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「動物名が冠されている植物」を深掘りリサーチ!特徴や命名の由来をまとめレポート

今回の「生き物にまつわる言葉を深掘り」のテーマは、「動物の名前が冠されている植物」です。

 

「植物の名前が冠されている動物」に関しては以下のリンク先にまとめてありますので、参照ください。

www.ariescom.jp

「他の動物名がついた動物」に関しては以下のリンク先にまとめてありますので、参照ください。

www.ariescom.jp

「他の植物名がついた植物」に関しては以下のリンク先にまとめてありますので、参照ください。

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以下に、「動物種名のあとに草や木、花などがついた植物名(和名・俗名)」「和名や俗名に動物名が冠された植物」を列挙し、その植物の特徴やそれぞれの命名の由来を説明します。

 

五十音順で動物種ごとに掲載してありますので、まずは「アリ(蟻)」からご確認ください。

 

アリ(蟻)

アリドオシ(蟻通し):

  • 特徴:アリドオシは、アカネ科アリドオシ属の常緑低木です。日本から中国南部、台湾、東南アジアにかけて広く分布し、日本では主に本州の関東地方以西から九州、琉球列島にかけての暖地の林床に自生します。一年を通して光沢のある緑色の小さな葉をつけ、初夏には目立たない白い小さな花を咲かせます。秋から冬にかけては、赤くて丸い可愛らしい実をつけ、これがクリスマスの飾りなどにも使われることがあります。

  • 命名の由来:「アリドオシ」という名前は、の非常に鋭く、硬い棘(とげ)に由来します。

    • 鋭い棘があり、蟻さえも通り抜けられないほどであることから。

    • 「蟻(アリ)も通り抜けられないほど」: アリドオシの枝には、葉の付け根に長さ1~2cmほどの鋭い棘が対になって生えています。この棘が非常に硬く、密生しているため、どんな小さなアリであっても、この棘を避けて通るのは困難だろう、あるいは、アリさえも刺し貫いてしまうほどの鋭さである、という様子を誇張して表現したものです。

→アリさえも通り抜けられないという意でしたら、アリガエシとかアリトオサズあたりのほうが適切かとも思いましたが、アリドオシの解説は以上です。

アリノスダマ(蟻の巣玉):

  • アリノスダマ(蟻の巣玉、学名:Hydnophytum formicarum)は、東南アジア原産のアカネ科ヒドノフィツム属に属する常緑小低木で、「アリ植物(Ant plant)」と呼ばれるユニークな植物の一種です。

  • アリノスダマの特徴

    • 着生植物: 湿地のマングローブの幹や枝、あるいは岩の裂け目や岩上に着生して生育します。

    • 肥大した塊茎(かいけい): 幹の基部が球状に肥大し、まるでジャガイモのような形になります。この肥大した部分が最大の特徴です。

    • アリとの共生: 塊茎の内部には、植物自身が作り出す複雑な迷路状の空洞があります。この空洞をアリの巣として提供し、アリがその中に住み着きます。

    • 栄養供給のメカニズム: アリは、この空洞に食べ残し、糞、死骸などを運び込みます。アリノスダマは、これらの有機物を分解・吸収することで、乏しい着生環境下で不足しがちな栄養分(特に窒素やリンなど)を得ています。また、アリの出す二酸化炭素も炭素源として利用するという研究報告もあります。

    • 防衛共生: アリは巣を提供される代わりに、アリノスダマを他の昆虫や動物からの食害、あるいは他の植物の侵略から守る役割を果たすと考えられています。

    • 葉と花: 枝は塊茎から数本伸び、緑色の卵型をした革質の葉を対生に出します。葉腋に小さな白い花を咲かせ、花後には赤い実をつけます。

    • 栽培: 熱帯の植物なので、高温多湿を好みます。日本では冬場は15℃以上を保てる暖かい室内での管理が必須です。直射日光は避けて明るい日陰が適しています。

  • 命名の由来:アリノスダマという和名、そして学名の種小名「formicarum」はいずれも、この植物が持つアリとの共生関係に由来しています。

    • 和名「蟻の巣玉」: 球状に肥大した茎(塊茎)の内部が、まるでアリの巣のように空洞になっていることに直接由来しています。アリに住処を提供している様子をそのまま表した名前です。

    • 学名「Hydnophytum formicarum」:

    • 属名「Hydnophytum」は、古代ギリシャ語の「hydnon(塊茎)」と「phyton(植物)」の合成語で、その特徴的な塊茎を表しています。

    • 種小名「formicarum」は、ラテン語で「アリの」という意味を持ちます。これもアリとの共生関係を明確に示しています。

      このように、アリノスダマは、その見た目の特徴と、他の生物(アリ)との間に築かれた独特な共生関係が、そのまま植物の名前の由来となっています。

 

イタチ(鼬)

イタチガヤ:

  • 特徴:イタチガヤは、イネ科イタチガヤ属の多年草で、日当たりの良い岩場や崖などに生える小型の植物です。

    • 生育環境: 日当たりの良い、やや湿った岩場や崖の割れ目、土手などに群生することが多いです。

    • 姿: 高さ10〜30cmほどの小さな株を形成し、たくさんの茎が束になって立ち上がります。

    • 葉: 狭い披針形で、長さは3〜6cmほどです。葉の裏面には細かな突起があり、ざらついています。

    • 花穂: 茎の先端に、長さ2〜3cmほどのブラシ状の花穂をつけます。この花穂は、長い毛や黄褐色の芒(のぎ)が目立ち、金色のブラシのように見えます。

  • 命名の由来:「イタチガヤ」という名前は、その花穂の様子に由来しています。

    • イタチ: 花穂の色や形が、動物のイタチの毛や尾に似ていることから名付けられました。特に、黄褐色の毛が密生している様子が連想されます。

    • ガヤ(茅): イネ科の植物で、茅(かや)の一種であることに由来しています。

このように、イタチガヤという名前は、特徴的な花穂の形や色をイタチの尾に見立てたものです。 

イタチササゲ:

  • 特徴:イタチササゲは、山地の林縁や草地に生えるマメ科の多年草です。

    • イタチササゲは、高さ0.6〜2mほどになる大型の植物で、茎の先端から伸びる巻きひげで他の植物に絡みつきながら成長します。葉は、2〜4対の小葉からなる偶数羽状複葉で、葉軸の先端は巻きひげになっています。小葉は楕円形から卵形で、葉の裏は白緑色をしています。

    • 夏から秋にかけて、茎の先に総状花序と呼ばれる花穂をつけ、多数の小さな蝶形の花を咲かせます。この花は、咲き始めは淡い黄色ですが、徐々に黄褐色へと変化していくのが特徴です。また、豆果は平らな線形をしており、長さは8〜10cmほどになります。

  • 命名の由来:「イタチササゲ」という名前は、その花の色と実の形に由来しています。

    • イタチ: 花が咲き進むにつれて淡い黄色からイタチの毛皮に似た黄褐色に変わることから、この名がつけられました。

    • ササゲ: 豆果(実)の形が、野菜として知られるササゲマメ(大角豆)に似ていることから、「ササゲ」の名が加わりました。

このように、イタチササゲという名前は、植物の最も特徴的な部分である花の色と実の形を組み合わせてつけられたものです。

イタチハギ:

  • 特徴:イタチハギは、マメ科の落葉低木で、河川敷や荒れ地などに生育します。

    • 高さ1〜3メートルほどになり、茎は直立してよく枝分かれします。葉は、奇数羽状複葉で、5〜9対の小さな楕円形の小葉からできています。

    • 初夏から夏にかけて、枝の先端から多数の蝶形の花が密な総状花序(花穂)になって咲きます。花の色は濃い紫色で、遠目には黒っぽく見えることもあります。この花の後にできる豆果は、長さ1cmほどの小さな卵形で、毛が生えています。

  • 命名の由来:「イタチハギ」という名前は、その花穂の色と形に由来しています。

    • イタチ: 花穂の色が、動物のイタチの毛皮(特に冬毛)のような暗褐色や黒っぽい色をしていることに由来します。

    • ハギ(萩): 植物の姿が、同じマメ科のハギ(萩)に似ていることから名付けられました。

このように、イタチハギという名前は、特徴的な花の色をイタチの毛皮に、全体の姿をハギに見立ててつけられたものです。

 

イノシシ(猪)

シシウド(猪独活):

  • 特徴:シシウドは、日本各地の山地や湿った草地に自生するセリ科の多年草です。その堂々とした姿が特徴的です。

    • 草丈: 非常に大きく、草丈は1~2メートルに達することもあります。そのため、「シカカクシ(鹿隠し)」という別名もあります。

    • 茎: 太く、中空で、上部には細かい毛が生えています。

    • 葉: 葉は大型で、2~3回に分かれた羽状複葉(羽のような形に小葉が並んだ葉)です。

    • 花: 夏から秋にかけて、茎の先端に多数の小さな白い花が傘状に集まった「複散形花序」をつけます。この花序は直径20センチメートルほどになり、遠くからでもよく目立ちます。

  • 命名の由来:「シシウド」は漢字で「猪独活」と書きます。

    • 名前の由来には諸説ありますが、最も有力なのは、ウコギ科のウド(独活)によく似ているものの、ウドよりもはるかに大きく、食用には適さないため、「イノシシ(猪)が食べるようなウド」という意味で名付けられたという説です。また、ウドよりも固いことから「猪しか食べない」という意味合いも含まれています。

    • なお、シシウドとウドは名前や姿が似ていますが、シシウドはセリ科、ウドはウコギ科に属する全く別の植物です。 

シシキリガヤ(猪切茅、ヒトモトススキ):

  • 特徴:シシキリガヤ(ヒトモトススキ)は、カヤツリグサ科の大型の多年草で、海岸に近い湿地などに生える植物です。

    • 草丈: 2メートルにも達するほど大きく、丈夫な植物です。

    • 葉: 硬くて厚く、縁や中肋に鋭い鋸歯(ぎざぎざの突起)があります。この葉の縁で、触れると皮膚を切ってしまうことがあります。

    • 生育場所: 海岸近くの湿地や池、沼地の水際に群生し、大きな群落を形成します。
  • 命名の由来:「シシキリガヤ」という名前は、漢字で「猪切茅」と書きます。
    • 名前の由来は、その鋭く丈夫な葉が、イノシシ(猪)さえも切り裂くほどである、ということに由来します。
    • なお、シシキリガヤは、「ヒトモトススキ(一本薄)」という別名でも知られています。これは、カヤツリグサ科でありながらススキのように大きく、1つの株から多数の葉が出る様子から名付けられたといわれています。

ヒカゲイノコヅチ(日陰猪子槌):

  • 特徴:ヒカゲイノコヅチは、日本各地の山野の林内や竹やぶなど、あまり日の当たらない場所に生える多年草です。同じイノコヅチ属のヒナタイノコヅチと比較して、以下のような特徴があります。

    • 生育環境: 日陰を好む。

    • 草姿: 全体的にひょろりとしており、ほっそりとしている。

    • 葉: 薄くて、毛が少ない。葉先はなだらかに尖る。

    • 花穂: 細く、花はまばらにつく。

    • 果実: 花の付け根にある針状の小苞(しょうほう)に、動物の毛や衣服にくっつくための鋭いトゲがある。このトゲによって、動物などに付着して種子を散布します。

  • 命名の由来:「ヒカゲイノコヅチ」は「日陰猪子槌」と書きます。

    • ヒカゲ(日陰): 日陰に生えることに由来します。

    • イノコヅチ(猪子槌): 茎の節が膨らんでおり、その形がイノシシの子どもの膝頭(槌)に似ていることから名付けられました。また、別名として「フシダカ(節高)」や「コマノヒザ(駒の膝)」とも呼ばれます。

この「イノコヅチ」という名前は、ヒカゲイノコヅチだけでなく、日当たりの良い場所に生える「ヒナタイノコヅチ」にも共通する由来です。

 

イヌ(犬)

「イヌ(犬)が標準和名につく生き物」に関しては、以下のリンク先に特集記事もつくってあります。

www.ariescom.jp

イヌエンジュ:

  • 特徴:イヌエンジュは、マメ科イヌエンジュ属の落葉高木で、標準和名はイヌエンジュです。日本では、北海道、本州、四国、九州の山地に自生しています。
    • 姿かたち: 樹高は10〜15メートルほどになります。樹皮は灰褐色で、縦に筋が入ります。
    • 葉: 葉は羽状複葉(うじょうふくよう)で、マメ科の植物によく見られる形をしています。
    • 花: 夏から秋にかけて、黄色がかった白い花を房状にたくさんつけます。
    • 果実: 花の後に、細長い豆のような形をした果実をつけ、秋に熟します。この果実が、後述するエンジュの果実と似ています。
    • 毒性: イヌエンジュの樹皮や果実には有毒成分が含まれており、特に動物が誤って食べると中毒を起こすことがあります。
  • 標準和名に「イヌ(犬)」がつく由来:イヌエンジュという名前に「イヌ」がつく由来は、エンジュに比べて利用価値が低いと見なされたためです。
    • エンジュとの比較: 同じマメ科のエンジュは、中国原産の植物で、花や果実は薬用として利用されてきました。また、材は硬く、建築材や家具材などに使われる有用な樹木です。
    • 「イヌ」の意味: イヌエンジュは、エンジュに見た目が似ていますが、エンジュのような薬用成分を持たず、材もエンジュほど硬くないため、利用価値が低いとされました。そのため、「エンジュに似ているが、役に立たない」「品質が劣る」という意味合いで「イヌ」が冠されました。
    • 和名に「イヌ」がつく植物は、このように別の有用な植物と比べられ、利用価値が劣ると見なされた歴史的な背景があります。

イヌカサゴ:

イヌガシ:

イヌガラシ(犬芥子):

  • 特徴:イヌガラシ(犬芥子、学名: Rorippa indica)は、アブラナ科イヌガラシ属の越年草(または多年草)です。日本全国の道端や畑、水田のあぜ道など、日当たりの良い湿った場所に自生しています。

    • 草姿(そうし): 草丈は15〜50cmほどで、茎はよく枝分かれします。葉は互生(ごせい)し、羽状に深く裂けることが多いです。

    • 花: 春から秋にかけて、茎の先に直径2〜3mmの小さな黄色の花をたくさんつけます。花はアブラナ科らしい4枚の花弁を持ちます。

    • 果実: 花の後に細長い棒状の果実(長角果)をつけます。

    • 辛味: 葉や茎には、アブラナ科特有の辛味がありますが、カラシナやワサビほど強くありません。

  • 命名の由来:「イヌガラシ(犬芥子)」という和名は、その特徴が食べられる植物と似ているものの、食用には適さないという様子から名付けられました。

    • イヌ(犬): 「犬」という言葉は、しばしば植物の名前に冠され、「役に立たない」「食べられない」「劣っている」といった意味合いで使われます。

    • カラシ(芥子): アブラナ科の植物であるカラシナ(芥子菜)は、辛味を持つことから食用にされます。イヌガラシも辛味を持ち、カラシナに似た姿をしていますが、その辛味は弱く、食用としては劣るとされました。

    • つまり、イヌガラシは「食用になるカラシナに似ているが、人間にとっては役に立たない、劣ったカラシナ」という意味で名付けられたのです。

イヌカンゾウ:

イヌギンポ:

イヌグス:

イヌコウジュ:

イヌザクラ(犬桜):

  • 特徴:バラ科。

  • 命名の由来:サクラに似ているが、果実が美味しくない(=犬)ことから。

イヌサフラン:

イヌザンショウ:

イヌシデ(犬四手):

  • 特徴:イヌシデ(学名:Carpinus tschonoskii)は、カバノキ科クマシデ属の落葉高木で、日本の本州(岩手県・新潟県以南)、四国、九州の他、朝鮮半島、中国に分布し、山地や丘陵の雑木林などで普通に見られます。

    • 樹形・樹皮: 高さ15~20メートルになる落葉広葉樹です。樹皮は灰色でなめらかですが、老木になると縦に濃灰色の筋ができ、凹凸になります。

    • 葉: 葉は互生し、長さ4~8cmの卵形~倒卵形で、縁には不規則な細かい重鋸歯があります。葉柄が短く、若枝や葉に白い毛が密生しているのが特徴です。秋には黄色く紅葉します。

    • 花: 4~5月頃に開花します。雌雄異花で、雄花序は前年の枝の葉腋から垂れ下がり、長さ4~5cmの黄褐色をしています。雌花序は新枝に頂生し、目立ちにくいです。

    • 果実: 花後にできる果実は堅果で、苞に包まれます。この果穂が、長さ4~12cmほどに垂れ下がります。

    • その他:

      • 雑木林を構成する主要な樹種の一つです。

      • しばしば沢沿いに出現する樹種としても知られています。

      • 冬芽は長楕円形をしており、アカシデよりも芽鱗の数が少ないです。

      • 幹にややねじれ気味の縦縞模様があるのも特徴です。

  • 命名の由来:イヌシデの「シデ」と「イヌ」にはそれぞれ以下のような由来があります。

    • シデ(四手): 花が終わり、果実が熟して垂れ下がった果穂の様子が、神社のしめ縄や玉串などに使われる、白い紙や布を「四手(しで)」と呼ぶ飾りに似ていることに由来します。

    • イヌ(犬): 「イヌ」という接頭語は、植物名の場合に、しばしば「役に立たない」「劣る」「似ているが本物ではない」といった意味合いで用いられます。イヌシデの場合、アカシデやクマシデといった近縁種に比べて、材の特性が劣るとされたり、新芽や紅葉の美しさがアカシデほどではないとされたりすることから、この名が付けられたと考えられています。

      また、牧野富太郎博士は垂れ下がる雄花序に基づくかとも述べていますが、これは他のシデ類にも共通するため、確定的ではありません。別名として「シロシデ」と呼ばれることもあり、これはアカシデの花が赤いことに対して、イヌシデの花が白っぽいことに由来します。

イヌショウマ:

イヌタデ(犬蓼):

  • 特徴:タデ科。

  • 命名の由来:タデ(蓼)に似ているが、役に立たない(=犬)ことから。

    「タデ食う虫も好き好き」ということわざにもあるように、タデの仲間には古くから食用や染料として利用されてきた植物が多くあります。特にヤナギタデは、葉に辛味があり、刺身のつまや薬味として重宝されてきました。一方で、イヌタデはヤナギタデに姿が似ているものの、葉に辛味がなく、食用としての価値がほとんどないとされました。そのため、「役に立たないタデ」「食べられないタデ」という意味合いで、蔑称の「イヌ」が冠されて「イヌタデ」と名付けられたと言われています。この「イヌ」という言葉は、植物名に使われる場合、「有用なものに似ているが、実際は価値がない」「偽物」といった意味で用いられることがよくあります。例えば、「イヌムギ」や「イヌホオズキ」なども同様の理由で名付けられています。

イヌタヌキモ:

イヌツゲ(犬柘植):

  • 特徴:モチノキ科。

  • 命名の由来:ツゲに似ているが、材がツゲほど利用価値がない(=犬)ことから。

イヌツルウメモドキ:

イヌトクサ(犬砥草):

イヌナズナ:

イヌニンドウ:

イヌニッケイ:

  • 特徴:イヌニッケイはクスノキ科の常緑高木で、東南アジアからインドにかけて自生しています。
    • 見た目: 葉や樹皮はニッケイ(シナモン)に似ており、特に新葉が赤みを帯びることが特徴です。
    • 用途: 樹皮や葉からは香りがしますが、本物のニッケイ(セイロンニッケイなど)に比べて香りが劣るため、主に代用品として利用されます。
  • 名前の由来:イヌニッケイという名前は、「犬」と「肉桂」という二つの言葉から成り立っており、それぞれの意味が組み合わさっています。
    • 「肉桂(ニッケイ)」: この植物がニッケイ(シナモン)と同じクスノキ科の仲間であり、樹皮や葉に香りがあることから名付けられました。
    • 「犬(イヌ)」: 植物名における「イヌ」は、しばしば「劣った」「似て非なるもの」「役に立たない」といった意味合いを持つ接頭語として使われます。イヌニッケイの場合、樹皮の香りが本物のニッケイに比べて劣ることから、この名が付けられました。

つまり、イヌニッケイは「ニッケイに似ているが、その品質が劣る植物」という意味で名付けられたのです。

イヌノフグリ(犬の陰嚢):

  • 特徴:イヌノフグリ(犬の陰嚢、学名: Veronica polita)は、オオバコ科クワガタソウ属の一年草です。ユーラシア原産で、日本では帰化植物として知られています。

    • 草姿(そうし): 道端や畑などで見られる小さな植物です。草丈は5〜20cmほどで、茎は地面を這うように広がります。

    • 花: 春に、葉の付け根から柄を伸ばし、青紫色をした小さな花を咲かせます。花の大きさは直径3〜5mmほどで、とても可憐な印象です。

    • 果実: 花の後にできる果実は、2つの半円形がくっついたような形で、毛が生えています。

  • 命名の由来:「イヌノフグリ」という名前は、その果実の形に由来します。

    • イヌ(犬): 昔は、身近な動物である犬の名を冠して、他の植物と区別することがありました。

    • フグリ(陰嚢): 花の後にできる果実が、**犬の陰嚢(いんのう)**の形に似ていることから名付けられました。

この名前は、その果実の形を直接的に表現した、ユニークなものです。現在、イヌノフグリは生育地が減っており、代わりに似た植物のオオイヌノフグリがよく見られます。

イヌハギ:

イヌハッカ:

イヌビエ:

イヌビユ:

イヌビワ(犬枇杷):

  • 特徴:イヌビワはビワの仲間ではありません。それぞれの植物の分類は以下の通りです。
    • イヌビワ(犬枇杷): クワ科イチジク属
    • ビワ(枇杷): バラ科ビワ属
    • このように、イヌビワはイチジクの仲間であり、ビワとは異なる科に属しています。
  • 名前の由来:イヌビワの名前に「ビワ」がつくのは、実の形がビワの実に似ているためです。ただし、「イヌ」という接頭語が示すように、ビワほど美味しくなく、品質が劣ると見なされたことから、この名が付けられました。
    • また、イヌビワの実はイチジクに似た甘みがあり、別名をコイチジク(小イチジク)とも呼ばれます。

イヌブナ:

イヌホオズキ(犬酸漿):

  • 特徴:イヌホオズキは、ナス科ナス属の一年草です。畑や道端、荒地など、いたるところに生えるごく一般的な雑草で、世界中に広く分布しています。

    • 草丈と姿: 草丈は30cmから60cmほどで、茎はよく枝分かれし、全体的に雑然とした印象を与えます。

    • 葉: 卵形から広卵形で、縁にはゆるい波状のぎざぎざ(鋸歯)があります。葉や茎には毛がないか、あってもわずかです。

    • 花: 夏から秋(7月から10月頃)にかけて、葉の付け根から出た柄の先に、小さな白い花を数個ずつ咲かせます。花の直径は1cmにも満たないほどで、黄色い雄しべが目立ちます。

    • 果実: 花が終わると、球形をした小さな液果(実)をつけます。直径5mm~8mmほどで、最初は緑色ですが、熟すと黒紫色になります。この実を潰すと、中にたくさんの小さな種子が入っています。

    • 毒性: イヌホオズキの実は、ナス科の植物に共通するアルカロイド系の毒性物質(ソラニンなど)を含んでいます。そのため、食用にはできません。熟した実を子供が口にしないよう注意が必要です。

  • 命名の由来:「イヌホオズキ」という名前は、その果実がホオズキに似ているが、食用にならないという点に由来します。

    植物の和名において、「イヌ(犬)」という接頭語が使われる場合、多くは「食用にならない」「役に立たない」「劣る」「野生の」といった意味合いで使われます。

    • 「ホオズキ」の類似: イヌホオズキの実は、ナス科のホオズキの実に形が似ています。ホオズキは食用になる品種もあり、観賞用としても親しまれています。

    • 「イヌ」の意味: イヌホオズキはホオズキに似ているものの、人間が利用したり食べたりする価値がないため、「ホオズキに似ているけれど、役に立たない(犬の)ホオズキ」という意味で「イヌホオズキ」と名付けられました。

イヌホシエソ:

イヌホシザメ:

イヌマキ:

  • 特徴:イヌマキは、マキ科の常緑針葉樹です。暖地の海岸近くに多く見られ、公園や庭木、生垣としてもよく利用されます。

    • 葉:葉は細長く、表面は光沢のある深緑色をしています。

    • 実:秋になると、赤紫色の多肉質の果托(かたく)の上に、緑色で球形または楕円形をした種子をつけます。この実の形が特徴的です。

    • 生態:雌雄異株(しゆういしゅ)で、雄株と雌株があります。

  • 標準和名に「犬」が含まれる由来:イヌマキという名前の「イヌ」は、しばしば植物の名に冠される接頭語で、「役に立たない」「劣る」「似ているが違う」といった意味合いを持ちます。

    • 役に立たない説:イヌマキの材は、古くから高級な建築材として利用されてきたコウヤマキに比べて、質が劣るとされていたことに由来するという説があります。

    • 偽物説:古くから「マキ」といえばコウヤマキを指すことが多く、イヌマキがそれと似ているが、本物ではない「偽のマキ」という意味で「犬マキ」と呼ばれたという説もあります。

このように、イヌマキはコウヤマキという本家に対して、材の利用価値が劣る、あるいは似ているが違うという認識から、「イヌ」という言葉が冠されたと考えられています。

イヌムギ(犬麦):

  • 特徴:イヌムギは、イネ科スズメノチャヒキ属の越年草、または多年草です。原産は南アメリカですが、牧草として世界各地に導入され、日本には明治時代に渡来しました。現在では、北海道から沖縄まで全国の道端、畑、荒地、河川敷など、様々な場所でごく普通に見られる帰化植物となっています。

  • 命名の由来:「イヌムギ」という名前は、その見た目が「麦(ムギ)」に似ているが、人間にとって食用などには利用価値がない、という意味に由来します。

    植物の和名において「イヌ(犬)」という接頭語は、動物のイヌそのものを指す場合(例:オオイヌノフグリ)もありますが、多くの場合、「役に立たない」「劣る」「類似品」「野生の」といった意味合いで使われます。

    • イヌムギは、大麦や小麦などの「麦」に草姿や穂の形が似ていますが、人間が食べたり利用したりする植物ではないため、「ムギに似ているが、役に立たない麦」という意味で「イヌムギ」と名付けられました。

イヌムラサキシキブ:

イヌメドハギ:

イヌヤマアワ:

イヌヤブマオ:

イヌリンゴ:

エノコログサ(狗尾草):

オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢):

  • 特徴:オオバコ科。

    明治時代にヨーロッパから「オオイヌノフグリ」が日本に持ち込まれました。この植物は、日本にもともとあったイヌノフグリと似た花をつけますが、花や草姿がより大きいことから、「大きいイヌノフグリ」という意味で「オオイヌノフグリ」と名付けられました。

    ちなみに、オオイヌノフグリの可憐な青い花からは想像しにくい名前ですが、「星の瞳」や「瑠璃唐草」といった別名もあります。

    現在では、在来種のイヌノフグリは生育地を奪われ、ほとんど見られなくなっており、一般的に春先に見かけるのはオオイヌノフグリの方が多いです。

  • 命名の由来: 果実の形がイヌの陰嚢に似ていることに由来するという説が有力です。直接的に「大きな犬の睾丸に似ている」わけではなく、「イヌノフグリの実が犬の睾丸に似ており、そのイヌノフグリよりも大きい」という意味合いで「オオイヌノフグリ」という名前が付けられたということです。

    「イヌノフグリという植物の実が犬の陰嚢(いんのう、睾丸のこと)に似ていることから名付けられ、それよりも大きい花をつけるから」という複合的な意味合いを持っています。

オオイヌノフグリ - Wikipedia

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/7c/VeronicaPersicaFruit.jpg

タチイヌノフグリ(立ち犬の陰嚢):

  • 特徴:タチイヌノフグリ(立ち犬の陰嚢、学名: Veronica polita)は、オオバコ科クワガタソウ属の一年草です。ユーラシア大陸が原産で、日本には明治時代に渡来した帰化植物とされています。

    • 草姿(そうし): 道端や畑などで見られる身近な植物です。草丈は5〜20cmほどで、茎はやや立ち上がって伸びます。

    • 花: 春に、葉の付け根から伸びる柄の先に、青紫色をした小さな花を咲かせます。花の大きさは直径5mmほどで、とても可憐な印象です。

    • 果実: 花の後にできる果実は、2つの半円形がくっついたような形で、毛が生えています。

  • 命名の由来:「タチイヌノフグリ」という名前は、その草姿と果実の形に由来します。

    • タチ(立ち): 茎が地面を這うように伸びるオオイヌノフグリに対して、タチイヌノフグリは茎がやや立ち上がって伸びることから「タチ」という言葉が冠せられました。

    • イヌノフグリ(犬の陰嚢): この植物の名前の最も特徴的な部分です。花の後にできる果実が、犬の陰嚢(いんのう)の形に似ていることから名付けられました。

このように、タチイヌノフグリは、その草姿と果実の形を直接的に表現した、非常にユニークな名前を持っています。

タチイヌノフグリ?苗
タチイヌノフグリ?苗
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マメイヌツゲ:

 

インコ

インコアナナス:

  • 特徴:インコアナナス(学名:Vriesea carinata)は、ブラジル原産のパイナップル科インコアナナス属の常緑多年草です。鮮やかな花苞(花のつけ根にある葉が変化したもの)が特徴で、観葉植物として広く栽培されています。

    • 草姿: 高さ30〜100cmほどになり、葉は薄緑色で薄く柔らかい質感です。根はあまり発達せず、樹木や岩の上に着生して育つ着生植物です。

    • 葉: 葉は細長く、放射状に広がり、葉の基部が重なることで水を貯める「タンク」のような構造を作ります。このタンクに溜まった水から養分を吸収します。白い粉を吹いたような鱗片毛があるのも特徴です。

    • 花苞と花: インコアナナスの一番の見どころは、その鮮やかな花苞です。赤やオレンジ、黄色などの鮮やかな色が組み合わさり、扁平な穂状になります。この花苞の基部は鮮やかな赤、先端付近から半ばは緑っぽい黄色で、先端は尖って上に向かって曲がるのが特徴です。

      苞の間から、小さな黄色い筒状の花が顔を出しますが、本当の花はあまり目立ちません。花そのものの寿命は短いですが、美しい花苞は数ヶ月間鑑賞できます。

    • その他:

      • 空気を浄化する特性を持つとされています。

      • 比較的低メンテナンスで育てやすい植物です。

      • 冬に開花することが多いですが、不定期に咲くこともあります。

      • 花後に株元に子株ができ、株分けで増やすことができます。

  • 命名の由来:インコアナナスの命名は、その特徴的な花苞の色彩と形状に由来しています。

    • インコ: 鮮やかな花苞の色合いが、鳥のインコの羽や頭部の色合いに酷似していることから「インコ」という名前が付けられました。特に、赤い苞と黄色い花弁の組み合わせが、インコの頭部に似ていると言われます。

    • アナナス: 「アナナス」は、もともとパイナップルのことを指す言葉ですが、園芸上ではパイナップル科の植物全体の総称としても使われます。ポルトガル人がアメリカ大陸でパイナップルを発見した際に、原住民が「ナナス(亀の実)」と呼んでいたことに由来するとされます。

このように、インコアナナスは、その見た目の華やかさが鳥のインコを連想させること、そしてパイナップル科の植物であることから名付けられた、非常に分かりやすい名前を持つ植物です。

 

ウグイス(鶯)

ウグイスカグラ:

  • 特徴:ウグイスカグラ(学名:Lonicera gracilipes var. gracilipes)は、スイカズラ科スイカズラ属の落葉低木です。日本各地の山野に自生し、春先に他の植物に先駆けて花を咲かせることで知られています。

    • 樹形と枝: 高さ1~3mになる落葉性の低木です。株立ち状に枝を多く出し、細い枝がよく分枝します。若い枝は褐色を帯び、毛が生えていることがあります。

    • 葉: 葉は対生し、長さ3~7cmの卵形~楕円形で、先端は尖り、基部は丸みを帯びます。葉の表面は暗緑色で光沢があり、裏面は淡い緑色で、どちらにも毛が生えていることがあります。葉縁は全縁です。

    • 花: 3月~5月頃、葉が出るか出ないかの時期に、前年枝の葉腋から淡紅色の筒状の花を2個ずつ咲かせます。花冠は長さ1~1.5cmほどで、先が5裂し、やや反り返ります。雄しべと雌しべは花冠から突き出るのが特徴です。花の時期が早く、野山に彩りを与えます。

    • 果実: 花後にできる果実は直径1cmほどの球形の液果で、6月頃に赤く熟します。この果実は甘酸っぱく、食べることができます。

    • その他:

      • 早春に咲く花は、ウグイスが鳴き始める時期と重なることから、名前の由来にもなっています。

      • 庭木や盆栽としても利用されます。

  • 命名の由来:ウグイスカグラの命名は、その花が咲く時期と、ある伝承に由来すると言われています。

    • ウグイス: 花が咲く時期が、ウグイスが鳴き始める早春(旧暦の2月頃)とほぼ一致することから、「ウグイス」の名が冠されました。

    • カグラ(神楽): 「カグラ」は「神楽(かぐら)」、つまり神に奉納する歌舞を指します。この木にウグイスがとまって、まるで神楽を舞っているかのようにさえずる、という風流な情景を連想させることから付けられた、という説が有力です。

      また、花の形が神楽鈴(かぐらすず)に似ている、あるいは果実の赤色が巫女の衣装に似ている、といった説もありますが、ウグイスが鳴く時期に咲く花の美しさや、その実をウグイスが好んで食べに来る様子から名付けられたという説が一般的です。

このように、ウグイスカグラは、早春の訪れとともにウグイスがさえずる情景と結びついた、日本の豊かな自然と文化を感じさせる植物名と言えます。

 

ウサギ(兎)

ウサギギク(兎菊):

  • 特徴:ウサギギクは、キク科ウサギギク属の多年草で、高山帯の砂礫地や湿った草地に自生します。

    • 姿: 草丈は5〜15cmほどで、茎は根元から束になって生え、まばらに毛が生えています。

    • 葉: 茎の根元から放射状に広がる根出葉(こんしゅつよう)は、へら形をしており、縁にはわずかにギザギザがあります。

    • 花: 7〜8月頃、茎の先端に直径4〜5cmほどの鮮やかな黄色の花を1個つけます。花はタンポポに似た舌状花(ぜつじょうか)と筒状花(とうじょうか)からなる頭花(とうか)で、長い花柄に毛が生えているのが特徴です。

  • 命名の由来:「ウサギギク(兎菊)」という名前は、葉の形に由来しています。

    • 茎の根元から広がる葉の形が、動物のウサギの耳に似ていることから、この名がつけられました。「ギク(菊)」は、キク科の植物であることに由来します。

    • 高山植物の中でも比較的見つけやすく、かわいらしい名前とともに親しまれています。

ウサギギク - Wikipedia

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/86/Arnica_unalascensis_var._tschonoskyi_02.jpg

ウサギゴケ(兎苔):

  • 特徴:ウサギゴケ(学名:Utricularia sandersonii)は、タヌキモ科タヌキモ属の食虫植物です。オーストラリア原産で、その非常に特徴的な花の形から、観賞用として世界中で人気があります。

    • 草姿: 茎は地中に埋もれていて、地上部にはごく小さな葉と花茎を伸ばすだけです。コケという名前がついていますが、コケ植物の仲間ではなく、れっきとした被子植物です。

    • 葉: 地中または水中に細い糸状の葉を展開します。地上にはごく小さく、目立たない葉がまばらに生える程度です。

    • 花: ウサギゴケの最大の特徴は、何といってもそのユニークな花の形です。花茎を伸ばして、白く小さな花を咲かせます。この花は、上下に唇弁が分かれており、特に上唇弁がウサギの耳のように長く伸び、下唇弁の中央には黄色い斑点があります。まるで小さなウサギが跳ねているかのような姿に見えるため、非常に愛らしい印象を与えます。

    • 捕虫嚢(ほちゅうのう): 地中や水中に発達した根のような部分に、小さな袋状の「捕虫嚢(ほちゅうのう)」を持っています。この捕虫嚢は、水中の微生物や線虫などを吸い込んで捕獲する、食虫植物ならではの器官です。

    • 生育環境: 湿度の高い環境を好み、ミズゴケなどを敷いた湿った土壌で育ちます。

    • 栽培: 観賞用として栽培されることが多く、その可愛らしい姿から特に人気があります。ただし、適切な湿度管理が重要です。

  • 命名の由来:ウサギゴケの命名は、その花が持つ特徴的な形状に直接由来しています。

    • ウサギ: 花の形が、まるで跳ねるウサギの耳のように見えることから、「ウサギ」の名前が付けられました。特に、上唇弁が長く伸びて左右に分かれ、ウサギの耳を彷彿とさせる点が大きな理由です。

    • ゴケ: 「コケ」という部分は、その草丈が低く、地面に這うように広がる様子が、コケ植物に似ていることから付けられたと考えられます。しかし、前述の通り、分類学上はコケ植物とは全く異なる植物です。

このように、ウサギゴケは、その花のユニークで愛らしい姿がウサギを連想させ、かつ低く広がる草姿がコケに似ていることから名付けられた、非常に視覚的な特徴を捉えた名前と言えます。

 

ウシ(牛)

ウシコロシ:

  • 特徴:ウシコロシは、植物の正式名称ではなく、カマツカ(鎌柄)という植物の別名です。バラ科カマツカ属の落葉小高木で、日本各地の山野に自生しています。

    • 樹高: 3〜4m程度の落葉小高木です。

    • 葉: 葉は互生(茎に対して一枚ずつ互い違いにつく)し、卵形から倒卵形をしています。縁には細かい鋸歯(ギザギザ)があります。若い葉には毛が多いですが、夏にはほとんど無毛になります。

    • 花: 4月から5月にかけて、白い小さな花が多数集まって咲きます。バラ科らしい可愛らしい5枚の花弁を持ち、多数の雄しべが特徴的です。

    • 実: 秋(10月から11月頃)には、直径1cm弱の楕円形の赤い実が熟します。この実は鳥の餌となり、多少の苦味はあるものの人間も食べることもできます。

    • 材: 最大の特徴は、その材が非常に硬く、粘り強いことです。これが命名の由来にも大きく関わっています。

  • 命名の由来:「ウシコロシ」という、一見すると穏やかではない名前の由来には、いくつかの説がありますが、共通しているのはその材の強靭さにあります。

    • 牛の鼻輪(鼻木、鼻ぐり)に使われたから:

      この説が最も有力とされています。昔、牛を引く際に鼻に通す輪(鼻輪、鼻木)や、その鼻輪を通すために牛の鼻に穴を開ける際の道具として、カマツカの硬い材が使われたことから、「牛を制御する」「牛を動けなくする(動きを殺す)」という意味合いで「ウシコロシ」と呼ばれるようになりました。

    • 牛追い棒として使われたから:

      牛を追い立てたり、制御したりする際に使う棒として、この木の丈夫な枝が使われたためという説もあります。

    • 牛が枝に角を挟まれて動けなくなるから:

      牛がこの木の茂みに突っ込んだ際、枝が非常に頑丈なため、角が挟まって身動きが取れなくなることがあった、という説も一部で言われています。

  • いずれの説にしても、「ウシコロシ」という名前は、この木の材が持つ並外れた丈夫さと硬さに由来しています。

ちなみに、もう一つの和名である「カマツカ(鎌柄)」も、同じく材の用途に由来します。その名の通り、この丈夫な材が鎌や鍬の柄として重宝されたことから名付けられました。

つまり、ウシコロシ(カマツカ)は、小さな白い花と赤い実をつける可愛らしい植物ですが、その内側に秘めた材の強靭さが、やや物騒な別名を与えたと言えるでしょう。

ウシノケグサ(牛の毛草):

  • 特徴:イネ科の植物。

  • 命名の由来:細い葉が牛の毛のように見えることから。

ウシノシッペイ(牛の𣔌):

  • 特徴:ウシノシッペイは、イネ科の多年草で、山野の道端や草地に自生します。

    • 姿: 高さ30~60cmほどに成長し、株立ちになります。

    • 葉: 葉は線形で、長さは10~30cmほどです。葉の裏面や葉鞘(ようしょう)の縁に毛が生えていることがあります。

    • 花穂: 夏から秋にかけて、茎の先に長さ10~20cmほどの細長い円柱形の花穂をつけます。この花穂には、多数の小穂(しょうすい)が密生しており、触るとざらざらしているのが特徴です。

  • 命名の由来:「ウシノシッペイ」という名前は、その花穂の様子に由来しています。

    • 「シッペイ(𣔌)」は、禅僧が修行中に使う道具の一種で、細い棒の先に馬の毛を束ねて作ったものです。この道具がウシの尻尾(しっぽ)に似ていることから、動物のウシの尻尾を指す言葉にもなりました。

    • ウシノシッペイの花穂は、このシッペイ、またはウシの尻尾に似ていることから名付けられました。また、似た名前を持つ植物に「ウシノシッポ(牛の尻尾)」がありますが、これは花穂がウシの尻尾の形に似ていることに由来しており、ウシノシッペイとは別の植物です。

ウシノシッポ(牛の尻尾):

  • 特徴:イネ科の植物。

  • 命名の由来:穂が牛の尻尾のように見えることから。

オオウシノシタ(大牛の舌):

  • 特徴:オオウシノシタ(大牛の舌、学名:Sansevieria pearsonii、シノニム:Sansevieria cylindricaの一部品種、Dracaena pearsonii など)は、キジカクシ科(旧リュウゼツラン科)ドラセナ属(旧サンスベリア属)に分類される多肉植物の一種です。特にそのユニークな葉の形状から「牛の舌」という和名が付けられています。オオウシノシタは、独特のフォルムを持つサンスベリアの仲間として、観葉植物として人気があります。

    • 葉の形状: 最大の特徴は、その平たくて幅広い舌状の葉です。多くの場合、地面に這うように広がり、その姿が動物の牛の舌に似ていることから名付けられました。葉の先端はやや尖り、縁は波打つことがあります。

    • 葉の色と模様: 葉は肉厚で硬く、濃い緑色をしていますが、品種によっては不規則な濃淡の模様や、赤みがかった縁取りが見られることがあります。表面は光沢があるものと、ややざらつくものがあります。

    • 草姿: 地下茎から葉を伸ばし、群生することが多いです。草丈はあまり高くならず、地を這うように横に広がります。

    • 耐乾燥性: サンスベリアの仲間であるため、非常に乾燥に強い性質を持ちます。水やりは控えめでよく、乾燥気味に管理することが重要です。

    • 生育環境: 明るい場所から半日陰まで適応しますが、日当たりの良い場所の方が葉の色つやが良くなります。寒さにはやや弱いですが、通常の室内環境であれば問題なく越冬できます。

    • 花: めったに咲きませんが、稀に花茎を伸ばし、白っぽい小さな花を咲かせることがあります。

  • 命名の由来:オオウシノシタという名前は、その植物の葉の形状に直接由来しています。

    • オオ(大): 同じくサンスベリア属には「ウシノシタ」という和名を持つ小型の種もありますが、本種はそれよりも葉が大きく、より幅広いため「大(オオ)」が冠されています。

    • ウシノシタ(牛の舌): 葉が、まるで牛の平たくて幅広い舌のように見えることから名付けられました。

このように、オオウシノシタは、その特徴的な葉の形が「大きな牛の舌」を連想させるという、非常に分かりやすい命名がされた植物です。

ギュウシンリ(牛心梨):

  • 特徴:ギュウシンリ(牛心梨、学名:Annona reticulata)は、熱帯地域で広く栽培されるバンレイシ科の果樹です。

    • 小高木: 高さ最大10メートルほどの小高木で、幹は太く、枝は横に広がります。

    • 落葉性または半落葉性: 環境によって葉を落とすか、一部の葉を残すことがあります。

    • 葉: 長披針形(細長い楕円形)をしており、揉むとミョウガのような独特の香りを放つのが特徴です。

    • 花: 芳香があり、外花弁は細長く、肉厚です。

    • 果実:

      • 形: 最も特徴的なのは、その名の通り、心臓形の集合果です。形は多様ですが、しばしば心臓形をしています。

      • 色: 熟すと赤褐色になり、表面には網目状の模様が見られます。

      • 果肉: 白くクリーム状で、甘く、カスタードのような食感を持つことから、英名で「カスタードアップル(Custard apple)」とも呼ばれます。ただし、チェリモヤやバンレイシに比べて品質は劣るとも言われます。

      • 種子: 黒褐色から黒色の光沢のある種子を多数含みます。この種子は有毒とされています。

      • 用途: 果実は生食されるほか、果実酒やジュース、デザートなどに利用されます。また、若い果実や樹皮、葉、根は民間薬としても使われることがあります。

    • 耐寒性: 比較的に耐寒性があり、-3℃程度までは耐えられるとされていますが、霜や凍結には弱いです。

  • 命名の由来;「ギュウシンリ(牛心梨)」という和名、および英語名の「bullock's heart(雄牛の心臓)」や「ox-heart(雄牛の心臓)」は、熟した果実が赤褐色で、その形が「牛の心臓」に似ていることに由来します。

    • 学名についても見てみましょう。

      • Annona(アンノナ): 属名で、ハイチでのバンレイシの現地名「anon」に由来すると言われています。また、ラテン語の「Annona(一年中採れる)」という意味に由来するという説もあります。

      • reticulata(レティキュラータ): 種小名で、ラテン語で「網目状の」という意味です。これは、果実の表面に見られる網目模様を指していると考えられます。

このように、ギュウシンリはその特徴的な果実の形から、直感的に理解しやすい名前が付けられています。

 

ウナギ(鰻)

アキノウナギツカミ:

  • 特徴:アキノウナギツカミは、タデ科の1年草で、水田の畦道や湿地、河原などに生育します。

    • 姿: 高さ60〜100cmほどに成長し、茎は細長く伸びて、他の植物にもたれかかるようになります。

    • 茎と葉: 茎には、下向きに曲がった鋭いトゲが多数生えています。葉は細長い槍の形をしており、基部は茎を抱くような形になっています。

    • 花: 夏から秋にかけて、茎の先端に多数の小さな花を密集させ、球形や穂状の花穂をつくります。花の色は白色から淡い紅色で、ミゾソバやママコノシリヌグイによく似ています。

  • 命名の由来:「アキノウナギツカミ」という名前は、その茎に生えた鋭いトゲと花が咲く時期に由来しています。

    • アキノ(秋の): 花が主に秋に咲くことからつけられました。

    • ウナギツカミ(鰻掴み): 茎にある鋭いトゲが、ヌルヌルして滑りやすいウナギでもしっかりと掴めるだろうという想像から名付けられました。実際にウナギを掴むために使われたわけではないようですが、その茎のトゲの鋭さを非常にユニークに表現した名前です。

 

ウマ(馬)

アセビ(馬酔木):

  • 特徴:アセビ(馬酔木)は、日本原産の常緑低木で、ツツジ科に属します。その特徴と命名の由来は以下の通りです。

    • 樹形と葉:

      • 樹高は1.5mから5mほどになります。

      • 葉は厚みがあり、光沢のある濃い緑色で、枝先に束になって互生します。

      • 新芽は赤みを帯びて美しいです。

      • 常緑のため、冬でも葉をつけたままであるため、庭木や公園樹としてよく利用されます。

    • 花:

      • 早春(2月下旬~4月上旬頃)に開花します。

      • 枝先に鈴や壺のような形をした小さな花を多数ぶら下げるように咲かせます。

      • 花の色は白が一般的ですが、ピンク色の花を咲かせる園芸品種(ベニバナアセビなど)もあります。

    • 毒性:

      • アセビは植物全体に強い毒性を持っています。特に葉や樹皮、根皮、花、果実に含まれる「グラヤノトキシン(アセボトキシン)」という有毒成分が知られています。

      • この毒は、馬や鹿などの動物が誤って食べると、酩酊状態になったり、足が麻痺したり、重症の場合には死に至ることもあります。そのため、野生のシカなどが食べ残すことが多く、林内でアセビが目立つことがあります。

      • 人間にとっても有毒であり、誤って口にすると、しびれ、唾液過多、鼻水、涙目、吐き気、嘔吐、下痢、発汗、胃痛、頭痛、心不全、痙攣などの症状が現れ、致命的になる可能性もあります。

      • 過去には、葉を煎じて殺虫剤やウジ虫駆除に使われたこともあります。

    • 育てやすさ:

      • 日本の気候に合い、耐暑性・耐寒性に優れており、比較的乾燥にも強いため、育てやすい植物です。

      • 成長が遅いため、手入れの手間もあまりかかりません。

  • 命名の由来:アセビ(馬酔木)という名前は、その強い毒性に由来しています。

    • 「馬酔木」の漢字の由来: アセビの葉を食べた馬が、毒によってまるで酒に酔ったかのように足がふらついたり、麻痺したりする様子から「馬酔木」と名付けられました。

    • 和名の由来: 「アセビ」という和名も、「足がしびれる」を意味する「足痺(アシジヒ)」が転訛して「アシビ」となり、さらに「アセビ」になったという説や、「悪い実(あしみ)」から転訛したという説があります。

このように、アセビは可憐な花を咲かせますが、その名前は植物が持つ毒性と、それによる動物への影響に由来しているのです。

ウマノアシガタ(馬の足形):

  • 特徴:キンポウゲ科。

  • 命名の由来:葉の形が馬のひづめに似ていることから。  

    花の形や葉の切れ込みが、ウマのひづめに似ていることに由来すると言われています。キンポウゲ科の植物で、黄色い光沢のある花を咲かせます。

ウマノスズクサ(馬の鈴草):

  • 特徴:ウマノスズクサ科。

  • 命名の由来:花の形が馬の首につける鈴に似ていることから。

ウマノミツバ(馬の三つ葉):

  • 特徴:セリ科。ウマノミツバは、セリ科ウマノミツバ属の多年草です。日本全国の山野の比較的湿った場所、林の縁、道端の草陰など、半日陰の場所に自生しています。地味な植物なので、あまり意識して見られることは少ないかもしれません。草丈と姿: 草丈は30cmから80cmほどになり、茎は細く、上部でよく枝分かれします。

    • 葉: 葉は長い柄があり、多くは3枚の小葉からなる複葉(三出複葉)です。この「三葉」が名前の由来の一部になっています。小葉は卵形から広卵形で、縁には鋭い鋸歯(のこぎりの歯のようなギザギザ)があります。

    • 花: 夏から秋(6月から9月頃)にかけて、茎の先端や枝先に、白い小さな花を多数つけます。セリ科特有の、小さな花が集まって傘のような形になる「複散形花序(ふくさんけいかじょ)」を形成しますが、他のセリ科植物に比べてまばらで、花数が少ないことが多いです。花弁は5枚で、内側に曲がっています。

    • 果実: 花後に、表面に細かい突起(毛状の突起やとげ)がある卵形の果実をつけます。この果実は衣服などによくくっつくことがあります。

      毒性: 一般的には無毒とされていますが、食用とされることはありません。セリ科には有毒植物も多いので、安易な判断は避けるべきです。

  • 命名の由来:「ウマノミツバ」という名前は、その葉の形と、日本における「ウマ(馬)」という言葉の使われ方に由来します。

    • 「三葉(ミツバ)」の由来: これは単純に、葉が3枚の小葉からなる(三出複葉である)という植物の特徴そのものを指しています。

    • 「ウマ(馬)」の由来: 植物の和名において「ウマ」という接頭語が使われる場合、いくつかの意味合いがあります。

    • 馬が食べる: その植物を馬が好んで食べる、または馬の餌になる、という場合。

    • 馬の体の一部に似ている: 馬の顔や足などに、植物の形が似ている場合(例:ウマノアシガタ)。

    • 大きい・粗野・劣る: 「イヌ」と同様に、人間にとっての利用価値が低い、粗野である、という意味合いで使われる場合。

  • ウマノミツバの場合は、特に3番目の「食用にならない」「役に立たない」「見劣りする」といった意味合いで「ウマ」が使われた可能性が高いと考えられています。

    食用にされるミツバ(セリ科ミツバ属)に似ていますが、食用には適さないため、「食用にならないミツバ」「ミツバに似ているが見劣りする」といった意味で「ウマノミツバ」と名付けられたのでしょう。

シロウマナズナ(白馬薺):

  • 特徴:「シロウマナズナ(白馬薺)」は、長野県と富山県にまたがる白馬岳(しろうまだけ)に由来する高山植物です。

    • 生育環境: 本州の中部地方、特に北アルプスの白馬岳周辺の高山帯の岩場や礫地(れきち)に自生する多年草です。

    • 草姿: 草丈は足首ほどの高さで、茎には毛がありません。

    • 葉: 地面に放射状に広がる根生葉(ロゼット)は、ヘラのような形をしており、縁に毛が多いのが特徴です。

    • 花: 6月から7月にかけて、白い小さな花を咲かせます。花は4枚の花弁を持ち、アブラナ科の植物特有の十字形をしています。花茎はあまり伸びず、花がまとまって咲くため、可憐な印象を与えます。

    • 果実: 果実は扁平な楕円形や卵形で、ナズナ属の植物の特徴である、細長い角果(かくか)とは異なります。

  • 命名の由来:「シロウマナズナ(白馬薺)」という名前は、以下の組み合わせで名付けられました。

    • シロウマ(白馬): 発見された場所が白馬岳であったことに由来します。

    • ナズナ(薺): ナズナに似た、アブラナ科の植物であることから。

    • 白馬岳は、初夏になると雪形(ゆきがた)で「代掻き馬(しろかきうま)」の姿が現れることから「シロウマ岳」と呼ばれるようになったという説があり、この植物の名前もその地名から直接的な由来を持っています。

    • したがって、シロウマナズナは「白馬岳に生えているナズナの仲間」という意味で名付けられた植物です。

デントコーン(トウモロコシの馬歯種(ばししゅ):

  • デントコーンとは:デントコーン(dent corn)は、トウモロコシ(玉蜀黍)の一品種群です。標準和名としては、トウモロコシの変種である馬歯種(ばししゅ)(学名:Zea mays L. var. indentata Sturt.)と呼ばれます。
    • 主な用途: 人が食べるスイートコーン(甘味種)とは異なり、主に家畜の飼料(特に牛のエサ)、コーンスターチ(澱粉)やコーンオイル(油)、バイオエタノールなどの原料として利用されます。
    • 特徴: 粒(穎果)の側面は硬質デンプンで、頂部が軟質デンプン組織でできています。この軟質部分が完熟して乾燥すると収縮し、粒の頂点に**小さなくぼみ(dent)**ができるのが特徴です。このくぼみが、馬の臼歯(きゅうし)に似ていることから「馬歯種」という和名がつけられました。
  • 「dent」と「へこみ」
    デントコーンの名称にある「dent」は、まさにトウモロコシの粒にできる「くぼみ」や「へこみ」を意味する英単語です。
    • 「dent」と「歯」の関係
      「へこみ」を意味する英単語「dent」は、「歯」を意味する言葉と語源を共有しています。
    • 語源: 「dent」は、ラテン語で「歯」を意味する「dēns」(属格が「dentis」)に由来します。
    • 意味の派生: ラテン語の「歯」に由来する言葉が、「歯でかんだようなへこみ」や「きざみ目」、**「くしや歯車の歯」**といった意味に派生し、現代英語の「へこみ」や「くぼみ」を意味する「dent」につながっています。
    • このため、デントコーンの粒のくぼみも、馬の臼歯の形に似ていることと、へこみを意味する「dent」が名称に使われているのです。
  • 歯医者さんと「dentist」:歯医者さんは英語で「dentist」と呼ばれます。「dentist」も、ラテン語で「歯」を意味する「dēns/dentis」を語源としています。
    • 関連語:
      • dental(デンタル):歯の、歯科の
      • dentistry(デンティストリー):歯科医療
      • denture(デンチャー):義歯、入れ歯
    • これらは全て「歯」に関係する言葉として、共通の語源を持っています。

 

エビ(海老)

エビネ(海老根):

  • 特徴:エビネ(Calanthe discolor)は、ラン科エビネ属に分類される地生の多年草で、日本の山野に自生しています。その控えめながらも美しい姿から、古くから多くの人々に親しまれてきた山野草です。

    • 生育場所: 丘陵地帯の落葉広葉樹林やスギ林など、比較的明るい半日陰の林床に自生します。風通しの良い場所を好みます。

    • 草丈: 30〜50cm程度の中型のランです。

    • 葉: 地際から3〜4枚の葉が広がるように出ます。葉は倒披針形または長楕円形で、縦に葉脈が走り、光沢のある濃緑色をしています。多くは常緑で、冬も葉を保ったまま越冬します。

    • 花茎と花: 春(4月〜5月頃)になると、葉の間から花茎が直立して伸び、その先端に5〜20個程度の花を総状に咲かせます。花は直径約4cmで、萼片と側花弁が黄緑色から茶褐色、唇弁が白やピンク、紫など、品種によって非常に多様な色彩を見せます。

    • 多様な品種: エビネは交雑しやすい性質があるため、野生でも多くの変異種や自然交雑種が存在します。また、園芸品種も非常に多く作出されており、花の色や形、咲き方などに豊富なバリエーションがあります。代表的なものに、黄色の「キエビネ」、夏に咲く「ナツエビネ」、猿の顔に似た唇弁を持つ「サルメンエビネ」などがあります。

    • 偽鱗茎(バルブ): 地中には「バルブ」と呼ばれる肥大した偽鱗茎(ぎりんけい、別名:偽球茎)があります。このバルブに養分を蓄え、冬を越します。

    • 生態的地位: 派手さはありませんが、楚々とした独特の風情があり、山野草として人気が高いです。しかし、近年では乱獲や自生地の減少により、多くの自生種が絶滅危惧種に指定され、レッドリストに掲載されています。

  • 命名の由来:「エビネ」という和名は「海老根」と書き、その名の通り、植物の地下にある特徴的な部分に由来しています。

    • 偽鱗茎(バルブ)の形状から: エビネの地中にある偽鱗茎が、エビの胴体や、エビの尾が連なったような形をしていることから、「エビ(海老)」の「根」に例えられて「海老根」と名付けられました。古い偽鱗茎が連珠状に横に繋がり、そこから多数の根が生えている様子が、特にエビに似ているとされます。

このように、エビネはその地下部分の形態が、古くから親しまれてきた甲殻類のエビに似ているという、ユニークな視点から名付けられた植物です。

コエビソウ(小海老草):

  • 特徴:コエビソウ(小海老草)は、そのユニークな花の形から名付けられた、観賞価値の高い植物です。

    • コエビソウ(小海老草)の植物としての特徴

      分類: キツネノマゴ科コエビソウ属(Justicia属)の常緑低木です。学名は Justicia brandegeeana(シノニム:Beloperone guttata)。

    • 原産地: メキシコが原産で、熱帯地域に自生しています。

    • 草姿: 一般的には草丈が30cm〜1mほどに成長する半木本性の植物です。こんもりとした株立ちになります。

    • 葉: 緑色の卵形の葉を持ち、柔らかい毛が生えていることがあります。

    • 花: 最も特徴的なのは、エビの尻尾のように見える苞(ほう)が重なり合って垂れ下がることです。この苞は、品種によって赤褐色、ピンク、黄色、白など様々な色があり、その苞の間から白い小さな花が顔をのぞかせます。苞は非常に長く持ち、観賞期間が長いのも魅力です。開花期は春から晩秋までと長く、適切な環境下ではほぼ一年中花(苞)を楽しむことができます。

    • 耐性: 比較的高温多湿を好み、耐寒性は弱いです。日本では鉢植えで育て、冬は室内で管理するのが一般的です。

  • 命名の由来:

    • 「コエビソウ(小海老草)」という和名は、その苞(ほう)が重なり合って垂れ下がる様子が、まるでエビの尻尾のように見えることに由来しています。特に、赤褐色やピンク色の苞を持つ品種は、茹でたエビの色に似ているため、この名がぴったりと合っています。

    • 学名の Justicia brandegeeana は、イギリスの植物学者であるジェームズ・ユースタス・ジャスティス(James Eustace Justice)に敬意を表して属名が Justicia となり、種小名の brandegeeana は、この植物を発見したアメリカの植物学者タウリー・S・ブランデギー(Townshend Stith Brandegee)にちなんでいます。

    • また、英名では「Shrimp Plant(シュリンプ・プラント)」や「Mexican Shrimp Plant(メキシカン・シュリンプ・プラント)」と呼ばれ、こちらも和名と同様にエビに例えられています。

コエビソウ 開花中
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オオカミ(狼)

オオカミヤシ:

  • 特徴:オオカミヤシは、ヤシ科フェニックス属の植物で、主にアフリカやマダガスカル原産の常緑低木です。学名は Phoenix reclinata といいます。和名では「セネガルヤシ」とも呼ばれ、別名として「ソテツヤシ」と呼ばれることもあります。

    • 樹形と幹:

      • 株立ちになることが多く、ときに単一で生育します。

      • 高さは8〜12m(最大で15m前後)に達することがありますが、成長は比較的遅いです。

      • 幹の表面には、葉柄が落ちた痕が模様のようについています。

      • 「シンノウヤシ(フェニックス・ロベレニー)」によく似ていますが、シンノウヤシよりも幹が太く、葉も長いのが特徴です。

    • 葉:

      • 葉は羽状複葉(鳥の羽のように小葉が並ぶ形)で、弓状に曲がり先端が下垂します。

      • 葉の付け根には茶褐色の繊維があります。

    • 花と果実:

      • クリーム色の花を咲かせ、果実は楕円形で赤褐色に熟します。

    • 耐寒性:

      • 比較的耐寒性があり、-3℃くらいまで耐えることができます。防寒対策をすれば-5℃くらいまで耐えるとも言われています。このため、日本の温暖な地域であれば庭植えも可能です。

    • 用途:

      • 観賞用として庭園樹や鉢植えで利用されます。

      • ヤシの芯(パルミット)は食用になり、サラダや加熱調理(ラザニア、スープ、グラタンなど)にも使われます。

  • 命名の由来:オオカミヤシという和名の直接的な由来については、明確な文献が見当たりませんでしたが、いくつかの可能性が考えられます。

  • 「狼」のイメージ:

    • 「オオカミ」という言葉が持つ力強さ、野生的なイメージ、あるいはその樹形や幹の様子、葉の力強い広がり方が、何らかの形でオオカミを連想させたのかもしれません。例えば、葉が大きく広がる様子や、幹のゴツゴツとした質感などがそう感じられた可能性です。

    • 動物の名前を持つ植物は他にも存在するため(例:キリンソウなど)、同様に特定の連想から名付けられた可能性があります。

  • 別名「セネガルヤシ」の由来:

    • 英名が "Senegal Date Palm" や "Wild Date Palm" であることからもわかるように、原産地であるセネガルに由来します。

    • 「セネガルヤシ」という和名も広く使われています。

  • 学名 "Phoenix reclinata":

    • 属名 "Phoenix": ギリシャ神話に登場する不死鳥フェニックスに由来すると言われています。ヤシ科の植物の多くは長寿で、再生力があることから名付けられたとされます。また、この属にはナツメヤシも含まれます。

    • 種小名 "reclinata": ラテン語で「反曲した」「下曲の」という意味を持ちます。これは、葉が弓状に曲がり先端が下垂する特徴を指していると考えられます。

現状では、「オオカミヤシ」という名前の由来について、植物学的な明確な記述は少ないようです。しかし、その力強い姿や、他の「キリン」とつくヤシと同様に、何らかの連想によって名付けられた可能性が高いと考えられます。

 

オケラ(動物)

オケラ(植物):

特徴:オケラは、キク科オケラ属の多年草で、日本の本州から九州、朝鮮半島、中国東北部などに分布し、やや乾いた草原や明るい林内、林縁などに生育します。

  • 草丈と茎: 高さ30〜80cm(時に1mまで)に成長し、茎はまっすぐに立ち、堅く、無毛またはわずかに毛があります。単生または数本が叢生します。

  • 葉: 葉は互生し、堅い紙質で、緑色です。単葉のものから、しばしば3〜5裂するものまで形に変化があります。縁には刺状の鋸歯があります。基部の葉は花時には枯れて落ちることが多いです。

  • 花: 花期は9月から10月頃で、茎の先端や上部の葉腋に、白から淡紫紅色の頭花(アザミに似た筆のような小花が集まったもの)をつけます。

  • 総苞(そうほう): 頭花を包む総苞は、魚の骨のように細かく裂けた苞葉が特徴的です。

  • 根茎: 地下には太く短い根茎があり、芳香があります。この根茎は「白朮(びゃくじゅつ)」という生薬として、健胃、整腸、利尿などの目的で古くから利用されています。正月の屠蘇(おとそ)にも含まれることがあります。

  • 利用: 若い芽はアクが少なく、特有の香りがあり、山菜として食用になります。天ぷらやおひたしなどで食べられます。

  • 命名の由来:オケラの名前の由来には諸説ありますが、最も有力なのは以下の説です。

    • 古名「ウケラ」の転訛: 『万葉集』にも「宇家良(ウケラ)」として詠まれており、古くから親しまれてきた植物です。この古名である「ウケラ」が転じて「オケラ」になったと考えられています。

    • 「おけらになる(無一文になる)」との関連説: 昆虫のオケラ(ケラ)を前から見ると万歳をしているように見えることから「お手上げ」状態を連想させ、植物のオケラも、根を薬用とする際に皮を剥ぐことから「身ぐるみ剥がされる」ことを連想させ、「無一文になる」ことを指す「おけらになる」という言葉と関連付けられたという説もあります。

      ただし、植物と昆虫のオケラに直接的な関係はないとされています。

オケラは、薬用や食用として人々の生活に深く関わってきた植物であり、その名前も古くからの歴史の中で形成されてきたものと言えるでしょう。

 

鬼(おに)

架空の生き物とされる「『鬼』が標準和名に含まれる生物」に関しては、別途、以下のリンク先にまとめてありますので参照ください。

www.ariescom.jp

 

カエル(蛙)

オタマジャクシノハナ:

特徴:オタマジャクシノハナは、ゴマノハグサ科の多年草で、山地の水辺や湿地に生育します。正式な和名は「サワギキョウ(沢桔梗)」です。

    • 草姿: 草丈は40〜100cmほどになり、茎は直立して、茎の途中にまばらに葉をつけます。

    • 葉: 葉は細長い披針形で、縁には小さな鋸歯(きょし)があります。

    • 花: 夏から秋にかけて、茎の先端に多数の紫色の花をつけます。この花は、下向きに大きく開いた唇弁(しんべん)と呼ばれる部分が特徴的です。

  • 命名の由来:「オタマジャクシノハナ」という名前は、花の形に由来しています。

    • 花の(つぼみ)が、カエルの幼生であるオタマジャクシの形に似ていることから名付けられました。特に、下向きに垂れ下がった蕾が、オタマジャクシの大きな頭と尾を連想させると言われています。

    • サワギキョウ(沢桔梗)という正式な和名は、沢などの湿地に生え、花がキキョウに似ていることから名付けられました。

オタマジャクシノハナは、特定の地域で使われる別名であり、そのユニークな花の形をよく表しています。

カエルノアシ(蛙の足):

  • 特徴:カエルノアシは、アオイ科のボンテンカという植物の別名です。この名前の通り、葉の形が特徴的です。

    • 生育環境: 本州の関東地方以西から九州にかけての暖かい地域の水田の畦(あぜ)や、やや湿った場所に生育する1年草です。

    • 姿: 草丈は30cm〜1mほどになり、茎はよく枝分かれします。

    • 葉: 掌状に3〜5つに裂けており、その形がカエルの足に似ているのが大きな特徴です。

    • 花: 夏から秋にかけて、茎の上部の葉の付け根に淡い紅紫色(薄ピンク色)の小さな花を咲かせます。花びらは5枚で、アオイ科特有のハイビスカスのような形をしています。

  • 命名の由来:「カエルノアシ」という名前は、葉の形に由来しています。掌状に裂けた葉が、水辺に生育するカエルの足の指のように見えることから名付けられました。

    • また、ボンテンカ(梵天花)という正式な和名は、花の形が仏教で使われる装飾品である梵天に似ていることに由来すると言われています。

ボンテンカ 梵天花
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カタツムリ

エスカルゴ・ベゴニア:

  • 特徴:エスカルゴ・ベゴニア(Begonia rex 'Escargot')は、シュウカイドウ科シュウカイドウ属に属するレックスベゴニアの一品種です。その独特な葉の模様と形状から、世界中で人気の観葉植物となっています。エスカルゴ・ベゴニアは、主にその葉の美しさで鑑賞されます。

    • 葉の形状と模様: 最大の特徴は、その名の通り、まるでエスカルゴ(カタツムリ)の殻のように渦巻く葉です。葉の付け根から中央に向かって、葉が内側に大きく巻き込むように成長します。

      葉の表面は、メタリックな光沢のあるシルバーグレーと、深い緑色や黒っぽい赤色の脈が入り混じった複雑な模様が特徴です。このコントラストが非常に印象的で、光の当たり方によって様々な表情を見せます。

    • 草姿: 地中から根茎を伸ばし、そこから葉が立ち上がるように茂ります。草丈は比較的小さく、鉢植えで楽しむのに適しています。

    • 質感: 葉の表面には、細かい毛が生えているため、ビロードのような独特の質感があります。

    • 花: 葉が主役の植物であるため、花はあまり目立ちません。ピンクがかった白い小さな花を咲かせますが、観賞価値は葉に比べて劣ります。

    • 栽培: 比較的管理がしやすく、室内での観葉植物として人気があります。高温多湿を好み、直射日光を避けた明るい場所での管理が適しています。

  • 命名の由来:エスカルゴ・ベゴニアの命名は、その最も顕著な特徴である葉の形状に由来しています。

    • エスカルゴ: 葉の中央部がまるでフランス料理のエスカルゴ(食用カタツムリ)の殻のように、螺旋状に内側に向かって渦を巻いていることから、「エスカルゴ」の名前が付けられました。この特徴的な巻き込みが、この品種の代名詞となっています。

    • ベゴニア: シュウカイドウ科シュウカイドウ属の植物であるため、属名の「ベゴニア」がそのまま使われています。ベゴニアという名は、17世紀のフランスの植物学者ミシェル・ベゴン(Michel Bégon)にちなんで名付けられました。

このように、エスカルゴ・ベゴニアは、そのユニークで特徴的な葉の巻き込みがカタツムリの殻を連想させることから、非常に直感的で覚えやすい名前が付けられました。

 

カッコウ

カッコウソウ:

  • 特徴:カッコウソウは、サクラソウ科の多年草で、可憐な花を咲かせる日本の固有種です。かつては広い地域で見られましたが、現在は絶滅が危惧される希少な植物となっています。

    • 草姿: 地下に短い根茎があり、そこから葉と花茎を伸ばします。草丈は10〜20cmほどと小型です。

    • 葉: 葉は長い柄を持ち、円形で厚みがあり、表面には深いシワが目立ちます。葉の縁は浅く切れ込み、全体に白い毛が密生しているのが特徴です。この葉は晩秋まで枯れずに残ります。

    • 花: 4月下旬から5月頃に花茎を伸ばし、その先に紅紫色の花を数個つけます。花はサクラソウによく似ていますが、萼(がく)が長く、白い毛に覆われています。花の中心部(喉部)は濃い赤褐色をしています。

    • カッコウソウには、四国に分布する変種としてシコクカッコウソウがあり、こちらは花の中心部が黄色いことや、毛が多いことで区別されます。

  • 命名の由来:カッコウソウの名前の由来には諸説あり、はっきりとした定説はありません。

    • カッコー鳥説: カッコウ鳥が鳴く頃に花が咲くことから名付けられたという説。

    • 勝紅草(かつこうそう)説: 花色が鮮やかな紅色で、他の花に「勝っている」という意味で、「勝紅草」と書いて「カッコウソウ」と読ませたという説。

    • 羯鼓草(かっこそう)説: 羯鼓(かっこ)という日本の伝統的な太鼓が、植物全体の姿や花の形に似ていることから名付けられたという説。

  • これらの説の中で、カッコー鳥が鳴く時期に開花するという説が一般的に広く知られていますが、学術的に確定したものではありません。また、学名である「kisoana」は「木曽の」という意味ですが、実際の分布は木曽地方では確認されておらず、名前の由来には謎が多い植物と言えます。

 

カニ(蟹)

カニクサ(蟹草):

  • 特徴:シダ植物。シダ植物の一種で、細いつるが這い、蟹が這うように見えることに由来すると言われています。

  • 命名の由来:つるが這う様子が蟹に似ていることから。 葉が伸びる様子がカニの足に似ている、あるいはカニが生息するような湿った場所に生えることに由来すると言われています。

カニコウモリ(蟹蝙蝠):

  • 特徴:カニコウモリは、キク科コウモリソウ属の多年草で、山地の林内や渓流沿いなどの湿った場所に自生します。

    • 姿: 草丈は40〜100cmほどになり、根元から数本の茎を直立させます。

    • 葉: 葉は、茎に互生(互い違いにつく)し、大きな三角形をしていて、幅20cmほどになることもあります。葉の縁には不規則な鋸歯(きょし)があり、掌状に5〜7つに裂けているのが特徴です。

    • 花: 夏の終わりから秋にかけて、茎の先に小さな白い頭花(とうか)を多数つけます。この頭花が集まって円錐形の花穂をつくります。

  • 命名の由来:「カニコウモリ」という名前は、その葉の形に由来しています。

    • カニ: 葉の形が、カニの甲羅に似ていることから名付けられました。特に、掌状に裂けた部分がカニの足のように見えます。

    • コウモリ: 同属の植物であるコウモリソウ(葉がコウモリの翼に似ている)に近縁であるため、「コウモリ」の名がつけられました。

カニコウモリ - Wikipedia

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/c9/Parasenecio_adenostyloides_1.JPG

このように、カニコウモリは、カニの甲羅に似た葉を持つコウモリソウの仲間、という意味で名付けられました。

カニツリグサ(蟹釣草):

  • 特徴:カニツリグサ(蟹釣草)は、イネ科の多年草で、道端や草原に自生する植物です。

    • 姿: 高さ30〜80cmほどに成長し、細い茎が束になって立ち上がります。

    • 葉: 細長い線形の葉をつけ、葉の裏面や鞘に毛が生えていることがあります。

    • 花: 初夏(5〜6月頃)になると、茎の先端に円錐状の花穂をつけます。花穂はやや下垂し、最初は緑紫色をしていますが、秋になると黄褐色に変わります。花穂には、ねじれた長い芒(のぎ)が特徴的です。

  • 命名の由来:「カニツリグサ」という名前は、その茎が子どもの遊び道具として使われたことに由来します。

    • 昔の子どもたちが、この草の細く丈夫な茎をカニの穴に入れて、ハサミで挟ませてサワガニを釣って遊んだことから、「カニツリグサ(蟹釣草)」と名付けられました。

カニツリグサ - Wikipedia

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/dc/Trisetum_bifidum_Kanitrgs.jpg

 

カマキリ(蟷螂)

カマキリソウ:

  • 特徴:「カマキリソウ」は、ラン科の植物で、その独特な花の形がカマキリに似ていることから名付けられました。カマキリソウは、日本の本州から九州にかけての山地や丘陵の林内に自生する、地生ランの一種です。

    • 草姿と葉: 高さ10〜20cmほどの小さな植物で、茎の根元に1枚の葉をつけます。この葉は光沢のある卵形で、冬でも枯れずに残ります。

    • 花: 8月から9月にかけて、茎の先に1〜数個の花を咲かせます。花は淡い緑色をしており、まるでカマキリが威嚇しているかのような、ユニークな形をしています。特に、花の中央部にある唇弁(しんべん)と呼ばれる部分が、カマキリの腹部のように見え、側花弁がカマキリの鎌のように見えることが特徴的です。

    • 生態: 薄暗い林床でひっそりと咲くため、見つけるのが難しい植物です。

  • 命名の由来:「カマキリソウ(鎌切草)」という名前は、その花がカマキリ(蟷螂)の姿に似ていることに由来します。

    • 花の形: 花弁の形が、カマキリが獲物を捕らえるために構えている「鎌」のようであること、そして花全体の姿がカマキリを彷彿とさせることから、この名が付けられました。

    • 昆虫の名前から: カマキリという昆虫の名前自体にも由来があります。カマキリは、前脚が鎌のような形をしているため、「鎌で切る」という意味で「カマキリ」と名付けられたという説や、「鎌を持ったキリギリス」という説などがあります。カマキリソウは、そのカマキリの姿にちなんで名付けられた植物といえます。

 

カメ(亀)

オオカメノキ:

オオカメノキ(大亀の木、学名:Viburnum furcatum)は、日本や東アジアに自生する落葉低木の一種です。特に山地のブナ林などに多く見られます。

  • オオカメノキの主な特徴
    • 分類    レンプクソウ科(旧スイカズラ科)のガマズミ属に属する植物です。
    • 別名    ムシカリ(虫狩)という別名を持ちます。これは葉が虫に食われやすいことに由来します。
    • 花    初夏にアジサイに似た白い花をつけます。中心に実になる小さな花、周囲に装飾花が並ぶのが特徴です。
    • 葉    丸く大きな卵円形で、葉脈がはっきりと目立ち、表面はちりめん状にややガサガサしています。
    • 果実    秋には赤い実をつけ、その後、熟すと黒く変化します。この実は鳥の餌になります。
  • 和名に「亀」がつく由来:オオカメノキの和名「大亀の木」は、その葉の形が日本の亀の甲羅に見立てられたことに由来します。
    • 「オオ(大)」の意味:大きい
      • ガマズミ属の他の種に比べて、葉が大きく育つことから「大」がつけられました。
    • 「カメノキ(亀の木)」の由来:外見(葉の形)
      • オオカメノキの丸く、葉脈が深く刻まれた大きな葉の様子が、亀の甲羅に似ていると見立てられたため、「亀の木」という名前がつけられました。
      • 特に、葉脈が立体的に盛り上がり、亀の甲羅にある模様を連想させることから、この名前が定着したとされます。
    • その他の説
      「オオカメノキ」という名前については、他にも以下のような説が唱えられることがあります。
      • 「大神の木(オオカミノキ)」の転訛説: 神聖な木を意味する「大神の木」が変化して「オオカメノキ」になったという説。
      • 「キョウメイ」からの転訛説: 同属のガマズミの漢名である「莢迷(キョウメイ)」の音が転じて「カメ」となり、「大きなガマズミ」という意味で「オオカメノキ」となったとする説。
    • しかし、現在では「葉が亀の甲羅に似ている」という説が最も広く知られ、名前の由来として一般的です。
    • この木は、葉が虫に好まれて食べられることから「虫喰われ」が転訛した「ムシカリ(虫狩)」という別名も持っています。

キッコウチク(亀甲竹):

  • 特徴:キッコウチク(亀甲竹)は、そのユニークな見た目から観賞用としても珍重される竹の一種です。

    • 稈(かん)の形状: 最大の特徴は、稈(茎や幹にあたる部分)の下部の節間が交互に膨らんでおり、節が斜めになっている点です。この特異な形状が、あたかも「亀の甲羅」が連なったように見えることから、この名が付きました。特に、地上3mほどまでの部分でこの特徴が顕著に見られます。

    • モウソウチクの突然変異種: キッコウチクは、一般的に見られるモウソウチクの突然変異によって生じたとされています。上部にいくにつれて、元のモウソウチクのようなまっすぐな形状に戻る傾向があります。

    • 用途: その独特の見た目から、庭園の観賞用として植えられるほか、床柱、花器、茶道の結界など、伝統工芸品や装飾品に利用されます。特に京都では「京銘竹」として、火であぶり磨き上げたものが伝統工芸品に指定されています。有名なテレビドラマ「水戸黄門」に登場する水戸光圀の杖もキッコウチク製であったと言われています。

    • 希少性: 開花は非常に稀で、日本国内での記録は少ないです。

  • 命名の由来:キッコウチクという名前は、その稈の節が亀の甲羅のように見えることに由来します。

    • 「キッコウ」は「亀甲」と書き、亀の甲羅を意味します。この特徴的な見た目から、そのまま「亀甲竹」と名付けられました。日本では古くから亀は縁起の良い生き物とされており、その甲羅を模した形状を持つキッコウチクも縁起物として扱われることがあります。

キッコウリュウ(亀甲竜):

  • 特徴:キッコウリュウ(亀甲竜)は、そのユニークな見た目から多肉植物愛好家の間で非常に人気の高い植物です。特に塊根植物(コーデックス)と呼ばれるグループに属します。

    • 塊根(かたね)の形状: 最大の特徴は、土中または地上部に形成される大きな塊根(塊茎)。成長するにつれて塊根の表面がひび割れ、まるで亀の甲羅のようなゴツゴツとした模様が現れます。この模様が、キッコウリュウの最大の魅力であり、人気の理由です。

    • 葉とツル: 塊根から細いつる性の茎を伸ばし、ハート型の可愛らしい葉をつけます。つるは長く伸びることがあるため、支柱に絡ませて楽しむこともできます。

    • 原産地と生育型: 主に南アフリカの乾燥地帯が原産で、日本とは気候が異なります。

    • アフリカキッコウリュウ: 一般的に流通しているのはこちらで、日本の夏にあたる時期(6月〜8月頃)に葉を落として休眠し、秋から春にかけて成長する冬型の植物です。

    • メキシコキッコウリュウ: こちらは夏型で、日本の夏に成長し、冬に休眠します。

    • 花: 小さな黄緑色の花を咲かせますが、塊根のインパクトが強いため、花はあまり目立ちません。雄花と雌花が別の株に咲く雌雄異株です。

    • 生長速度: 塊根が大きく成長するまでには、長い年月がかかります。数十年かけて大きく育つこともあります。

  • 命名の由来:キッコウリュウという名前は、その塊根が亀の甲羅に似ていることに由来しています。

    • 「キッコウ(亀甲)」: 亀の甲羅を意味します。

    • 「リュウ(竜)」: 塊根から伸びるつる性の茎が、まるで竜のように見えることから「竜」の字が当てられたと言われています。

    • 学名の Dioscorea elephantipes も、その特徴を表しています。

    • Dioscorea(ディオスコレア属)は、古代ギリシャの植物学者ディオスコリデスに由来します。

    • elephantipes(エレファンティペス)はラテン語で「象の足」を意味し、これもまたその塊根の大きさとゴツゴツした質感を表しています。

このように、キッコウリュウはその見た目の特徴がそのまま和名や学名に反映されている植物です。

ジャボチカバ:

  • 特徴:ジャボチカバ(学名:Plinia cauliflora)は、ブラジル原産のフトモモ科の常緑高木で、非常にユニークな特徴を持つ果樹です。

    • 幹生花・幹生果: ジャボチカバの最大の特徴は、花や実が幹や太い枝に直接つくことです。一般的な植物のように枝先に花や実をつけるのではなく、木の幹全体にびっしりと白い花が咲き、その後、ブドウのような実がなります。この様子は非常に珍しく、見た人に強い印象を与えます。

    • 果実: 実は直径2〜3cmほどの丸い形をしており、色は巨峰に似た黒紫色です。皮はやや厚みがあり、ポリフェノールが豊富に含まれています。果肉は白く、ゼリー状でジューシー。甘酸っぱい味で、ブドウやライチ、ブルーベリーを合わせたような独特の風味があります。

    • 栽培: 成長は比較的遅いですが、非常に丈夫で育てやすい植物です。耐寒性も比較的あり、温暖な地域であれば庭植えで育てることも可能です。鉢植えでもよく結実するため、家庭で楽しむのにも適しています。

  • 命名の由来:「ジャボチカバ」という名前は、ブラジルの先住民族であるトゥピ族の言葉に由来するとされています。

    • トゥピ族の言葉: 「ジャボチ(Jaboti)」は「陸亀」、「カバ(caba)」は「果実」、または「カー(caa)」が「果実」で「アバ(aba)」が「場所」を意味するとされ、「亀のいる地」や「亀の果実のある場所」といった意味合いを持つと考えられています。

    • また、幹に直接実がなることから、日本では「木葡萄(キブドウ)」という別名で呼ばれることもあります。

 

カメレオン

ドクダミカメレオン:

  • 特徴:ドクダミカメレオンは、ドクダミの園芸品種の一つで、特に葉の鮮やかな斑(ふ)が特徴的な植物です。「五色ドクダミ(ゴシキドクダミ)」とも呼ばれます。

    • 葉: ドクダミカメレオンの最大の特徴は、その葉の色です。通常のドクダミの緑色の葉とは異なり、緑色に加えて、白、黄色、赤、ピンクなどの斑が入り、まるで絵の具を散らしたようにカラフルな姿をしています。日当たりなどの環境によって、色の出方が変わるのも特徴です。

    • 花: 原種のドクダミと同様に、初夏に白い4枚の「苞(ほう)」と呼ばれる部分に囲まれた、小さな花を咲かせます。

    • 香り: ドクダミ特有の香りは、この品種でも健在です。

    • 性質: 原種のドクダミと同じく繁殖力が非常に旺盛で、地下茎を伸ばしてよく増えます。そのため、グランドカバーとして利用されることが多いですが、植える場所によっては他の植物を駆逐してしまうほどの広がりを見せるため、注意が必要です。

  • 命名の由来:「ドクダミカメレオン」という名前は、葉の色が環境によって変化する様子が、カメレオンの体色変化に似ていることに由来します。

    特にヨーロッパで「Chameleon plant(カメレオン・プラント)」という品種名で普及し、日本に逆輸入されたことでこの名前が定着しました。

    五色ドクダミという別名も、五つの色が葉に現れることからつけられています。

 

カモ(鴨)

カモガヤ(鴨茅):

  • 特徴:カモガヤ(鴨茅、学名: Dactylis glomerata)は、イネ科カモガヤ属の多年草です。ヨーロッパ原産ですが、牧草として世界各地で導入され、日本では明治時代以降に広く栽培されるようになりました。

    • 草姿(そうし): 茎の高さは60cmから1.5mほどに生長し、株元からたくさんの葉を出して束になります。

    • 穂(すい): 穂の形が特徴的で、茎の先端に小穂(しょうすい)が密集して球状のかたまりを作り、それが数個集まって大きな房のようになります。

    • 花粉症の原因: 5月から7月にかけて花粉を飛ばし、スギ花粉に次ぐ代表的な花粉症の原因植物として知られています。

    • 利用: 栄養価が高く、育てやすいことから、牧草として広く利用されています。

  • 命名の由来:「カモガヤ(鴨茅)」という和名には、いくつかの説があります。

    • カモの餌: 穂の形がカモが好んで食べる実や草に似ていることから名付けられたという説。

    • カモの好む場所: カモがよくいるような湿地や水辺に生えていることから名付けられたという説。

    • 頭花(とうか)の形: 穂の先端に集まる小穂の形が、カモの頭に似ていることから名付けられたという説。

これらの説に共通しているのは、この植物がカモと何らかの関係性を持っていると見なされたことです。

カモノハシ:

  • 特徴:カモノハシ(イネ科)は、湿地や湿った草地、海岸の砂浜などに生育する多年生の草本です。

    • 生育場所と姿: 主に湿地に生育し、株立ちになって高さ30~90cmになります。茎の根元は地を這って広がり、節から根を出すこともあります。

    • 葉: 線状披針形で、長さ15~30cmほどです。葉鞘の縁に長い毛が生えていることがありますが、全体的には無毛のことが多いです。

    • 花穂(花序): 夏から秋にかけて、茎の先端に長さ4~7cmほどの円筒形の花穂をつけます。この花穂は一見すると1本の穂のように見えますが、実は半円状の2本の穂がぴったりと密着しているのが特徴です。

    • 近縁種との違い: 近縁種であるケカモノハシは、茎の節や小穂に毛が密生しているのに対し、カモノハシはほとんど毛がないことで区別できます。また、カモノハシは芒(のぎ)がほとんど目立たないのに対し、ケカモノハシは長い芒を持つことが多いです。

  • 命名の由来:カモノハシ(イネ科)の名前は、花穂の形に由来しています。

    • 上述したように、この植物の花穂は2本の穂が密着して1本のように見えます。この形状が、鳥のカモのくちばしに似ていることから、「カモノハシ(鴨の嘴)」と名付けられました。

カモノハシ (植物) - Wikipedia

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/00/Ischaemum_aristatum_var_glaucum_kmnhs02.jpg

動物のカモノハシも、口がカモのくちばしに似ていることから同じ名前がつけられています。

 

カモシカ(羚羊)

カモシカソウ(羚羊草):

  • 特徴:キンポウゲ科。カモシカソウは、主に高山帯や亜高山帯の林床に自生するキンポウゲ科の多年草です。カモシカソウは、春には淡い黄緑色や白色の小さな花を咲かせます。目立たない花ですが、高山植物の愛好家にはよく知られた植物です。

  • 命名の由来:その名前の由来は、カモシカがその葉を好んで食べることにあります。具体的には、カモシカは冬場など、他の植物が少ない時期に、このカモシカソウの葉を重要な食料源として利用することが知られています。厳しい環境の中で生きるカモシカにとって、貴重な栄養源となる植物だったことから、その名が付けられました。

    また、地域によっては「シカソウ」や「オオカメノキグサ」などと呼ばれることもありますが、いずれもカモシカとの関連性を示す名前が多いです。

 

カモメ(鴎)

オオカモメヅル(大鴎蔓):

  • 特徴:オオカモメヅルは、日本の山地の林縁や林床に自生するキョウチクトウ科(旧ガガイモ科)のつる性多年草です。

    • つる性の茎: 他の植物に絡みつきながら長く伸びるつる性の植物です。

    • 葉: 葉は対生し、基部がややハート形になった三角形の広披針形(こうひしんけい)をしています。先端は細長く尖り、葉の縁はなめらかです。葉はカモメヅルよりも大きいのが特徴です。

    • 花: 夏から秋にかけて、葉の付け根から短い花柄を出し、小さな花をまばらにつけます。花の色は淡い暗紫色で、直径は4〜6mmほどです。花冠の内側には白い綿毛が生えており、星形に開いた副花冠が特徴的です。

    • 果実: 花の後に、長さ5〜7cmの細長い袋果(たいか)をつけます。この果実は2つ対になって水平につくことが多く、秋に熟すと裂けて、白い毛の生えた種子を飛ばします。

  • 命名の由来:「オオカモメヅル」という名前は、「大」と「カモメヅル」を組み合わせたものです。

    • カモメヅル: カモメヅルという名前は、対生する2枚の葉が、空を飛ぶカモメの翼に見えることから名付けられたという説が一般的です。

    • オオ(大): 本種はカモメヅル属の近縁種であるコカモメヅル(小鴎蔓)やカモメヅルと比べて、葉がより大きいことから、「オオ(大)」がつけられました。

    • つまり、オオカモメヅルは「カモメの翼に似た葉を持つつる植物の中で、葉が大きい種類」という意味で名付けられたのです。

カモメヅル:

  • 特徴:カモメヅルは、キョウチクトウ科(旧ガガイモ科)の多年草で、林の縁や草地などに生育します。

    • カモメヅルはつる性の植物で、他の植物に絡みつきながら成長します。葉は、卵形から披針形で、両端が尖っており、対生(茎を挟んで2枚の葉が向かい合ってつく)します。

    • 夏から秋にかけて、葉の付け根から小さな花をつけます。花は濃い紫色で、星のような形をしており、内側に白い毛が生えているのが特徴です。花の後にできる果実は、長さ5〜7cmほどの細長い袋果(たいか)で、熟すと縦に裂けて、白い毛の生えた種子を飛ばします。

  • 命名の由来:「カモメヅル」という名前は、その花の形に由来しています。

    • 花の蕾(つぼみ)が、鳥のカモメが飛んでいる姿に似ていることから名付けられました。特に、蕾の先の部分がくちばし、下の膨らんだ部分が胴体のように見えるため、この名がつけられたと言われています。

    • また、同じガガイモ科の植物で、花の蕾がサギ(鷺)に似ていることから「サギソウ」と名付けられた植物もあります。このように、花の形を鳥の姿に見立てて名前がつけられることは、植物の世界では珍しくありません。

カモメラン(鴎蘭):

  • 特徴:カモメランは、ラン科カモメラン属の多年草で、亜高山帯や高山帯の湿った草地などに自生する小型のランです。

    • 姿: 高さ5〜15cmほどの小さな植物で、茎の根元に2〜3枚の細長い葉をつけます。

    • 花: 6月から8月にかけて、茎の先端に数個の小さな花をまばらにつけます。花の色は白色で、唇弁(しんべん)と呼ばれる花びらの一部が鳥の翼のように左右に大きく広がり、先端が尖っているのが特徴です。

  • 命名の由来:「カモメラン」という名前は、花のかたちに由来しています。

    • 白い花びらの一部である唇弁が、空を飛んでいるカモメの姿にそっくりなことから、「カモメラン」と名付けられました。特に、左右に広がる唇弁がカモメの翼に見えるため、この名がつけられたと言われています。

    • 同じような理由で、花の形を鳥に見立てて名付けられたランには、サギソウ(鷺草)やサギラン(鷺蘭)などがあります。

 

カラス(烏)

カラスウリ(烏瓜):

  • 特徴:ウリ科。

  • 命名の由来:カラスが好んで食べるウリであることから。

カラスオウギ(烏扇):

  • 特徴:ヒオウギ(檜扇、学名: Iris domestica)は、アヤメ科の多年草で、日本、中国、インド北部などに自生しています。別名の「カラスオウギ(烏扇)」もよく知られています。

    • 草姿(そうし): 高さ60〜120cmほどになり、扇を広げたように左右に重なり合って広がる厚みのある剣状の葉が特徴的です。この姿が、和名の由来となっています。

    • 花: 7月から8月にかけて開花します。オレンジ色または淡い黄色の花で、6枚の花びらには赤い斑点模様があります。

    • 果実と種子: 花が終わると、袋状の大きな鞘ができ、熟すと割れて中から光沢のある真っ黒な種子が顔を出します。この種子は「ぬばたま(射干玉)」や「うばたま(烏羽玉)」と呼ばれ、万葉集などでは「黒」や「夜」にかかる枕詞として詠まれていました。

  • 命名の由来:ヒオウギの命名には、主に2つの由来があります。

    • 檜扇(ひおうぎ):平安時代の宮中で、官位のある人が用いた「檜扇(ひおうぎ)」という、ヒノキの薄い板を重ねて作られた扇に、葉のつき方がよく似ていることから名付けられました。幾重にも重なり合う葉の姿が、まさに扇子を開いたように見えるためです。

    • カラスオウギ(烏扇):別名である「カラスオウギ」は、花後にできる種子が、カラスの羽のように黒く艶があることに由来します。ヒオウギの種子は、古くから「ぬばたま(射干玉)」と呼ばれ、その漆黒の美しさから和歌にも詠まれてきました。

これらの名前は、それぞれ植物の特徴的な部分、つまり「葉」と「種子」に由来しており、この植物の持つ二つの魅力をうまく表現しています。

カラスザンショウ(烏山椒):

  • 特徴:ミカン科。

  • 命名の由来:カラスが実を好んで食べることから。

カラステング:

  • カラステングの特徴
    カラステング(Amanita corvina または Amanita corvini)は、テングタケ科テングタケ属に属するキノコで、毒キノコとして知られています。
    • カサ(傘)の色: 最大の特徴は、カサの表面が暗い黒褐色や濃い灰色をしている点です。
    • 形態: テングタケ属の特徴として、柄(軸)にはツバ(リング)があり、根元の部分が袋状の大きなツボ(幼菌を包んでいた外被膜の残骸)で覆われています。
  • 標準和名に「カラス」がつく由来
    カラステングの和名に**「カラス(烏)」がつく由来は、そのカサの色の特徴**を日本の身近な鳥に例えたものです。
    • 暗い色への連想: カサの表面が、カラスの羽のように黒っぽい、または非常に暗い色をしていることから、「カラス」という名が冠せられました。
    • なお、「テング」がつく由来は、テングタケ属に共通する、根本の袋状のツボや、カサに残るツボの破片が、日本の伝説上の存在である天狗の装飾品や頭巾を連想させるためです。

カラスノエンドウ(烏の豌豆):

  • 特徴:マメ科。

  • 命名の由来:スズメノエンドウより大きく、カラスが好んで食べることから。スズメノエンドウよりも少し大きく、やはり豆果をつけます。カラスがこの豆果を好んで食べること、またはカラスが食べるのにちょうど良い大きさの豆であることに由来すると言われています。

カラスビシャク(烏柄杓):

  • 特徴:カラスビシャク(烏柄杓、学名: Pinellia ternata)は、サトイモ科の多年草で、畑や野原など日当たりの良い場所に自生する植物です。

    • 独特な花と仏炎苞: サトイモ科特有の、ユニークな形をした花を咲かせます。花そのものは仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれる緑色の筒状の苞に包まれていて、外からは見えません。この仏炎苞から、細長い糸のような付属体が伸びているのが特徴です。

    • 繁殖力: 地中に球茎(きゅうけい)と呼ばれる小さな球根を持つほか、葉の付け根にムカゴ(珠芽)をつけて増えるため、非常に繁殖力が強い植物です。

    • 薬用: 地下にある球茎は、乾燥させて「半夏(はんげ)」という生薬として利用されます。鎮吐や鎮咳去痰(ちんがいきょたん)の効能があるとされ、多くの漢方薬に配合されています。

    • 有毒: 生の植物全体には毒性があります。

  • 命名の由来:「カラスビシャク」という名前は、その特徴的な花の形に由来します。

    • カラス(烏): 「カラス」という言葉は、植物の名前に冠される際、「小さい」「劣っている」「役に立たない」といった意味合いで使われることが多いです。

    • ビシャク(柄杓): 仏炎苞とそこから伸びる付属体の形が、水をくむ道具である「柄杓(ひしゃく)」に見立てられました。

    • つまり、カラスビシャクは「柄杓に似ているが、小さすぎて人間が使うには役に立たない」という意味で名付けられたのです。

    • また、カラスビシャクの球茎が薬として売買され、農家の女性がそれを集めて小遣い稼ぎをしたことから、「ヘソクリ」という言葉の語源になったという説もあります。

カラスムギ(烏麦):

  • 特徴:イネ科。

  • 命名の由来:カラスが好んで食べる麦であることから。

 

カリガネ(雁金)

カリガネソウ(雁草):

  • 特徴:カリガネソウは、シソ科の多年草で、その特徴的な花の形と独特の匂いが知られています。漢字では雁金草または雁草と表記されます。

    • 花の形が特徴的: 最も目を引く特徴は、そのユニークな花の形です。青紫色の花弁は、下方の一枚が特に大きく広がっており、そこから長く突き出た雄しべと雌しべが弓なりに上方に湾曲しています。この形状が、まるで鳥の「雁(ガン)」が羽を広げて飛ぶ姿や、頭をもたげた姿に見立てられます。別名を「帆掛草(ホカケソウ)」ともいい、帆を張った船にも例えられます。

    • 独特の匂い: 葉や茎に触れたり傷つけたりすると、硫黄のような、あるいは独特の不快な臭気を放ちます。この臭いは、害虫を遠ざける役割があると考えられています。

    • 草丈: 成長すると、高さが60cmから1mほどになります。

    • 葉: 葉は茎に互い違いに対生し、卵形から広卵形で、縁には細かいギザギザ(鋸歯)があります。

    • 開花期: 夏の終わりから秋にかけて、具体的には8月から9月頃に、青紫色の花を咲かせます。

    • 分布: 日本の北海道から九州まで、そして朝鮮半島や中国の低山や林縁などに自生しています。

  • 命名の由来:「カリガネソウ」という和名は、その独特な花の形状が、渡り鳥の「雁(カリガネ)」に似ていることに由来しています。

    • 「雁が飛ぶ姿」に例えられる花: 花冠から長く伸びて弓なりに曲がる雄しべや雌しべ、そして左右に広がる花弁の様子が、空を飛ぶ雁の姿を連想させるとされています。

    • 家紋の「結び雁金」との関連: 日本の家紋でよく見られる「結び雁金」の意匠の形に、花が似ているという説も有力です。

このように、カリガネソウは、その視覚的に印象的な花の姿から、渡り鳥の「雁」にちなんで名付けられた植物です。

 

カンガルー

カンガルー・ポー:

  • 特徴:カンガルー・ポー (Anigozanthos spp.) は、オーストラリア原産のユニークな植物で、その独特な花の形から世界中で愛されています。

    • カンガルーの足のような花: カンガルー・ポーの最大の特徴は、その名前の由来にもなっている、カンガルーの前足(Paw)にそっくりな形をした花です。花茎から伸びる細長い筒状の花は、先端が6つに裂けており、その形がまさにカンガルーの指のように見えます。また、花や茎には細かい毛が密生しており、ベルベットのような質感を持っています。

    • 鮮やかな花色: 赤、黄、緑、オレンジ、ピンク、白など、非常に多彩な花色があり、中には赤と緑のツートンカラーになる品種もあります。これらの鮮やかな色は、鳥を引き寄せて受粉を助ける役割も果たしています。

    • 葉の形状: 葉はアヤメのような細長い剣状で、地際から放射状に伸びます。

    • 草丈: 品種によって異なりますが、草丈は20cmから1.5mと幅広く、園芸品種では50cm~90cm程度のものが多く流通しています。

    • 多年草: 多くは常緑の多年草ですが、一部の種は夏に休眠するものもあります。

    • 切り花やドライフラワーに人気: そのユニークな見た目と花持ちの良さから、切り花やドライフラワーとしても非常に人気があります。

    • 耐寒性・耐湿性: オーストラリアの乾燥した気候が原産のため、日本の高温多湿な夏や冬の寒さにはやや弱く、特に多湿は苦手とします。日本では鉢植えで管理されることが多いです。

  • 命名の由来:「カンガルー・ポー」という名前は、その花の形がオーストラリアの有袋類であるカンガルーの「前足(paw)」に酷似していることに由来します。

    • Kangaroo(カンガルー): オーストラリアを代表する動物。

    • Paw(ポー): 動物の足(特に指のある肉球のある足)を意味する英単語。

    • この直感的な命名は、植物の見た目の特徴を非常によく捉えています。

    • ちなみに、カンガルー・ポーの学名は Anigozanthos(アニゴザントス)と言います。この学名の語源はギリシャ語で、「ανοίγω (anoigo) = 開く」と「άνθος (anthos) = 花」を組み合わせたもの、あるいは「ανισος (anisos) = 不等な、斜めの」と「άνθος (anthos) = 花」を組み合わせたものとされており、花の開いた形や非対称な形に由来すると考えられています。

カンガルー・ポーは、その個性的な姿から、西オーストラリア州の州花にも指定されています。

 

キジ(雉)

キジカクシ(雉隠し):

  • 特徴:ユリ科(現在はキジカクシ科)。

  • 命名の由来:葉が茂ってキジが隠れてしまうほどになることから。

キジムシロ(雉蓆):

  • 特徴:キジムシロは、バラ科キジムシロ属の多年草で、日当たりの良い山野の道端や草地に自生します。

    • 姿: 根元から放射状に葉を広げ、高さ10〜30cmほどの茎を伸ばします。全体に白い毛が生えているのが特徴です。

    • 葉: 根元から生える根出葉(こんしゅつよう)は、5〜9枚の小葉(しょうよう)からなる羽状複葉で、小葉の縁には鋸歯(きょし)があります。小葉の裏側は白い毛が密生しているため白っぽく見えます。

    • 花: 春から初夏にかけて、茎の先に直径1.5cmほどの鮮やかな黄色の花を数個つけます。花びらは5枚で、葉の形から同じバラ科のキジムシロ属であるミヤマキンバイによく似ていますが、ミヤマキンバイは小葉が3枚なのが一般的です。

  • 命名の由来:「キジムシロ」という名前は、根元から広がる葉の様子に由来しています。

    • キジ(雉): 葉が地面に広がる様子を、鳥のキジ(雉)が座るための敷物に見立てたものです。

    • ムシロ(筵): 葉が放射状に広がる姿が、編み物である筵(むしろ)の形に似ていることから、この名がつけられました。

    • つまり、キジが休むための筵のような葉を持つ植物、という意味で「キジムシロ」と名付けられました。

 

キツネ(狐)

キツネアザミ(狐薊):

  • 特徴:キツネアザミ(狐薊、学名: Hemistepta lyrata)は、キク科キツネアザミ属の越年草です。日本各地の道端や空き地、休耕田などに自生しています。

    • 葉: 葉はギザギザと深く切れ込んでいるものが多いですが、アザミと違ってトゲがなく、柔らかいのが特徴です。葉の裏側には、白い細かい毛が密生しています。

    • 花: 春から初夏にかけて、茎の先にアザミに似た薄紫色の筒状の花を咲かせます。花の大きさは直径2.5cmほどで、上向きに咲きます。

    • 草姿(そうし): 草丈は20cmから高くは1.5mほどになり、茎は直立し、上部で枝分かれします。

  • 命名の由来:「キツネアザミ(狐薊)」というユニークな和名は、その見た目とアザミとの違いに由来するとされています。

    • キツネ(狐): 日本の昔話でキツネは人を化かす存在として描かれます。この植物は、花の形や葉の切れ込みがアザミによく似ていますが、アザミの特徴であるトゲがありません。この「アザミだと思ってよく見たらトゲがない、まるでキツネに化かされたようだ」という様子から、「キツネ」という言葉がつけられました。

    • アザミ(薊): 花の形がアザミによく似ていることに由来します。

    • このほかにも、「猟師に追われたキツネがアザミに化けたが、トゲを付け忘れた」という民話に由来するという説もあります。いずれにしても、本物のアザミと紛らわしい特徴が名前の由来となっています。

キツネアザミの種 60粒?

キツネノカミソリ(狐の剃刀):

  • 特徴:ヒガンバナ科。キツネノカミソリは、ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草です。日本固有種とも言われ、本州の関東地方以西、四国、九州の山林のやや湿った場所や林縁などに自生します。夏のお盆の頃に、葉がない状態で花だけが茎先に咲くという、ヒガンバナの仲間らしい特徴を持っています。

    • 「葉見ず花見ず」: ヒガンバナと同じく、花が咲く時期には葉が枯れてなく、葉が出ている時期には花がないという、いわゆる「葉見ず花見ず」の性質を持っています。春先に葉が出て、夏には枯れて姿を消し、その後に花茎が伸びて花を咲かせます。

    • 花期: 主に8月から9月頃、ちょうどお盆の時期に花を咲かせます。

    • 花の色と形: 花茎の先に数個のオレンジ色から赤みがかったオレンジ色の花をつけます。花弁は6枚で、筒状に咲き、先端がやや反り返ります。雄しべと雌しべは花弁から長く突き出ています。

    • 毒性: ヒガンバナ科の植物であるため、鱗茎(りんけい:球根)や葉、花など植物全体にリコリンなどの有毒成分を含んでいます。誤って口にすると、吐き気、下痢、麻痺などの症状を引き起こす可能性があるため、絶対に食べないでください。

  • 命名の由来:「キツネノカミソリ」という名前は、その花の鮮やかな色と形、そしてその花が咲く場所や時期にまつわる「キツネ」のイメージに由来すると言われています。

    • 「カミソリ(剃刀)」の由来: 花弁が鋭く反り返り、全体的にシャープで切れ味の良いカミソリの刃に似ていることから名付けられました。特に、オレンジ色の花弁が光を反射する様子が、鋭利な刃物のように見えたのかもしれません。

    • 「キツネ(狐)」の由来: 植物の和名で「キツネ」が冠される場合、いくつかの意味合いがあります。

      • 人里離れた場所: キツネが出没しそうな、人目につきにくい山中の林縁や湿った場所などに自生することから。

      • だます、化かす: 人を惑わすような、どこか神秘的で少し不気味な雰囲気を持つ花であることから。また、一般的な花のように葉と花が同時に見られない「葉見ず花見ず」の性質も、キツネに「化かされた」ような感覚を与えるかもしれません。

      • 色: キツネの毛色(特に赤褐色)に花のオレンジ色が似ているという説も稀にあります。

    • これらのうち、「人里離れた場所に生える」という場所的な要素や、「葉がない状態で突然花が咲く」という神秘的で少し不思議な生態が、キツネのイメージと結びつき、「キツネノカミソリ」という名前になったと考えられています。夏の終わり、森の中で鮮やかなオレンジ色の花が突然現れる姿は、まさにキツネに化かされたような、ハッとする美しさがありますね。

キツネノボタン(狐の牡丹):

  • 特徴:キツネノボタンは、キンポウゲ科キンポウゲ属の越年草(または一年草)です。日本全国の道端、畑の縁、水田のあぜ道、湿った草地など、日当たりの良い場所でごく普通に見られる雑草の一つです。春から初夏にかけて、光沢のある黄色い花を咲かせます。

  • 「キツネノボタン」という名前は、その花の形と、特定の場所やイメージに結びつく「キツネ(狐)」という言葉の使われ方に由来します。

    • 「ボタン(牡丹)」の類似: 花弁が光沢のある黄色で、丸く開いた花の形が、豪華な園芸植物であるボタンの花に似ていると見立てられました。もちろん、本物のボタンに比べればずっと小さいですが、その鮮やかさから「ボタン」と名付けられたのでしょう。

    • 「キツネ(狐)」の意味: 植物の和名で「キツネ」という接頭語が使われる場合、いくつかの意味合いがあります。

      1. 人里離れた場所: キツネが出没しそうな、人目につきにくい場所や、少し荒れた場所に生えることに由来する。

      2. だます、偽る: 本物に似ているが、本物ではない、あるいは利用価値がない、といった意味合い(例:キツネノカミソリ)。

      3. 特定の動物のイメージ: キツネの毛色や尻尾など、キツネそのものの特徴を連想させる場合。

    • キツネノボタンの場合は、1の「人里離れた場所に生える」、あるいは2の「本物のボタンとは異なり、役に立たない」といったニュアンスが強いと考えられています。特に、畑の縁や草むらといった、少し荒れた場所に咲く様子が、キツネが現れそうな雰囲気と結びつけられたのかもしれません。このように、キツネノボタンという名前は、その花の美しさと、どこかミステリアスな「キツネ」のイメージを重ね合わせてつけられた、想像力豊かな和名と言えるでしょう。

キツネノマゴ(狐の孫):

  • 特徴:キツネノマゴ科。

  • 命名の由来:小さな花を咲かせ、全体の姿が狐の尻尾に見え、それが転じて「狐の孫」になったとも言われる。

キツネノヒガサ(狐の傘):

  • 特徴:キツネノヒガサ(狐の傘)は、野山でよく見かけることのできる可愛らしいキノコの一種です。一般的に毒キノコとして知られていますが、その特徴と名前の由来を見ていきましょう。

    • カサの形状と色: カサは直径2〜5cm程度で、若い時は卵形や釣鐘型をしていますが、成長すると次第に平らに開きます。色は鮮やかな黄色から黄褐色で、表面には細かい繊維状の鱗片があることもあります。水分が多いとやや粘り気が出ることがあります。

    • ヒダ: カサの裏側には、密生した黄色いヒダがあります。成長すると褐色を帯びることもあります。

    • ツカ(柄): カサと同色かやや淡い色の細長いツカが伸びています。ツカの表面はなめらかで、中身は空洞のことが多いです。根元には菌糸が伸びていることがあります。

    • 発生時期と場所: 春から秋にかけて、広葉樹林や針葉樹林の地上、あるいは朽ち木の上などに群生して発生します。比較的日当たりの良い場所を好みます。

    • 毒性: 残念ながら、キツネノヒガサは毒キノコです。食べると消化器系の症状(嘔吐、下痢など)を引き起こします。食用には向かないので、採取しても決して食べないでください。

  • 命名の由来:キツネノヒガサという名前は、その見た目の特徴と日本の民話に登場する「キツネ」に由来しています。

    • 「キツネ(狐)」: 夜中にキツネが集まって宴を開く際に、このキノコを傘として使うという、昔からの言い伝えや民話にちなんで名付けられたとされています。キツネは古くから神秘的な生き物として、人里離れた場所や夜間に現れるイメージがあり、そのような場所でひっそりと生えるこのキノコにキツネを結びつけたのでしょう。

    • 「ヒガサ(日傘)」: カサの形が、ちょうど日差しを遮る「傘」のように見えることから来ています。特に、地面からひょっこりと伸びた様子は、小さな日傘がそこにあるかのようです。

このように、キツネノヒガサは、その可愛らしい見た目と、昔から語り継がれるキツネの民話が結びついて名付けられた、趣のあるキノコの名前と言えるでしょう。

 

キリン(麒麟)

オオバキリン(大葉麒麟):

  • 特徴:オオバキリンは、サボテン科ペレスキア属の植物で、ブラジル原産の半落葉広葉低木です。一見するとサボテンには見えないような、大きな葉を持つことが特徴です。

    • 葉と茎: サボテン科としては珍しく、大きな葉を持ちます(最大で30cmにもなることがあります)。この葉は楕円形から槍倒卵形で、羽状の葉脈が目立ちます。また、幹や葉の付け根にはサボテン特有の鋭い刺があります。特に古い枝には多数の刺が密生します。

    • 花: 夏の昼間だけ、濃いピンク色の花を多数固まって咲かせます。花の直径は3〜5cm程度です。

    • 果実: 花後に梨に似た果実をつけます。

    • 用途: 自生地では葉が野菜として食用に供されることもあります。また、観賞用としても栽培されます。

    • 生育環境: 乾燥した森林やサバンナに自生し、排水性の良い土壌と十分な日光を好みます。一定以上の乾燥や低温にさらされると葉を落としますが、条件が良くなると急速に葉を茂らせます。

  • 命名の由来:オオバキリンの和名と学名は、その特徴的な「大きな葉」に由来しています。

    • 和名「オオバキリン(大葉麒麟)」:

      • この植物と同じペレスキア属には、先に日本に導入されていた「モクキリン(木麒麟)」や「サクラキリン(桜麒麟)」といった種があります。これらの「キリン」という名に準じ、本種が特に大きな葉を持つことから「大葉」が加えられ、「オオバキリン」と名付けられました。

    • 学名「Pereskia grandifolia」:

      • 属名 "Pereskia": フランスの植物学者ニコラ=クロード・ファブリ・ド・ペーレスク(Nicolas-Claude Fabri de Peiresc)への献名です。

      • 種小名 "grandifolia": ラテン語の "grandis"(大きな)と "folia"(葉)を合成したもので、「大きな葉の」という意味になります。これも、その特徴的な大きな葉に由来しています。

このように、オオバキリンはその見た目の特徴がそのまま名前の由来になっている植物です

キリンカク(麒麟角):

  • 特徴:キリンカク(麒麟角、学名:Euphorbia neriifolia)は、トウダイグサ科ユーフォルビア属の多肉植物です。

    • 多肉質の茎: サボテンのように多肉質の茎を持つのが最大の特徴です。よく分枝し、高さ2~6メートルにも成長する常緑小低木です。主幹や大きな枝は丸く、比較的若い小枝には5つの稜(角)があります。

    • 葉: 卵形や長楕円形、またはへら状の葉を枝の先端につけます。

    • 花: 小さな杯状花序(はいじょうかじょ)と呼ばれる独特な形の花を咲かせます。花弁は存在せず、総苞(そうほう)と呼ばれる部分が赤く色づきます。花期は一般的に2月から3月とされますが、環境によっては長く咲くこともあります。

    • 樹液: トウダイグサ科の植物全般に言えることですが、白い乳液状の樹液を出します。この樹液には刺激性があり、皮膚に触れると炎症を起こすことがあるため注意が必要です。

    • 耐乾性: 乾燥に非常に強く、水やりの手間があまりかからないため、育てやすい植物とされています。

    • 観賞用: そのユニークな姿から、観葉植物として人気があります。特に、斑入りの品種や、綴化(てっか:成長点が帯状になったもの)した個体は、彫刻のような芸術的な姿で珍重されます。

  • 命名の由来:「キリンカク(麒麟角)」という名前は、その植物の姿が、伝説上の動物である「麒麟(きりん)」の角や、その堂々とした姿を連想させることに由来すると考えられています。

    具体的には、以下の点が関連している可能性があります。

      • 茎の形状: 多肉質の茎が直立し、力強い印象を与える姿が、伝説の麒麟の威厳ある姿に例えられた。

      • 「角」の表現: 若い枝に見られる稜(角)や、全体的な力強い印象から「角」という言葉が使われた。

    • また、学名についても見てみましょう。

      • Euphorbia(ユーフォルビア): 属名で、ローマ時代のモーリタニアの医師エウフォルブス(Euphorbus)の名に因んでいます。彼はこの植物の樹液を薬として使っていたとされています。

      • neriifolia(ネリイフォリア): 種小名で、「キョウチクトウのような葉の」という意味があります。これは、葉の形がキョウチクトウに似ていることに由来します。

このように、キリンカクは、その特徴的な見た目から想像力を掻き立てる名前が付けられています。

キリンカン(キリン冠):

  • 特徴:キリンカン(麒麟冠、学名:Euphorbia grandicornis)は、トウダイグサ科ユーフォルビア属に属する多肉植物です。その特徴と命名の由来について詳しく見ていきましょう。

    • 多肉質の茎と鋭いトゲ: 最大の特徴は、硬く鋭いトゲに覆われた多肉質の茎です。茎は通常3つの稜(角)を持ち、翼状に張り出していることが多く、これが植物全体に独特のゴツゴツとした印象を与えます。トゲは対になって双方向に出ているため、英名では "Big Horned Euphorbia" や "Cow's Horn"(牛の角)とも呼ばれます。

    • 草丈: 高さ2メートルほどに成長する小低木です。

    • 葉: 小枝の先に小さな葉をつけますが、葉はあまり目立たず、サボテンのように見えることが多いです。

    • 花: 小さな杯状花序(はいじょうかじょ)と呼ばれる独特な構造の花を咲かせます。花弁はなく、総苞が黄色などに色づきます。花は茎の稜に沿ってひっそりと咲き、5ミリメートル程度と非常に小さいため、ほとんど目立ちません。

    • 樹液: トウダイグサ科の植物に共通して、白い乳液状の樹液を出します。この樹液には刺激性があり、皮膚に触れるとかぶれることがあるため、取り扱いには注意が必要です。

    • 耐乾性: 乾燥に非常に強く、多肉植物として育てやすい部類に入ります。

    • 観賞用: そのユニークな姿から、観葉植物として栽培されます。特に、その力強い姿は独特の存在感を放ちます。

  • 命名の由来:「キリンカン(麒麟冠)」という和名、および「麒麟角」と同様に、伝説上の動物である「麒麟(きりん)」に由来すると考えられます。

    •  具体的には、以下のような理由が挙げられます。

      • 「冠」の意味: キリンカンの茎に見られる複数の稜(角)が、まるで麒麟の頭に戴く「冠」のように見えることから、「麒麟冠」と名付けられた可能性があります。

      • 麒麟のイメージ: 麒麟が持つ威厳や力強さ、あるいはその姿が持つ独特の美しさが、この植物の多肉質の茎と鋭いトゲが織りなす独特の造形に重ね合わされたのかもしれません。

    • 学名についても見てみましょう。

      • Euphorbia(ユーフォルビア): 属名で、ローマ時代のモーリタニアの医師エウフォルブス(Euphorbus)の名に因んでいます。彼はこの植物の樹液を薬として使っていたとされています。

      • grandicornis(グランディコルニス): 種小名で、ラテン語の「grandis(大きな)」と「cornu(角)」が合わさった言葉で、「大きな角を持った」という意味です。これは、植物の茎に生える大きなトゲや稜をよく表しています。

このように、キリンカンは、その特徴的な見た目から、伝説の生き物である麒麟の「冠」や「角」を連想させる名前が付けられました。

キリンソウ(麒麟草):

  • 特徴:キリンソウ(麒麟草、学名:Phedimus aizoon、シノニム:Hylotelephium aizoon)は、ベンケイソウ科ムラサキベンケイソウ属(またはキリンソウ属)の多年草です。その特徴と命名の由来について解説します。

    • 多肉質の葉と茎: ベンケイソウ科の植物らしく、多肉質の葉と茎を持ち、乾燥に強いのが特徴です。水分を蓄えることができるため、岩場や乾燥した日当たりの良い場所でも生育できます。

    • 草丈: 10cmから50cm程度になりますが、環境によって大きく異なります。

    • 花: 星形をした黄色い小さな花が、茎の先端に多数集まって咲きます。花期は一般的に5月から7月頃で、鮮やかな黄色が目を引きます。

    • 生育環境: 日当たりと水はけの良い場所を好み、日本の山野の岩場や傾斜地、河原などに自生しています。

    • 耐寒性・耐暑性: 日本の気候に適応しており、非常に丈夫で、耐寒性も耐暑性も兼ね備えています。

    • 用途: 乾燥に強く、丈夫であることから、ロックガーデンや屋上緑化、グランドカバーなどによく利用されます。また、古くから薬草としても用いられてきました。

  • 命名の由来:「キリンソウ(麒麟草)」という名前の由来には、いくつかの説があります。

    • 「黄輪草(きりんそう)」からの転訛説: 最も有力な説とされています。キリンソウの鮮やかな黄色い花が輪のように集まって咲く様子を「黄輪」と表現し、それが転じて「キリンソウ」となったというものです。その後、縁起の良い伝説の動物「麒麟」の漢字が当てられるようになったと考えられます。

    • 麒麟のイメージとの関連説:姿が麒麟に似ている説: 伝説の麒麟は草を食べる慈悲深い動物とされており、その穏やかな姿と、キリンソウが群生する様子が結びつけられたという説です。

    • 縁起の良い植物であること: 麒麟が吉兆の象徴であることから、生命力が強く丈夫なこの植物に縁起の良い名前が付けられたという見方もあります。

    • 学名についても見てみましょう。

      • Phedimus(フェディムス) または Hylotelephium(ヒロテルフウム): 属名ですが、分類が流動的で様々な説があります。

      • aizoon(アイズーン): 種小名で、ギリシャ語の「aei(常に)」と「zoon(生きている)」に由来し、「常に生きている」「不死身の」といった意味があります。これは、キリンソウの非常に強い生命力や丈夫さを表しています。

これらの説から、キリンソウの名前は、その特徴である「黄色い花」と「丈夫な生命力」が合わさって付けられた可能性が高いと考えられます。

ダイオウキリン(大王麒麟):

  • 特徴:ダイオウキリン(大王麒麟、学名:Euphorbia grandialata)は、トウダイグサ科ユーフォルビア属に分類される多肉植物です。サボテンのような見た目をしていますが、サボテンとは別のグループに属します。

    • 樹形: 柱状にまっすぐ伸びる大型の多肉植物で、高さは数メートルにもなります。株が成熟すると、幹が木質化して風格のある姿になります。

    • 刺: サボテンとよく似た外見をしていますが、トゲ(刺)はありません。しかし、ユーフォルビア属の植物の特徴として、茎や葉を傷つけると白い乳液が出てきます。この乳液には毒性があるため、扱いには注意が必要です。

    • 栽培: 非常に丈夫で乾燥に強く、比較的育てやすい植物です。見た目のユニークさから、観葉植物として人気があります。

  • 命名の由来:「ダイオウキリン」という名前は、その堂々とした姿に由来しています。

    • ダイオウ(大王): 他の多くのユーフォルビアに比べて、大きく力強く成長する姿が、「王様」を思わせることから「大王」と名付けられました。

    • キリン(麒麟): ユーフォルビア属には、サボテンに似た姿のものが多く、これらが「キリンカク(麒麟角)」と呼ばれることがあります。これは、伝説上の生き物である「麒麟」に例えられたものです。ダイオウキリンも同様に、その姿から「キリン」の名がつけられました。

つまり、「ダイオウキリン」は、「大きくて立派な麒麟のような姿をした植物」という意味で名付けられたと考えられます。

タケウマキリンヤシ(竹馬麒麟椰子):

  • 特徴:タケウマキリンヤシ(竹馬麒麟椰子、学名:Euphorbia grandicornis)は、トウダイグサ科ユーフォルビア属の多肉植物です。サボテンに似た外見をしていますが、サボテンとは別の植物です。

    • 樹形: 柱状に伸びる太い茎と、ジグザグに曲がりくねった枝が特徴的な大型の多肉植物です。成長すると高さ2メートルほどになります。

    • 刺: 茎の縁には、牛の角のような形をした、非常に長く鋭いトゲ(刺)が対になって生えます。このトゲは、植物体を捕食者から守る役割を果たしています。

    • 花: 新しい成長部分のトゲの間に、小さな黄色い花をつけます。

    • 栽培: 日当たりと風通しの良い場所を好み、乾燥に非常に強い性質を持っています。観葉植物として人気がありますが、トゲが鋭く、また茎を傷つけると出る白い乳液には毒性があるため、扱いには注意が必要です。

  • 命名の由来:「タケウマキリンヤシ」という名前は、その特徴的な姿から日本語でつけられた名前です。

    • タケウマ(竹馬): 茎がジグザグに曲がりながら伸びる様子が、子供の遊び道具である「竹馬」の足場に似ていることに由来します。

    • キリン(麒麟): ユーフォルビア属の植物は、その独特な樹形から、伝説上の生き物である「麒麟」に例えられることが多くあります。

    • ヤシ(椰子): 熱帯原産の植物で、ヤシの木のように大きく育つ姿から名付けられたと考えられます。

    • また、学名の grandicornis はラテン語で「大きな角を持つ」という意味で、この植物の最も際立った特徴である牛の角のようなトゲに由来しています。英語では「Cow's Horn」(牛の角)という通称で呼ばれることもあります。

ハナキリン(キスミークイック):

  • 特徴:ハナキリンは、トウダイグサ科の多肉植物で、マダガスカル原産のユーフォルビアの一種です。トゲのある茎と、一年中咲く可愛らしい花が特徴です。

  • 「キスミークイック」は、ハナキリンの英名の一つであり、特に花の特徴に注目した名前です。

    • 茎: 茎は多肉質で、太く鋭いトゲが密生しています。このトゲは植物全体を覆うように生えており、野生では動物から身を守る役割を果たしています。

    • 花: 花のように見えるのは、実は「苞葉(ほうよう)」という部分で、真ん中に小さな花があります。苞葉は通常2枚あり、赤、ピンク、白、黄色、オレンジなど色鮮やかで、長い期間楽しむことができます。

    • 葉: 茎の先端に葉をつけます。乾燥に強く、比較的育てやすいため、観葉植物や鉢花として人気があります。

    • 毒性: 茎や葉を傷つけると、白い樹液が出てきます。この樹液には毒性があるため、肌に触れるとかぶれることがあるので注意が必要です。

  • 命名の由来:ハナキリンにはいくつかの別名や英名があり、それぞれ由来が異なります。

    • ハナキリン(花麒麟):漢字の「麒麟」は、サボテン科の「モクキリン(木麒麟)」という植物に姿が似ていて、ハナキリンが一年中花を咲かせることから、「花麒麟」と名付けられたという説が有力です。

    • キスミークイック(Kiss me quick):これはハナキリンの花の形に由来します。苞葉が2枚で、それが少し重なり合って咲く姿が、まるで唇を突き出してキスをねだっているように見えることから、「早くキスして」という名前が付けられました。この名前は、ハナキリンの花言葉の一つにもなっています。

    • クラウンオブソーンズ(Crown of thorns):もう一つの有名な英名です。これはキリスト教の伝説に由来し、イエス・キリストが磔刑にされた際に頭にかぶせられた「茨の冠」が、このハナキリンの茎であったという説から名付けられました。

モクキリン(木麒麟):

  • 特徴:モクキリン(木麒麟、学名: Pereskia aculeata)は、サボテン科ペレスキア属に属する植物です。サボテン科の中では珍しく、多肉質の葉を持つつる性の低木です。

    • 見た目: サボテン科に分類されますが、一般的なサボテンとは異なり、多肉質の葉を持ちます。茎は木質化し、他の植物に絡みついて成長するつる性の性質があります。

    • トゲ: 葉の付け根には、鋭いトゲがペアで生えています。

    • 花と実: 白い小さな花を咲かせ、黄色い小さな実をつけます。

    • 食用: 葉や若い茎、果実は食用として利用されることもあります。

  • 命名の由来:「モクキリン(木麒麟)」という和名は、この植物が持つ複数の特徴から名付けられました。

    • モク(木): サボテン科でありながら、茎が木のように固くなることから「木」という字が使われました。

    • キリン(麒麟): この部分の由来には、いくつかの説があります。

      • トゲ: 鋭いトゲを持つ姿が、伝説上の動物である麒麟の角や姿に例えられたという説。

      • 別名「木麒麟」: この植物がもともと「木麒麟」という中国名で知られていたため、それをそのまま和名にしたという説。

      • 多肉植物の共通名: サボテンや多肉植物の中で、特にユニークな形をしたものに「麒麟」という名をつける習慣があったという説。

    • いずれの説も、この植物が持つ独特の姿や性質が、伝説の生き物である「麒麟」を連想させたことに由来していると考えられます。

 

金魚

キンギョソウ(金魚草):

  • 特徴:キンギョソウ(金魚草、学名:Antirrhinum majus)は、オオバコ科キンギョソウ属の一年草または多年草です(園芸的には一年草として扱われることが多いです)。

    • 独特な形状の花: 最も特徴的なのは、その名前の由来にもなっている、ユニークな形の花です。唇形花(くちびるけいか)と呼ばれる形状で、花を横から見ると、まるで金魚が口を開けているか、あるいは金魚の尾ひれのように見えることから、この名が付けられました。花の基部を軽く押すと、金魚が口をパクパクさせるように開閉するのも面白い特徴です。

    • 豊富な花色: 白、黄、ピンク、赤、オレンジ、紫、複色など、非常に幅広い花色があります。グラデーションの美しい品種も多く、園芸品種が豊富です。

    • 咲き方: 一本の花茎に多数の花が穂状に咲き上がります。草丈や咲き方によって、高性種(切り花向き)、中性種(花壇、鉢植え向き)、矮性種(鉢植え、寄せ植え向き)などがあります。

    • 草丈: 品種によって様々ですが、15cmほどの矮性種から、1m近くになる高性種まであります。

    • 花期: 主に春から初夏にかけて(4月~6月頃)が最盛期ですが、品種によっては秋にも咲き、比較的長く花を楽しむことができます。

    • 葉: 披針形(細長い楕円形)で、対生または互生します。

    • 耐寒性: 比較的耐寒性があり、暖地では冬越しして多年草となることもありますが、一般的には一年草として扱われます。霜に当たると枯れてしまうことがあります。

    • 用途: その豊富な花色と可愛らしい花の形から、花壇、鉢植え、寄せ植え、切り花として非常に人気があります。

  • 命名の由来:「キンギョソウ(金魚草)」という名前は、花一つ一つの形が、日本の観賞魚である「金魚(きんぎょ)」にそっくりであることに由来しています。

  • 特に、以下の点から金魚が連想されます。

    • 花の形: 花弁が上下に分かれ、まるで金魚の口のように見える部分や、下側の花弁が金魚の尾ひれのように見える部分があります。

    • 全体の印象: 穂状に咲く花が、群れをなして泳ぐ金魚の姿を思わせる、という解釈もあります。

  • 学名についても見てみましょう。

    • Antirrhinum(アンティリナム): 属名で、ギリシャ語の「anti(~のような)」と「rhin(鼻)」に由来します。「鼻のような」という意味で、花の形が動物の鼻に似ていることに因むとされています。

    • majus(マユス): 種小名で、ラテン語で「大きい」という意味です。

  • 英名では「Snapdragon(スナップドラゴン)」と呼ばれますが、これは花の形が竜(ドラゴン)の口に似ており、花を閉じると「カチッ(snap)」と音がする(ような動きをする)ことに由来しています。

このように、キンギョソウは、その特徴的な花の形が様々な生き物に例えられ、世界中で愛されている植物です。

金魚の木(ヒポシルタ):

  • 金魚の木(ヒポシルタ)の特徴:「金魚の木」として知られるヒポシルタ(学名:Nematanthus gregarius)は、その名の通り、金魚のような愛らしい花が特徴的な植物です。

    • 花: 一番の特徴は、膨らんだ筒状で口が狭くなっているオレンジ色の花です。この形と色が、まるで泳ぐ金魚のように見えることから「金魚の木」という和名が付きました。品種によっては、赤や薄い紅色などの花もあります。開花期は主に5月から10月ですが、適切な環境下では一年中花を咲かせることがあります。

    • 葉: 光沢のある肉厚で多肉質な濃い緑色の葉を持ちます。葉は小さく楕円形で、一部の品種では葉の裏が赤みがかった色をしていることもあります。

    • 草姿: 半つる性の常緑小低木で、若い茎は直立しますが、成長すると次第に垂れ下がります。そのため、ハンギングバスケットなどで飾るのに適しています。

    • 原産地: 南アメリカ東部、特にブラジルが原産です。

    • 栽培: やや暑さに弱い面もありますが、夏の直射日光を避けて半日陰に置けば、比較的育てやすい植物です。耐寒性は弱く、冬は5℃以上の保温が必要です。

  • 命名の由来:

    • 金魚の木: 上述の通り、その花の形と色が金魚にそっくりなことから、「金魚の木」という和名が付けられました。

    • ヒポシルタ(Hypocyrta): これは以前の属名で、現在は「Nematanthus(ネマタンツス)」という属に分類されています。

    • 旧属名「Hypocyrta」はギリシャ語の「Hypo(下側)」と「Cyrta(膨らみ)」が語源となっており、「下部が膨れた花」や「湾曲した花」といった特徴を表しています。

    • 現在の学名である「Nematanthus」は、ギリシャ語の「nema(糸)」と「anthos(花)」が語源で、糸のように繊細な花を表していると言われています。

    • このように、「金魚の木」という和名も、「ヒポシルタ」や「ネマタンツス」という学名も、それぞれ植物の見た目や花の形状に由来しています。

ヒメキンギョソウ(姫金魚草):

  • 特徴:ヒメキンギョソウ(姫金魚草)は、オオバコ科(旧ゴマノハグサ科)の植物で、リナリア(Linaria)という属の園芸品種の総称として呼ばれることが多いです。北アフリカや地中海沿岸が原産で、丈夫で育てやすいことから、日本でも花壇や寄せ植えで広く栽培されています。

    • 花: 金魚草に似た形をした小さな花をたくさん咲かせます。花の色は白、ピンク、紫、赤、黄色など豊富で、パステルカラーの優しい雰囲気を持つものが多いです。花の後ろには距(きょ)と呼ばれる突起があります。

    • 葉: 細長く繊細な葉が密につき、華奢で可憐な印象を与えます。

    • 草丈: 草丈は品種によって幅があり、矮性種は20〜30cm、高性種は60cm以上になるものもあります。

    • 性質: 比較的寒さに強く、日当たりと水はけの良い場所を好みます。こぼれ種で増えるほど丈夫な植物です。

  • 命名の由来:ヒメキンギョソウという名前には、その特徴的な花と、近縁な植物との比較が反映されています。

    • ヒメキンギョソウ(姫金魚草):

      • キンギョソウ(金魚草): 花の形が金魚の尾びれに似ていることから名付けられた植物です。ヒメキンギョソウの花は、この金魚草の花に形がよく似ています。

      • ヒメ(姫): ヒメキンギョソウの花は、金魚草よりもひと回り小さいのが特徴です。そのため、小型で可愛らしい姿から「姫」がつけられ、「姫金魚草」という和名になりました。

    • リナリア(Linaria):

      • 学名である「Linaria(リナリア)」は、ギリシャ語で「亜麻(アマ)」を意味する「linon」が語源です。リナリアの細長い葉が、亜麻の葉に似ていることから名付けられました。

このように、ヒメキンギョソウという名前は、見た目の可愛らしさと、似た植物との関係性からつけられた、非常に分かりやすい由来を持っています。

 

クマ(熊)

クマドウジ(熊童子):

  • 特徴:クマドウジ(熊童子、学名:Cotyledon tomentosa)は、ベンケイソウ科コチレドン属の多肉植物です。そのユニークな見た目から非常に人気があります。

  • クマドウジの最も大きな特徴は、その愛らしい見た目です。

    • 肉厚で毛深い葉: 葉は肉厚でぷっくりとしており、全体が白い短毛で覆われています。この毛があることで、触るとフェルトのような優しい感触がします。

    • 「熊の手」のような形: 葉の先端には、赤褐色または茶色のギザギザした爪のような突起が数個あります。この毛深い葉と先端の突起が、まるで**小さな熊の手(あるいは肉球)**のように見えることから、その名前が付けられました。

    • 生育形態: 一般的には、草丈が低く横に広がるタイプが多いですが、環境によってはやや立ち上がることもあります。株が成長すると、枝分かれして群生します。

    • 花: 春から初夏にかけて、釣鐘状の可愛らしい花を咲かせます。花の色はオレンジや黄色が多いです。

    • 耐乾性: 多肉植物なので乾燥には非常に強く、頻繁な水やりは不要です。過湿を嫌うため、水はけの良い土壌と日当たりの良い場所を好みます。

    • 耐寒性: 比較的耐寒性がありますが、冬場は霜に当てないように注意が必要です。日本の多くの地域では、冬は室内での管理が推奨されます。

  • 命名の由来:「クマドウジ(熊童子)」という和名は、その植物の葉の形が「熊の小さな手や肉球」に似ていることに由来します。

    • 「熊」: 葉全体を覆う白い毛と、葉の先端のギザギザした部分が、熊の毛並みや爪を連想させます。

    • 「童子」: 「童子」とは、子供や幼いものを指す言葉です。葉のサイズが比較的小さく、可愛らしい印象であることから、「熊の子供の手」という意味合いで「童子」が使われたと考えられます。

  • 学名の「Cotyledon tomentosa」についても見てみましょう。

    • Cotyledon(コチレドン): 属名で、ギリシャ語の「kotyle(カップ、くぼみ)」に由来すると言われています。これは、葉の形状や、一部の種子の形に由来すると考えられます。

    • tomentosa(トメントーサ): 種小名で、ラテン語の「tomentosus(綿毛の多い、軟毛のある)」という意味です。これは、クマドウジの葉を覆う白い毛の特徴をよく表しています。

このように、クマドウジは、その見た目の特徴が名前にも直結しており、多くの人に親しまれる理由の一つとなっています。

クマノミズキ(熊野水木):

  • 特徴:クマノミズキ(熊野水木、学名:Swida macrophylla または Cornus macrophylla)は、ミズキ科ミズキ属の落葉高木です。日本原産で、白い花と特徴的な樹皮が魅力の植物です。

    • クマノミズキは、その季節ごとの美しい姿が特徴です。

      • 白い小さな花の集合: 5月から7月頃にかけて、枝先に多数の白い小さな花が密集して咲きます。これらの花が集まって、直径10〜20cmほどの大きな円錐状の**白い花序(かじょ)**を形成し、樹冠全体が白く覆われたように見えます。この花序は遠目にも非常に目立ち、庭木や公園樹として人気があります。

      • 大きな葉: ミズキの仲間の中でも特に葉が大きく、長さは10〜20cmほどになります。葉脈がはっきりしており、秋には美しく紅葉します。

      • 樹形: 樹高は10〜20mにもなる高木で、樹形は整った広卵形になります。

      • 果実: 花後に小さな球形の実をつけます。最初は緑色ですが、晩夏から秋にかけて黒紫色に熟し、鳥たちの餌となります。

      • 樹皮: 成木になると、樹皮が縦に深く裂けて独特の模様を見せます。この樹皮も観賞価値があります。

      • 生育環境: 日当たりの良い場所から半日陰まで適応し、比較的湿潤な土壌を好みます。日本の山地や丘陵地によく自生しています。

  • 命名の由来

    「クマノミズキ(熊野水木)」という和名は、主に以下の2つの要素から構成されていると考えられます。

    • 「熊野」について:

      • 熊野地方に多いから: 最も有力な説は、紀伊半島南部の「熊野地方」に多く自生していた、またはそこで初めて発見・認識されたため、「熊野」の名が冠されたというものです。

    • 「クマ」は大きい意味: 「クマ」という音が、植物の名前において「大きい」や「強い」といった意味合いで使われることがあります。この場合、葉が大きいことや樹高が高くなることから、「大きなミズキ」という意味で「クマ」が用いられ、それに当て字として「熊野」の漢字が使われた可能性も考えられます。しかし、地域との結びつきが強い「熊野」説の方が一般的です。

    • 「ミズキ」について:

      • 「ミズキ」は、ミズキ科ミズキ属の植物に共通する名前で、春先に枝を切ると、切り口から水が滴り落ちるほど多くの水液を吸い上げることに由来します。クマノミズキもこの特徴を持つため、「水木」の名が付けられました。

    • したがって、「クマノミズキ」は、「熊野地方でよく見られる(または、葉が大きいなどの特徴を持つ)水分の多い木」という意味合いで命名されたと考えられます。

    • 学名の「Swida macrophylla」や「Cornus macrophylla」についても見てみましょう。

      • Swida(スウィダ) または Cornus(コルヌス): いずれもミズキ属の学名です。分類体系によってどちらの属名が使われるか異なります。

      • macrophylla(マクロフィラ): 種小名で、ラテン語の「macro(大きな)」と「phylla(葉)」から成り、「大きな葉の」という意味です。これは、クマノミズキの葉が大きいという特徴を正確に表しています。

このように、クマノミズキはその自生地や植物の特性が名前によく表れていますね。

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クジャク(孔雀)

カブダチクジャクヤシ(株立ち孔雀椰子):

  • 特徴:カブダチクジャクヤシ (Caryota mitis) は、ヤシ科の植物で、特にその特徴的な葉の形と株立ちする性質から、観賞用として人気があります。

    • 葉の形(最も特徴的): 最大の特徴は、その小葉が魚の尾びれ(fishtail)のような形をしていることです。通常のヤシの葉は細長い羽状ですが、カブダチクジャクヤシの小葉は幅が広く、上端が不規則にギザギザと切れ込んでおり、まるで魚の尾びれや孔雀の羽を広げたように見えます。葉全体としては「2回羽状複葉」と呼ばれる複雑な構造をしています。

    • 株立ち性: 成長すると、地際から複数の幹が立ち上がり、株立ち状になるのが特徴です。この点が、一本の幹が伸びる一般的なクジャクヤシ (Caryota urens) との大きな違いです。

    • 樹高: 屋外で生育すると高さ10mにも達しますが、鉢植えや室内では数メートル程度に収まります。

    • 幹: 幹は細く、直径8~20cmほどの円柱形です。葉が落ちた跡が環状に残り、竹のような見た目になることもあります。とげはありません。

    • 花と実: 葉の間から下垂する肉穂花序(にくすいかじょ)に、雄花と雌花が多数密に咲きます。花の後には、直径2cmほどの球形の赤い実が熟します。

    • 生態: 幹が花を咲かせ、実を結ぶと、その幹は枯れてしまいます(単子葉植物に多い性質です)。しかし、株立ち性であるため、他の新しい幹が成長を続けることで、植物全体としては生き続けます。

    • 耐寒性: 比較的寒さに弱く、日本では屋外での越冬は沖縄などの温暖な地域に限られます。一般的には、冬は10℃以上を保てる屋内で管理されます。

  • 命名の由来:

    • 「カブダチ(株立ち)」の和名:

      • これは、上記の特徴である、根元から複数の幹が立ち上がる性質に由来しています。一本幹のクジャクヤシと区別するために付けられたものです。

    • 「クジャクヤシ(孔雀椰子)」の和名:

      • これもその特徴的な葉の形に由来します。広げた孔雀の羽のような葉の姿から名付けられました。英名でも「Fishtail Palm(フィッシュテールパーム)」と呼ばれ、魚の尾びれに見立てられています。

    • 学名 Caryota mitis について:

      • Caryota(属名): ギリシャ語の「karyon(堅果)」に由来するとされており、これは果実の形状がクルミに似ていることにちなむと考えられています。

      • mitis(種小名): 「柔和な」「温和な」といった意味を持ちます。とげがないことや、比較的管理しやすい性質を指している可能性も考えられますが、詳細な命名意図は不明瞭な部分もあります。

総合すると、カブダチクジャクヤシはそのユニークな「魚の尾びれ」のような葉と、根元から多数の幹が伸びる「株立ち」の性質が、和名や英名、そして視覚的な特徴の由来となっています。

クジャクソウ(孔雀草):

  • 特徴:クジャクソウ(孔雀草、学名: Symphyotrichum ericoides)は、キク科シオン属の多年草で、北アメリカが原産です。一般的には、切り花や花壇で使われる「クジャクアスター」として知られています。

    • 花: 小さな白い花をたくさん咲かせ、その花が枝分かれした茎に密に付きます。花の中心は黄色い筒状花で、その周りを白い舌状花が囲んでいます。

    • 草姿(そうし): 草丈は30cmから1mほどになり、茎はよく枝分かれします。葉は細長く、密に茂ります。

    • 園芸品種: 白い花が一般的ですが、園芸品種にはピンクや紫色の花を咲かせるものもあります。

  • 命名の由来:「クジャクソウ(孔雀草)」という和名は、その花が咲く姿がクジャクの羽に似ていることから名付けられました。

    • クジャク(孔雀): 雄のクジャクが羽を広げた姿は、扇状に広がり、たくさんの目玉模様を持っています。

    • クジャクソウ: この植物も、細かく枝分かれした茎に、たくさんの小さな花を咲かせ、まるでクジャクが羽を広げたような華やかな姿になることから、この名前がつけられました。

このように、クジャクソウは、その美しい花の姿をクジャクの羽に見立てた、非常に優雅な名前を持っています。

クジャクシダ(孔雀羊歯):

  • 特徴:クジャクシダ(孔雀羊歯)は、ホウライシダ科ホウライシダ属に分類される夏緑性のシダ植物です。

    • 葉の形状: 葉柄から左右に大きく枝分かれし、さらに細かく分かれた小葉が扇状に広がります。この姿がクジャクが尾羽を広げた様子に似ているのが最大の特徴です。

    • 葉柄(茎)の色: 細く硬い葉柄は、黒褐色から赤紫色で光沢があります。このコントラストが、美しい葉をさらに際立たせています。

    • 新芽: 春に出る若葉は、赤みを帯びていて美しいです。

    • 生態: 山地の林縁などに自生し、半日陰から日陰の湿った環境を好みます。冬には葉が枯れる夏緑性です。

    • 園芸種: 同属の植物には、園芸店で「アジアンタム」として販売されている種類も多く、クジャクシダも山野草として栽培されることがあります。

  • 命名の由来:クジャクシダという名前は、その特徴的な葉の形に由来しています。地面から伸びた葉が大きく広がり、まるでクジャクが尾羽を広げたような姿に見えることから、「孔雀羊歯」と名付けられました。また、別名として「クジャクソウ(孔雀草)」とも呼ばれます。

クジャクゴケ(孔雀苔):

  • 特徴:クジャクゴケ(孔雀苔、学名:Hylocomium splendens)は、美しい姿から園芸用としても人気が高いコケ植物です。

    • 葉の形状: 葉が扇状に広がり、まるでクジャクが尾羽を広げたような形をしています。

    • 色: 鮮やかで美しい緑色から明るい黄緑色をしています。群生すると、まるで緑の絨毯のように見えます。

    • 生育場所: 主に山地の林床、岩の隙間、倒木の上など、湿潤で直射日光が当たらない場所に自生しています。

    • 栽培: テラリウムや盆栽のアクセントとしても人気があります。湿度は必要ですが、過湿には弱いため、適度な管理が必要です。

  • 命名の由来:クジャクゴケという名前は、その特徴的な葉の形に由来しています。幾重にも重なって扇状に広がる姿が、クジャクが羽を広げた様子を彷彿とさせることから、「孔雀苔」と名付けられました。

 

クモ(蜘蛛)

クモキリソウ(蜘蛛切草、雲切草):

  • 特徴:ラン科の植物で、独特な花を咲かせます。

  • 命名の由来:植物の和名には、しばしば複数の解釈や由来が存在することがあります。これは、特定の文献に明確な記載がない場合や、観察者によって感じ方が異なるためです。

    クモキリソウの場合、以下の二つの由来が有力視されています。

    • 「蜘蛛が糸を切る(切り裂かれる)ような花形」説: 花弁の複雑な形が蜘蛛やその体が切られたように見えるという説です。これは花の具体的な形状に注目したものです。

    • 「雲を切るように(雲がかる場所で)咲く」説: 自生地の環境や花茎の伸び方に注目した説です。

  • どちらの説も、クモキリソウの神秘的な雰囲気によく合っており、和名の奥深さを示していると言えるでしょう。特に、山地の湿った林床に自生し、薄暗い中でひっそりと咲く姿を考えると、「雲を切るように咲く」という表現も非常に詩的で、その情景をよく捉えていると感じられます。

ジグモラン(地蜘蛛蘭):

  • 特徴:ジグモラン(プレウロタリス・タランツラ、学名:Pleurothallis tarantula)は、ラン科プレウロタリス属に分類される着生ランの一種です。この植物は、その特徴的な見た目と名前の由来が興味深いものです。

    • ジグモランは、プレウロタリス属の多くの種と同様に、樹木などに着生して生育します。

    • 草姿: 地下茎から伸びる地上茎の先に、革質でなめらかな葉を1枚つけます。

    • 花: 花は茎の先端から出る花序につきます。プレウロタリス属の多くの種は、小さくて地味な花をつけますが、ジグモランの特徴は、その花が非常に独特な形をしている点です。

    • 花弁と萼: 特に萼片が目立ち、側萼片が互いに融合して花の上下を挟むような形になることが多く、花弁はそれらより小さくなります。

    • 外見: 花の形や色が、まるでタランチュラ(ジグモグモ)のように見えることが最大の特徴です。複雑な形をした花が、毛深い脚を持つクモを連想させ、その不気味さから愛好家の間で人気があります。

  • 命名の由来:ジグモランという名前は、その花の見た目に由来しています。

    • 和名「ジグモラン」: 日本語の「ジグモ(地蜘蛛)」と「ラン(蘭)」を組み合わせた名前です。花の形が、まるで地蜘蛛のように見えることから名付けられました。

    • 学名「Pleurothallis tarantula」:

    • 属名「Pleurothallis」: これはギリシャ語の「pleuron」(肋骨)と「thallos」(枝)に由来すると言われており、多くの種が地下茎から束になって出る茎の先に葉をつける様子を表しています。

    • 種小名「tarantula」: これはイタリアのタラント地方に由来する毒グモの一種「タランチュラ」を指します。花の形が、タランチュラのようなクモを彷彿とさせることから名付けられました。

このように、ジグモランは、そのユニークな花の姿がクモに似ているという特徴から、和名、学名ともにそのイメージを反映した名前が付けられています。

 

コウモリ(蝙蝠)

コウモリラン(蝙蝠蘭):

  • 特徴:ビカクシダ(学名:Platycerium)は、独特な葉の形が特徴的なシダの仲間で、観葉植物として非常に人気があります。別名「コウモリラン」とも呼ばれています。

    • ビカクシダには、形と役割の異なる2種類の葉があります。

      • 貯水葉(ちょすいよう): 株元に張り付くように生える、円形または盾形の葉です。最初は緑色をしていますが、成長するにつれて茶色く枯れていき、スポンジのように水をため込む役割をします。また、樹木に着生している株を固定し、根を守る働きも担います。

      • 胞子葉(ほうしよう): 鹿の角やヘラジカの角のように大きく枝分かれして伸びる葉です。光合成を行い、葉の裏側に胞子をつけて繁殖します。このユニークな形が、ビカクシダの最大の特徴です。

  • 命名の由来:ビカクシダという名前は、その特徴的な葉の形からきています。

    • 「ビカク(麋角)」: 「麋」という漢字は、「オオジカ」や「ヘラジカ」といった大型の鹿を意味します。ビカクシダの長く伸びる胞子葉が、これらの鹿の角に似ていることから名付けられました。

    • 「シダ(羊歯)」: シダ植物の仲間であることを示しています。

    • また、もう一つの別名である「コウモリラン」は、垂れ下がる胞子葉の形がコウモリが羽を広げた姿に似ていること、そして珍しい植物に「蘭」の名前を付ける風習があったことから名付けられたとされています。

カニコウモリ(蟹蝙蝠):

  • 特徴:カニコウモリは、キク科コウモリソウ属の多年草で、山地の林内や渓流沿いなどの湿った場所に自生します。

    • 姿: 草丈は40〜100cmほどになり、根元から数本の茎を直立させます。

    • 葉: 葉は、茎に互生(互い違いにつく)し、大きな三角形をしていて、幅20cmほどになることもあります。葉の縁には不規則な鋸歯(きょし)があり、掌状に5〜7つに裂けているのが特徴です。

    • 花: 夏の終わりから秋にかけて、茎の先に小さな白い頭花(とうか)を多数つけます。この頭花が集まって円錐形の花穂をつくります。

  • 命名の由来:「カニコウモリ」という名前は、その葉の形に由来しています。

    • カニ: 葉の形が、カニの甲羅に似ていることから名付けられました。特に、掌状に裂けた部分がカニの足のように見えます。

    • コウモリ: 同属の植物であるコウモリソウ(葉がコウモリの翼に似ている)に近縁であるため、「コウモリ」の名がつけられました。

このように、カニコウモリは、カニの甲羅に似た葉を持つコウモリソウの仲間、という意味で名付けられました。

コウモリカズラ:

  • 特徴:コウモリカズラは、ブドウ科のつる性落葉木本で、山地の林縁などに生育します。

    • 姿: 他の木などに絡みつきながら成長し、長さは数メートルにもなります。

    • 葉: 葉は手のひら状に5つに裂けており、基部が深い心形(ハート形)になっているのが特徴です。葉の裂片の縁には粗い鋸歯(きょし)があります。葉の形は、近縁種であるホツルブドウとよく似ていますが、ホツルブドウの葉はより深く切れ込みます。

    • 果実: 夏から秋にかけて、小さな緑色の花を咲かせた後、ブドウのような小さな実をつけます。この実は熟すと青黒くなり、白い粉を吹いたようになります。

  • 命名の由来:「コウモリカズラ」という名前は、その葉の形に由来しています。

    • 葉の形が、動物のコウモリが翼を広げた姿に似ていることから名付けられました。「カズラ」は「葛」と書き、つる性の植物を指す言葉です。

コウモリの翼に似た葉を持つ植物には、他にもキク科のコウモリソウ属などがありますが、コウモリカズラはつる性であることが大きな違いです。

植木苗コウモリカズラ

バット・フラワー:

 

コオロギ

コオロギラン(蟋蟀蘭):

  • 特徴:コオロギランは、ラン科コオロギラン属の多年草で、山地の林床や腐植土の多い場所にひっそりと生える小型のランです。

    • 姿: 草丈は5〜10cmほどと非常に小さく、1本から数本の細い茎を直立させます。

    • 葉: 茎の根元に1〜2枚の卵形の葉をつけ、色は緑色から暗緑色です。

    • 花: 夏から秋にかけて、茎の先端に1〜3個の小さな花をまばらにつけます。花の色は褐色や暗紫色で、下を向いて咲きます。唇弁(しんべん)と呼ばれる花びらの一部が大きく広がり、縁がフリル状になっているのが特徴です。

  • 命名の由来:「コオロギラン(蟋蟀蘭)」という名前は、花の色と形に由来しています。

    • 花の唇弁の形が、昆虫のコオロギの顔に似ていることと、全体的にコオロギに似た褐色をしていることから名付けられました。

    • 「ラン」は、ラン科の植物であることに由来します。その小さな姿と、コオロギを思わせる控えめな花の色から、独特の趣を持つ植物として知られています。

 

ゴクラクチョウ(極楽鳥)

ゴクラクチョウカ(極楽鳥花):

  • 特徴:ゴクラクチョウカ(極楽鳥花、学名: Strelitzia reginae)は、南アフリカ原産のバショウ科ゴクラクチョウカ属の植物です。その鮮やかで独特な花の姿から、観葉植物や切り花として世界中で人気があります。

    • ユニークな花: 茎の先に、硬いクチバシのような形をした緑色の苞(ほう)があり、その中から鮮やかなオレンジ色のがく片と、濃い青色の花弁が出てきます。この花の形が、和名の由来にもなっています。

    • 葉: 巨大なバナナの葉のような、大きくて厚みのある葉をしています。葉は茎元から扇状に広がり、花が咲いていない時期でもトロピカルな雰囲気を持っています。

    • 草姿(そうし): 草丈は1mから2mほどになり、存在感があります。寒さには弱いため、日本では温室や室内で栽培されることが一般的です。

  • 命名の由来:ゴクラクチョウカという名前は、その花が咲く姿が、ニューギニアなどに生息する極楽鳥(ごくらくちょう)にそっくりであることから名付けられました。

    • 極楽鳥は、オスが求愛行動の際に、鮮やかな飾り羽を広げてダンスをすることで知られています。ゴクラクチョウカの花は、まさにこの極楽鳥が羽を広げたような華やかでエキゾチックな姿をしています。

    • このことから、和名では「極楽鳥花」と呼ばれ、英名でも「Bird of paradise(天国の鳥)」と呼ばれています。どちらも、この美しい花の姿を南国の鳥に見立てた、ロマンチックな名前です。

ルリゴクラクチョウカ(瑠璃極楽鳥花):

  • 特徴:ルリゴクラクチョウカ(瑠璃極楽鳥花、学名: Strelitzia nicolai)は、バショウ科ゴクラクチョウカ属の植物です。一般的に「ストレリチア・ニコライ」と呼ばれ、白と青のコントラストが美しい花を咲かせます。南アフリカが原産です。

    • 草姿(そうし): 幹のような茎がまっすぐ伸び、巨大なバナナの葉のような濃い緑色の葉を広げます。草丈は大きいもので10メートル以上にもなります。

    • 花: 白い大きな苞(ほう)の中から、青い花びらを持つ花が顔を出します。花弁は3枚あり、2枚が青く、もう1枚は白く、その形が鳥の頭のように見えます。これが和名の由来にもなっています。

    • ゴクラクチョウカとの違い: 一般的に「ゴクラクチョウカ」として知られる Strelitzia reginae は、花がオレンジ色と青色ですが、ルリゴクラクチョウカは花が白と青です。

  • 命名の由来:「ルリゴクラクチョウカ」という名前は、その花の色と形、そして南国の鳥に似た姿から名付けられました。

    • ルリ(瑠璃): 瑠璃は宝石のラピスラズリを指し、深い青色を意味します。ルリゴクラクチョウカの花びらの鮮やかな青色に由来します。

    • ゴクラクチョウカ(極楽鳥花): 南国の鳥である極楽鳥(ごくらくちょう)に、花全体の形がそっくりであることから名付けられました。

    • 学名 Strelitzia nicolai

      • Strelitzia(ストレリチア): イギリスの国王ジョージ3世の王妃シャーロットがドイツのシュトレーリッツ公爵家(Mecklenburg-Strelitz)の出身であったことにちなんで名付けられました。

      • nicolai(ニコライ): ロシア皇帝ニコライ1世(Nicholas I)に献上されたことから、彼の名にちなんでつけられました。

 

コブラ

コブラオーキッド:

  • 特徴:コブラオーキッド(Bulbophyllum purpureorhachis)は、ラン科マメヅルラン属に分類される着生ランの一種で、アフリカの熱帯雨林に自生します。

    • 姿: 他の植物の幹や枝に着生して生育する着生ランです。偽球茎(ぎきゅうけい)と呼ばれる水分や養分を蓄える器官を持ちます。

    • 花穂: 花を咲かせる花穂(かすい)が非常に特徴的です。硬い円筒形で、長さは最大で約1メートルにもなります。色は濃い赤紫色や茶色で、表面は光沢があり、ウロコ状の苞(ほう)に覆われています。

    • 花: 花穂の先端から、小さな黄色い花を多数咲かせます。花自体はあまり目立ちませんが、花穂のユニークな形が大きな魅力となっています。

  • 命名の由来:「コブラオーキッド」という名前は、その巨大で硬い花穂の姿に由来しています。

    • 赤紫色の硬い花穂が、まるで立ち上がって威嚇するコブラの鎌首に似ていることから名付けられました。特に、光沢のあるウロコ状の表面がコブラの皮膚を連想させます。

Bulbophyllum purpureorhachis - Wikipedia

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d7/Bulbophyllum_purpureorhachis_%28as_Megaclinium_purpureorhachis%2C_spelled_Megaclinium_purpureorachis%29_-_Curtis%27_135_%28Ser._4_no._5%29_pl._8273_%281909%29.jpg

 

サギ(鷺)

サギソウ(鷺草):

  • 特徴:ラン科の植物。湿地や水辺に自生し、夏の終わりから秋にかけて可憐な花を咲かせます。その優雅な姿から、園芸植物としても非常に人気があります。

  • 命名の由来:その名の通り、シラサギ(白鷺)が空を飛ぶ姿にそっくりな花を咲かせることから名付けられました。

    特に、白い花びらが鳥の羽根のように広がっており、下唇弁(かしんべん)と呼ばれる部分が細かく裂けてフリルのようになっているのが特徴です。

    このフリルが、シラサギが翼を広げて舞う姿や、脚を伸ばして飛ぶ姿に見立てられたと言われています。

 

サバ(鯖)

サバノオ(鯖の尾):

  • 特徴:サバノオは、キンポウゲ科の多年草で、山地の林の中に自生します。

    • 姿: 草丈は10〜20cmほどの小さな植物です。

    • 葉: 根元から生える葉は、3枚の小葉(しょうよう)からなる三出複葉(さんしゅつふくよう)で、小葉は菱形から卵形で、浅く3つに裂けています。

    • 花: 春に茎の先に白色から淡い紅紫色の花を1つ咲かせます。花弁(かべん)のように見える部分は萼片(がくへん)で、本物の花弁は黄色く小さな蜜腺(みつせん)になっています。

    • 果実: 花が終わると、果実が2つ並んでできます。この果実がサバノオの名前の由来になっています。

  • 命名の由来:「サバノオ(鯖の尾)」という名前は、果実の形に由来しています。

    • 花の後にできる2つの果実が、魚のサバの尾に似ていることから名付けられました。

    • また、サバノオは、花が咲く時期が早いことから「ハヤザキサバノオ(早咲鯖の尾)」とも呼ばれます。近縁種には、「コシノサバノオ(越の鯖の尾)」や「シロガネソウ(白銀草)」などがあります。

 

サル(猿)

サルオガセモドキ:

  • 特徴:サルオガセモドキ(学名:Tillandsia usneoides)は、パイナップル科ハナアナナス属の植物で、「エアープランツ」の一種としてよく知られています。

    • 姿形: 樹上から長く垂れ下がる灰緑色の植物で、全体が糸がもつれたような、あるいはコケ類がぶら下がっているようなユニークな姿をしています。個々の植物体は小さいですが、連なって成長すると数メートルにも達することがあります。英語では「old man's beard(お爺さんの髭)」とも呼ばれます。

    • 根の有無: 一般的な植物とは異なり、根は退化してほとんどありません。空気中の水分や養分を葉の表面にある「トリコーム」と呼ばれる灰白色の鱗片で吸収して生きています。このため、土を必要とせず、木や電線などに着生して育ちます。

    • 葉: 線形で、長さは3~5cm、径は1mm以下と細長く、やや湾曲して2列に生えます。表面はトリコームで覆われているため、全体が銀白色に見えます。

    • 花: 夏に小さな淡い黄緑色から青色の花を咲かせます。花の大きさは3~5mm程度で目立ちにくいですが、夜には甘い香りを放ち、訪花昆虫を誘います。

    • 生育環境: 湿潤で亜熱帯の気候を好み、きれいな空気のある場所で生育するとされています。風で切れて運ばれ、別の場所で再び成長することもあります。

    • 別名: 「スパニッシュモス」や「スペインヒゲ」とも呼ばれますが、スペイン原産ではなく中南米に分布します。

  • 命名の由来:「サルオガセモドキ」という和名は、サルオガセ(猿尾枷)という地衣類に見た目が非常によく似ていることに由来しています。

    • サルオガセは、樹木にぶら下がる地衣類の一種で、やはり糸状に垂れ下がる姿をしています。サルオガセモドキがこのサルオガセによく似ているものの、異なる植物であることから、「サルオガセのモドキ(まがいもの、似ているもの)」という意味で名付けられました。

    • ちなみに、学名のTillandsia usneoidesの「usneoides」も「サルオガセのような」という意味を持っています。

サルスベリ(百日紅):

  • 特徴:ミソハギ科。「サルスベリ」は、夏から秋にかけて長く美しい花を咲かせる落葉性の花木です。漢字では「百日紅(ひゃくじつこう)」と書かれることもあり、これはその開花期間の長さに由来します。

  • 命名の由来:幹が滑らかで猿も滑り落ちそうに見えることから。サルスベリの名前の由来は、ご想像の通り、そのつるつるとした幹の表面にあります。

    • 「猿も滑る(サルスベリ)」: 木登りが得意な猿でさえ、この木の幹はあまりに滑らかで、滑り落ちてしまうだろうという意味で名付けられました。実際に猿が滑るかどうかはともかく、それほどつるつるしているという様子を表現したものです。

    • また、別名である「百日紅(ひゃくじつこう)」の由来は、以下の通りです。

      • 「百日間紅い花を咲かせる」: 夏から秋にかけて約100日間にわたって、鮮やかな紅色の花(他の色の花もありますが、代表的な色が紅色であったため)を咲かせ続けることから、この漢字が当てられました。

  • このように、サルスベリという和名は幹の特徴から、百日紅という漢字名は開花期間の長さと花の色から名付けられています。

サルナシ(猿梨):

  • 特徴:サルナシ(猿梨)は、マタタビ科マタタビ属のつる性の落葉植物です。

    • 果実: キウイフルーツの仲間であり、「ベビーキウイ」や「ミニキウイ」とも呼ばれます。キウイに似た甘酸っぱい味がしますが、キウイと異なり表面に毛がなく、皮ごと食べることができます。大きさは直径2〜3cm程度と小さく、秋に熟します。

    • 植物としての特徴: 北海道から九州までの山地や林縁に自生し、他の木などに絡みついて成長します。丈夫なつるは、かつては吊り橋の材料としても使われていました。

    • 花: 5月から7月にかけて、白い花を咲かせます。雌雄異株(オスとメスの株が分かれている)または雌雄同株で、雌花には柱頭が広がる雌しべ、雄花には多数の雄しべが目立ちます。

  • 命名の由来:サルナシという名前の由来にはいくつかの説がありますが、最も有力なのは、その果実が梨に似ていて、猿が好んで食べるからというものです。

    また、他に「猿が我を忘れて食べるから」「猿が食べてなくなってしまうから」といった説もあります。いずれにしても、猿がその美味しさを知っているほど、美味しい果物であったことがうかがえます。

サルノコシカケ(猿の腰掛け):

  • 特徴:サルノコシカケ(猿の腰掛け、学名: Polyporaceae)は、正確には特定の植物を指す名称ではなく、広葉樹の幹などに生えるキノコの総称です。主に、硬質で木質化したキノコを指します。

    • 生育場所: 広葉樹の幹や切り株などに着生し、宿主の木から栄養を吸収して成長します。

    • 形と大きさ: 傘が半円形や棚状になっており、木の幹から水平に突き出すような形をしています。大きさは種類によって様々で、手のひらサイズから、直径1mを超えるものまであります。

    • 質感: 硬く木質化しており、触ると非常に硬いです。

    • 利用: 多くの種類は食用には適しませんが、薬用として用いられるものもあります。霊芝(れいし)などが有名です。

  • 命名の由来:「サルノコシカケ(猿の腰掛け)」という名前は、その独特な生え方と形に由来します。

    • 木に生えているこのキノコの形が、まるで猿が腰をかけるのにちょうど良い椅子のように見えることから名付けられました。

このように、サルノコシカケは、その見た目を動物の行動になぞらえた、非常にユーモラスで分かりやすい名前を持っています。

モンキーポッド:

  • 特徴:モンキーポッド(学名: Samanea saman)は、マメ科の常緑高木で、熱帯アメリカが原産です。日本では、日立グループのCMソング「この木なんの木」で有名になったハワイの木として広く知られています。

    • 大きな樹形: 枝を大きく広げ、まるで傘のようなドーム状の雄大な樹冠が特徴です。日陰を作るのに適しているため、公園や街路樹として植えられています。

    • 葉の動き: 葉はネムノキのように羽状に広がり、夜になると閉じます。また、雨が降る前にも葉を閉じることから、「レインツリー(Rain tree)」という別名も持っています。

    • 花と実: ピンク色から白色の、ふわふわとした綿毛のような可愛らしい花を咲かせます。花が咲き終わると、中に種子が入った鞘(さや)状の甘い実をつけます。

    • 木材: 木材は「モンキーポッド」または「スアー(Suar)」と呼ばれ、心材の濃い茶色と辺材の白色のコントラストが美しく、一枚板のテーブルや家具として非常に人気があります。

  • 命名の由来:「モンキーポッド(Monkeypod)」という名前は、その実と猿との関係に由来しています。

    • モンキー(Monkey): この木にできる甘い実を、野生の猿が好んで食べることから、「猿」を意味するモンキーが名前に含まれました。

    • ポッド(Pod): 実が「鞘(さや)」に入っていることから、英語で鞘を意味する「ポッド」が名前に加えられました。

このように、モンキーポッドという名前は、「猿が食べる鞘に入った実」という意味から名付けられたのです。

 

シカ(鹿)

カゴノキ(鹿子の木):

カゴノキ(鹿子の木、Litsea coreana) は、クスノキ科の常緑高木で、その名の通り特徴的な樹皮と、他のクスノキ科の植物とは少し異なる性質を持っています。

  • 特徴:樹皮: カゴノキの最大の特徴は、成長するにつれて樹皮が薄くはがれ落ち、その跡が鹿の子(かのこ)模様になることです。淡い灰黒色から茶褐色の樹皮に、剥がれた部分の赤褐色や緑色、淡黄色などが混じり合い、まるでジグソーパズルのような独特の斑模様を形成します。この模様は、特に成木で顕著に見られます。

    • 樹形: 暖地に自生する常緑高木で、高さは15m〜20m、大きなものでは胸高直径60cm以上にもなります。

    • 葉: 葉は枝先に集まって互生し、長楕円形から倒卵状披針形です。縁はなめらか(全縁)で、葉の表面は光沢のある緑色、裏面は白っぽい粉白色をしています。薄い革質で、クスノキのような樟脳の匂いはありません。

    • 花: 雌雄異株(雄株と雌株がある)で、9月ごろに葉の脇に淡黄色の小さな花を咲かせます。雄花は雄しべが伸びてやや目立ちますが、雌花は控えめです。

    • 実: 雌株では、翌年の7月〜8月ごろに直径8mmほどの楕円形の赤い実が熟します。花が咲いてから実が熟すまでに約1年かかるため、花と実を同時に見ることができます。

    • 材: 材は硬く緻密で、床材、建材、楽器、太鼓や鼓の胴などにも利用されます。特に、鹿の子模様の樹皮は床柱などにも生かされます。

  • 命名の由来:カゴノキ(鹿子の木)という和名は、その最も特徴的な樹皮の模様に由来します。

    • 「鹿の子(かのこ)模様」に似ているから: 樹皮が薄く剥がれ落ちた跡が、子鹿の背中に見られる白い斑点模様(鹿の子模様)にそっくりであることから、「鹿の子の木」と呼ばれるようになりました。これが転じて「カゴノキ」となりました。

    • カゴノキは、そのユニークな樹皮のおかげで、山の中でも比較的容易に識別できる植物として知られています。

カノコユリ(鹿の子百合):

  • 特徴:カノコユリ(鹿の子百合)は、日本原産のユリ科の植物で、その独特で美しい花から「ユリの女王」とも呼ばれます。

    • 草姿と葉: カノコユリは、高さ1〜1.5mほどに成長し、茎には白い綿毛が生えています。葉は細長く、互い違いに茎につきます。

    • 花: 7月から8月にかけて、茎の先端に数輪の花を咲かせます。花は下向きに咲き、花びらは強く反り返るのが特徴です。色は白や淡いピンクが一般的で、花びらの内側に、濃い赤紫色の斑点が多数入っています。

    • 園芸品種: その美しさから、世界中で多くの園芸品種が作られ、特にヨーロッパでは「オリエンタル・ハイブリッド」というユリの交配親として重要な役割を果たしています。

    • 生育環境: 本州の四国や九州の山地の崖や斜面に自生していますが、現在では自生地の個体数は減少しており、絶滅危惧種に指定されている地域もあります。

  • 命名の由来:「カノコユリ(鹿の子百合)」という名前は、花びらにある斑点が、子鹿の背中にある白い斑点模様(鹿の子模様)に似ていることに由来します。

    • 鹿の子模様: 鹿の子模様とは、和装などで使われる絞り染めの一種で、小さな斑点が散らばっている模様のことです。

    • 英名: 英名も「Leopard Lily(ヒョウのユリ)」や「Tiger Lily(トラのユリ)」など、動物の斑点模様にちなんだ名前がつけられており、その特徴的な見た目は世界共通の魅力として認識されています。

このように、カノコユリはその美しい花びらの模様から、日本の伝統的な模様である鹿の子模様になぞらえられ、名付けられた植物です。

キョウカノコ(京鹿の子):

  • 特徴: バラ科の多年草で、夏に淡いピンク色の小さな花が密集して咲き、穂のようになります。

  • 命名の由来: 花のつぶつぶとした蕾や、咲き乱れる花の様子が、京都の伝統工芸である「京鹿の子絞り」に似ていることから名付けられました。カノコソウ(鹿の子草):

  • 特徴: オミナエシ科の多年草で、春から夏にかけて、淡い紅色の小さな花を多数集めて咲かせます。

  • 命名の由来: 密に咲く花やつぼみの様子が、白地に淡い紅色の鹿の子絞りに見立てて名付けられたとされています。また、根に独特の香りがあり、生薬としても利用されます。

 

獅子

シシバタニワタリ:

  • 特徴:シシバタニワタリは、ウラボシ科の常緑性シダ植物で、アヤメシダの園芸品種です。

    • 葉の形: 披針形で、オオタニワタリに似た大きな葉を持つ。

    • 葉先: 最大の特徴は、葉の先端がニワトリのとさかのように細かく分かれていること。

    • 生育環境: 高温多湿を好み、半日陰の環境でよく育つ。熱帯アフリカからオセアニアにかけて分布する熱帯性の植物です。

    • 用途: 鉢植えの観葉植物や生け花の材料として利用されます。

  • 名前の由来:

    • 「シシバ」: 葉の先端が細かく裂けている様子が「獅子葉(ししば)」と呼ばれる変異であることからきています。

    • 「タニワタリ」: 元の植物である「タニワタリ」は、谷間の崖や樹幹、岩などに着生して育つ様子が「シダが谷を渡っている」ように見えることから名付けられたとされています。

    • この2つの言葉が組み合わさって、「シシバタニワタリ」という名前になりました。

 

シジミ(蜆)

シジミバナ(蜆花):

  • 特徴:シジミバナ(蜆花、学名:Spiraea prunifolia)は、中国原産のバラ科シモツケ属の落葉低木です。

    • 花: 4月から5月にかけて、白い八重咲きの小さな花を枝いっぱいに咲かせます。花は直径1cmほどで、ユキヤナギに似ていますが、ユキヤナギが一重咲きなのに対し、シジミバナは八重咲きでボリューム感があります。雄しべや雌しべがないため、種子はできません。

    • 樹形: 枝が直立して株立ち状になり、こんもりとした樹形になります。ユキヤナギのように枝が垂れることはありません。

    • 葉: 小さな楕円形で光沢があり、細かいギザギザ(鋸歯)があります。秋には紅葉も楽しめます。

    • その他: 非常に丈夫な植物で、庭木や公園の植栽によく利用されます。耐寒性・耐暑性に優れ、手入れが比較的簡単なため、初心者にも育てやすい植物です。

  • 命名の由来:シジミバナという名前は、その特徴的な花に由来しています。八重咲きの白い小さな花が、あたかも貝のシジミ(蜆)の身が開いたように見えることから、「蜆花」と名付けられました。

    また、花の形がえくぼに似ていることから「エクボバナ」という別名もあります。

 

シラミ(虱)

ヤブジラミ(薮虱):

  • 特徴:ヤブジラミは、セリ科ヤブジラミ属の越年草で、道端や藪、林の縁などに普通に生えています。

    • 姿: 草丈は30〜80cmほどで、細い茎が直立し、上部でよく枝分かれします。

    • 葉: 2〜3回羽状に細かく裂けた葉をつけます。

    • 花: 5〜7月頃に、白い小さな花を多数、複散形花序(ふくさんけいかじょ)と呼ばれる傘のような形に咲かせます。

    • 果実: 花の後にできる果実は、長さ3〜4mmほどの楕円形です。この果実の表面に、動物の毛や衣服にくっつくかぎ状のトゲが密生しているのが大きな特徴です。

  • 命名の由来:

    • 「ヤブジラミ(藪虱)」という名前は、その果実の付きやすさに由来しています。

    • 果実のトゲが、藪を通った人の衣服や動物の毛にしがみつく(虱のようにくっつく)ことから、この名がつけられました。「ヤブ」は藪に生えること、「ジラミ」はシラミ(虱)のようにくっつくことを意味します。

    • 同じように、衣服にくっつく果実を持つ植物には、「ひっつき虫」と呼ばれるものが多く、ヤブジラミもその一つです。

ナガジラミ(長虱):

  • 特徴:ナガジラミは、セリ科ナガジラミ属の越年草で、道端や荒れ地、河原などに生育します。ヤブジラミによく似た植物です。

    • 姿: 草丈は40〜80cmほどになり、茎は直立して枝分かれします。

    • 葉: 2〜3回羽状に細かく裂けた葉をつけます。

    • 花: 5〜7月頃に、白い小さな花を多数、複散形花序につけます。

    • 果実: 花の後にできる果実は、長さ6〜8mmほどの細長い楕円形です。この果実には、ヤブジラミと同様に、動物の毛や衣服にくっつくかぎ状のトゲが密生しています。

  • 命名の由来:「ナガジラミ(長虱)」という名前は、果実の形とヤブジラミとの違いに由来しています。

    • ナガ(長): 果実の形が、ヤブジラミの果実よりも細長いことから、「ナガ」がつけられました。

    • ジラミ(虱): ヤブジラミと同様に、果実のトゲがシラミ(虱)のように衣服や動物の毛にくっつくことから名付けられました。

    • つまり、ナガジラミは「ヤブジラミよりも果実が長い、くっつき虫」という意味でつけられた名前です。

 

ジャイアントパンダ

パンダスミレ:

  • 特徴:パンダスミレは、スミレ科の植物で、学名を Viola cornuta といいます。ヨーロッパのピレネー山脈が原産のスミレで、園芸品種として広く親しまれています。

    • 草姿: 茎が這うように広がる性質を持つ、つる性のスミレです。グランドカバーとしても利用されます。

    • 花: 春から初夏にかけて、小さな花を咲かせます。花弁は通常5枚で、上部の2枚が白色、下部の3枚が濃い青紫色をしているのが大きな特徴です。

    • 葉: ハート型で、スミレ特有の可愛らしい葉をつけます。

    • 香り: ほのかな甘い香りを放ちます。

  • 命名の由来:パンダスミレという名前は、その花の色と模様が、動物の「パンダ」に似ていることに由来します。

    • パンダ: 上部の白い花弁と、下部の青紫色の花弁のコントラストが、パンダの白と黒の体色を連想させることから名付けられました。

    • また、学名の Viola cornuta の「cornuta」は、ラテン語で「角のある」という意味があり、これは花の付け根にある距(きょ)と呼ばれる部分が、角のように長く突き出していることにちなんでいます。

 

猩猩

ショウジョウソウ(猩々草):

  • 特徴:ショウジョウソウ(猩々草、学名: Euphorbia cyathophora)は、トウダイグサ科トウダイグサ属の一年草です。熱帯アメリカが原産で、観葉植物として栽培されるほか、日本では帰化植物として道端などで見かけることもあります。

    • 葉: 葉は緑色で、深く切れ込んでいるものが多いです。

    • 特徴的な苞葉: 最も大きな特徴は、茎の先端近くにある葉(苞葉)が、鮮やかな赤色や朱色に染まることです。この部分は、花が咲く時期になると特に目立ちます。

    • 花: 花は小さく、あまり目立ちません。苞葉が色づくのは、昆虫に花の存在を知らせるためだと考えられています。

    • 樹液: 茎を切ると、白い乳液が出てきます。この乳液には毒性があるので、触れないように注意が必要です。

  • 命名の由来:「ショウジョウソウ(猩々草)」という名前は、その鮮やかな赤い苞葉に由来します。

    • 猩々(しょうじょう): 猩々とは、中国の伝説に登場する架空の生き物で、赤い顔をした猿に似た姿をしています。お酒を好むとされ、能の演目にも登場します。

    • 猩々草: ショウジョウソウの苞葉が、この猩々の赤い顔や髪の色に似ていることから名付けられました。

このように、ショウジョウソウは、その鮮やかな赤い葉を伝説上の生き物になぞらえた、非常にユニークな名前を持っています。

ショウジョウバカマ(猩々袴):

  • 特徴:ショウジョウバカマ(猩々袴)は、ユリ科(現在はシュロソウ科に分類されることもあります)の多年草で、早春から初夏にかけて美しい花を咲かせる山野草です。

    • 花: 主に淡い紅色やピンク色の花を咲かせますが、白や紫色の花を咲かせる株もあります。花茎の先に数輪の花がつき、花びらは6枚。開花後、花茎が長く伸びてくるのが特徴です。

    • 葉: 地面から放射状に広がる、厚みのある常緑の葉をもちます。この葉が、冬の間も枯れずに残ることで知られています。

    • 生育場所: 山地の湿った場所や沢沿いに自生し、雪解けとともに咲くことが多いです。

  • 命名の由来:ショウジョウバカマという名前は、その特徴的な姿を、中国の伝説上の動物「猩々(しょうじょう)」と、和装の「袴(はかま)」に見立てたことに由来します。

    • 猩々(ショウジョウ): 中国の伝説に登場する、酒を好み顔が赤い想像上の生き物です。ショウジョウバカマの紅紫色の花を、この猩々の赤ら顔や赤い髪に見立てた、という説が有力です。

    • 袴(ハカマ): 地面から放射状に広がる葉の重なりを、日本の伝統衣装である袴に見立てた、とされています。

    • この二つの要素を組み合わせることで、「猩々袴」というユニークな名前が付けられました。

 

スズムシ(鈴虫)

スズムシバナ(鈴虫花):

  • 特徴:スズムシバナは、キツネノマゴ科の多年草で、林の縁や山地の道端などの日当たりの良い場所に自生します。

    • 姿: 草丈は20〜50cmほどになり、茎は直立してまばらに枝分かれします。

    • 葉: 葉は卵形で、先が尖っており、対生(茎を挟んで向かい合ってつく)します。

    • 花: 秋になると、茎の上部の葉の付け根から、唇形をした小さな薄紫色の花を数個ずつ咲かせます。花が咲いた後には、平らな丸い形をした果実ができます。この果実が成熟すると、小さな種子を弾き飛ばします。

  • 命名の由来:「スズムシバナ(鈴虫花)」という名前は、その花が咲く時期と花の形に由来しています。

    • スズムシ(鈴虫): 秋の鳴く虫の代表であるスズムシが鳴く頃に花を咲かせることから、「スズムシ」の名がつけられました。

    • バナ(花): その時期に咲く花であることから、この名が加わりました。

    • スズムシバナの花自体がスズムシに似ているわけではありませんが、秋の風物詩であるスズムシの声と、秋に咲く花を結びつけた、風情のある名前です。 

スズムムシソウ(鈴虫草):

  • 特徴:スズムシソウは、ラン科クモキリソウ属の多年草で、山地の林の中に自生する小型のランです。

    • 姿: 草丈は10〜25cmほどで、茎の根元に2枚の大きな葉をつけます。

    • 葉: 葉は卵形から広卵形で、光沢があり、やや厚みがあります。

    • 花: 初夏になると、茎の先に緑色から紫褐色の小さな花をまばらにつけます。この花は、唇弁(しんべん)と呼ばれる花びらの一部が大きく広がり、細かな切れ込みがあるのが特徴です。

  • 命名の由来:

    • 「スズムシソウ(鈴虫草)」という名前は、花のかたちに由来しています。

    • 花の唇弁が、鳴く虫のスズムシの腹部に似ており、特に細かい切れ込みが入った部分が、スズムシの鳴き声(ジーーッ)を連想させることから名付けられたという説があります。

    • また、花の形がカマキリに似ていることから、「カマキリソウ」という別名もあります。

スズムシソウ - Wikipedia

和名は花の唇弁がスズムシの雄の羽に似ていることから。

 

スズメ(雀)

スズメウリ(雀瓜):

  • 特徴:ウリ科。

  • 命名の由来:小さなウリで、スズメが好むことから。

スズメガヤ(雀茅):

  • 特徴:イネ科の植物で、小さな穂をつけます。
  • 命名の由来:スズメがこの穂をついばむこと、またはスズメが隠れるのにちょうど良い大きさの草であることに由来すると言われています。

スズメノエンドウ(雀の豌豆):

  • 特徴:マメ科。小さな豆果がスズメが食べるエンドウ豆に似ていることから。
  • 命名の由来: マメ科の植物で、小さな豆果をつけます。
    この豆果が、スズメが食べるエンドウ豆に似ていること、またはスズメがこの植物の種子を好んで食べることに由来すると言われています。

スズメノカタビラ(雀の帷子):

  • 特徴:イネ科。
  • 命名の由来:スズメが着る帷子(かたびら)のように薄い葉を持つことから。
スズメノカタビラ

スズメノカタビラ

  • たけよしひろ
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スズメノテッポウ(雀の鉄砲):

  • 特徴:イネ科。スズメノテッポウは、イネ科の越年草(秋に芽生え、冬を越して翌春に花を咲かせ、夏には枯れる植物)です。水田のあぜ道や畑、道端など、湿り気のある場所に普通に生え、春先に目にする機会が多い雑草です。
  • 命名の由来:
    • 穂の形が鉄砲に似ており、スズメが隠れるのに適していることから。
    • 「スズメノテッポウ」というユニークな名前は、その花穂(かすい)の形と、日本で身近な鳥である「スズメ」との関係に由来すると言われています。
    • 「鉄砲(テッポウ)」の由来: 春になると、細長い茎の先に棒状の細長い穂をつけます。この穂が、昔の火縄銃や火打ち石式の「鉄砲」の銃身(銃口の部分)に似ていることから、「テッポウ」と名付けられました。特に、穂の先端が少し膨らんで見える様子が、火縄銃の先端に似ているとされたのかもしれません。

スズメノテッポウ - Wikipedia

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/1b/AlopecurusAequalis1.JPG

スズメノヤリ(雀の槍):

  • 特徴:イネ科。
  • 命名の由来:穂の形が槍に似ていることから。

スズメノヤリ - Wikipedia

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/c5/Luzula_capitata_szmnyr01.jpg

 

ゾウ(象)

エレファントアップル:

  • 特徴:エレファントアップル(学名:Dillenia indica)は、ビワモドキ科ビワモドキ属の常緑高木で、和名では「ビワモドキ」とも呼ばれます。インド、東南アジアの熱帯・亜熱帯地域が原産で、その名の通り、ゾウが好んで食べる大きな果実が特徴的な植物です。
    • 樹形・樹皮: 高さ15〜30メートルにもなる大きな木です。樹皮は赤褐色で、剥がれやすい性質があります。
    • 葉: 長さ15〜36cm(大きいものでは75cmにもなる)と非常に大きな葉を持ちます。葉は厚く革質で、表面にはくっきりとした平行な葉脈が多数あり、波打つような独特の形状をしています。その見た目が日本の「枇杷(ビワ)」の葉に似ていることから、和名で「ビワモドキ」と呼ばれています。
    • 花: 直径15〜20cmにもなる大きな白い花を咲かせます。5枚の白い花弁と多数の黄色い雄しべが特徴的です。花は夕方には花弁が落ちることがあります。
    • 果実: エレファントアップルの最も特徴的な部分です。直径5〜12cmの丸くて大きな緑色の果実をつけます。この果実は、萼(がく)が肥大して多肉質になったもので、中に食用になる繊維状の果肉と多数の種子が含まれています。未熟な果実は酸味が強く、熟すと甘酸っぱくなり、インドや東南アジアではカレーやジャム、チャツネなどに利用されます。
    • 生態: 原産地では、特にゾウやサルなどの大型の草食動物がこの果実を食料としており、ゾウは種子散布において重要な役割を果たしています。
  • 命名の由来:エレファントアップルという名前は、その果実と、それを食べる動物に直接由来しています。
    • エレファント(Elephant): その名の通り、**ゾウ(Elephant)**がこの植物の大きな果実を非常に好んで食べることから来ています。原産地であるインドの保護林などでは、ゾウにとって重要な食料源となっており、「ゾウのリンゴ」と呼ばれています。
    • アップル(Apple): 大きな丸い果実が、リンゴ(Apple)を連想させることから名付けられました。

このように、エレファントアップルは、その大きな果実がゾウの主要な食料となっているという生態的な特徴が、そのまま植物名になった、非常に分かりやすい名前です。

エレファントイヤー:

  • 特徴:エレファントイヤー(Elephant Ear)は、特定の植物の種名ではなく、サトイモ科(Araceae)のいくつかの属に属する植物で、特に非常に大きな葉を持つものの総称として使われる園芸名です。主なものとしては、以下の属の植物が「エレファントイヤー」と呼ばれることが多いです。
    • コロカシア属(Colocasia):タロイモなどが含まれる。
    • アロカシア属(Alocasia):クワズイモなどが含まれる。
    • キサントソーマ属(Xanthosoma):
    • フィロデンドロン属(Philodendron)の一部
    • モンステラ属(Monstera)の一部(ただし、こちらは「モンステラ」と個別で呼ばれることが多い)
    • これらの植物は、熱帯・亜熱帯地域が原産で、湿度の高い環境を好みます。
  • 「エレファントイヤー」と呼ばれる植物に共通する主な特徴は以下の通りです。
    • 巨大な葉: 最大の特徴は、その名の通りゾウの耳のように非常に大きな葉を持つことです。葉の大きさは品種や生育環境によりますが、小型のものでも数十センチ、大きいものでは1メートルを超えることもあります。
    • 葉の形状: 葉は一般的に卵形やハート形をしており、多くは光沢があり、葉脈がはっきりしています。品種によっては、葉の色が緑だけでなく、黒っぽい紫色、赤みがかった色、斑入りなど多様です。また、葉の表面に独特の質感を持つものもあります。
    • 地下茎(球茎・塊茎): 多くは地下に球茎や塊茎(イモのような部分)を持ち、そこから葉や根を伸ばします。この球茎は食用となる種類(タロイモなど)もありますが、観賞用の品種は有毒なものが多いので注意が必要です。
    • 生育環境: 高温多湿を好み、日当たりが良い場所から半日陰でよく育ちます。多くの品種は湿潤な土壌を好みます。
    • 観葉植物としての利用: その圧倒的な存在感と美しい葉のため、庭園のアクセント、鉢植えの観葉植物として広く利用されています。トロピカルな雰囲気を演出するのに最適です。
  • 命名の由来:「エレファントイヤー」という名前は、その植物が持つ最も顕著な特徴である葉の大きさや形が、まるでゾウの大きな耳にそっくりであることに直接由来しています。
    • エレファント(Elephant): ゾウを指します。
    • イヤー(Ear): 耳を指します。

このように、複数の植物の総称として、その見た目の特徴を非常に分かりやすく表現した園芸名として定着しています。

フゲンゾウ(普賢象):

  • 特徴:フゲンゾウ(普賢象、学名: Cerasus serrulata 'Fugenzo')は、バラ科サクラ属のサクラの栽培品種の一つです。ヤエザクラ(八重桜)の一種で、江戸時代からあるとされる古い品種です。
    • 花: 花は大きく、直径が4〜5cmほどあります。花弁の数が20〜40枚もある八重咲きで、ボリュームがあります。開花直後は淡いピンク色ですが、満開になると白っぽい色に変化します。
    • 花のつき方: 花の中心部から、2本の雌しべが長く突き出ているのが大きな特徴です。この雌しべが、和名の由来にもなっています。
    • 開花時期: ソメイヨシノよりも遅い、4月下旬から5月上旬頃に開花します。
  • 命名の由来:フゲンゾウという名前は、その花の中心部にある特徴的な2本の雌しべに由来します。
    • 仏教の普賢菩薩(ふげんぼさつ)は、白い象の背中に乗っている姿で描かれます。このサクラの花の中心部から突き出た2本の雌しべが、まるで普賢菩薩が乗る象の牙のように見えることから、「普賢象」と名付けられました。
    • また、同じくヤエザクラの品種である「カンザン(関山)」にも、似たような名前の由来があります。カンザンは、花が咲くにつれて濃いピンク色に変化し、花が散る前に花びらが落ちる様子を、桜を愛でる人々の姿に見立てたという説があります。

 

タイ(鯛)

タイツリソウ(鯛釣草):

  • 特徴:タイツリソウ(鯛釣草、学名:Lamprocapnos spectabilis)は、ケマンソウ科(旧ケシ科)コマクサ属の多年草です。中国やシベリアが原産で、日本には江戸時代に渡来しました。
    • 花: 4月から5月にかけて、弓なりに伸びた花茎から、ハート形をしたピンク色や白色の可愛らしい花をたくさんぶら下げるように咲かせます。花の先端がほんの少し開いて、内側の白い花びらが顔をのぞかせます。
    • 葉: 葉は羽状に細かく裂け、繊細な印象を与えます。新緑の季節には特に美しく、観賞価値が高いです。
    • 栽培: 日当たりと水はけの良い場所を好み、寒さには強いですが、夏の暑さにはやや弱い性質があります。そのため、日本では半日陰の涼しい場所で管理するのが一般的です。
  • 命名の由来:「タイツリソウ」というユニークな名前は、その花が垂れ下がる様子から名付けられました。
    • 鯛釣草(タイツリソウ): 弓なりに垂れ下がった花茎に、たくさんのハート形の花がぶら下がっている姿が、まるで釣り竿にたくさんの**鯛(タイ)**が釣れているように見えることに由来します。

この特徴的な花の形から、英語圏では「Bleeding Heart(出血した心臓)」というロマンチックな名前で呼ばれています。また、花の先端から白い花びらが垂れている様子が「乙女の涙」に見えることから「Lady in a Bath(お風呂に入る女性)」という別名もあります。

 

タカ(鷹)

タカノツメ(鷹の爪):

  • 特徴:タカノツメ(鷹の爪、学名:Zanthoxylum ailanthoides)は、ミカン科サンショウ属の落葉高木です。日本、中国、台湾に分布し、特に山地に自生しています。
    • 樹形と葉: 成長すると高さ20mにもなる高木で、樹皮は滑らかで灰褐色をしています。葉は大きな羽状複葉で、サンショウ(山椒)に似ていますが、葉の付け根にトゲはありません。
    • 香り: 葉や枝には柑橘系の独特の芳香があり、山菜として新芽を天ぷらやおひたしにして食べることができます。
    • 花と実: 夏に小さな白い花を咲かせ、秋には黒い実をつけます。この実はサンショウと同様に、香辛料として利用されることがあります。
    • 栽培: 比較的丈夫で育てやすい植物ですが、実生(種から育てる)だと成長が遅い傾向があります。
  • 命名の由来:「タカノツメ」という名前は、その新芽の形に由来します。
    • 鷹の爪(タカノツメ): 春先に伸びる新芽が、空を舞う鷹(タカ)の鋭い爪(ツメ)に似ていることから名付けられました。
    • また、植物学的には「タカノツメ」は上記のサンショウ属の樹木を指しますが、一般的には唐辛子の一種である「鷹の爪(トウガラシ)」もこの名前で呼ばれます。唐辛子の場合も、その実の形が鷹の爪に似ていることから名付けられました。
    • これらの植物は全く異なる種類ですが、両者ともそのユニークな形が名前の由来となっています。

 

タコ(蛸)

タコノアシ(蛸の足):

  • 特徴:タコノアシ(蛸の足、学名:Penthorum chinense)は、タコノアシ科タコノアシ属の多年草です。日本や東アジアの湿地や沼地に自生していますが、生育環境の減少により、多くの地域で絶滅危惧種に指定されています。
    • 草姿: 地下茎から茎を伸ばし、草丈は30cmから80cmほどになります。茎は直立し、葉は細長い形をしています。
    • 花: 8月から10月にかけて、茎の先端から数本の花序(花の集まり)の枝が放射状に伸び、その枝に小さな黄緑色の花をたくさんつけます。
    • 紅葉: 花が終わる頃から、茎や花序の枝、そして果実が赤く色づき始めます。晩秋には、全体が鮮やかな赤色に紅葉します。この紅葉した姿が、名前の由来にも深く関わっています。
    • 生育環境: 河川敷や沼地、湿地など、水位が変動するような特殊な環境を好みます。他の植物との競合には弱いため、適度な撹乱(洪水や草刈りなど)がある場所で生育します。
  • 命名の由来:「タコノアシ」というユニークな名前は、その花のつき方と紅葉した姿に由来しています。
    • 花序の姿: 茎の先端から数本に枝分かれし、外側に反り返る花序の枝に、小さな花が吸盤のように並んでつく様子が、あたかもタコの足のように見えることから名付けられました。
    • 紅葉した姿: 特に秋になり、花序全体が真っ赤に紅葉すると、まるで茹でたタコの足そのものに見えるため、「タコノアシ」という名前が定着したとされています。
    • この名前は、その姿を非常に的確に表現しており、一度見たら忘れられない名前として知られています。

タコノキ(蛸の木):

  • 特徴:タコノキ(蛸の木、学名:Pandanus tectorius)は、タコノキ科タコノキ属の常緑小高木です。熱帯から亜熱帯の海岸沿いに広く分布しており、日本では沖縄や小笠原諸島などに自生しています。
    • 樹形: 幹の途中からたくさんの**気根(きこん)**を出し、それが地面に届いて幹を支える独特な姿をしています。この気根が、名前の由来にも深く関わっています。
    • 葉: 葉は細長く、先端が尖っていて、縁に鋭いトゲがあります。葉の長さは1メートルを超えることもあり、螺旋状に幹に付いています。
    • 果実: パイナップルに似た形をした大きな集合果をつけます。果実は熟すと黄色や赤色になり、食用となる部分もありますが、アクが強く、加工して利用されることが多いです。
  • 命名の由来:「タコノキ」というユニークな名前は、その気根の姿に由来しています。
    • 蛸の木(タコノキ): 幹から放射状に伸びて地面に達する気根の様子が、まるでタコ(蛸)が何本もの足を広げているように見えることから名付けられました。
    • また、英名では「Screw pine」と呼ばれますが、これは葉が螺旋状(Screw)についていること、そして葉の見た目がマツ(Pine)に似ていることから来ています。

タコラン(蛸蘭):

  • 特徴:タコラン(蛸蘭、学名:Lecanorchis japonica)は、ラン科タコラン属の多年草です。日本固有種で、本州、四国、九州の山地の林床に自生しています。
    • 生態: 腐生植物であり、光合成を行いません。葉緑素を持たないため、茎も葉も褐色や赤褐色をしています。栄養源を土中の菌類に依存して生きています。
    • 草姿: 地下茎から細い花茎を伸ばし、草丈は10cmから20cmほどになります。花茎には数個の小さな鱗片葉(りんぺんよう)がついているだけです。
    • 花: 夏から秋にかけて、花茎の先に数輪の花をまばらに咲かせます。花は直径1cmほどの薄い黄褐色で、先端が細かく裂けた唇弁(しんべん)が特徴的です。
  • 命名の由来:「タコラン」というユニークな名前は、その花の形に由来しています。
    • 蛸蘭(タコラン): 花の中央にある唇弁(しんべん)と呼ばれる部分が、細かく裂けて反り返っており、その様子がまるで**タコ(蛸)**の吸盤や足のように見えることから名付けられました。
    • また、学名の Lecanorchis japonica は「日本産のレカノルキス」という意味で、Lecanorchis は「平らなラン」を意味するギリシャ語が語源とされています。

 

タヌキ(狸)

タヌキモ(狸藻):

  • 特徴:タヌキモ科。食虫植物の一種です。
  • 命名の由来:捕虫嚢がタヌキの尻尾のように見えることから。茎の途中に捕虫嚢(ほちゅうのう)という袋があり、これがタヌキの腹袋に似ていることから名付けられました。

タヌキマメ(狸豆):

  • 特徴:タヌキマメ(狸豆、学名:Crotalaria sessiliflora)は、マメ科タヌキマメ属の一年草です。東アジアを中心に広く分布し、日本では本州から九州にかけての畑や道端などに自生しています。
    • 草姿: 草丈は30cmから1mほどになり、茎は細く、全体に白い毛が生えています。
    • 葉: 葉は細長く、茎に互い違いについています。
    • 花: 夏から秋にかけて、茎の先に青紫色をした蝶形の花をまばらにつけます。
    • 果実: 花が終わった後にできる果実が、この植物の最も大きな特徴です。豆果(莢)は長さ2〜3cmほどで、毛で覆われており、熟すと黒く変色します。乾燥すると、この莢の中の種子がカラカラと音を立てます。
  • 命名の由来:「タヌキマメ」というユニークな名前は、その果実の見た目に由来しています。
    • 狸豆(タヌキマメ): 毛に覆われた豆果(莢)が、まるで**タヌキ(狸)**の体を思わせることから名付けられました。
    • また、乾燥した莢を振ると中の種子が音を立てることから、**「ガラガラマメ(ガラガラ豆)」**という別名もあります。この「ガラガラ」という音も、タヌキの尻尾を振る音に例えられたのかもしれません。

 

チドリ(千鳥)

チドリノキ(千鳥の木):

  • 特徴:チドリノキ(千鳥の木、学名:Acer carpinifolium)は、ムクロジ科カエデ属の落葉高木で、日本固有種です。
    • 葉: カエデ属の植物ですが、特徴的なのは葉の形です。一般的なカエデのように手のひらのように裂けた葉ではなく、クマシデ(熊四手)の葉に似た、細長く縁にギザギザのある葉を持っています。
    • 樹形: 成長すると高さ10~15メートルになります。樹皮は縦に浅く裂け、木漏れ日のような模様を形成することがあります。
    • 花と実: 春に黄緑色の小さな花を咲かせ、秋にはカエデ特有の翼果(よくか)をつけます。この翼果は、2枚の羽根がほぼ平行に開くという特徴があります。
  • 命名の由来:「チドリノキ」というユニークな名前は、その翼果の形に由来します。
    • 千鳥の木(チドリノキ): 秋につける翼果(実)が、2枚の羽根がほぼ平行に開いているため、鳥の千鳥(チドリ)が飛んでいる姿に似ていることから名付けられました。
    • また、葉の形がクマシデに似ていることから、クマシデカエデという別名もあります。

 

チョウ(蝶)

オウコチョウ(黄胡蝶):

  • 特徴:オウコチョウ(学名:Caesalpinia pulcherrima)は、マメ科ジャケツイバラ属の常緑小高木です。西インド諸島が原産とされ、その鮮やかで美しい花から、世界の熱帯から亜熱帯地域で観賞用に広く栽培されています。沖縄県では「沖縄の三大名花」の一つとしても知られています。
    • 樹形・樹皮: 樹高は2~5メートルほどになる小高木です。主茎は真っ直ぐに伸びず、不規則に曲がるのが特徴です。枝には下向きの鋭いトゲがあります。
    • 葉: 長さ30cmにも達する偶数二回羽状複葉で、シダのような繊細な印象を与えます。6~9対の羽片に、さらに10~12対の小さな小羽片が付きます。
    • 花: 6月~10月頃(暖かい地域では年間を通して咲くことも)に、茎の先端や葉の腋から総状花序、あるいは円錐花序を形成し、直径約5cmの鮮やかな花を多数咲かせます。
      花弁は5枚で、橙色から黄色、または濃桃色~赤色のものがあり、花弁の縁には黄色の襞(ひだ)があるのが特徴です。
      花の中心からは、長く伸びた10本の雄しべと花柱(雌しべ)が突き出ており、これが非常に印象的で、孔雀の羽や蝶の触角のようにも見えます。
      特に、橙色や黄色の花弁と、そこから長く突き出す紅色の雄しべや花柱のコントラストが美しいとされています。
    • 果実: 花後にできる果実は扁平な豆果(マメ科植物の果実)で、長さは10cmほどになります。黒褐色に熟します。種子にはタンニンが含まれ、有毒です。
    • その他:
      • 日光と暖かい温度を好み、十分な水やりが必要ですが、排水が良い土壌を好みます。
      • 耐寒性はある程度ありますが、日本本土では温室栽培されることが多いです。沖縄など南西諸島では露地で栽培されています。
      • カリブ海の島国バルバドスの国花でもあります。
  • 命名の由来:オウコチョウの命名は、その花が持つ視覚的な特徴に由来しています。
    • オウ(黄): この植物には、鮮やかな黄色や橙色の花を咲かせる品種が多いことから、「黄」の字が使われています。実際に「黄花の黄胡蝶(キバナノオオゴチョウ)」という変種もあります。
    • コチョウ(胡蝶): 花が枝に群れ咲く様子が、まるで多くの蝶(胡蝶)がひらひらと舞い飛んでいるように見えることに由来します。特に、長く伸びた雄しべや花柱が蝶の触角や脚を連想させるとも言われています。つまり、「黄色の蝶が舞うような花」という意味合いで「黄胡蝶」と名付けられました。
      • 学名の種小名「pulcherrima」はラテン語で「最も美しい」という意味を持ち、この花の美しさを表しています。
      • 英語では「Peacock flower(孔雀の花)」や「Barbados-pride(バルバドスの誇り)」などとも呼ばれ、世界中でその美しさが称えられています。

キンチョウ(錦蝶):

  • 特徴:「キンチョウ(錦蝶)」は、その独特な形態と繁殖力で知られる多肉植物です。
    • 分類: ベンケイソウ科セイロンベンケイ属(Kalanchoe属、旧Bryophyllum属)の多肉植物の多年草です。学名は Kalanchoe delagoensis(または Bryophyllum delagoense)。
    • 原産地: マダガスカル原産。熱帯など温暖な気候に自生し、世界各地の温暖な地域で帰化植物となっています。
    • 草姿: 垂直に伸びる多肉植物で、高さは50cmから2mにもなります。茎は一本立ちで、あまり分枝しません。
    • 葉: 肉厚で円筒形の葉が特徴的です。葉の色は淡緑色と紫褐色のまだら模様で、粉白色を帯びています。最も特徴的なのは、葉の縁にびっしりと小さな子株(不定芽)ができることです。この子株は成熟すると自然と地面に落ち、そこで根付いて新しい株になります。
    • 花: 冬から春にかけて、茎の先端から長い花茎を伸ばし、ランタンのような筒状の朱赤色の花を多数下向きに咲かせます。花冠は筒部が緑白色で、突き出た部分は栗色です。
    • 繁殖力: 葉の縁から落ちる子株によって非常に旺盛に繁殖するため、「Mother of millions(何百万もの母親)」や「Chandelier plant(シャンデリアプランツ)」などの英名もあります。
    • 耐性: 乾燥に非常に強く、水やりを控えめにして管理することができます。耐寒性は弱く、最低越冬温度は5℃前後です。
  • 命名の由来:
    •  「キンチョウ(錦蝶)」という和名の由来は、その漢字表記「錦蝶」から連想されるような、美しい蝶や錦のような模様とは直接関係がないとされています。
    • いくつかの情報源によると、中国名の漢字をそのまま日本語の音読みにしたものだと言われています。
    • したがって、具体的な花の形が蝶に似ているとか、葉が錦のように美しいからというわけではなく、単に中国から伝わった際に、その中国名が日本で「キンチョウ(錦蝶)」と音読みで呼ばれるようになった、というのが最も有力な説です。
    • ちなみに、英名にはその増殖力の高さから「Mother of millions(何百万もの母親)」や、花が垂れ下がる様子から「Chandelier plant(シャンデリアプランツ)」など、植物の特徴を直接表す名前がつけられています。

コチョウノマイ(胡蝶の舞):

  • 特徴:胡蝶の舞は、ベンケイソウ科カランコエ属(旧ブリオフィルム属)の多肉植物で、学名は Kalanchoe fedtschenkoi(カランコエ・フェドチェンコイ)です。
    • 分類: ベンケイソウ科カランコエ属(Kalanchoe属)の多肉植物。
    • 原産地: マダガスカル島原産。
    • 草姿: 地を這うように広がる匍匐性のタイプから、やや立ち上がるタイプまであります。株全体が多肉質で、乾燥に強いのが特徴です。
    • 葉:肉厚でやや丸みを帯びた卵形〜円形、またはへら型の葉をしています。葉の色は通常、灰緑色ですが、日当たりの良い場所や寒さに当たると、葉の縁がピンク色や赤紫色に美しく染まります。この色の変化が「胡蝶」の名の由来の一つと考えられます。
      葉の縁には、小さなくぼみがあり、そこから子株(不定芽)が発生します。これが地面に落ちて増えるため、非常に繁殖力が旺盛です。
    • 花:冬から春にかけて、茎の先端から花茎を伸ばし、オレンジ色やピンクがかった赤色の釣鐘形の花を咲かせます。
      花は比較的小さく、下向きにぶら下がるように咲くのが特徴です。
    • 耐寒性: 比較的耐寒性はありますが、霜には弱いため、冬は室内の日当たりの良い場所での管理が推奨されます。
    • 繁殖力: 葉の縁から出る子株が非常にたくさんでき、落ちた子株から容易に根付いて増えるため、放置すると広範囲に広がることもあります。
  • 命名の由来:「胡蝶の舞(コチョウノマイ)」という和名の由来は、その葉の形と、特に葉の縁が赤やピンクに色づく様子が、ひらひらと舞う蝶の姿を連想させることからきています。
    • 胡蝶: 「胡蝶」とは文字通り「蝶」を指します。丸みを帯びた葉の形が、蝶の羽のように見える。
      日照や寒さによって葉の縁が色づくことで、まるで蝶が羽を広げているかのような、あるいは群れで舞っているかのような美しい姿に見える。特に、葉が重なり合って配置される様子が、群れをなして舞う蝶のようにも見えます。
    • 舞: その葉が風に揺れたり、群生している様子が「舞う」ように見えることに由来していると考えられます。
    • この植物は、その繁殖力の旺盛さから「子宝草」として知られるセイロンベンケイ(Kalanchoe pinnata)の仲間であり、同様に葉の縁に子株をつける性質を持っています。美しい葉の色の変化と、子株をたくさんつける姿が、多くの蝶が舞い踊るように見えることから、この優雅な和名がつけられたのでしょう。

コチョウラン(胡蝶蘭):

  • 特徴:コチョウラン(胡蝶蘭、学名:Phalaenopsis aphrodite など、属名:Phalaenopsis)は、ラン科コチョウラン属に属する着生ランの総称です。主に熱帯アジア原産で、その優雅で美しい花姿から「洋ランの女王」とも称され、贈答用や観賞用として世界中で非常に人気があります。コチョウランの主な特徴は以下の通りです。
    • 着生植物: 樹木などに根を張り付かせ、空気中の水分や枯葉から養分を得て生育する着生植物です。そのため、根は光合成を行い、水分を吸収する特殊な構造を持っています。
    • 葉: 肉厚で光沢のある楕円形の葉が数枚、根元から放射状に伸びます。水分を蓄える能力が高く、乾燥に耐えることができます。
    • 花: コチョウランの最大の魅力は、その美しい花です。
    • 花茎の伸長: 長くしなやかな花茎を伸ばし、その先に多くの花をつけます。
    • 花形: 花びらは厚く、光沢があり、左右対称に広がります。特に、上側の花弁(背萼片と側花弁)と、下側の大きな唇弁(リップ)が特徴的です。唇弁は中央が突き出ていたり、複雑な模様が入っていたりします。
    • 色彩: 白が最も一般的ですが、ピンク、紫、黄色、緑、斑入りなど、非常に多様な花色や模様があります。
    • 花持ち: 一度咲くと非常に花持ちが良く、適切な管理をすれば1ヶ月から数ヶ月にわたって咲き続けるため、長く観賞を楽しむことができます。
    • 開花時期: 自然界では春に開花することが多いですが、温室栽培では年間を通して開花調節が可能です。
    • 根: 太く白い根が特徴で、空気中に出る根(気根)もあります。この根が健全であることが栽培の成功の鍵となります。
  • 命名の由来:コチョウラン(胡蝶蘭)という名前は、その花が持つ特徴的な形状に直接由来しています。
    • コチョウ(胡蝶): コチョウランの花が、まるでひらひらと舞う蝶(胡蝶)の群れのように見えることから、「胡蝶」という言葉が使われています。特に、左右に広がる大きな花弁と、中央の唇弁が蝶の胴体や触角を連想させるため、この名が付きました。
    • ラン(蘭): ラン科の植物であるため、そのまま「蘭」という漢字が使われています。
      • 学名である「Phalaenopsis(ファレノプシス)」も、ギリシャ語の「phalaina(蛾)」と「opsis(~のような)」に由来し、「蛾のような」という意味を持ちます。これは、夜間に飛ぶ蛾の姿に似ていると感じられたためと言われています。
        日本語名としては「蝶」の方がより優雅で美しい印象を与えるため、「胡蝶蘭」という名前が定着しました。

ハクチョウソウ(白蝶草):

  • 特徴:ハクチョウソウ(白蝶草)は、北アメリカ原産の多年草で、アカバナ科ガウラ属に分類されます。細く伸びた茎の先に、可憐な白い花を咲かせます。和名も学名も、その花姿が由来です。
    • 草姿: 茎が細く長く伸び、その先に花をつけます。風に揺れる姿が美しく、可憐な印象を与えます。
    • 花: 晩春から秋にかけて、白または淡いピンク色の花を咲かせます。4枚の花弁を持ち、雄しべは長く突き出しています。花は下から順に咲き上がっていきます。
    • 葉: 茎の根元にロゼット状(放射状)に葉をつけ、茎にも細長い葉が互い違いにつきます。
    • 園芸: 丈夫で育てやすいため、花壇や鉢植え、寄せ植えなどで広く利用されています。
  • 命名の由来:クチョウソウという名前は、その花が風に揺れる様子が、まるで白鳥が舞っているかのように見えることに由来します。
    • 和名「ハクチョウソウ(白蝶草)」: 花の姿が、蝶や白鳥の姿に見立てられたことから名付けられました。
    • 学名「Gaura lindheimeri」: 以前は「Gaura」という属名が使われていましたが、現在では近縁のヤマモモソウ属に統合され、「Oenothera lindheimeri」という学名で呼ばれることもあります。

 

ツバメ(燕)

ツバメオモト(燕万年青):

  • 特徴:ツバメオモト(燕万年青)は、ユリ科ツバメオモト属の多年草で、高山帯の林床などに自生する植物です。
    • 姿: 草丈は20〜30cmほどになり、直立する茎の先に数枚の大きな葉をつけます。
    • 葉: 葉は、長さが20〜30cmにもなる大きな広披針形で、縦に葉脈が通っており、オモト(万年青)によく似ています。
    • 花: 5〜7月頃、茎の先に白い花を数個咲かせます。この花は、6枚の花被片(かひへん)が平らに開くのが特徴です。
    • 果実: 花の後にできる果実は、青く美しい液果で、この果実もツバメオモトの大きな特徴です。
  • 命名の由来:「ツバメオモト(燕万年青)」という名前は、花の形と葉の形に由来しています。
    • ツバメ(燕): 白い花が、鳥のツバメが羽を広げて飛んでいる姿に似ていることから名付けられました。
    • オモト(万年青): 大きく厚みのある葉の形が、**オモト(万年青)**という植物に似ていることから、この名が加わりました。
  • このように、花の形と葉の形を組み合わせて名付けられた、ユニークな名前です。

ツバメズイセン(燕水仙):

  • 特徴:ツバメズイセン(燕水仙、学名:Sparaxis elegans)は、アヤメ科スパラキシス属の球根植物です。南アフリカ原産で、春に花を咲かせます。
    • 花: 4月から5月頃に、鮮やかな橙赤色や赤紫色の花を咲かせます。花弁の中央部分が黒紫色で、その周りを黄色い輪が囲む独特な模様が特徴です。花は日光が当たると開き、夕方には閉じます。
    • 草姿: 草丈は20~40cmほどになり、細長い葉が株元から数枚伸びます。花茎の先端に数輪の花をつけます。
    • 栽培: 日当たりと水はけの良い場所を好み、球根植物としては比較的丈夫で育てやすいです。ただし、耐寒性はやや劣るため、寒冷地では鉢植えにして冬は屋内に取り込む必要があります。
  • 命名の由来:「ツバメズイセン」という名前は、その花の中心部の模様と花の形に由来します。
    • ツバメ(燕): 花弁の中心にある、黒紫色の模様が、鳥のツバメが羽を広げた姿に似ていることから名付けられました。
    • ズイセン(水仙): 花の形がスイセンに似ていることから、この名が付けられました。
    • また、英名では「Harlequin Flower(道化師の花)」と呼ばれます。これは、花の中心にある模様が道化師(ハーレクイン)の衣装のようにカラフルで、ユニークな見た目をしていることに由来します。

 

ツル(鶴)

オリヅルラン(折鶴蘭):

  • 特徴;キジカクシ科オリヅルラン属の常緑多年草で、その特徴と名前の由来は以下の通りです。葉の形状と色: 細く長い葉が放射状に伸び、しなやかな曲線を描く姿が優美です。多くは緑色の葉に白やクリーム色の斑が入る「斑入り(ふいり)」タイプで、モダンな雰囲気を持っています。品種によっては、葉全体が緑色のものや、葉が内側にカールしているものもあります。
    • ランナーと子株: 春から秋にかけて、親株から細長い茎(ランナーまたは匍匐茎)を伸ばし、その先に小さな子株をつけます。この子株は、土に触れると根を出し、新しい株として育つことができます。
    • 花: ランナーの途中に、目立たない小さな白い花を咲かせます。
    • 根: 鉢から取り出すと、細いひげ根と水分を蓄えることができる太い多肉質の根を持っていることがわかります。この太い根のおかげで、乾燥に強く、水やりの頻度が少なくて済み、比較的丈夫で育てやすい植物として知られています。
    • 原産地と耐性: アフリカの乾燥した熱帯地域が原産で、暑さには強いですが、寒さにはやや弱い性質があります。しかし、比較的耐寒性もあり、霜が当たらなければ0℃以上で冬越しも可能です。
    • サイズ: 草丈は10〜30cm程度と、大きすぎず小さすぎないサイズ感で、室内での観葉植物として人気です。ハンギングバスケットにも適しています。
  • 命名の由来:和名「オリヅルラン(折鶴蘭)」の由来は、その特徴的な見た目にあります。
    • 親株から伸びた細長いランナーの先にできる子株が、まるで折り紙の「折り鶴」が羽を広げてぶら下がっているように見えることから、「折鶴蘭」と名付けられました。
    • 「ラン」という名前がついていますが、実際のところラン科の植物とは特に関係ありません。
    • また、学名の「Chlorophytum comosum」は、ギリシャ語の「chloro(緑)」と「phytum(草)」、そしてラテン語の「comosum(髪のようにふさふさした)」が語源とされています。
    • 英語では、ランナーが蜘蛛の巣を髣髴とさせることから「Spider plant(スパイダープラント)」とも呼ばれます。

ツルラン(鶴蘭):

  • 特徴:ツルラン(鶴蘭)は、ラン科エビネ属の多年草で、主に九州南部から沖縄にかけて分布する大型のエビネの仲間です。
    • 草姿: 草丈は40~80cmほどになります。
    • 葉: 濃い緑色の大きな葉をつけ、縦方向に筋のようなシワがあります。
    • 花: 夏から秋にかけて、すらりと伸びた花茎の先に、白からクリーム色、または薄い黄色の花を20〜40個ほど密につけます。
    • 唇弁: 花の特徴として、唇弁(しんべん)と呼ばれる部分が大きく3裂し、中央の裂片がさらに2つに深く裂けて「大」の字形になるのが特徴です。また、この唇弁の基部には黄色や紅色の突起があります。
  • 命名の由来:ツルランの名前は、その花姿が「鶴」に似ていることに由来すると言われています。特に、唇弁が「大」の字形に開く様子を、鶴が羽を広げて舞う姿に見立てたという説や、唇弁の基部にある赤や黄色の隆起をタンチョウヅル(丹頂鶴)の頭頂部に見立てた、という説があります。

マイヅルテンナンショウ(舞鶴天南星):

  • 特徴:マイヅルテンナンショウは、サトイモ科テンナンショウ属の多年草で、山地の林内や林縁などの日当たりの悪い場所に自生します。
    • 姿: 草丈は20〜50cmほどになり、1本の茎から葉と仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれる花序(かじょ)を出します。
    • 葉: 茎から1枚の大きな葉を出します。この葉は、鳥の足のように3つに分かれ、さらにそれぞれの裂片(れつへん)が深く羽状に裂けています。
    • 仏炎苞(ぶつえんほう): 春になると、葉の下から仏炎苞と呼ばれる筒状のものが伸びてきます。これは、テンナンショウ属特有の器官で、その中に花が咲きます。マイヅルテンナンショウの仏炎苞は、紫褐色で、縞模様が入っているのが特徴です。
  • 命名の由来:「マイヅルテンナンショウ(舞鶴天南星)」という名前は、葉の形と植物全体の姿に由来しています。
    • マイヅル(舞鶴): 葉が鳥の足のように3つに分かれ、さらに細かく裂けている様子が、鳥のツル(鶴)が翼を広げて舞っている姿に似ていることから名付けられました。
    • テンナンショウ(天南星): テンナンショウ属の植物は、中国の生薬名である「天南星」に由来します。
    • つまり、舞っている鶴に似た葉を持つテンナンショウ、という意味で「マイヅルテンナンショウ」と名付けられました。

マイヅルソウ:

  • 特徴:マイヅルソウは、ユリ科マイヅルソウ属の多年草で、高山帯の針葉樹林の林床などに群生します。
    • 姿: 草丈は10~20cmほどの小さな植物で、地下茎(ちかけい)を伸ばして増えます。
    • 葉: 茎の先端に、2枚のハート形の葉が対生(たいせい)してつきます。この葉は、葉脈が目立ち、光沢があるのが特徴です。
    • 花: 初夏になると、葉の間から細長い花柄(かへい)を伸ばし、その先に白い小さな花を多数、総状花序(そうじょうかじょ)という穂状に咲かせます。花の形は、6枚の花被片(かひへん)が反り返った星のような形をしています。
    • 果実: 花が終わると、球形の小さな赤い液果(えきか)をつけます。
  • 命名の由来:「マイヅルソウ(舞鶴草)」という名前は、葉の形と花のつき方に由来しています。
    • マイヅル(舞鶴): 茎の先に2枚の葉が広がる姿が、鳥のツル(鶴)が翼を広げて舞っている姿に似ていることから名付けられました。
    • ソウ(草): 草本植物であることに由来します。
    • この植物は、葉の形から名付けられた植物の中でも特に有名で、高山植物の代表的なもののひとつです。

 

天狗(てんぐ)

標準和名に「テング」がつく生き物に関しては、以下のリンク先にまとめてありますので、参照ください。

www.ariescom.jp

 

トキ(朱鷺)

トキソウ(朱鷺草):

  • 特徴:トキソウ(朱鷺草)は、日本や中国、朝鮮半島などに分布するラン科の多年草です。日当たりの良い湿地に自生する貴重な植物で、環境省や各都道府県で絶滅危惧種に指定されている地域が多くあります。
    • 草姿: 地下に横に這う根茎があり、そこから高さ10~30cmほどの茎を伸ばします。
    • 葉: 茎の中ほどに、肉厚で細長い葉を1枚だけつけます。
    • 花: 5月から7月にかけて、茎の先端に淡い紅紫色の花を1つ咲かせます。花はあまり大きく開かず、横向きに咲くのが特徴です。
    • 唇弁: 花弁の一部である唇弁は3つに裂け、特に中央の裂片が大きく、その内側に肉質の毛状突起が密生しています。
  • 命名の由来:トキソウという名前は、その花の色が鳥の「トキ(朱鷺)」の羽の色に似ていることに由来します。トキの翼の下面が持つ、朱色がかった淡いピンク色を花の色に見立てて「朱鷺草」と名付けられました。

 

ドジョウ

ドジョウツナギ:

  • 特徴:ドジョウツナギは、イネ科の多年草で、水田や沼、湿地などの水際に生育します。
    • 姿: 草丈は30~60cmほどになり、茎は細く、地を這うように伸びて、節(せつ)から根を出します。
    • 葉: 葉は細長い線形(せんけい)で、長さは5~15cmほどです。
    • 花穂: 夏から秋にかけて、茎の先に細長い円錐状の花穂(かすい)をつけます。この花穂は、淡い緑色や紫褐色をしており、多数の小穂(しょうすい)がまばらについています。
  • 命名の由来:「ドジョウツナギ」という名前は、茎の生育環境と使い方に由来しています。
    • ドジョウ(泥鰌): 泥の中に潜む淡水魚のドジョウを指します。
    • ツナギ(繋ぎ): この植物の丈夫な茎を、ドジョウを繋いでおくための紐として使ったことから名付けられました。
    • つまり、ドジョウを繋ぐための植物、という意味で「ドジョウツナギ」というユニークな名前がつけられました。水辺に生育することと、茎が丈夫であるという特徴が名前の由来になっています。

ドジョウツナギ - Wikipedia

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/08/Glyceria_ischyroneura_dojotunagi07.jpg

 

トラ(虎)

オウハントラノマキ:

  • 特徴:オウハントラノマキ(黄斑虎の巻)は、正式な植物名としては存在しません。しかし、この名前は、サンスベリア(Sansevieria)属の特定の品種で、葉に虎の縞模様のような斑(ふ)が入り、特に黄色い斑を持つものを指す園芸名として使われている可能性が非常に高いです。特に「トラノマキ」と呼ばれるのは、サンスベリア・トリファスキアータ 'ローレンティー' (Sansevieria trifasciata 'Laurentii') や、その園芸品種、あるいはそれに類する品種が一般的です。これらのサンスベリアの葉に現れる特徴的な模様から、このようなユニークな名前が付けられました。もし「オウハントラノマキ」が特定のサンスベリアの品種を指しているのであれば、その特徴は以下のようになります。
    • 葉の形状: 硬質で肉厚な剣状の葉が、根元からまっすぐに立ち上がって伸びます。品種によっては、葉がやや波打ったり、短いロゼット状に広がるものもあります。
    • 「虎の巻」模様: 葉の表面には、濃い緑色を基調とし、まるで虎の縞模様のような横縞の斑が入ります。これが「虎の巻」と呼ばれる所以です。
    • 「黄斑」: 特に「オウハン(黄斑)」と呼ばれる場合は、この虎模様の縁や、縞模様の中に鮮やかな黄色の斑が入るのが特徴です。この黄色い斑が、植物全体を明るく見せ、観賞価値を高めています。
    • 生育: 乾燥に非常に強く、日陰にも比較的耐えるため、手入れが簡単で育てやすい観葉植物として人気があります。あまり水やりを必要とせず、初心者でも育てやすいとされています。
    • 空気清浄効果: NASAの研究で、ホルムアルデヒドなどの有害物質を除去する空気清浄効果があるとされ、「エコプラント」としても注目されています。
    • 花: めったに咲きませんが、稀に花茎を伸ばし、淡いクリーム色の小さな花を咲かせることがあります。
  • 命名の由来:「オウハントラノマキ」という名前は、その植物の視覚的な特徴と、日本の伝統的な表現が組み合わさって付けられたと考えられます。
    • オウハン(黄斑): 葉に入る黄色の斑(ふ)を指します。鮮やかな黄色い模様が際立つことに由来します。
    • トラノマキ(虎の巻): 葉の横縞模様が、まさに虎の毛皮の縞模様に似ていることから「虎」という言葉が使われています。
      さらに「巻」という表現は、昔の巻物(知識や技術を記した書物)を連想させます。虎の縞模様がぐるぐると巻いているように見える、あるいは、珍重すべき「虎の縞模様の巻物」のような植物である、といった意味合いが込められていると考えられます。

このように、「オウハントラノマキ」は、葉の黄色い虎模様が特徴的なサンスベリアを指し、そのユニークな見た目から付けられた、非常に descriptive な(描写的な)園芸名であると言えるでしょう。

キントラノオ(金虎尾):

  • 特徴:キントラノオ(金虎尾、学名:Galphimia gracilis または Galphimia glauca)は、キントラノオ科キントラノオ属の非耐寒性常緑低木です。熱帯アメリカ(メキシコ~パナマ)原産で、その鮮やかな黄色い花が特徴的な植物です。
    • 鮮やかな黄色の花: 最も目を引く特徴は、星形をした鮮やかな黄色の5弁花です。この花が枝先に円錐花序または総状花序として多数集まって咲き、開花期には株全体が黄金色に包まれたように見えます。英語では "Gold shower" や "Rain of gold" とも呼ばれるほどです。
    • 長い花期: 原産地では一年中開花しますが、日本では主に初夏から秋にかけて(5月~10月頃)長く花を楽しむことができます。温暖な地域や温室であれば、さらに長い期間咲き続けます。
    • 低木: 草丈は0.5メートルから2メートルほどになる常緑低木です。枝はよく分枝し、株立状になります。
    • 葉: 長さ3~5cm程度の楕円形~卵形の葉が対生します。葉の表面には粉白を帯びることがあり、寒さにあたると赤みを帯びて一部落葉することもありますが、春には回復します。
    • 非耐寒性: 熱帯原産のため寒さには弱く、冬越しには10℃以上を保つのが望ましいです。日本の暖地であれば露地栽培も可能ですが、霜が降りる地域では室内での管理が推奨されます。
    • 水はけの良い環境を好む: 過湿に弱く、水はけの良い肥沃な酸性土壌を好みます。
  • 命名の由来:「キントラノオ(金虎尾)」という和名の由来については、いくつかの説が考えられますが、最も有力なのは以下の説です。
    • 「金色の虎の尾」のような花穂: キントラノオの鮮やかな黄色の花が、穂状にまとまって咲き上がる様子が、まるで「金色の虎の尾」のように見えることに由来すると推測されています。特に、花穂が下から上へと順に咲き上がっていく様子が、尾の動きを連想させるのかもしれません。
    • 学名についても見てみましょう。
      • Galphimia(ガルフィミア): 属名ですが、その語源には諸説あります。一説には、Malpighia(ヒイラギトラノオ属)からのアナグラム(文字を入れ替えて作られた言葉)であるとも言われています。
      • gracilis(グラキリス) または glauca(グラウカ): 種小名です。
      • gracilis はラテン語で「ほっそりとした」「優美な」といった意味があり、植物全体の印象を表していると考えられます。
      • glauca はラテン語で「帯白色の」「青みがかった灰色の」といった意味があり、葉の表面が粉白を帯びる特徴を表していると考えられます。

キントラノオはその美しい黄色い花と、その花姿が動物の尾に例えられることで、親しみやすい名前が付けられたと言えるでしょう。

タイガーベル:

  • 特徴:「タイガーベル(Tiger Belle)」は、主にベゴニアの園芸品種として知られています。その特徴と命名の由来について解説します。
  • ベゴニア・タイガーベル(Begonia 'Tiger Belle')
    • 分類: シュウカイドウ科ベゴニア属の根茎性ベゴニアの園芸品種です。
    • 葉: 葉は鮮やかな緑色で、虎の縞模様(虎斑)のような茶色や赤褐色の模様が入ります。葉の形は不揃いで、いかにも野生的な雰囲気を持っています。
    • 茎: 茎には毛が生えており、その毛深さも特徴の一つです。
    • 花: 明るいピンク色の花を咲かせます。葉の色とのコントラストが美しく、観賞価値が高いとされています。
  • 命名の由来:「タイガーベル」という名前は、その見た目の特徴から名付けられました。
    • タイガー(Tiger): 葉に入っている虎のような縞模様から来ています。この縞模様がこの品種の最も大きな魅力の一つです。
    • ベル(Belle): 「美しいもの」「美人」を意味するフランス語の「Belle」が由来です。美しい花や葉を持つことから、この名前が付けられました。
    • したがって、「タイガーベル」という名前は、「虎模様の美しいベゴニア」という意味で名付けられたと考えられます。
    • なお、別の植物である「カンパニュラ・グロメラータ 'ツイスターベル'」という品種も存在しますが、これも「ベル(Bell)」の名の通り、鐘形の花を咲かせることから来ています。しかし、この場合は「タイガー」とは関係がありません。一般的に「タイガーベル」と呼ばれるのは、上記のベゴニアの品種です。

トラフアナナス:

  • 特徴:トラフアナナスは、南アメリカ原産のパイナップル科の植物で、園芸植物として親しまれています。
  • 葉: 幅のある細長い葉がロゼット状(放射状)に付き、弓状に反り返るように伸びます。葉には、虎の縞模様(虎斑)のような濃い緑色と、淡い緑色の横縞が入るのが大きな特徴です。この葉の模様から、「ゼブラプラント」という別名で呼ばれることもあります。
  • 花: 株の中心から長く花茎を伸ばし、その先に槍のような形をした真っ赤な花穂をつけます。この花穂は、花が咲き終わった後も数ヶ月にわたって色あせずに楽しむことができます。
  • 命名の由来:「トラフアナナス」という名前は、その特徴的な見た目から名付けられました。
    • トラフ(虎斑): 葉に入っている虎の縞模様に由来します。「虎斑」は虎の模様を意味します。
    • アナナス: パイナップル科の植物の総称です。本来はパイナップルのことを指しますが、園芸の世界ではパイナップル科の植物全般をアナナスと呼ぶことが多いため、この名前が使われています。

このように、トラフアナナスは、葉の模様と植物の分類名が組み合わさって名付けられた植物です。

トラフバショウ(虎斑芭蕉):

  • 特徴:トラフバショウ(虎斑芭蕉)は、バショウ科バショウ属の植物で、食用バナナの原種の一つであるタイワンバナナの亜種とされています。観賞用として栽培されることが多い植物です。
    • 葉: トラフバショウの最大の特徴は、若い葉に現れる**虎の模様のような褐色の縞模様(虎斑)**です。この縞模様は成長するにつれて消えていくのが一般的です。
    • 草姿: バナナの仲間なので、巨大な葉をつけ、全体的にバショウに似た姿をしています。しかし、食用バナナとは異なり、実は小さく種子が多いため食用には適していません。
    • 花: 紫色の苞(ほう)に包まれた花をつけます。この花は夜間に咲き、日中に落ちてしまいます。
  • 命名の由来:トラフバショウという名前は、その特徴的な葉の模様から名付けられました。
    • トラフ(虎斑): 若い葉に現れる虎の縞模様に由来します。
    • バショウ(芭蕉): 葉や姿がバショウに似ていることから名付けられました。

このように、トラフバショウは、葉の模様がトラの縞に似ていることと、植物としての姿がバショウに似ていることが組み合わさって名付けられた植物です。

ハナトラノオ(花虎の尾):

  • 特徴:ハナトラノオ(花虎の尾)は、シソ科ハナトラノオ属の多年草です。北アメリカが原産で、日本には明治時代に観賞用として渡来しました。
    • 草姿: 草丈は60~100cmほどになり、茎は四角形をしています。
    • 花: 夏から秋にかけて、茎の先にまっすぐに伸びた穂状の花序をつけ、淡いピンク、白、または紫色の筒状の花をたくさん咲かせます。花は穂の下から上へと順に咲き上がっていきます。花壇などでよく見られる丈夫な植物です。
    • 葉: 細長く先が尖った葉をつけます。
  • 命名の由来:ハナトラノオという名前は、その花が咲く姿が、虎の尾に似ていることに由来します。
    • ハナ(花): 花を咲かせる「虎の尾」という意味です。
    • トラノオ(虎の尾): 穂状にまっすぐ伸びた花序の形が、まるで虎の尻尾のように見えることにちなんで名付けられました。
      また、植物学の世界では、同様に穂状に花を咲かせる植物の和名に「~トラノオ」と名付けることが多く、この植物もその一つです。

ヒイラギトラノオ(柊虎の尾):

  • 特徴:ヒイラギトラノオ(柊虎の尾、学名: Malpighia coccigera)は、キントラノオ科の常緑低木で、西インド諸島が原産の植物です。
    • 葉: 和名(和名)の由来にもなっているように、葉の形が日本のヒイラギ(柊)によく似ています。光沢のある小さな葉の縁には、ヒイラギの葉と同様に棘状の鋸歯があります。
    • 花: 直径1〜2cmほどの小さな淡いピンク色の5弁花を咲かせます。花が可愛らしいことから観賞用として人気があります。
    • 果実: 花の後に、直径1cmほどの赤い小さな果実をつけます。
    • 樹形: 低木で、高さは50〜150cm程度になります。密に茂るので、生垣や盆栽にも利用されます。
  • 命名の由来:「ヒイラギトラノオ」という和名は、主にその特徴的な葉と花序の様子から名付けられました。
    • ヒイラギ: 前述の通り、葉の形や縁にある棘状の鋸歯が、日本のヒイラギによく似ていることから名付けられました。
    • トラノオ(虎の尾): 長く伸びた花穂が、トラの尾に似ている植物によくつけられる和名です。このヒイラギトラノオも、花が穂状に咲く様子からこの名前がつけられたと考えられます。ただし、この植物は花がまばらであるため、「トラノオ」という部分の命名は、おそらく同じ「キントラノオ科」の仲間に由来するか、あるいは日本に伝わった際に、葉の特徴と合わせてつけられたと考えられます。
    • まとめると、ヒイラギトラノオは、「葉がヒイラギに似ていて、花が穂状に咲く(または同科の植物に似ている)」という特徴から、この名前がつけられたと考えられます。

 

トリ(鳥)

トリアシスミレ(鳥足菫、Viola pedata):

  • 特徴:トリアシスミレ(Viola pedata)は、北米東部を原産とするスミレ科の多年草です。日本では「鳥足菫」と表記されることもあります。
    • 草姿: 地上茎がほとんどなく、地面から直接、葉と花茎を伸ばします。
    • 葉: トリアシスミレの最大の特徴は、その深く切れ込んだユニークな形の葉です。この葉の形が、まるで鳥の足跡や水鳥の足のような形をしていることから、この名前が付けられました。
    • 花: 春に直径2.5~4cmほどの大きな花を咲かせます。花の色は、通常は上の2枚の花弁が濃い紫色、下の3枚の花弁が淡い青紫色または白色の美しいツートンカラーをしています。中には、花弁全体が紫色になる品種もあります。
  • 命名の由来:和名も学名も、その特徴的な葉の形に由来しています。
    • 和名「トリアシスミレ(鳥足菫)」: 葉の形が鳥の足に似ていることから名付けられました。
    • 学名「Viola pedata」: ラテン語で「pedata」は「足のある」「足のような」を意味します。これも葉の形が鳥の足に似ていることに由来しています。

このように、トリアシスミレは、見た目の最も大きな特徴である葉の形が、そのまま植物名に反映された例です。

コトリトマラズ(小鳥留まらず):

  • 特徴:「コトリトマラズ」は、メギ科の落葉低木であるメギ(目木)の別名です。
    • メギは、高さ2メートルほどに成長する落葉性の低木で、枝には長さ5~12ミリメートルの鋭いトゲが多数あります。葉は小さく、春には黄緑色の小さな花が咲き、秋には鮮やかな赤い楕円形の実をつけます。また、秋には美しい紅葉も見られます。
  • 命名の由来:「コトリトマラズ」という名前は、小鳥も止まることができないほど、枝に鋭いトゲがたくさん生えていることに由来しています。
    • 同じ理由から「ヨロイドオシ(鎧通し)」という別名もあります。この名前は、そのトゲの鋭さを非常に分かりやすく表現しています。
    • ちなみに、メギという和名は、古くからその茎や根を煎じた汁を洗眼薬として利用していたことから「目木」と名付けられました。

 

トンボ(蜻蛉)

トンボソウ(蜻蛉草):

  • 特徴:トンボソウは、ラン科トンボソウ属の多年草で、山地の林内や草地に生育します。
    • 姿: 草丈は20〜50cmほどになり、直立する細い茎には数枚の葉をつけます。
    • 葉: 茎の根元近くに2枚の大きな葉が対生し、その上部の茎には小さな葉をつけます。
    • 花: 夏になると、茎の先に緑色の小さな花をまばらにつけます。この花は、唇弁(しんべん)と呼ばれる花びらの一部が細長く、左右に広がるのが特徴です。
  • 命名の由来:「トンボソウ(蜻蛉草)」という名前は、その花のかたちに由来しています。
    • 花の唇弁が細長く左右に広がっている様子が、昆虫のトンボが羽を広げて飛んでいる姿に似ていることから、この名がつけられました。
    • この花は緑色で小さいため、あまり目立ちませんが、よく見るとトンボのようなユニークな形をしています。

トンボソウ - Wikipedia

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/a6/Platanthera_ussuriensis_1.JPG

 

ニワトリ(鶏)

ケイトウ(鶏頭):

  • 特徴:ケイトウ(鶏頭)は、ヒユ科ケイトウ属に分類される一年草で、その独特な花の形と鮮やかな色彩で、夏の終わりから秋にかけて花壇や庭を彩ります。
    • 花の形: ケイトウの最大の特徴は、その多様でユニークな花の形です。最もポピュラーな「トサカケイトウ」は、ニワトリのトサカ(鶏冠)に似た、扇状でモコモコした質感の花をつけます。その他にも、ロウソクの炎のような形をした「フサケイトウ(羽毛ケイトウ)」や、槍のような形をした「ヤリゲイトウ」、球状の「久留米ケイトウ」など、様々な園芸品種が存在します。
    • 色: 花の色は、赤、黄色、オレンジ、ピンク、白、グリーンなど非常に豊富でカラフルです。これらの鮮やかな花色は、ドライフラワーにしても色あせにくいという特徴を持っています。
    • 生育環境: 熱帯アジアやインドが原産で、暑さに強く、寒さに弱い性質を持っています。そのため、日本では春に種をまき、夏から秋にかけて花を楽しみます。
    • 歴史: 日本には奈良時代に中国を経由して伝来したとされており、『万葉集』にも詠まれるなど、古くから親しまれてきた植物です。
  • 命名の由来:「ケイトウ(鶏頭)」という名前は、その花の形がニワトリのトサカに似ていることに由来しています。
    • 漢字: 漢字で「鶏頭」と書くことからも、この由来は明らかです。英名も同様に「Cockscomb」(雄鶏のトサカ)と呼ばれており、この特徴は世界共通の認識です。
    • 学名: 学名の「Celosia」は、ギリシャ語で「燃焼」を意味する「keleos」に由来しており、燃え盛る炎のような鮮やかな花の姿を表現しています。
    • 伝説: 中国には、勇敢な雄鶏がムカデの精と戦って力尽き、その埋葬した場所からケイトウが咲いたという伝説も残っています。この伝説から「勇敢」という花言葉が生まれたと言われています。

ツルノゲイトウ(蔓野鶏頭):

  • 特徴:ツルノゲイトウは、ヒユ科の植物で、水田や湿地、水路などに生育する植物です。現在では、特に「ナガエツルノゲイトウ」という外来種が、その旺盛な繁殖力から大きな問題となっています。
    • 草姿と生育環境: 主に水辺に生育する多年草です。茎は水面を這うように伸び、節から根を出して広範囲にマット状の群落を形成します。水陸両用で、乾燥や塩分にも強いため、水路や池だけでなく、畑や海岸などでも生育することができます。
    • 葉: 葉は対生し、やや細長い形をしています。
    • 花: 4月から10月頃にかけて、葉の付け根から長い柄を伸ばし、その先に直径1〜1.5cmほどの白い球形の花を咲かせます。
    • 繁殖力: 非常に強い繁殖力と再生力を持つことが最大の特徴です。茎や根の断片からも容易に再生するため、刈り取っても小さな断片が残っていればすぐに復活してしまいます。また、ちぎれた茎が水に流されることで、さらに広範囲に拡散していきます。
  • 命名の由来:「ツルノゲイトウ(蔓野鶏頭)」という名前は、以下の特徴に由来しています。
    • ツル(蔓): 茎が長く伸びて蔓状になることから。
    • ノゲイトウ(野鶏頭): 花が鶏のトサカに似たケイトウ(鶏頭)の花に似ており、それが野に咲くことから。
    • ナガエ(長柄): 特に外来種の「ナガエツルノゲイトウ」は、花序(花の集まり)につく柄が長いことから、その名が付けられました。在来種のツルノゲイトウと区別するために、この特徴が名前に加えられています。
  • 現在、日本各地で問題となっている「ナガエツルノゲイトウ」は、その驚異的な繁殖力と再生力から、生態系や農業に深刻な被害をもたらす特定外来生物に指定されており、防除が急務となっています。

 

ネズミ(鼠)

トウネズミモチ(唐鼠黐):

  • 特徴:トウネズミモチ(唐鼠黐)は、モクセイ科イボタノキ属の常緑高木で、都市部の街路樹や公園などでよく見られます。日本のネズミモチに似ていますが、より大型で葉や花、実も大きくなるのが特徴です。
    • 葉: 濃い緑色で光沢のある葉をつけます。ネズミモチの葉は光にかざしても葉脈があまりはっきり見えませんが、トウネズミモチの葉は葉脈が透けて見えるのが大きな違いです。
    • 花: 6月から7月頃、枝先に白い小さな花を多数、円錐形に密集させて咲かせます。この花には独特の芳香があります。
    • 実: 秋から冬にかけて、直径5mmほどの球形に近い実をつけ、これが黒紫色に熟します。ヒヨドリなどの野鳥がこの実を好んで食べ、種子を散布するため、日本各地で自生も増えています。
  • 命名の由来:トウネズミモチという名前は、「トウ(唐)」と「ネズミモチ」を組み合わせたものです。
    • トウ(唐): 中国を意味します。トウネズミモチは中国が原産で、明治時代初期に日本に渡来したことから、中国産のネズミモチという意味で名付けられました。
    • ネズミモチ: 葉がモチノキに似ていることと、熟した実がネズミの糞に似ていることから「鼠餅」と名付けられました。

ネズミモチ(鼠黐):

  • 特徴:ネズミモチ(鼠黐)は、モクセイ科イボタノキ属の常緑低木で、本州の関東地方以西から四国、九州、沖縄にかけての暖かい地域の山林に自生します。街路樹や公園樹としても広く植栽されています。
    • 葉: 葉は厚手で革質、光沢のある濃い緑色をしています。トウネズミモチとよく似ていますが、葉を光にかざすと葉脈があまりはっきり透けて見えないのが特徴です。
    • 花: 6月頃、枝先に白い小さな花を多数つけます。この花には芳香があり、多くの昆虫が集まります。
    • 実: 秋から冬にかけて、楕円形で黒紫色の小さな実をつけます。この実をヒヨドリなどの野鳥が好んで食べ、種子を散布するため、自生も多く見られます。
  • 命名の由来:ネズミモチという名前は、その特徴的な見た目から名付けられました。
    • ネズミ: 秋に熟す実が、ネズミの糞に似ていることに由来します。
    • モチ: 葉や木全体の雰囲気が、モチノキに似ていることに由来します。ただし、ネズミモチはモクセイ科で、モチノキはモチノキ科であり、分類上は別の植物です。

 

ネコ(猫)

「ネコ(猫)が和名につく動物」に関しては、別途、特集記事を用意してあります。以下のリンク先を参照ください。

www.ariescom.jp

エゴノネコアシ:

  • 特徴:エゴノネコアシ(学名:Styrax japonica f. calycina)は、エゴノキの仲間で、特に「エゴノネコアシアブラムシ」というアブラムシの一種が寄生することで、まるで猫の足のような形をした虫こぶ(虫癭:ちゅうえい)ができるのが大きな特徴の植物です。分類上は独立した種ではなく、エゴノキの品種、あるいは変種とされています。エゴノネコアシは、基本的にはエゴノキ(学名:Styrax japonica)と同じ特徴を持っていますが、以下の点が大きく異なります。
    • 樹形・樹皮: 落葉高木で、樹高は5~10メートル程度になります。樹皮はなめらかで灰褐色です。
    • 葉: 葉は互生し、卵形から長楕円形で、先端は尖り、縁には浅い鋸歯があります。エゴノキと同様に、新緑の時期は美しいです。
    • 花: 5月~6月頃に、白い5弁の花が枝からぶら下がるように多数咲きます。花には芳香があり、蜜源としても重要です。
    • 果実: エゴノキと同様に、花後に球形の実をつけます。この実は有毒なサポニンを含み、昔は石鹸の代わりにも使われました。
    • 虫こぶ(ネコアシ): これが最大の特徴です。エゴノネコアシアブラムシ(Pemphigus ushikoroshi)というアブラムシが、エゴノキの新芽や葉柄の基部に寄生することで形成されます。寄生された部分は異常に肥大化し、先端が数本に枝分かれして、まるで猫の足の指先のような形になります。この虫こぶは、はじめは緑色ですが、成熟すると茶褐色に変色し、中にアブラムシが潜んでいます。アブラムシは秋になるとここから脱出して、土の中で越冬すると言われています。
  • 命名の由来:エゴノネコアシという名前は、その特徴的な虫こぶの形に直接由来しています。
    • エゴノキ: 母種であるエゴノキから来ています。エゴノキの名の由来は、実を食べると喉や舌にエグみを感じることから「エグい木」が転じて「エゴノキ」になったと言われています。
    • ネコアシ: まさに、アブラムシの寄生によって形成される虫こぶの形が、猫の足先(指の部分)にそっくりであることから「ネコアシ」と名付けられました。

このように、エゴノネコアシは、エゴノキという植物に特定の昆虫が寄生することで生まれる、独特の形態(虫こぶ)が動物の「猫の足」に似ているという、非常にユニークで分かりやすい命名がされた植物です。

キャッツテール:

  • 特徴:キャッツテールは、そのユニークな見た目から多くの人に愛されている植物です。
    • フサフサとした花穂: 最も特徴的なのは、その名前の由来にもなっている、フサフサとした赤い花穂です。まるで猫のしっぽやネコジャラシのような形をしており、長さは数センチから大きいものでは50cmにも達するものがあります。この花穂は雄花が密集したものです。
    • 非耐寒性常緑多年草: 熱帯地方が原産で、寒さには弱いですが、適切な温度(最低10℃以上)が保たれれば一年中花を咲かせることができます。日本の屋外では、霜や凍結に当たると枯れてしまうため、冬場は室内での管理が推奨されます。
    • 草丈・樹高: 一般的な園芸品種は草丈10〜20cmほどですが、枝は30cmほどに伸びることもあります。原種のアカリファ・ヒスピダ(Acalypha hispida)は、低木で草丈2~4mにもなることがあります。
    • 葉: 卵型で、縁には鋸歯があります。
    • 用途: その愛らしい見た目から、鉢植えやハンギングバスケット、コンテナでの栽培に適しています。
  • 命名の由来:
    「キャッツテール(Cat's Tail)」という名前は、その花穂の形が、文字通り「猫のしっぽ」に似ていることに由来します。フサフサとした赤い花穂が垂れ下がっている様子が、猫の愛らしいしっぽを連想させるため、この名前が付けられました。
    • 学名の「Acalypha hispida」についても補足すると、
      • Acalypha(アカリファ): 属名で、ギリシャ語の「Acalephe(イラクサ)」に似ていることに由来すると言われています。
      • hispida(ヒスピダ): 種小名で、ラテン語で「剛毛の」や「ざらざらした」といった意味があり、花穂の毛深い様子を表しています。

このように、学名もその植物の特徴をよく捉えたものとなっています。

猫草(ねこぐさ・ねこくさ):

  • 特徴:「猫草(ねこぐさ・ねこくさ)」とは、特定の植物の種類を指すのではなく、猫が好んで食べる草の総称です。一般的に、ペットショップなどで「猫草」として販売されているのは、エン麦(燕麦)、大麦、小麦などのイネ科植物の若葉が多いです。
  • 猫が猫草を食べる理由(諸説あります):猫は本来肉食動物ですが、猫草を食べる行動にはいくつかの理由が考えられています。
    • 毛玉の排出を助けるため: 猫はグルーミング(毛づくろい)で大量の毛を飲み込みます。猫草の葉は細く尖っているため、胃の粘膜を刺激して、飲み込んだ毛玉を吐き出すのを助けると考えられています。毛玉が胃の中に溜まりすぎると、嘔吐や食欲不振などの原因となる「毛球症」を引き起こすことがあります。
    • 便秘の予防・改善: 猫草に含まれる食物繊維が、腸の動きを活発にし、便秘の解消や予防に役立つ可能性があります。
    • 葉酸の補給: 草の汁に含まれる葉酸などのビタミンを補給するため、という説もありますが、決定的な証拠はありません。
    • ストレス解消・気分転換: 単純に草の食感や味を楽しむため、あるいはストレス発散や気分転換として食べる猫もいるようです。

ネコジャラシ(猫じゃらし):

  • 特徴:ネコジャラシ(猫じゃらし)は、イネ科エノコログサ属の植物で、学名は Setaria viridis です。日本各地の道端や畑などに自生する、非常に身近な雑草です。
    • 穂(ほ): ネコジャラシの最も特徴的な部分は、茎の先端につくブラシのような穂です。この穂には、たくさんの小さな花が密集しており、一つ一つの花の下から細い毛のような芒(のぎ)が伸びています。
    • 草姿(そうし): 草丈は20〜60cmほどになり、夏から秋にかけて穂をつけます。葉は細長く、イネの葉に似ています。
    • 繁殖力: 丈夫で繁殖力が強く、種子だけでなく、地中からも芽を出して増えるため、一度生えると広がりやすい植物です。
  • 命名の由来:「ネコジャラシ」と「エノコログサ」という二つの名前には、それぞれ別の由来があります。
    • ネコジャラシ
      穂を揺らすと猫がじゃれつく姿から名付けられました。穂についている毛のような芒が猫の好奇心をそそるため、昔からこの植物を猫のおもちゃとして使っていたことが由来です。
    • エノコログサ
      学名にも使われている「エノコログサ」は、「犬の尾の草」という意味の「犬っ子草(いぬっころぐさ)」が転じたものとされています。穂の形が、子犬のフワフワとした尾にそっくりなことから、この名前がつけられました。

このように、ネコジャラシ(エノコログサ)は、その穂の形が猫や犬といった身近な動物に似ていることから、二つの異なる可愛らしい名前を持っています。

ネコノシタ(猫の舌)

  • 特徴:ネコノシタ(猫の舌)は、その名の通り、葉の表面にザラザラとした感触があるのが特徴です。このざらつきが猫の舌に似ていることから名づけられました。
    • 分類: キク科ネコノシタ属に分類される多年草です。
    • 葉: 長さ5〜10cmほどのヘラ状で、縁には浅い切れ込みがあります。表面には毛が密生しており、触るとザラザラとしています。
    • 花: 初夏から秋にかけて、黄色い小さな花を咲かせます。花茎は細く、多数枝分かれします。
    • 分布: 主に日本から東南アジアの温暖な地域に自生しています。
    • 利用: 観賞用として栽培されるほか、一部の地域では食用として利用されることもあります。
  • 命名の由来:ネコノシタという名前は、葉の表面にある細かい毛が密生していることで生まれる独特のザラザラとした感触が、猫の舌の感触に非常に似ていることに由来します。
    猫の舌は、獲物の肉を骨からこそぎ落とすために、上向きに生えた多数の小さなトゲ(糸状乳頭)があるため、非常にザラザラしています。
    ネコノシタの葉の表面のザラザラ感は、この猫の舌の触感にたとえられ、それがそのまま植物の名前になりました。

ネコノシタ - Wikipedia

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/31/Wedelia_prostrata.JPG

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d9/Wedelia_prostrata_%28leaf%29.JPG

 

ネコノチチ(猫の乳):

  • 特徴:ムラサキ科。
  • 命名の由来:果実の形が猫の乳に似ていることから。

ネコノヒゲ(猫の髭):

  • 特徴:ネコノヒゲ(猫の髭、学名: Orthosiphon aristatus)は、シソ科オルトシフォン属の植物です。東南アジアやオーストラリアが原産で、日本でも観賞用やハーブとして栽培されています。
    • 花: 白や薄紫色の小さな花をたくさん咲かせます。この花から、花の中心部から長く突き出た雄しべと雌しべが伸びるのが最大の特徴です。
    • 雄しべと雌しべ: 雄しべと雌しべが非常に長く、くるんと曲がって垂れ下がる姿は、まるで猫のひげのように見えます。これが和名の由来にもなっています。
    • 草姿: 草丈は50cm〜1mほどに生長し、夏から秋にかけて開花します。
    • ハーブ: 腎臓の働きを助ける作用があるとされ、ハーブティーとして利用されることがあります。英名では「ジャワティー」と呼ばれます。
  • 命名の由来:「ネコノヒゲ(猫の髭)」という和名は、その特徴的な花の形に由来します。
    • 花の中心部から長く伸び、優雅に弧を描く雄しべと雌しべの姿が、猫のひげにそっくりであることから名付けられました。
    • また、学名の Orthosiphon も同様に、ギリシャ語の「orthos(まっすぐな)」と「siphon(管)」を組み合わせたもので、花冠の筒がまっすぐであることに由来します。

ネコノメソウ(猫の目草):

  • 特徴:ユキノシタ科。
  • 命名の由来:熟した果実が裂けて種子が見える様子が猫の目に似ていることから。早春に咲く花が終わったあとの果実が、熟すと裂けて中から種子が現れます。その様子が、夜行性のネコの目が光って見えるように見えることに由来すると言われています。

ネコハギ(猫萩):

  • 特徴:マメ科。
  • 命名の由来:花が猫の毛のように柔らかいことに由来するとも言われる。

ネコヤナギ(猫柳):

  • 特徴:ヤナギ科。
  • 命名の由来:芽吹いたばかりの芽が猫の毛のようにふわふわしていることから。

ブラックキャット(黒猫):

  • 特徴:ブラックキャット(黒猫、学名: Tacca chantrieri)は、ヒガンバナ科タシロイモ属の植物です。そのユニークで印象的な姿から、観葉植物として人気があります。
    • 花: 花の中心に黒い猫の顔のような形をした大きな花苞(かほう)を持ちます。この花苞は、その名前の由来にもなっています。
    • ヒゲ: 花の中心部から、猫のヒゲのように細長い糸状のものが何本も垂れ下がります。
    • 葉: 葉は大きく光沢があり、濃い緑色をしています。
    • 生育環境: 熱帯アジアが原産で、高温多湿の環境を好みます。寒さには弱いため、日本では温室や室内で育てることが多いです。
  • 命名の由来:ブラックキャットという名前は、その独特な花の姿から名付けられました。
    • ブラック(黒): 花の中心部にある花苞が、光沢のある黒色をしていることに由来します。
    • キャット(猫): この黒い花苞が、猫の顔のように見えることから「キャット」という名前がつけられました。

このように、ブラックキャットという名前は、その花が持つ黒い色と、猫の顔を連想させる形から、非常に直感的に名付けられたものです。

ブルーキャッツアイ:

  • 特徴:「ブルーキャッツアイ」は、その魅力的な花姿から名付けられた植物で、正式な学名は Otacanthus caeruleus(オタカンサス カエルレウス)といいます。以前はゴマノハグサ科に分類されていましたが、現在はオオバコ科とされています。ブラジル南部原産の多年草です。
    • 草丈と葉: 草丈は50〜80cmほどに成長し、葉は卵形で、茎に左右対称に(対生で)つきます。
    • 花:主な開花期は秋(9月~12月頃)ですが、暖かい温室などでは夏から咲き始めることもあり、初夏から秋にかけて鉢花として流通します。適切な管理をすれば、春にも開花を楽しむことができます。
    • 花は青紫色で、唇形(上下に開く2枚の花びら)をしています。特に特徴的なのは、花の中心部分が白くなっている点です。この青と白のコントラストが、まるでパッチリと開いた猫の青い目に見えることから、「ブルーキャッツアイ」という名前が付けられました。
    • 「ブラジリアン・スナップドラゴン」という別名もあります。これは、キンギョソウ(スナップドラゴン)に花の形が似ていることと、原産地がブラジルであることに由来します。
    • 耐寒性: 半耐寒性で、霜に当たると葉は枯れてしまいますが、根が凍らなければ春に復活します。冬越しは、霜の当たらない室内に入れるのが安心です。耐寒温度はおよそ0℃〜5℃とされています。
    • 香り: 葉や茎には独特の香りがあり、ハーブとしても扱われることがありますが、食用ではありません。
    • 栽培: 日当たりを好み、水はけの良い用土で育てます。過湿や多肥を嫌うため、水のやりすぎには注意が必要です。
  • 命名の由来:「ブルーキャッツアイ」という名前は、その花の色と形が猫の目を連想させることに由来しています。
    • 「ブルー」: 花の鮮やかな青紫色を表しています。
    • 「キャッツアイ」: 上下に開いた青い花びらと、その中心にある白い斑点が、まるで猫の青い瞳のように見えることから名付けられました。

このように、見た目の特徴がそのまま植物名になった、非常に分かりやすく可愛らしい名前といえるでしょう。

 

ノミ(蚤)

ノミノフスマ(蚤の衾):

  • 特徴:ノミノフスマ(蚤の衾)は、ナデシコ科の越年草で、水田のあぜ道や湿った草地に生育する小さな植物です。
    • 草姿と生育環境: ハコベの仲間で、全体に繊細でか細い印象です。高さは15〜25cmほどになり、茎は下部で少し地面を這いますが、やがて立ち上がって成長します。
    • 葉: 葉は細長い楕円形で、茎に柄がなく、向かい合って(対生して)つきます。葉の長さは1〜2cmほどと非常に小さいです。
    • 花: 春から初夏にかけて、茎の先端に白い小さな花をつけます。花弁は5枚ですが、それぞれが根元近くまで深く切れ込んでいるため、一見すると10枚の花弁があるように見えます。
  • 命名の由来:「ノミノフスマ(蚤の衾)」という名前は、その植物の小ささに由来しています。
    • 蚤(ノミ): 非常に小さな昆虫であるノミを、小ささの象徴として用いています。
    • 衾(フスマ): 現代の「襖(ふすま)」ではなく、昔の言葉で「夜具(やぐ)」や「掛け布団」を意味します。
  • つまり、ノミノフスマは、「ノミが使うような小さな布団」という意味で名付けられました。その小さな葉を、ノミが身を寄せるのにちょうど良い布団に見立てた、昔の人のユーモアと観察眼が感じられる名前です。

ノミノツヅリ(蚤の綴り):

  • 特徴:ノミノツヅリ(蚤の綴り)は、ナデシコ科の越年草で、ノミノフスマとよく似た小さな植物です。
    • 草姿と生育環境: ノミノフスマに比べてもさらに小さく、草丈は5〜15cmほどにしかなりません。湿った水田のあぜ道や田んぼの周りなどでよく見られます。
    • 葉: 葉はノミノフスマよりも短く、小さな卵形で、向かい合ってつきます(対生)。
    • 花: 春から初夏にかけて、茎の先に白い小さな花をつけます。花弁は5枚ですが、それぞれが深く切れ込んでいるため、10枚の花弁があるように見えます。ノミノフスマの花とよく似ていますが、全体的にさらに小ぶりです。
  • 命名の由来:「ノミノツヅリ(蚤の綴り)」という名前も、ノミノフスマと同様に、その植物の小ささに由来しています。
    • 蚤(ノミ): 非常に小さな昆虫であるノミを、小ささの象徴として用いています。
    • 綴り(ツヅリ): 昔の言葉で「着物」や「衣服」を意味します。
    • つまり、ノミノツヅリは、「ノミが着るような小さな着物」という意味で名付けられました。その小さな葉を、ノミが身につけるのにちょうど良い衣服に見立てた、昔の人のユーモアと観察眼が感じられる名前です。

 

ハチ(蜂)

ジガバチソウ(似我蜂草):

  • 特徴:ジガバチソウは、ラン科クモキリソウ属の多年草で、山地の林の中にひっそりと生える小型のランです。
    • 姿: 草丈は10〜25cmほどと小さく、数枚の葉をつけます。
    • 葉: 茎の根元に2枚の大きな葉が対生し、卵形から楕円形をしています。
    • 花: 初夏になると、茎の先に緑色から紫褐色の小さな花をまばらにつけます。この花は、唇弁(しんべん)と呼ばれる花びらの一部が大きく広がり、中央がくぼんでいるのが特徴です。
  • 命名の由来:
    「ジガバチソウ(似我蜂草)」という名前は、花のかたちに由来しています。
    • この花は、下向きに咲く唇弁の形が、昆虫のジガバチ(似我蜂)が腹部を曲げている姿に似ていることから名付けられました。ジガバチは、狩りバチの一種で、細長くくびれた腰が特徴的です。
    • 「ソウ(草)」は草本植物であることに由来します。

 

ハエ(蠅)

ハエトリソウ(蠅捕草):

  • 特徴:学名 "Dionaea muscipula、モウセンゴケ科 (Droseraceae)。ハエトリソウは、その独特な捕虫方法から非常に有名な食虫植物です。
  • 命名の由来:ハエトリソウの和名である「ハエトリソウ(蠅捕草)」は、文字通りハエなどの虫を捕らえる植物であることに由来しています。また、「ハエジゴク(蠅地獄)」という別名もあります。
    • 英名では「Venus Flytrap(ヴィーナス フライトラップ)」と呼ばれています。この名前の由来は、ハエトリソウの葉の縁にあるトゲトゲした部分が、ローマ神話の愛と美の女神である「ヴィーナス(Venus)」のまつ毛に見立てられたこと、そして虫を捕らえる「罠(trap)」に例えられたことによると言われています。
    • 学名の "Dionaea muscipula" の属名 "Dionaea" も、ギリシャ神話の女神「ダイアナ(Diana)」に由来するとされています。

ハエドクソウ:

  • 特徴:ハエドクソウは、ハエドクソウ科の多年草で、日本では北海道から九州にかけて、山地の林内や林縁に自生しています。
    • 草姿と葉: 高さ30〜70cmに成長し、茎はまっすぐに立ち上がります。葉は対生し、卵円形で縁に粗いギザギザがあります。
    • 花: 7月から8月にかけて、茎の先端から細長い穂状の花序を伸ばします。5mmほどの小さな白または淡い紅色の唇形花をまばらにつけます。つぼみは上を向いていますが、開花すると横向きになり、果実になると下向きになります。
    • 果実: 萼に包まれた果実には、イノコヅチ(イノコヅチ科の植物)に似た、先が鉤状になったトゲがあり、これが動物の毛や衣服にくっついて種子を散布します。このため、「ひっつき虫」の一種として知られています。
    • 毒性: 全草に有毒成分(リグナンの一種であるフリマロリンなど)を含んでおり、誤って食べると嘔吐や腹痛などの中毒症状を引き起こします。
  • 命名の由来:「ハエドクソウ(蠅毒草)」という名前は、この植物がかつてハエの駆除に利用されていたことに由来します。
    具体的には、根を煮詰めた汁を紙に染み込ませてハエ取り紙を作ったり、ウジ虫退治に用いられたりしました。
    • この毒性がハエに対して効果があったため、その用途から「ハエ(蠅)」を「毒(ドク)」として利用する「草(ソウ)」、すなわちハエドクソウと名付けられました。また、「ハエトリソウ」という別名もあります。

 

ハト(鳩)

ハトムギ(鳩麦): 

  • 特徴:イネ科。ハトムギのこと。ハトが好んで食べる麦であることから。
    名前には「麦」とつきますが、植物学的にはコムギやオオムギなどの「麦」の仲間(イネ科イチゴツナギ亜科)とは異なり、トウモロコシやモロコシに近縁な植物。
    同じジュズダマ属のジュズダマ(数珠玉、Coix lacryma-jobi)の栽培変種とされています。
  • 命名の由来:ハトムギの名前の由来にはいくつかの説があります。
    • 鳩が好んで食べるから: 最も有力な説とされています。ハトムギの実を鳥、特に鳩が好んで食べることから「鳩麦」と名付けられたと言われています。牧野富太郎博士もこの説を紹介しています。
    • 実の形が鳩に似ているから: 丸い実の形が鳩に似ているという説もあります。
      収穫量が多いから(八斗麦): 昔、一粒から「八斗(約144リットル)」もの麦が収穫できた、あるいは収穫量が多かったことから「八斗麦」と転じて「ハトムギ」になったという説もあります。

 

ハブ

ハブカズラ(ハブ葛):

  • 特徴:ハブカズラ(ハブ葛)は、サトイモ科のつる性植物で、観葉植物としてよく知られるポトス(オウゴンカズラ)の和名です。ポトスという名前で広く流通しているため、ハブカズラという和名はあまり一般的ではありません。
    • 葉: 鮮やかな緑色で光沢のあるハート形の葉をつけ、品種によっては黄色や白色の斑が入ります。
    • 茎: 他の植物や壁などに絡みつきながら長く伸びる、つる性の茎を持っています。
    • 根: 茎の節から気根(きこん)を出し、それを使って他のものに張り付いて成長します。
    • 生育環境: 熱帯アジアや太平洋諸島が原産で、耐陰性があり比較的育てやすいため、室内での栽培に適しています。
  • 命名の由来:ハブカズラという名前は、沖縄の方言に由来するという説が有力です。
    • ハブ(ハブ): 葉が大きくなると、その形や模様が毒蛇であるハブの頭や皮に似ていることから名付けられたという説があります。
    • カズラ(葛): つる性で、他のものに絡みつきながら伸びる様子が葛(かずら)に似ていることから名付けられました。
    • また、沖縄ではハブカズラが「ハブが這った跡」に生えると信じられていた、という説も残っています。

この名前は、その見た目や生育環境に対する人々の印象が、そのまま植物名になったと考えられます。

 

ヒツジ(羊)

ヒツジシダ(羊歯):

  • 特徴:ヒツジシダ(羊歯、学名: Cibotium barometz)は、タカワラビ科の大型のシダ植物で、沖縄や台湾、中国南部、東南アジアに広く分布しています。観葉植物としても人気があります。
    • 大型のシダ: 葉は非常に大きく、2~3メートルに達することもあります。葉の形は細かく裂けており、シダらしい繊細な姿をしています。
    • 根茎の毛: 地表を這うように伸びる根茎の若い部分が、金色の羊毛のような軟毛で密に覆われているのが最大の特徴です。この毛は、ふわふわとしていて、まるで動物の毛皮のように見えます。
    • 利用: この根茎の毛は、漢方薬や止血剤として利用されてきました。また、この毛むくじゃらの根茎を加工して、ヒツジの形をしたおもちゃや民芸品が作られることがあります。
  • 命名の由来:ヒツジシダという和名や、英名の「Scythian lamb」(スキタイの羊)は、その特徴的な根茎の姿と、中世ヨーロッパの伝説に由来しています。
    • 伝説の「ヒツジのなる木」:
      中世のヨーロッパでは、中央アジアの遊牧民スキタイの地に、「タタール・ラム」(Tartarean lamb)と呼ばれる、ヒツジの毛皮をまとったヒツジがなる木があるという伝説が信じられていました。
    • ヒツジに似た根茎:
      ヒツジシダの根茎を加工して作られたヒツジの形をした工芸品がヨーロッパに伝えられた際、この根茎が伝説の「ヒツジのなる木」の正体だと信じられたといわれています。その根茎が、ふわふわした毛に覆われていてヒツジのように見えることから、「ヒツジシダ」という名前がつけられたのです。

このように、ヒツジシダという名前は、その独特な根茎の見た目と、中世の伝説が結びついて生まれた、とてもロマンあふれる由来を持っています。

ヒツジグサ(未草):

  • 特徴:ヒツジグサ(未草、学名: Nymphaea tetragona)は、スイレン科スイレン属の多年生水草です。日本や東アジアの池や沼に自生しています。
    • 花: 直径5cmほどの、白くて可憐な花を咲かせます。花は朝に開き、昼には閉じる性質があります。
    • 葉: 葉は円形で、水面に浮かびます。葉の付け根には深い切れ込みがあり、ヒツジグサの葉の形の特徴となっています。
    • 生育場所: 浅い池や沼、湿地などに生息します。
  • 命名の由来:「ヒツジグサ(未草)」という和名は、花が咲く時間帯に由来します。
    • 昔の時刻を表す十二支(じゅうにし)では、「未(ひつじ)の刻」は午後2時頃を指します。この植物の花が、ちょうどその未の刻に開花することから、「未草」と名付けられました。

 

ヒトデ

ヒトデカズラ:

  • 特徴:ヒトデカズラは、サトイモ科の植物で、主に「セローム」という名前で観葉植物として流通しています。正式な学名は Thaumatophyllum bipinnatifidum です。
    • 葉: 和名の由来にもなっているように、葉が大きく深く切れ込んでおり、その形が海の生物であるヒトデに似ています。成長するにつれて葉の切れ込みがよりはっきりと現れます。大きなものでは葉の幅が1mを超えることもあります。
    • 茎: 茎は直立して太くなり、木質化します。葉が落ちた跡が円形の斑紋として残り、そこから太い気根(きこん)を伸ばすのが特徴です。
    • 成長: 幼い株のうちは葉にあまり切れ込みがなく丸い形をしていますが、成長するにつれて葉の形が変化し、独特の姿になります。
  • 命名の由来:「ヒトデカズラ(海星葛)」という和名は、その特徴的な葉の形に由来します。
    • ヒトデ(海星): 葉に深く入る切れ込みが、ヒトデの腕のように見えることから「ヒトデ」と名付けられました。
    • カズラ(葛): 「葛」は、一般的にツル性の植物につけられることが多い名前ですが、この植物は他の木に絡まって成長する性質を持つことや、つる性のフィロデンドロン属の仲間であることから、この名がつけられたと考えられます。
    • また、属名の「フィロデンドロン」は、ギリシャ語の「phileo(愛する)」と「dendron(木)」が組み合わさったもので、「木を愛する」という意味を持ちます。これは、この植物が自生地で他の木に寄り添うようにして成長することに由来しています。

 

ヒョウ(豹)

ヒョウモンラン(豹紋蘭):

  • 特徴:ヒョウモンラン(豹紋蘭、学名: Vanda tricolor)は、インドネシアやフィリピンなどの熱帯アジア原産のラン科植物です。和名と学名には、それぞれその特徴がよく表れています。
    • 花: 黄色や白、紫などの花を咲かせ、花びらにはヒョウ柄のような特徴的な斑点模様があります。これが和名の由来にもなっています。花は長く咲き、とても良い香りを放ちます。
    • 葉と茎: 葉は肉厚で硬く、茎は長く伸びて木に着生する性質があります。
    • 着生植物: 樹木などに根を張り巡らせて生活する着生植物であり、空気中の水分を吸収する「気根」を持っています。
    • 栽培: 寒さには弱いため、日本では温室などで栽培されることが一般的です。
  • 命名の由来:
    • ヒョウモンラン(豹紋蘭): この和名は、花びらにある豹(ひょう)の斑紋(はんもん)のような模様に由来します。その特徴的な模様から、一目で何の種類か分かるように名付けられました。
    • Vanda tricolor: 学名にもその特徴が表れています。
      • Vanda(バンダ): 属名の「バンダ」は、サンスクリット語で「着生する」を意味する言葉に由来します。
      • tricolor(トリコロル)*: 種小名の「トリコロル」は、「3色の」という意味です。この植物が、黄色、赤、茶色など複数の色を持つ花を咲かせることにちなんでいます。

このように、ヒョウモンランは、その花びらの模様と、複数の色を持つ特徴から、分かりやすい名前がつけられました。

 

ヒヨドリ(鵯)

サワヒヨドリ:

  • 特徴:サワヒヨドリ(沢鵯)は、キク科ヒヨドリバナ属の多年草で、その特徴と名前の由来は以下の通りです。
    • 生育場所: 日当たりの良い湿地や湿った草地を好む。
    • 草丈: 40〜90cm程度。ヒヨドリバナよりやや低い。
    • 葉: 葉柄がなく、披針形(細長い槍のような形)で、縁に不規則なギザギザがある。3本の葉脈が目立つ。葉が3つに深く裂けて、輪生しているように見えることもある(ミツバサワヒヨドリと呼ばれたこともある)。
    • 花: 8月から10月にかけて、茎の上部に淡い紅紫色の小さな筒状の花を多数咲かせる。花の色には濃淡があり、白いものも見られる。花柱が長く突き出ているのが特徴。
    • その他: フジバカマと似ているが、サワヒヨドリには葉に香りがないのが一般的。
  • 名前(和名)の由来:「サワヒヨドリ」という名前は、その特徴的な生育場所と開花時期に由来するとされています。
    • 「サワ(沢)」: 湿地や沢沿いなど、水気の多い場所に生えることから。
    • 「ヒヨドリ」: ヒヨドリが山から人里に下りてきて鳴き始める頃(秋)に花を咲かせることから。

つまり、「沢に生えるヒヨドリバナ」という意味で名付けられたと考えられています。

ヒヨドリジョウゴ(鵯上戸):

  • 特徴:ヒヨドリジョウゴ(鵯上戸、学名: Solanum lyratum)は、ナス科ナス属のつる性多年草で、日本をはじめ東アジアに広く分布しています。
    • 葉: 葉は卵形から槍のような形をしており、深く切れ込んでいるものが多いです。
    • 花: 夏から秋にかけて、直径1cmほどの白い小さな花を咲かせます。花の中心部は黄色い星のような形をしており、ナスやジャガイモの花に似ています。
    • 果実: 花の後に、直径1cm弱の球形で光沢のある赤い実をつけます。この実は毒性があるため、食用にはできません。
  • 命名の由来:「ヒヨドリジョウゴ(鵯上戸)」というユニークな和名は、その果実と鳥のヒヨドリの関係に由来します。
    • ヒヨドリ(鵯): 冬になると、この赤い実をヒヨドリが好んで食べに来ることから、「ヒヨドリ」が名前に含まれました。
    • ジョウゴ(上戸): 「上戸」は、お酒が好きな人のことを指す言葉です。ヒヨドリがこの赤い実をまるで酒を好む人のように食べている様子を擬人化して、「上戸」という言葉が使われました。

つまり、「ヒヨドリが好んで食べる実をつける植物」という意味で、ヒヨドリジョウゴと名付けられたのです。

ただし、この実には毒性があるため、人間が口にすることはできません。

ヒヨドリバナ(鵯花):

  • 特徴:ヒヨドリバナ(鵯花、学名: Eupatorium fortunei)は、キク科ヒヨドリバナ属の多年草で、日本全国の山野に広く自生しています。
    • 草姿(そうし): 夏から秋にかけて、高さ1mから2mほどの茎を伸ばし、その先に淡い紫紅色や白色の小さな花を多数咲かせます。
    • 花: 花はアザミに似た形をしており、筒状の花が小さなかたまりになって咲き、それが集まって全体として大きな房状になります。
    • 葉: 葉は3枚ずつ輪生(りんせい)するものが多く、縁にはギザギザとした鋸歯があります。
    • 香り: 茎葉には独特の香りがあります。
  • 命名の由来:ヒヨドリバナという名前は、その花が咲く時期と、鳥のヒヨドリの関係に由来しています。
    • ヒヨドリ(鵯): 花が咲き始める時期が、ちょうどヒヨドリが鳴き始める頃であることから、「ヒヨドリ」が名前に含まれました。

このように、ヒヨドリバナは、花そのものの形や色ではなく、その開花時期にちなんで名付けられた植物です。

 

ブタ(豚)

ブタクサ(豚草):

  • 特徴:キク科。北アメリカ原産の帰化植物で、明治時代に日本に入ってきました。花粉症の原因植物としても有名です。
  • 命名の由来:ブタが好んで食べる、またはブタのように繁殖力が強いことから。
    ブタが好んで食べる草であるという説と、繁殖力が強く荒地でも育つ様子が、ブタのように貪欲であると見なされた説があります。

ブタナ(豚菜):

  • 特徴:ブタナ(豚菜、学名: Hypochaeris radicata)は、キク科エゾコウゾリナ属の多年草です。ヨーロッパ原産で、日本には明治時代に渡来した帰化植物です。
    • 草姿(そうし): タンポポによく似た姿をしています。根元から放射状に葉を広げ、葉はタンポポよりも細く、深く切れ込みが入っています。
    • 花: 春から秋にかけて、黄色い花を咲かせます。花はタンポポよりも少し小さめで、茎が多数枝分かれして、それぞれの先端に花をつけます。
    • 茎: 花茎は中が空洞ではなく、しっかり詰まっています。また、花茎にはまばらに毛が生えています。
    • 別名: タンポポに似ていることから、セイヨウタンポポモドキという別名もあります。
  • 命名の由来:「ブタナ(豚菜)」という名前は、その葉をブタの飼料として用いたことに由来すると考えられています。
    • ブタ(豚): ヨーロッパでは、この植物の葉を豚が好んで食べることから、「豚の草」や「豚の菜」として知られていました。
    • ナ(菜): 食用とされる葉菜を意味します。
    • このように、ブタナは「ブタが食べる菜っ葉」という意味で名付けられました。また、花の形がタンポポに似ていて、タンポポよりも一回り小さいことから、フランス語で「ブタのサラダ」を意味する「salade de porc」という別名もあります。

 

ヘビ(蛇)

ジャノヒゲ(蛇の髭)、別名リュウノヒゲ:

  • 特徴:ジャノヒゲ(蛇の髭)、別名リュウノヒゲ(竜の髭、学名:Ophiopogon japonicus)は、キジカクシ科ジャノヒゲ属の常緑多年草です。日本や朝鮮半島、中国に自生しています。
    • 草姿: 地上茎はなく、細長い葉が株元から放射状に生えて密生し、地面を覆うように広がります。草丈は10~20cm程度で、地を這うように生えるため、グランドカバーとして広く利用されています。
    • 葉: 細くて線状の葉は、一年中緑色を保ち、寒さや暑さ、日陰にも強く、手入れがほとんど不要なため、非常に丈夫な植物として知られています。
    • 花: 夏(7~8月頃)に、葉の間から細い花茎を伸ばし、淡い紫色や白色の小さな花をまばらにつけます。
    • 実: 花が終わると、初冬にかけて光沢のある濃い藍色や瑠璃色の丸い種子をつけます。この種子は「ハズミ玉」とも呼ばれ、固い地面に投げつけるとよく弾むという特徴があります。
  • 命名の由来:「ジャノヒゲ」と「リュウノヒゲ」という二つの名前の由来には、いくつかの説があります。
    • リュウノヒゲ(竜の髭): 細く長く伸びた葉の姿が、伝説上の生き物である「竜(龍)」の口ひげに似ていることから名付けられました。
    • ジャノヒゲ(蛇の髭): これもまた、細長い葉の姿が「蛇」のひげに似ているという説があります。
    • ジャノヒゲ(尉の髭): 「ジャノヒゲ」は元々「ジョウノヒゲ(尉の髭)」が変化したものという説が有力です。能楽で使われる、あごに長いひげをたくわえた老人の面「尉(じょう)」に、葉の姿が似ていることから名付けられたとされています。
    • この植物の根には、肥大した部分があり、これを乾燥させたものは生薬の「麦門冬(ばくもんどう)」として、咳止めなどの漢方薬に用いられます。

ジャノメエリカ(蛇の目エリカ):

  • 特徴:ジャノメエリカ(蛇の目エリカ、学名:Erica canaliculata)は、南アフリカ原産のツツジ科エリカ属の常緑低木です。
    • 樹形: 樹高は1~4mほどになり、よく枝分かれしてこんもりとした樹形になります。
    • 葉: 細かい針のような葉が密生し、常緑であるため一年中緑を楽しめます。
    • 花: 晩秋から春にかけて(日本では主に12月から4月頃)、枝いっぱいに小さな釣り鐘状の可愛らしい花を咲かせます。花の色はピンク色や赤紫色が一般的です。
    • 栽培: 寒さに比較的強く、関東以西の温暖な地域であれば庭植えで育てることもできます。丈夫で育てやすいことから、庭木や鉢植えとして人気があります。
  • 命名の由来:「ジャノメエリカ」という名前は、その花の特徴的な模様に由来します。
    • ジャノメ(蛇の目): 花冠(花びら)から突き出して見える、雄しべの先端にある黒紫色の葯(やく、花粉が入っている袋)が、日本の伝統的な模様である「蛇の目模様」のように見えることから名付けられました。
    • エリカ: ツツジ科エリカ属の植物の総称で、学名である Erica に由来します。
    • この特徴から、別名で「クロシベエリカ(黒蕊エリカ)」とも呼ばれることがあります。「クロシベ」は、黒い雄しべの葯を指しています。

スネークバイン:

  • 特徴:「スネークバイン」という名前で呼ばれる植物は、いくつかの種類があります。ここでは、特に一般的にその名前で知られている植物と、その命名の由来について解説します。
    • 一般的なスネークバイン
      「スネークバイン」という名前は、英語の「snake vine」をそのままカタカナにしたものです。この名前で呼ばれる植物は複数ありますが、ここでは代表的なものを挙げます。
    • ムベ (郁子、学名:Stauntonia hexaphylla):アケビ科ムベ属のつる植物で、日本原産です。常緑で、晩春から初夏にかけて白い小さな花を咲かせ、秋には楕円形の赤い果実をつけます。
    • アリストロキア (ウマノスズクサ科):南アメリカ原産の熱帯性のつる植物です。ユニークな形の花を咲かせることで知られています。
  • 命名の由来:これらの植物が「スネークバイン」と呼ばれる理由は、いずれもつる性植物であることに由来します。長く伸びて木や壁に絡みつく様子が、まるでヘビ(snake)が巻きついているように見えることから、「snake vine(ヘビのつる)」という名前がつけられました。
    • 別の意味合いで「スネーク」と呼ばれる植物
      「スネーク」の名を持つ植物は他にもあります。
    • サンスベリア (Sansevieria):別名「スネークプラント(snake plant)」と呼ばれます。これは、葉にヘビのような縞模様があること、そして葉が細長く、ヘビが鎌首をもたげたような形に見えることに由来します。日本では「トラノオ(虎の尾)」とも呼ばれます。
  • このように、「スネークバイン」という名前は、植物のつるがヘビのように巻きつく様子から、また「スネークプラント」は葉の形や模様から、ヘビという連想で名付けられています。

ヘビイチゴ(蛇苺):

  • 特徴:ヘビイチゴ(蛇苺)は、バラ科の多年草で、春に黄色い花を咲かせ、初夏に赤い果実をつける植物です。道端や野原などでよく見かける身近な植物ですが、その名前の由来にはいくつかの説があります。
    • 草姿と葉: 地面を這うように茎を伸ばし、節から根を出して増えていきます。葉は3枚の小葉からなる複葉で、縁には鋸歯(ギザギザ)があります。
    • 花: 4月から6月にかけて、葉の付け根から伸びた柄の先に、直径1.5cmほどの黄色い5弁花を咲かせます。
    • 果実: 花が終わると、球形からやや楕円形の果実ができ、6月から7月頃に鮮やかな赤色に熟します。一見するとおいしそうなイチゴのように見えますが、食べてみると味がほとんどなく、おいしくありません。
    • 毒性: ヘビイチゴの果実に毒はありません。ただし、食用にしてもおいしくないため、一般的には食べられることはありません。
  • 命名の由来:「ヘビイチゴ」という名前は、その果実が食べられないことや、ヘビにまつわる言い伝えから名付けられたと考えられています。
    • 食べられないイチゴ説: 「毒イチゴ」や「食べられないイチゴ」という意味で、毒があるかのように名付けられたという説。実際には毒はありませんが、おいしくないため、人間が食べないイチゴとして、ヘビが食べるイチゴ、あるいはヘビが食べているような不気味なイチゴと見なされた可能性があります。
    • ヘビが出そうな場所に生える説: ヘビが好んでいそうな、じめじめした薄暗い場所に生育していることから、ヘビと結びつけられたという説。実際にヘビイチゴの群生地でヘビが休んでいる姿が見られることもあります。
    • ヘビが食べる説: ヘビがこのイチゴを食べる、あるいはヘビイチゴの果実の色がヘビの頭部や腹部に似ていることから名付けられたという説。
    • これらの説のうち、「ヘビが食べるような、人間が食べないイチゴ」という意味合いが最も有力な由来として知られています。
ヘビイチゴ 苗 5株

ヘビイチゴ 苗 5株

  • ノーブランド品
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ヘビノネゴザ(蛇の寝茣蓙):

  • 特徴:シダ植物。
  • 命名の由来:葉が地面に広がり、ヘビが寝るのにちょうど良い筵のように見えることから。湿地に生え、葉が地面に広がる様子が、ヘビが寝るためのゴザのように見えることに由来すると言われています。

ヘビノボラズ(蛇不登、蛇上らず):

  • 特徴:ヘビノボラズ(学名:Berberis sieboldii)は、メギ科メギ属の落葉性低木で、その名の通り鋭い刺を持つのが特徴です。
  • 命名の由来: 鋭いトゲが茎全体に密生しており、蛇でさえもこの木には登ることができないだろう、という意味合いで名付けられました。非常に鋭い棘があり、ヘビも登れないほどであることから。
  • 別名:
    • トリトマラズ(鳥不止): ヘビノボラズと同様に、鋭い刺のために鳥も止まれないという意味で呼ばれることがあります。
    • コガネエンジュ(黄金槐)

 

ホタル(蛍)

ホタルノキ(蛍の木):

  • 特徴:ホタルノキ(蛍の木、学名: Dichrostachys cinerea)は、マメ科ホタルノキ属の落葉低木です。熱帯アフリカやアジア、オーストラリアに広く分布しています。
    • 花: この植物の最大の特徴は、そのユニークな花です。葉の付け根から、円柱状の花穂が垂れ下がるように咲きます。花穂の上半分はピンク色から白、下半分は黄色い色をしており、まるで花火のようにも見えます。
    • 葉: ネムノキに似た繊細な二回羽状複葉(にかいうじょうふくよう)の葉を持ちます。夜になると葉を閉じる就眠運動をします。
    • トゲ: 枝には鋭いトゲがあり、注意が必要です。
    • 用途: 美しい花を鑑賞するために栽培されるほか、原産地では材木としても利用されます。
  • 命名の由来:ホタルノキという和名は、その特徴的な花の姿から名付けられました。
    • ホタル(蛍): 花穂の上部がピンク色や白、下部が黄色という、まるで発光しているかのような花の様子が、暗闇で光るホタルの光に例えられました。花穂が幾つも垂れ下がる姿は、ホタルが群れで飛んでいるようにも見えます。
    • また、学名の Dichrostachys は、ギリシャ語の「dis(二つの)」と「chroa(色)」と「stachys(穂)」を組み合わせたもので、「二色の穂」という意味になります。これも、ピンクと黄色の二色に分かれた花穂の特徴をよく表しています。
ホタルの木

ホタルの木

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ホタルブクロ(蛍袋):

  • 特徴:ホタルブクロ(蛍袋、学名: Campanula punctata)は、キキョウ科ホタルブクロ属の多年草で、日本各地の山野に自生しています。
    • 花: 梅雨の時期に、茎の先に袋状または釣り鐘状の可愛らしい花を咲かせます。花の色は主に薄紫色や白色で、花の内側には紫色の斑点模様があります。
    • 草姿: 草丈は40〜80cmほどになり、茎はまっすぐ上に伸びます。葉は卵形で、根元につく葉は柄が長いのが特徴です。
    • 毒性: 有毒ではありません。
  • 命名の由来:ホタルブクロという名前は、その花の形と、古くからの子供たちの遊びに由来しています。
    • ホタル(蛍): 花の形が、まるで提灯(ちょうちん)や袋のようになっているため、捕まえたホタルをその中に入れて遊んだという説があります。花の中でホタルが光る様子から、この名前がつけられたと考えられています。
    • フクロ(袋): 釣り鐘状の花の形が、袋を連想させることから名付けられました。
    • また、地域によっては「提灯花(チョウチンバナ)」や「風鈴草(フウリンソウ)」など、花の形にちなんだ別名で呼ばれることもあります。

ミヤマホタルカズラ(深山蛍葛):

  • 特徴:ミヤマホタルカズラ(深山蛍葛、学名: Lithodora diffusa)は、ムラサキ科の常緑小低木で、ヨーロッパ南西部が原産の植物です。園芸品種として「リソドラ」という名前でも広く知られています。
    • 花: 春から初夏にかけて、星形をした鮮やかな青紫色の小さな花を咲かせます。この青い花の色は非常に美しく、庭や鉢植えで人気があります。
    • 草姿(そうし): 茎は地面を這うように広がり、草丈はあまり高くならず、横に広がる性質があります。
    • 葉: 細くて小さな葉が密生し、常緑なので一年を通して葉を楽しむことができます。
  • 命名の由来:「ミヤマホタルカズラ」という和名は、その花の美しさと植物の性質から名付けられました。
    • ミヤマ(深山): 日本に自生するホタルカズラ(学名: Glechoma hederacea var. grandis)に比べて、より深山に生えるものとして、または、この植物が持つ高山植物のような雰囲気から「深山」という言葉が冠せられたと考えられます。
    • ホタル(蛍): 青紫色の花が、暗闇の中でぼんやりと光るホタルの光を連想させることから名付けられました。
    • カズラ(葛): 茎が地面を這うように広がる性質が、ツル性の植物である「カズラ」に似ていることに由来します。

この植物は、日本の山野に自生するホタルカズラとは異なる種類ですが、その見た目の美しさや広がる性質が似ていることから、この和名がつけられたとされています。

 

ホトトギス(不如帰)

ホトトギス:

  • ホトトギスは、ユリ科ホトトギス属の多年草です。山地の木陰や傾斜地などに自生し、秋の茶花として愛されています。
    • 草姿: 高さ40〜80cmほどになり、茎は弓状に曲がりながら伸びます。
    • 葉: 茎に互い違いにつく葉は、楕円形で、表面には細かい毛が生えています。
    • 花: 夏から秋(8月〜10月頃)に、葉の付け根に白い花を数個咲かせます。花弁は6枚で、大きく反り返り、内側に紫色の斑点が密に入っているのが最大の特徴です。この斑点が、ホトトギスの名前の由来に関係しています。
  • 名称の由来:「ホトトギス(杜鵑草)」という名前は、その花の斑点が、鳥のホトトギスの胸から腹部にかけて見られる斑紋に似ていることに由来します。
    • ホトトギスという鳥は、全体が灰色ですが、腹部にはっきりとした黒い斑点があります。この植物の花の内側にある紫色の斑点が、その鳥の斑紋とそっくりであることから、この名がつけられました。
    • ホトトギスという植物は、ユリの仲間(ユリ科)であり、その花の模様が鳥のホトトギスに似ていることから名付けられた。さらに、ホトトギスにはヤマジノホトトギスなど、多くの種類があります。

 

マムシ(蝮)

マムシグサ(蝮草):

  • 特徴:マムシグサ(蝮草、学名: Arisaema serratum)は、サトイモ科テンナンショウ属の多年草で、日本全国の山地や林の中に自生しています。
    • ユニークな花: マムシグサの最も大きな特徴は、その独特な花です。一般的に花と呼ばれる部分は、仏炎苞(ぶつえんほう)とよばれる大きな筒状の苞葉で、その中に花序(かじょ)が隠れています。この仏炎苞の色や模様が、ヘビのような独特な模様をしています。
    • 偽茎(ぎけい): 茎のように見える部分は、葉の葉柄が重なってできた「偽茎」で、ここにもマムシのような斑点模様が現れることがあります。
    • 雌雄異株(しゆういしゅ): マムシグサは、株の栄養状態によって性別が変わるという珍しい性質を持っています。栄養状態の良い大きな株は雌花をつけ、栄養状態の悪い小さな株は雄花をつけます。
    • 有毒: 全草にシュウ酸カルシウムの結晶が含まれており、強い毒性があります。口にすると口内や喉が激しく痺れるため、絶対に口にしてはいけません。

命名の由来:「マムシグサ」という名前は、その茎や仏炎苞に見られる模様が、毒蛇のマムシの体の模様に似ていることから名付けられました。危険な印象を与える見た目が、植物の名前としてそのまま採用された、非常に分かりやすい由来を持っています。

 

ミッキーマウス

ミッキーマウスプラント:

  • 特徴:ミッキーマウスプラント(Mickey Mouse Plant、学名: Ochna serrulata)は、オクナ科オクナ属の常緑低木です。熱帯アフリカが原産で、その可愛らしい姿から観葉植物として人気があります。
    • 花: 春に、黄色い5枚の花びらを持つ小さな花を咲かせます。花自体はあまり目立ちません。
    • 実: 花が散った後に、赤い萼(がく)が残り、その上に緑色の小さな実が数個つきます。
    • 変化: この緑色の実が熟して黒くなると、赤い萼に黒い実がまるでミッキーマウスの顔のように見えるようになります。この状態が、この植物の最大の特徴であり、名前の由来にもなっています。
  • 命名の由来「ミッキーマウスプラント」という名前は、その果実が熟した姿が、ディズニーの人気キャラクターであるミッキーマウスにそっくりであることに由来します。
    • まず、黄色い花が咲き終わると、花びらは散り、鮮やかな赤い萼が残ります。この赤い萼がミッキーマウスの顔の輪郭になります。
    • 次に、その萼の上に、数個の緑色の実ができます。
    • この実が熟して黒くなると、赤い萼の上に黒い実が並んだ様子が、ちょうどミッキーマウスの「赤い顔」に「黒い耳」が乗っているように見えるのです。

このように、偶然できたその可愛らしい姿が、世界的に有名なキャラクターに似ていたことから、この愛称が定着しました。

 

ミミズ(蚯蚓)

ミミズバイ(蚯蚓灰):

  • 特徴:ミミズバイは、ハイノキ科ミミズバイ属の常緑低木で、本州の関東地方以西から九州、沖縄にかけての、温暖な山地に自生します。
    • 姿: 高さ2〜5メートルほどになり、枝がよく分かれます。樹皮は灰褐色で、若い枝は赤みを帯びています。
    • 葉: 葉は楕円形で、先端が少し尖っており、縁には細かい鋸歯(きょし)があります。葉の表面には光沢があり、革のような質感です。
    • 花: 5〜6月頃、葉の付け根から小さな白い花をつけます。花は4枚の花弁を持ち、下向きに咲くのが特徴です。
    • 果実: 花の後にできる果実は、直径1cmほどの球形で、秋に熟すと褐色になります。この果実が、名前の由来に関係しています。
  • 命名の由来:「ミミズバイ(蚯蚓灰)」という名前は、果実の様子に由来しています。
    • 果実が熟すと、不規則に裂けて、中から黒い種子が出てきます。この種子の周りの果肉が、動物のミミズ(蚯蚓)が這った跡、あるいはミミズの糞のように見えることから名付けられました。
    • また、植物学者の牧野富太郎は、果実がミミズの糞に似ていることに加えて、近縁種であるハイノキ科の「ハイノキ(灰の木)」に似ていることから、ミミズ+ハイノキで「ミミズバイ」となった、という説も唱えています。

ミミズバイ - Wikipedia

名称について
和名は蚯蚓灰であり、ハイノキ(灰の木)の仲間で、その果実の形がミミズの頭に似ていることによる。別名のミミズノマクラは蚯蚓の枕の意味と推察される。他にミミスベリ、ミミスリバ、トクラベとの別名もあるが、意味は不明とのこと。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Symplocos_glauca_mimizbi03.jpg

 

ムシ(虫)

「その和名に虫『ムシ』がつく生物」に関しては、専用コンテンツがありますので、以下のURLを参照ください。

www.ariescom.jp

ムシカリ:

  • 特徴:ムシカリは、レンプクソウ科ガマズミ属の落葉低木です。山地の林縁などに自生し、春の美しい花と、秋の赤い実で知られています。別名をオオカメノキともいいます。
  • 名称の由来:「ムシカリ(虫狩)」という名前は、その葉が虫に食われやすいことに由来します。
    • この植物の葉は、複数の昆虫、特にスジコナマダラメイガという蛾の幼虫に好んで食べられます。そのため、夏になると葉に虫食いの穴がたくさん開いてしまうことがよくあります。
    • この「虫に食われる」という特徴から、「虫」が「食(か)り」取られる、という意味で「ムシカリ」という名前がつけられました。
    • なお、別名の「オオカメノキ」は、葉が亀の甲羅に似ていることに由来します。

 

ムジナ(貉、狢)

ムジナノショクダイ(狢の燭台):

ムジナノショクダイは、ラフレシア科(またはヒドノラ科)ムジナノショクダイ属の腐生植物(ふせいしょくぶつ)です。日本に自生し、主に暖地の照葉樹林の林床に生育します。非常に珍しい植物で、一般の人が目にすることはほとんどありません。

  • 特徴:ムジナノショクダイの最大の特徴は、葉緑素を持たないため光合成をせず、他の植物(主に樹木の根)から栄養を吸収して生きる点です。そのため、植物の体は退化しており、地中にある根茎(地下茎)が主体です。
    • 姿: 地上部に出るのは、花が咲く時だけです。高さ10~20cmほどの、肉厚で釣鐘状のユニークな形の花を咲かせます。花の外側は白色から淡い褐色で、内側は赤褐色から暗紫色を帯び、独特の模様があります。
    • 開花期: 夏から秋にかけて(地域によりますが、8月から10月頃)開花します。
    • 匂い: 腐生植物の多くに見られる特徴ですが、ムジナノショクダイの花も腐肉のような強い匂いを放ちます。これは、ハエなどの昆虫をおびき寄せて受粉させるためです。
    • 希少性: その特異な生態と、自生環境の減少により、多くの地域で絶滅危惧種に指定されており、非常に貴重な植物です。
  • 命名の由来:「ムジナノショクダイ」というユニークな和名は、その見た目と生態に由来します。
    • 「ムジナ(狢)」の由来: 「ムジナ」は、タヌキやアナグマなどの動物を指す古名、または混同して用いられた呼び名です。これらの動物は夜行性で、穴を掘って地中に潜む習性があります。
      ムジナノショクダイが、普段は地中深くに隠れていて、花が咲く時だけひょっこりと地上に顔を出す様子が、地中に潜むムジナに似ていることから、「ムジナ」の名が冠されました。
    • 「ショクダイ(燭台)」の由来: 花の形が、昔使われていた燭台(ろうそく立て)に似ていることから、「燭台」と名付けられました。釣鐘型で、中に空洞がある形状が燭台を連想させたのでしょう。

つまり、普段は地中に隠れているムジナのような植物が、燭台のような形の花を咲かせる、という特徴を捉えて「ムジナノショクダイ」と名付けられたと考えられます。

 

ライオン

ライオンノミミ:

  • 特徴:ライオンノミミ(Lion's Ear、学名: Leonotis leonurus)は、シソ科レオノティス属の常緑低木で、南アフリカが原産です。
    • ユニークな花: 茎の先に、オレンジ色や黄色の筒状の花が何段にも重なるようにして輪になって咲きます。この独特な花のつき方が最大の特徴です。
    • 花の形: 花びらはベルベットのような毛に覆われ、ライオンの耳やたてがみのような形をしています。
    • 葉: 細長い葉で、芳香があります。
    • 草丈: 草丈は1〜2mほどに生長し、花期は夏から秋にかけてです。
  • 命名の由来:「ライオンノミミ」という名前は、その花と学名に由来しています。
    • ライオンノミミ(Lion's Ear): 英語名の「Lion's Ear」を直訳したもので、花びらの形がライオンの耳に似ていることから名付けられました。
    • レオノティス(Leonotis): 学名の「レオノティス」は、ギリシャ語で「leo(ライオン)」と「nous(心、または耳)」を組み合わせたものです。これも同様に、花の形がライオンの耳やたてがみを連想させることに由来しています。

このように、ライオンノミミは、その特徴的な花の形が伝説の動物ライオンを彷彿とさせることから、和名も学名も同じ由来を持つユニークな植物です。

ダンデライオン:

  • 特徴:ダンデライオン(Dandelion)は、キク科タンポポ属の多年草で、和名のセイヨウタンポポ(西洋蒲公英、学名: Taraxacum officinale)として知られています。ユーラシア大陸が原産で、世界中に帰化しています。
    • 葉: 根元から放射状に葉を広げ、ギザギザと深く切れ込んでいるのが特徴です。
    • 花: 黄色い花が、一本の茎の先に一つずつ咲きます。花は夜や曇りの日には閉じます。
    • 繁殖力: 綿毛になった種子を風に乗せて遠くまで飛ばすため、非常に繁殖力が強い植物です。
    • 食用: 葉や根はハーブとして利用され、サラダやハーブティー、コーヒーの代用品として使われることがあります。
  • 命名の由来:「ダンデライオン(Dandelion)」という名前は、フランス語の「dent de lion」が語源です。
    • dent(ダン): 「歯」という意味。
    • de(デ): 「〜の」という意味。
    • lion(リオン): 「ライオン」という意味。
    • この言葉を合わせると、「ライオンの歯」となります。これは、ダンデライオンの葉の縁にあるギザギザとした深い切れ込みが、ライオンの鋭い歯に似ていることから名付けられました。

また、和名の「タンポポ」の由来にも諸説ありますが、花の形が「鼓(つづみ)」に似ていて、子供たちが花を揺らして遊んだ「タン、ポン」という音から名付けられた、という説がよく知られています。

 

オウカンリュウ:

  • 特徴:オウカンリュウは、サボテン科ステノケレウス属の多肉植物です。学名はステノケレウス・チチカセンシス・フォウロプテランタス(Stenocereus thurberi f. monstruosus)といい、メキシコ北西部から米国アリゾナ州にかけての砂漠地帯が原産です。
    • 草姿: 茎が柱のようにまっすぐに伸び、成長すると複雑に枝分かれします。茎の表面には、規則的に並んだ隆起(稜)があり、その上に鋭いトゲが生えています。
    • 生長: 正常な個体は柱状にまっすぐ伸びますが、「モンストローサ(monstruosa)」と呼ばれる突然変異を起こした個体は、茎が不規則に曲がりくねりながら生長します。
  • 名称の由来:「オウカンリュウ(王冠竜)」という名前は、その柱状の茎に生える鋭いトゲが、龍の角や鱗のように見えること、そして、その頂点に花や新しい茎が生えてくる様子が、龍の頭に王冠が乗っているように見えることから名付けられました。
    • また、英名では「モンスター・セロニアス(Monster Ceroni)」と呼ばれ、その不規則に曲がりくねる姿が「怪物(monster)」を連想させることが由来とされています。

カギンリュウ:

カギンリュウ (Pedilanthus tithymaloides subsp. smallii) は、トウダイグサ科の多肉植物で、その特徴と命名の由来は以下の通りです。

  • 特徴:茎の形状: 茎がジグザグに折れ曲がりながら成長するのが最大の特徴です。このジグザグが、英名で「Devil's Backbone(悪魔の背骨)」と呼ばれる所以にもなっています。また、葉が落ちた後もこの特徴的な茎が残ります。
    • 葉: 葉は披針形(細長い槍状)で、茎に互生します。葉の縁は緩やかな波を打ち、先端は尖っています。斑入りの品種もあり、葉の縁が白くなったり、淡いピンクや赤みを帯びたりするものもあります。
    • 樹高: 30cmから1.5m程度に成長する低木状の植物です。
    • 花(苞): 実際の花は小さく目立ちませんが、その周りを包む苞(ほう)が鮮やかな赤色やピンク色をしており、鳥のくちばしやスリッパのような形をしています。これが花のようにも見えるため、「Redbird Flower(赤鳥の花)」や「Slipper Flower(スリッパの花)」などの英名もあります。
    • 乳液: 茎に傷をつけると乳白色の液体(乳液)が出ますが、これは皮膚に触れるとかぶれる可能性があり、摂取すると有毒です。
    • 耐寒性: 寒さに弱い性質を持っています。
  • 命名の由来:
    • 「カギンリュウ(花銀竜)」の和名:
      • 「花銀竜」という和名は、その特徴的なジグザグの茎を「竜の飛翔」に見立てた説や、葉が黄緑色の品種が「大銀竜」、淡紅色のものが「花銀竜」と呼ばれることに由来するとされています。
    • 学名 Pedilanthus tithymaloides subsp. smallii について:
      • Pedilanthus(旧属名): ギリシャ語の「pedilon(スリッパ)」と「anthos(花)」に由来するとされ、花の苞の形がスリッパに似ていることにちなみます。ただし、現在ではこの属はトウダイグサ属(Euphorbia)に統合されています。
      • tithymaloides(種小名): 古代ローマの博物学者プリニウスが「Euphorbia」を記述する際に用いた古い名前である「Tithymalus」に似ていることを意味します。この「Tithymalus」は、白い乳液を持つ植物群を指す古代ギリシャ語に由来するとされています。
      • smallii(亜種名): 20世紀のアメリカの探検家で植物学者である「Dr. John Kunkel Small(ジョン・カンケル・スモール)」にちなんで名付けられました。彼がこの植物を採集または記述したことに由来すると考えられています。

要するに、カギンリュウはジグザグの茎と鮮やかな苞が特徴的な植物で、和名は竜に、旧属名はスリッパに、種小名は乳液を出す植物の古い名前に、そして亜種名は人名に由来しています。

ダイギンリュウ(大銀竜):

  • 特徴:ダイギンリュウ(大銀竜、学名:Euphorbia bicolor)は、トウダイグサ科ユーフォルビア属の多肉植物です。
    • 草姿: 主に茎が直立し、高さは60cmから1mほどになります。茎の断面は丸く、下から上に向かって葉が付きます。
    • 葉: 葉は細長く、白みがかった緑色をしています。この葉の色合いが、和名の「ダイギンリュウ」の由来の一つとなっています。
    • 花: 茎の先端に、独特の形をした花(正確には花序)を咲かせます。苞葉が白く、その中心に小さな黄色い花が集まっています。
    • 栽培: 日当たりと風通しの良い場所を好み、乾燥に非常に強い性質を持っています。過湿には弱いため、水のやりすぎには注意が必要です。比較的育てやすく、観葉植物として人気があります。
  • 命名の由来:「ダイギンリュウ」という名前は、その特徴的な姿から付けられました。
    • ダイギン(大銀): 白みがかった葉が、銀色に輝いて見えることに由来します。また、他のユーフォルビア属の植物に比べて、やや大型になることから「大」がついています。
    • リュウ(竜): ユーフォルビア属の植物は、その独特な樹形から、伝説上の生き物である「竜」や「麒麟」に例えられることが多くあります。ダイギンリュウも、その力強く立ち上がる姿が竜を思わせることから、この名が付けられました。

つまり、「ダイギンリュウ」は、「銀色に輝く葉を持つ、大きく竜のような姿の植物」という意味で名付けられたと考えられます。

ドラゴンフルーツ:

  • 特徴:ドラゴンフルーツは、サボテン科ヒモサボテン属の植物で、熱帯地域で栽培される果物です。「ピタヤ」とも呼ばれます。
    • 外見: 鮮やかな赤色(または黄色)の果皮に、鱗のような緑色の突起がある独特な形をしています。
    • 果肉: 白いものが一般的ですが、赤やピンク色の品種もあります。キウイフルーツのように、果肉の中にゴマ粒のような小さな黒い種が多数散らばっており、この種ごと食べることができます。
    • 味: ほんのりとした甘みと、さっぱりとした味わいが特徴です。赤肉種は白肉種よりも甘みが強い傾向にあります。
    • 栄養: ビタミンや食物繊維、カリウムなどのミネラルが豊富に含まれており、低カロリーであることから、健康食品としても注目されています。
  • 命名の由来:ドラゴンフルーツという名前は、その外見が「龍」に似ていることに由来します。
    • 果皮: 果皮にある鱗状の突起が、まるで龍の鱗のようだという説。
    • 果実と茎: 枝がうねりながら上へと伸びる様子を龍の体、実を龍の頭に見立てたという説。
    • 中国語: 中国語で「火龍果(フオロンゴウ)」と呼ばれることがあり、これを直訳的に英語にしたものが「ドラゴンフルーツ」として広まったという説。

これらのことから、見た目のインパクトが強いこの果物に、神秘的なイメージを持つ「龍」の名前が付けられたと考えられています。

ハクリュウカン(白竜冠):

  • 特徴:ハクリュウカン(白竜冠)は、サボテン科マミラリア属の植物で、学名は Mammillaria compressa 'Hakuryuukan'とされています。マミラリア・コンプレッサという種の変種や園芸品種として扱われます。
    • 姿: 小型から中型のサボテンで、球状から円筒形に成長します。しばしば群生して大きくなります。
    • 刺座(しざ): 刺座には白色の綿毛があり、特に成長点近くに密集します。
    • 刺: 刺は数が少なく、通常は1〜3本程度です。白色や淡い黄色の刺が特徴で、サボテン全体が白い印象を与えます。
    • 花: 春から夏にかけて、ピンク色や赤色の小さな花を、株の頂点に近い部分にリング状に咲かせます。
    • 台木: 栽培しやすいように、他のサボテンを台木にして接ぎ木されることもあります。
  • 命名の由来:「ハクリュウカン(白竜冠)」という名前は、その見た目の特徴から名付けられました。
    • ハクリュウ(白竜): 白い刺がサボテンの白い肌を覆う姿が、伝説の生き物である「白い竜」の鱗や姿を連想させることに由来します。
    • カン(冠): サボテンの頂点に密集する白い刺や綿毛が、まるで王冠や冠のように見えることから名付けられました。

このように、ハクリュウカンは、全体が白っぽく見える姿と、頂点の白い部分が冠のように見えることが組み合わさって命名された、非常に縁起の良い名前を持つサボテンです。

バンリュウガン(蕃龍眼):

  • 特徴:バンリュウガン(蕃龍眼、学名: Pometia pinnata)は、ムクロジ科の常緑高木で、熱帯アジアから太平洋諸島にかけて広く分布しています。別名でマトア、タウン、カサイノキ、フィジーロンガンとも呼ばれます。
    • 樹木: 高さは15mを超えることもあり、材木としても利用されます。比較的安価で加工しやすく、木目や色調がマホガニーに似ていることから、その代替材として住宅や家具などに使われることもあります。
    • 葉: 偶数羽状複葉で、4〜9対の小葉がついています。若葉は桃色を帯びることがあります。
    • 花: 小さな白い花が円錐状に咲き、芳香を放ちます。
    • 果実: 直径2〜5cmほどの楕円形から球形の果実をつけます。果皮は薄く、中に半透明で白色のゼリー状の果肉があり、甘みが強く多汁で生食されます。種子は焼いて食べられることもあります。
    • 用途: 果実が食用にされるほか、樹皮は薬用として利用されたり、材木が建築や船材などに使われたりします。
  • 命名の由来:「バンリュウガン(蕃龍眼)」は、「リュウガン(龍眼)」という植物と関連しています。
    • リュウガン(龍眼): ライチと同じムクロジ科の植物で、果実の皮を剥くと、乳白色の果肉の中に黒い種子があります。この様子が、想像上の生き物である「龍の目」に似ていることから「龍眼」と名付けられました。
    • バンリュウガン(蕃龍眼): 「蕃」という字は、「異国の」「野蛮な」といった意味合いを持つことから、この「バンリュウガン」は、この植物が日本原産ではなく、海外から伝えられた「リュウガン」に似た植物であることを示しています。つまり、「海外の龍眼」といった意味合いで名付けられたと考えられます。
    • これらの情報から、バンリュウガンは、見た目や用途がリュウガンと似ているものの、別の種であることから、「蕃」の字を冠して区別されたものと推測されます。

リュウガン(竜眼):

  • 特徴:リュウガン(竜眼、学名: Dimocarpus longan)は、ムクロジ科の常緑高木で、中国南部から東南アジアが原産の果物です。同じムクロジ科のライチと並んで、古くから東アジアで栽培されてきました。
    • 果実: 直径2cmほどの丸い実を房状につけます。果皮は薄くてなめらかで、色は薄茶色です。
    • 果肉: 皮をむくと、ライチのように半透明でゼリー状の白い果肉が出てきます。甘みが強く、独特の芳香があります。
    • 種子: 果肉の中に、光沢のある黒くて丸い大きな種子が1つ入っています。
    • 用途: 生で食べられるほか、乾燥させて「竜眼肉(りゅうがんにく)」という生薬として、滋養強壮や貧血改善などに用いられます。
  • 命名の由来:リュウガンという名前は、その果実の特徴的な見た目から名付けられました。
    • 「竜眼(リュウガン)」という漢字が示す通り、果実の薄い皮をむくと、乳白色の半透明な果肉の中から、光沢のある黒い種子が顔を出します。この様子が、伝説上の生き物である龍(竜)の目玉にそっくりであることから、「竜眼」と名付けられました。
    • また、中国には、悪龍を退治して犠牲になった若者の墓に龍の目玉を埋めたところ、そこから木が生えて実がなった、という伝説に由来する説もあります。

リュウケツジュ(竜血樹):

  • 特徴:竜血樹(りゅうけつじゅ、学名: Dracaena draco)は、リュウゼツラン科ドラセナ属の常緑高木です。一般的にドラセナ・ドラコやドラコと呼ばれ、観葉植物としても人気があります。カナリア諸島が原産で、非常に長寿な木としても知られています。
    • 独特な樹形: 若い頃はまっすぐ伸びますが、成長するとブロッコリーのような、あるいは傘を逆さにしたような独特の樹形になります。
    • 剣のような葉: 枝の先に、剣のような形をした葉が密生します。
    • 「竜の血」と呼ばれる樹液: 幹に傷をつけると、空気に触れてすぐに固まる、赤色の樹液が流れ出ます。この樹液が、和名と学名の由来になっています。
    • 長寿: 成長が非常に遅い植物ですが、その分生命力が強く、樹齢数百年から千年を超えるものが存在するといわれています。
  • 命名の由来:「竜血樹(りゅうけつじゅ)」という名前は、その木から流れ出る赤い樹液に由来します。
    • 竜血: 幹に傷をつけたときに流れ出る樹液の色が、まるで竜の血のように見えることから名付けられました。この樹液は古くから薬や染料として珍重されてきました。
    • ドラコ: 学名である Dracaena draco の「draco」は、ラテン語で「竜」を意味します。また、属名の「Dracaena」は、ギリシャ語で「雌竜」を意味する言葉に由来しており、どちらもこの神秘的な樹液にちなんで名付けられました。

伝説では、「竜が死ぬと竜血樹になる」「竜の血液が流れ出る木が竜血樹だ」という言い伝えも残されており、古くから人々を魅了してきた植物です。

 

ワシ(鷲)

ワシノオ(鷲の尾):

  • 特徴:「ワシノオ(鷲の尾)」は、特定の植物の標準和名ではなく、サクラの園芸品種名です。また、カキツバタの品種名としても存在します。

    • サクラの園芸品種としての「ワシノオ」は、以下のような特徴があります。

      • 分類: バラ科サクラ属の落葉高木です。

      • 花: 一重咲きまたは半八重咲きで、白色の大輪の花を咲かせます。花弁の数は5枚ですが、時には6~7枚になることもあります。開花期は4月中旬頃です。

      • 樹形: 盃状の樹形になります。

      • 歴史: 江戸時代初期頃からその名が知られており、かつて東京の荒川堤で栽培されていた品種です。

  • 和名に「鷲」がつく由来:この品種名に「鷲」という動物名がつく由来については、複数の説があり、はっきりとした定説はありません。

    • 「鷲の尾」: 可能性として考えられるのは、花が多数集まった花序や、花が咲き誇る枝の様子が、鷲の尾羽に似ていることから名付けられたという説です。

    • 「命名所以不詳」: しかし、桜の品種名を解説しているウェブサイトの中には、「命名の由来は不明」としているものもあります。

このように、「ワシノオ」という名前は、その品種の見た目から連想された名前である可能性が高いですが、その詳細な由来は明確ではありません。

 

ワニ(鰐)

ワニグチソウ:

  • 特徴:ワニグチソウは、ユリ科ワニグチソウ属の多年草です。山地の木陰や林床、沢沿いなどにひっそりと生えています。
    • 草姿: 高さ10〜30cmほどの小さな植物で、茎はあまり枝分かれしません。
    • 葉: 茎に互い違いについており、細長い楕円形をしています。
    • 花: 春(4〜6月頃)に、茎の先端からぶら下がるように、淡い緑色の小さな花を1〜2個つけます。花は筒状で、先端がわずかに6つに裂けます。
  • 名称の由来:「ワニグチソウ(鰐口草)」という名前は、花の形が寺院や神社の正面に吊るされている「鰐口(わにぐち)」という仏具に似ていることに由来します。
    • 「鰐口」は、打楽器の一種で、金属製の筒状の形をしており、下の部分が口のように開いています。ワニグチソウの花も、筒状で下を向き、先端がわずかに開く様子がこの「鰐口」にそっくりであることから、この名がつけられました。
    • この名前は、動物のワニではなく、仏具の「鰐口」が由来であり、同じく「ワニ」と名がつく他の植物、例えばワニシダなどとは由来が異なります。

ワニシダ:

  • 特徴:ワニシダは、オシダ科オシダ属のシダ植物です。山地の湿った林床や渓流沿いなどに自生します。
    • 草姿: 高さ50〜100cmほどになり、大きな群落を作ることがあります。
    • 葉: 葉は、二回羽状複葉(葉が2段階で羽のように分かれる形)で、非常に大きくなります。葉の軸や柄の基部には、茶色の鱗片(りんぺん)が密生しています。
    • 生育: 全体に厚みがあり、硬く、丈夫な印象を与えます。
  • 名称の由来:「ワニシダ(鰐羊歯)」という名前は、「葉の軸や柄の基部に鱗のようにびっしりとついている鱗片が、ワニの皮膚の模様に似ている」ことに由来するとされています。
    • また、ワニシダが沢沿いの岩場など、ワニが棲むような場所に生えることから、あるいは全体が硬く、ごつごつした印象がワニを連想させることから名付けられた、という説もあります。
    • いずれにせよ、その特徴的な外見から、動物のワニにちなんで名付けられたと考えられています。

 

まとめ

これらの例からわかるように、植物の和名や俗名に動物種名が使われる場合、その植物の特定の部位が動物の形に似ている、動物がその植物を好んで食べる、動物が生息する場所に生える、あるいは動物にまつわる伝説やイメージから名付けられることが多いです。
これらの植物の和名や俗名は、その姿形、生態、利用法などと動物のイメージを結びつけて、先人たちが名付けたものとされています。

中には諸説あるものもありますが、それぞれの名前に込められた意味を考えるのも興味深いですね。

興味深いですよ!「動物名が冠されている植物」。