    • コチョウ(胡蝶): 花が枝に群れ咲く様子が、まるで多くの蝶(胡蝶)がひらひらと舞い飛んでいるように見えることに由来します。特に、長く伸びた雄しべや花柱が蝶の触角や脚を連想させるとも言われています。つまり、「黄色の蝶が舞うような花」という意味合いで「黄胡蝶」と名付けられました。
      • 学名の種小名「pulcherrima」はラテン語で「最も美しい」という意味を持ち、この花の美しさを表しています。
      • 英語では「Peacock flower(孔雀の花)」や「Barbados-pride(バルバドスの誇り)」などとも呼ばれ、世界中でその美しさが称えられています。

 

ツル(鶴)

ツルノゲイトウ(鶴の鶏頭):

  • 特徴:ヒユ科。
  • 命名の由来:花の形が鶏頭に似ており、鶴が首を伸ばしたような姿に見えることから。

オリヅルラン(折鶴蘭):

  • 特徴;キジカクシ科オリヅルラン属の常緑多年草で、その特徴と名前の由来は以下の通りです。葉の形状と色: 細く長い葉が放射状に伸び、しなやかな曲線を描く姿が優美です。多くは緑色の葉に白やクリーム色の斑が入る「斑入り(ふいり)」タイプで、モダンな雰囲気を持っています。品種によっては、葉全体が緑色のものや、葉が内側にカールしているものもあります。
    • ランナーと子株: 春から秋にかけて、親株から細長い茎(ランナーまたは匍匐茎)を伸ばし、その先に小さな子株をつけます。この子株は、土に触れると根を出し、新しい株として育つことができます。
    • 花: ランナーの途中に、目立たない小さな白い花を咲かせます。
    • 根: 鉢から取り出すと、細いひげ根と水分を蓄えることができる太い多肉質の根を持っていることがわかります。この太い根のおかげで、乾燥に強く、水やりの頻度が少なくて済み、比較的丈夫で育てやすい植物として知られています。
    • 原産地と耐性: アフリカの乾燥した熱帯地域が原産で、暑さには強いですが、寒さにはやや弱い性質があります。しかし、比較的耐寒性もあり、霜が当たらなければ0℃以上で冬越しも可能です。
    • サイズ: 草丈は10〜30cm程度と、大きすぎず小さすぎないサイズ感で、室内での観葉植物として人気です。ハンギングバスケットにも適しています。
  • 命名の由来:和名「オリヅルラン(折鶴蘭)」の由来は、その特徴的な見た目にあります。
    • 親株から伸びた細長いランナーの先にできる子株が、まるで折り紙の「折り鶴」が羽を広げてぶら下がっているように見えることから、「折鶴蘭」と名付けられました。
    • 「ラン」という名前がついていますが、実際のところラン科の植物とは特に関係ありません。
    • また、学名の「Chlorophytum comosum」は、ギリシャ語の「chloro(緑)」と「phytum(草)」、そしてラテン語の「comosum(髪のようにふさふさした)」が語源とされています。
    • 英語では、ランナーが蜘蛛の巣を髣髴とさせることから「Spider plant(スパイダープラント)」とも呼ばれます。

 

トラ(虎)

オウハントラノマキ:

  • 特徴:オウハントラノマキ(黄斑虎の巻)は、正式な植物名としては存在しません。しかし、この名前は、サンスベリア(Sansevieria)属の特定の品種で、葉に虎の縞模様のような斑(ふ)が入り、特に黄色い斑を持つものを指す園芸名として使われている可能性が非常に高いです。特に「トラノマキ」と呼ばれるのは、サンスベリア・トリファスキアータ 'ローレンティー' (Sansevieria trifasciata 'Laurentii') や、その園芸品種、あるいはそれに類する品種が一般的です。これらのサンスベリアの葉に現れる特徴的な模様から、このようなユニークな名前が付けられました。もし「オウハントラノマキ」が特定のサンスベリアの品種を指しているのであれば、その特徴は以下のようになります。
    • 葉の形状: 硬質で肉厚な剣状の葉が、根元からまっすぐに立ち上がって伸びます。品種によっては、葉がやや波打ったり、短いロゼット状に広がるものもあります。
    • 「虎の巻」模様: 葉の表面には、濃い緑色を基調とし、まるで虎の縞模様のような横縞の斑が入ります。これが「虎の巻」と呼ばれる所以です。
    • 「黄斑」: 特に「オウハン(黄斑)」と呼ばれる場合は、この虎模様の縁や、縞模様の中に鮮やかな黄色の斑が入るのが特徴です。この黄色い斑が、植物全体を明るく見せ、観賞価値を高めています。
    • 生育: 乾燥に非常に強く、日陰にも比較的耐えるため、手入れが簡単で育てやすい観葉植物として人気があります。あまり水やりを必要とせず、初心者でも育てやすいとされています。
    • 空気清浄効果: NASAの研究で、ホルムアルデヒドなどの有害物質を除去する空気清浄効果があるとされ、「エコプラント」としても注目されています。
    • 花: めったに咲きませんが、稀に花茎を伸ばし、淡いクリーム色の小さな花を咲かせることがあります。
  • 命名の由来:「オウハントラノマキ」という名前は、その植物の視覚的な特徴と、日本の伝統的な表現が組み合わさって付けられたと考えられます。
    • オウハン(黄斑): 葉に入る黄色の斑(ふ)を指します。鮮やかな黄色い模様が際立つことに由来します。
    • トラノマキ(虎の巻): 葉の横縞模様が、まさに虎の毛皮の縞模様に似ていることから「虎」という言葉が使われています。
      さらに「巻」という表現は、昔の巻物(知識や技術を記した書物)を連想させます。虎の縞模様がぐるぐると巻いているように見える、あるいは、珍重すべき「虎の縞模様の巻物」のような植物である、といった意味合いが込められていると考えられます。

このように、「オウハントラノマキ」は、葉の黄色い虎模様が特徴的なサンスベリアを指し、そのユニークな見た目から付けられた、非常に descriptive な(描写的な)園芸名であると言えるでしょう。

キントラノオ(金虎尾):

  • 特徴:キントラノオ(金虎尾、学名:Galphimia gracilis または Galphimia glauca)は、キントラノオ科キントラノオ属の非耐寒性常緑低木です。熱帯アメリカ(メキシコ~パナマ)原産で、その鮮やかな黄色い花が特徴的な植物です。
    • 鮮やかな黄色の花: 最も目を引く特徴は、星形をした鮮やかな黄色の5弁花です。この花が枝先に円錐花序または総状花序として多数集まって咲き、開花期には株全体が黄金色に包まれたように見えます。英語では "Gold shower" や "Rain of gold" とも呼ばれるほどです。
    • 長い花期: 原産地では一年中開花しますが、日本では主に初夏から秋にかけて(5月~10月頃)長く花を楽しむことができます。温暖な地域や温室であれば、さらに長い期間咲き続けます。
    • 低木: 草丈は0.5メートルから2メートルほどになる常緑低木です。枝はよく分枝し、株立状になります。
    • 葉: 長さ3~5cm程度の楕円形~卵形の葉が対生します。葉の表面には粉白を帯びることがあり、寒さにあたると赤みを帯びて一部落葉することもありますが、春には回復します。
    • 非耐寒性: 熱帯原産のため寒さには弱く、冬越しには10℃以上を保つのが望ましいです。日本の暖地であれば露地栽培も可能ですが、霜が降りる地域では室内での管理が推奨されます。
    • 水はけの良い環境を好む: 過湿に弱く、水はけの良い肥沃な酸性土壌を好みます。
  • 命名の由来:「キントラノオ(金虎尾)」という和名の由来については、いくつかの説が考えられますが、最も有力なのは以下の説です。
    • 「金色の虎の尾」のような花穂: キントラノオの鮮やかな黄色の花が、穂状にまとまって咲き上がる様子が、まるで「金色の虎の尾」のように見えることに由来すると推測されています。特に、花穂が下から上へと順に咲き上がっていく様子が、尾の動きを連想させるのかもしれません。
    • 学名についても見てみましょう。
      • Galphimia(ガルフィミア): 属名ですが、その語源には諸説あります。一説には、Malpighia(ヒイラギトラノオ属)からのアナグラム(文字を入れ替えて作られた言葉)であるとも言われています。
      • gracilis(グラキリス) または glauca(グラウカ): 種小名です。
      • gracilis はラテン語で「ほっそりとした」「優美な」といった意味があり、植物全体の印象を表していると考えられます。
      • glauca はラテン語で「帯白色の」「青みがかった灰色の」といった意味があり、葉の表面が粉白を帯びる特徴を表していると考えられます。

キントラノオはその美しい黄色い花と、その花姿が動物の尾に例えられることで、親しみやすい名前が付けられたと言えるでしょう。

 

トンボ(蜻蛉)

トンボソウ(蜻蛉草):

  • ラン科。
  • 花の形がトンボが飛んでいるように見えることから。

 

ネコ(猫)

ネコノメソウ(猫の目草):

  • 特徴:ユキノシタ科。
  • 命名の由来:熟した果実が裂けて種子が見える様子が猫の目に似ていることから。早春に咲く花が終わったあとの果実が、熟すと裂けて中から種子が現れます。その様子が、夜行性のネコの目が光って見えるように見えることに由来すると言われています。

ネコヤナギ(猫柳):

  • 特徴:ヤナギ科。
  • 命名の由来:芽吹いたばかりの芽が猫の毛のようにふわふわしていることから。

ネコハギ(猫萩):

特徴:マメ科。

命名の由来:花が猫の毛のように柔らかいことに由来するとも言われる。

ネコノチチ(猫の乳):

特徴:ムラサキ科。

命名の由来:果実の形が猫の乳に似ていることから。

猫草(ねこぐさ・ねこくさ):

  • 特徴:「猫草(ねこぐさ・ねこくさ)」とは、特定の植物の種類を指すのではなく、猫が好んで食べる草の総称です。一般的に、ペットショップなどで「猫草」として販売されているのは、エン麦(燕麦)、大麦、小麦などのイネ科植物の若葉が多いです。
  • 猫が猫草を食べる理由(諸説あります):猫は本来肉食動物ですが、猫草を食べる行動にはいくつかの理由が考えられています。
    • 毛玉の排出を助けるため: 猫はグルーミング(毛づくろい)で大量の毛を飲み込みます。猫草の葉は細く尖っているため、胃の粘膜を刺激して、飲み込んだ毛玉を吐き出すのを助けると考えられています。毛玉が胃の中に溜まりすぎると、嘔吐や食欲不振などの原因となる「毛球症」を引き起こすことがあります。
    • 便秘の予防・改善: 猫草に含まれる食物繊維が、腸の動きを活発にし、便秘の解消や予防に役立つ可能性があります。
    • 葉酸の補給: 草の汁に含まれる葉酸などのビタミンを補給するため、という説もありますが、決定的な証拠はありません。
    • ストレス解消・気分転換: 単純に草の食感や味を楽しむため、あるいはストレス発散や気分転換として食べる猫もいるようです。

エゴノネコアシ:

  • 特徴:エゴノネコアシ(学名:Styrax japonica f. calycina)は、エゴノキの仲間で、特に「エゴノネコアシアブラムシ」というアブラムシの一種が寄生することで、まるで猫の足のような形をした虫こぶ(虫癭:ちゅうえい)ができるのが大きな特徴の植物です。分類上は独立した種ではなく、エゴノキの品種、あるいは変種とされています。エゴノネコアシは、基本的にはエゴノキ(学名:Styrax japonica)と同じ特徴を持っていますが、以下の点が大きく異なります。
    • 樹形・樹皮: 落葉高木で、樹高は5~10メートル程度になります。樹皮はなめらかで灰褐色です。
    • 葉: 葉は互生し、卵形から長楕円形で、先端は尖り、縁には浅い鋸歯があります。エゴノキと同様に、新緑の時期は美しいです。
    • 花: 5月~6月頃に、白い5弁の花が枝からぶら下がるように多数咲きます。花には芳香があり、蜜源としても重要です。
    • 果実: エゴノキと同様に、花後に球形の実をつけます。この実は有毒なサポニンを含み、昔は石鹸の代わりにも使われました。
    • 虫こぶ(ネコアシ): これが最大の特徴です。エゴノネコアシアブラムシ(Pemphigus ushikoroshi)というアブラムシが、エゴノキの新芽や葉柄の基部に寄生することで形成されます。寄生された部分は異常に肥大化し、先端が数本に枝分かれして、まるで猫の足の指先のような形になります。この虫こぶは、はじめは緑色ですが、成熟すると茶褐色に変色し、中にアブラムシが潜んでいます。アブラムシは秋になるとここから脱出して、土の中で越冬すると言われています。
  • 命名の由来:エゴノネコアシという名前は、その特徴的な虫こぶの形に直接由来しています。
    • エゴノキ: 母種であるエゴノキから来ています。エゴノキの名の由来は、実を食べると喉や舌にエグみを感じることから「エグい木」が転じて「エゴノキ」になったと言われています。
    • ネコアシ: まさに、アブラムシの寄生によって形成される虫こぶの形が、猫の足先(指の部分)にそっくりであることから「ネコアシ」と名付けられました。

このように、エゴノネコアシは、エゴノキという植物に特定の昆虫が寄生することで生まれる、独特の形態(虫こぶ)が動物の「猫の足」に似ているという、非常にユニークで分かりやすい命名がされた植物です。

「ブルーキャッツアイ」は、その魅力的な花姿から名付けられた植物で、正式な学名は Otacanthus caeruleus(オタカンサス カエルレウス)といいます。以前はゴマノハグサ科に分類されていましたが、現在はオオバコ科とされています。ブラジル南部原産の多年草です。

ブルーキャッツアイ

  • 特徴:「ブルーキャッツアイ」は、その魅力的な花姿から名付けられた植物で、正式な学名は Otacanthus caeruleus(オタカンサス カエルレウス)といいます。以前はゴマノハグサ科に分類されていましたが、現在はオオバコ科とされています。ブラジル南部原産の多年草です。
    • 草丈と葉: 草丈は50〜80cmほどに成長し、葉は卵形で、茎に左右対称に(対生で)つきます。
    • 花:
    • 主な開花期は秋(9月~12月頃)ですが、暖かい温室などでは夏から咲き始めることもあり、初夏から秋にかけて鉢花として流通します。適切な管理をすれば、春にも開花を楽しむことができます。
    • 花は青紫色で、唇形(上下に開く2枚の花びら)をしています。特に特徴的なのは、花の中心部分が白くなっている点です。この青と白のコントラストが、まるでパッチリと開いた猫の青い目に見えることから、「ブルーキャッツアイ」という名前が付けられました。
    • 「ブラジリアン・スナップドラゴン」という別名もあります。これは、キンギョソウ(スナップドラゴン)に花の形が似ていることと、原産地がブラジルであることに由来します。
    • 耐寒性: 半耐寒性で、霜に当たると葉は枯れてしまいますが、根が凍らなければ春に復活します。冬越しは、霜の当たらない室内に入れるのが安心です。耐寒温度はおよそ0℃〜5℃とされています。
    • 香り: 葉や茎には独特の香りがあり、ハーブとしても扱われることがありますが、食用ではありません。
    • 栽培: 日当たりを好み、水はけの良い用土で育てます。過湿や多肥を嫌うため、水のやりすぎには注意が必要です。
  • 命名の由来:「ブルーキャッツアイ」という名前は、その花の色と形が猫の目を連想させることに由来しています。
    • 「ブルー」: 花の鮮やかな青紫色を表しています。
    • 「キャッツアイ」: 上下に開いた青い花びらと、その中心にある白い斑点が、まるで猫の青い瞳のように見えることから名付けられました。

このように、見た目の特徴がそのまま植物名になった、非常に分かりやすく可愛らしい名前といえるでしょう。

キャッツテール:

  • 特徴:キャッツテールは、そのユニークな見た目から多くの人に愛されている植物です。
    • フサフサとした花穂: 最も特徴的なのは、その名前の由来にもなっている、フサフサとした赤い花穂です。まるで猫のしっぽやネコジャラシのような形をしており、長さは数センチから大きいものでは50cmにも達するものがあります。この花穂は雄花が密集したものです。
    • 非耐寒性常緑多年草: 熱帯地方が原産で、寒さには弱いですが、適切な温度(最低10℃以上)が保たれれば一年中花を咲かせることができます。日本の屋外では、霜や凍結に当たると枯れてしまうため、冬場は室内での管理が推奨されます。
    • 草丈・樹高: 一般的な園芸品種は草丈10〜20cmほどですが、枝は30cmほどに伸びることもあります。原種のアカリファ・ヒスピダ(Acalypha hispida)は、低木で草丈2~4mにもなることがあります。
    • 葉: 卵型で、縁には鋸歯があります。
    • 用途: その愛らしい見た目から、鉢植えやハンギングバスケット、コンテナでの栽培に適しています。
  • 命名の由来
    「キャッツテール(Cat's Tail)」という名前は、その花穂の形が、文字通り「猫のしっぽ」に似ていることに由来します。フサフサとした赤い花穂が垂れ下がっている様子が、猫の愛らしいしっぽを連想させるため、この名前が付けられました。
    • 学名の「Acalypha hispida」についても補足すると、
      • Acalypha(アカリファ): 属名で、ギリシャ語の「Acalephe(イラクサ)」に似ていることに由来すると言われています。
      • hispida(ヒスピダ): 種小名で、ラテン語で「剛毛の」や「ざらざらした」といった意味があり、花穂の毛深い様子を表しています。

このように、学名もその植物の特徴をよく捉えたものとなっています。

 

ハエ(蠅)

ハエトリソウ(蠅捕草):

  • 特徴:学名 "Dionaea muscipula、モウセンゴケ科 (Droseraceae)。ハエトリソウは、その独特な捕虫方法から非常に有名な食虫植物です。
  • 命名の由来:ハエトリソウの和名である「ハエトリソウ(蠅捕草)」は、文字通りハエなどの虫を捕らえる植物であることに由来しています。また、「ハエジゴク(蠅地獄)」という別名もあります。
    • 英名では「Venus Flytrap(ヴィーナス フライトラップ)」と呼ばれています。この名前の由来は、ハエトリソウの葉の縁にあるトゲトゲした部分が、ローマ神話の愛と美の女神である「ヴィーナス(Venus)」のまつ毛に見立てられたこと、そして虫を捕らえる「罠(trap)」に例えられたことによると言われています。
    • 学名の "Dionaea muscipula" の属名 "Dionaea" も、ギリシャ神話の女神「ダイアナ(Diana)」に由来するとされています。

 

ハト(鳩)

ハトムギ(鳩麦): 

  • 特徴:イネ科。ハトムギのこと。ハトが好んで食べる麦であることから。
    名前には「麦」とつきますが、植物学的にはコムギやオオムギなどの「麦」の仲間(イネ科イチゴツナギ亜科)とは異なり、トウモロコシやモロコシに近縁な植物。
    同じジュズダマ属のジュズダマ(数珠玉、Coix lacryma-jobi)の栽培変種とされています。
  • 命名の由来:ハトムギの名前の由来にはいくつかの説があります。
    • 鳩が好んで食べるから: 最も有力な説とされています。ハトムギの実を鳥、特に鳩が好んで食べることから「鳩麦」と名付けられたと言われています。牧野富太郎博士もこの説を紹介しています。
    • 実の形が鳩に似ているから: 丸い実の形が鳩に似ているという説もあります。
      収穫量が多いから(八斗麦): 昔、一粒から「八斗(約144リットル)」もの麦が収穫できた、あるいは収穫量が多かったことから「八斗麦」と転じて「ハトムギ」になったという説もあります。

 

ブタ(豚)

ブタクサ(豚草):

  • 特徴:キク科。北アメリカ原産の帰化植物で、明治時代に日本に入ってきました。花粉症の原因植物としても有名です。
  • 命名の由来:ブタが好んで食べる、またはブタのように繁殖力が強いことから。
    ブタが好んで食べる草であるという説と、繁殖力が強く荒地でも育つ様子が、ブタのように貪欲であると見なされた説があります。

 

ヘビ(蛇)

ヘビイチゴ(蛇苺):

  • 特徴:バラ科。 赤い小さな実をつけますが、食用には向きません。毒があると思われがちですが、実際には毒はありません。
  • 命名の由来:ヘビがいそうな湿った場所に生えていること、またはヘビがこの実を食べるという俗説に由来すると言われています。

ヘビノネゴザ(蛇の寝茣蓙):

  • 特徴:シダ植物。
  • 命名の由来:葉が地面に広がり、ヘビが寝るのにちょうど良い筵のように見えることから。湿地に生え、葉が地面に広がる様子が、ヘビが寝るためのゴザのように見えることに由来すると言われています。

ヘビノボラズ(蛇不登、蛇上らず):

  • 特徴:ヘビノボラズ(学名:Berberis sieboldii)は、メギ科メギ属の落葉性低木で、その名の通り鋭い刺を持つのが特徴です。
  • 命名の由来: 鋭いトゲが茎全体に密生しており、蛇でさえもこの木には登ることができないだろう、という意味合いで名付けられました。非常に鋭い棘があり、ヘビも登れないほどであることから。
  • 別名:
    • トリトマラズ(鳥不止): ヘビノボラズと同様に、鋭い刺のために鳥も止まれないという意味で呼ばれることがあります。
    • コガネエンジュ(黄金槐)

 

ムジナ(貉、狢)

ムジナノショクダイ(狢の燭台):

ムジナノショクダイは、ラフレシア科(またはヒドノラ科)ムジナノショクダイ属の腐生植物(ふせいしょくぶつ)です。日本に自生し、主に暖地の照葉樹林の林床に生育します。非常に珍しい植物で、一般の人が目にすることはほとんどありません。

  • 特徴:ムジナノショクダイの最大の特徴は、葉緑素を持たないため光合成をせず、他の植物(主に樹木の根)から栄養を吸収して生きる点です。そのため、植物の体は退化しており、地中にある根茎(地下茎)が主体です。
    • 姿: 地上部に出るのは、花が咲く時だけです。高さ10~20cmほどの、肉厚で釣鐘状のユニークな形の花を咲かせます。花の外側は白色から淡い褐色で、内側は赤褐色から暗紫色を帯び、独特の模様があります。
    • 開花期: 夏から秋にかけて(地域によりますが、8月から10月頃)開花します。
    • 匂い: 腐生植物の多くに見られる特徴ですが、ムジナノショクダイの花も腐肉のような強い匂いを放ちます。これは、ハエなどの昆虫をおびき寄せて受粉させるためです。
    • 希少性: その特異な生態と、自生環境の減少により、多くの地域で絶滅危惧種に指定されており、非常に貴重な植物です。
  • 命名の由来:「ムジナノショクダイ」というユニークな和名は、その見た目と生態に由来します。
    • 「ムジナ(狢)」の由来: 「ムジナ」は、タヌキやアナグマなどの動物を指す古名、または混同して用いられた呼び名です。これらの動物は夜行性で、穴を掘って地中に潜む習性があります。
      ムジナノショクダイが、普段は地中深くに隠れていて、花が咲く時だけひょっこりと地上に顔を出す様子が、地中に潜むムジナに似ていることから、「ムジナ」の名が冠されました。
    • 「ショクダイ(燭台)」の由来: 花の形が、昔使われていた燭台(ろうそく立て)に似ていることから、「燭台」と名付けられました。釣鐘型で、中に空洞がある形状が燭台を連想させたのでしょう。

つまり、普段は地中に隠れているムジナのような植物が、燭台のような形の花を咲かせる、という特徴を捉えて「ムジナノショクダイ」と名付けられたと考えられます。

 

カギンリュウ

カギンリュウ (Pedilanthus tithymaloides subsp. smallii) は、トウダイグサ科の多肉植物で、その特徴と命名の由来は以下の通りです。

  • 特徴:茎の形状: 茎がジグザグに折れ曲がりながら成長するのが最大の特徴です。このジグザグが、英名で「Devil's Backbone(悪魔の背骨)」と呼ばれる所以にもなっています。また、葉が落ちた後もこの特徴的な茎が残ります。
    • 葉: 葉は披針形(細長い槍状)で、茎に互生します。葉の縁は緩やかな波を打ち、先端は尖っています。斑入りの品種もあり、葉の縁が白くなったり、淡いピンクや赤みを帯びたりするものもあります。
    • 樹高: 30cmから1.5m程度に成長する低木状の植物です。
    • 花(苞): 実際の花は小さく目立ちませんが、その周りを包む苞(ほう)が鮮やかな赤色やピンク色をしており、鳥のくちばしやスリッパのような形をしています。これが花のようにも見えるため、「Redbird Flower(赤鳥の花)」や「Slipper Flower(スリッパの花)」などの英名もあります。
    • 乳液: 茎に傷をつけると乳白色の液体(乳液)が出ますが、これは皮膚に触れるとかぶれる可能性があり、摂取すると有毒です。
    • 耐寒性: 寒さに弱い性質を持っています。
  • 命名の由来:
    • 「カギンリュウ(花銀竜)」の和名:
      • 「花銀竜」という和名は、その特徴的なジグザグの茎を「竜の飛翔」に見立てた説や、葉が黄緑色の品種が「大銀竜」、淡紅色のものが「花銀竜」と呼ばれることに由来するとされています。
    • 学名 Pedilanthus tithymaloides subsp. smallii について:
      • Pedilanthus(旧属名): ギリシャ語の「pedilon(スリッパ)」と「anthos(花)」に由来するとされ、花の苞の形がスリッパに似ていることにちなみます。ただし、現在ではこの属はトウダイグサ属(Euphorbia)に統合されています。
      • tithymaloides(種小名): 古代ローマの博物学者プリニウスが「Euphorbia」を記述する際に用いた古い名前である「Tithymalus」に似ていることを意味します。この「Tithymalus」は、白い乳液を持つ植物群を指す古代ギリシャ語に由来するとされています。
      • smallii(亜種名): 20世紀のアメリカの探検家で植物学者である「Dr. John Kunkel Small(ジョン・カンケル・スモール)」にちなんで名付けられました。彼がこの植物を採集または記述したことに由来すると考えられています。

要するに、カギンリュウはジグザグの茎と鮮やかな苞が特徴的な植物で、和名は竜に、旧属名はスリッパに、種小名は乳液を出す植物の古い名前に、そして亜種名は人名に由来しています。

 

まとめ

これらの例からわかるように、植物の和名や俗名に動物種名が使われる場合、その植物の特定の部位が動物の形に似ている、動物がその植物を好んで食べる、動物が生息する場所に生える、あるいは動物にまつわる伝説やイメージから名付けられることが多いです。
これらの植物の和名や俗名は、その姿形、生態、利用法などと動物のイメージを結びつけて、先人たちが名付けたものとされています。

中には諸説あるものもありますが、それぞれの名前に込められた意味を考えるのも興味深いですね。

興味深いですよ!「動物名が冠されている植物」。