午年最初の「生き物にまつわる言葉を深掘り」シリーズは、古くから私たちの生活に深く根ざしてきた「馬頭観音(ばとうかんのん)」がテーマです。
路傍に佇む石仏として見かけることも多い馬頭観音。
実は、他の観音様とは一線を画す「怒り」の表情と、驚くべき由来がありました。
「馬頭観音」について、深掘りリサーチしその結果を、以下の目次に沿ってレポートします。
- 1. 「馬頭観音」とは? その定義と特徴
- 2. 語源と由来:なぜ「馬」なのか?
- 3. 起源:ヒンドゥー教の神から仏教の守護神へ
- 4. 日本における信仰の変遷:武運から「馬の守護」へ
- 5. 一度は訪れたい、馬頭観音の名所
- 6. 【まとめ】午年に寄せて
1. 「馬頭観音」とは? その定義と特徴

馬頭観音は、六観音(聖・千手・馬頭・十一面・准胝・如意輪)の一つに数えられる仏教の菩薩です。最大の特徴は、そのお姿にあります。
憤怒の形相(ふんぬのぎょうそう):
穏やかな表情の多い観音様の中で、唯一、目をつり上げ、牙を剥いた恐ろしい顔をしています。これは、迷いや煩悩を断ち切るための強い意志の表れです。
頭上の馬頭:
最大のアイデンティティは、頭の上に「白い馬の頭」を載せていることです。
2. 語源と由来:なぜ「馬」なのか?
サンスクリット語では「ハヤグリーヴァ(Hayagriva)」と呼ばれます。これは「馬の首を持つ者」を意味します。
なぜ馬なのか。そこには古代インドの「転輪聖王(理想の王)」が持つ宝馬のイメージが重ねられています。
「馬が草を食らうように」: 飢えた馬が猛烈な勢いで草を食べるように、人間が抱える無明(むみょう:無知による迷い)や諸悪を食い尽くし、救済してくれるという意味が込められています。
「馬が走り回るように」: 四方を駆け巡る馬のごとく、あらゆる場所へ救済の手を差し伸べる機動力を象徴しています。
3. 起源:ヒンドゥー教の神から仏教の守護神へ
馬頭観音の起源は、古代インドのヒンドゥー教のヴィシュヌ神の化身の一つにまで遡ります。
魔物から経典を取り戻す馬:
奪われた聖典(ヴェーダ)を馬の姿になって奪還したという神話が、仏教に取り入れられる過程で「魔を退ける守護尊」としての性格を強めていきました。
畜生道の教主:
六道(人が輪廻転生する6つの世界)のうち、牛馬などの生き物が苦しむ「畜生道」を救う本尊とされています。
4. 日本における信仰の変遷:武運から「馬の守護」へ
日本に伝わった当初は、自力で魔を払う強力な力から「武運長久」を願う武士に信仰されました。しかし、江戸時代以降、その性格は大きく変化します。
農耕・交通の守護:
農耕や運送において「馬」は欠かせないパートナーでした。そこから、馬の健康守護や旅の安全を祈る対象へと広がりました。
馬の供養塔として:
道中で力尽きた馬を弔うため、街道の脇に「馬頭観世音」と刻んだ石碑が建てられるようになりました。私たちが道端で見かける石仏の多くは、この「愛馬への感謝と供養」の証なのです。
5. 一度は訪れたい、馬頭観音の名所
午年の参拝におすすめの、馬頭観音を祀る名所をいくつかご紹介します。
中山寺(福井県・高浜町):
北陸33ヵ所観音霊場の一つ。本尊の馬頭観音坐像は国宝に指定されており、鎌倉時代の傑作として知られています。
浄瑠璃寺(京都府・木津川市):
九体阿弥陀如来で有名ですが、こちらの馬頭観音立像(重要文化財)は三面八臂(顔が3つ、腕が8本)の力強いお姿で、非常に人気があります。
松尾寺(京都府・舞鶴市):
西国三十三所巡礼の第29番札所。西国霊場で唯一、馬頭観音を本尊とするお寺です。古くから「農耕の守護神」として、現在では「競馬ファン」や「ペットの健康祈願」に訪れる人も多い聖地です。
駒形神社(岩手県・奥州市など):
馬頭観音を祭神とする神社も多く、特に東北地方は「馬の産地」として信仰が篤く、各地に馬頭観音の石碑や祠が点在しています。
6. 【まとめ】午年に寄せて
かつて「馬」が物流や労働の主役だった時代、馬頭観音は人々と生き物をつなぐ「絆」の象徴でした。
機械化された現代においても、馬頭観音の「悪を食らい、迷いを走破する」というエネルギーは、新しいことに挑戦する1年のスタートにぴったりです。
午年、皆さんの行く手に立ちはだかる困難を、馬頭観音が力強く蹴散らしてくれますように。今年も本ブログをよろしくお願いいたします。
興味深いですよ!「馬頭観音」。

![栗田こだわり仏像 【守り本尊】 ツゲ製 馬頭観音(蓮華形香合仏[懐中仏])守り本尊 (高さ6.2cm、幅4.5cm) 17559 栗田こだわり仏像 【守り本尊】 ツゲ製 馬頭観音(蓮華形香合仏[懐中仏])守り本尊 (高さ6.2cm、幅4.5cm) 17559](https://m.media-amazon.com/images/I/41joKTnFhIL._SL500_.jpg)
