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生物の名を持つ酒の物語【ビール・洋酒編】:神話、野生、そしてブランドに宿る魂

前回までの投稿では「生物名のつく日本酒・焼酎」「生物名のつくワイン」につき深掘りリサーチした結果をレポートしました。

www.ariescom.jp

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今回は、【ビール・洋酒編】です。ビール・洋酒のネーミングやラベルデザインなどが生物由来のものを特集します。

 

序章:ワインから洋酒へ—ネーミングに託す多様なメッセージ

ワインがテロワールや伝統を動物に託すのに対し、ビールや蒸留酒といった洋酒類は、さらに多様な目的で生物モチーフを採用します。

それは、古代の神話、壮大な自然の象徴、原料との密接な関わり、さらには現代的なユーモアまで、多層的なメッセージを内包しています。

本稿では、洋酒の主要ジャンルごとに、その生物モチーフが伝える物語を探ります。

 

第1章:ビール編—神話から絶滅危惧種まで、アイコンの系譜

ビールは世界で最も親しまれている酒であり、そのラベルには、伝統、幸福、そして生産者の個性を表現する多様な生物のモチーフが溢れています。

1-1. 伝説上の聖獣—東洋の象徴【麒麟(キリン)】

日本のビール市場を語る上で欠かせないのが、キリンホールディングスのシンボルである「麒麟」です。

麒麟は、中国の古い神話に登場する伝説上の動物で、「仁(慈悲)」を司る聖獣とされています。

  • モチーフの背景とメッセージ: 世が平和な時に現れるとされる麒麟をシンボルに採用することで、企業は「品質へのこだわり」「高い志」「縁起の良さ」といった、時代を超えて愛される普遍的な価値観を表現しています。
    特に、キリンのラベルに描かれた麒麟の体には、「キ・リ・ン」の文字が隠されているという遊び心も、長年にわたり親しまれる理由の一つです。

1-2. 幸運と保全のアイコン【クオッカとパンダ】

クラフトビールや遊び心のあるブランドでは、世界のユニークな動物がモチーフとして採用されています。

  • クオッカ: 世界一幸せな動物として知られる西オーストラリアの固有種「クオッカ」は、オーストラリアのクラフトビールのアイコンとして登場することがあります。その笑顔のような愛らしい表情は、「飲む人に幸福と喜びを届ける」というポジティブなメッセージを伝えます。
    また、下記のように国産クラフトビールにも例が確認できます。

世界一幸せなクアッカワラビールkurand.jp

https://kurand.jp/cdn/shop/files/happy-quokkawallabeer.jpg?v=1717751278&width=768

  • パンダ: 中国原産の「パンダ」は、環境保護をテーマにした限定品などで、グローバルな親しみやすさと絶滅危惧種への関心を同時に訴える強力なアイコンとして活用されます。

item.rakuten.co.jp

1-3. 独自の道を行く変わり種【オオグソクムシと鷲そして犬】

  • オオグソクムシ: 静岡県の沼津港水族館とコラボレーションして生まれたクラフトビールでは、「オオグソクムシ」がラベルに描かれたことがあります。
    これは、深海の神秘や、ニッチなコレクションとのタイアップを象徴する、挑戦的なブランド戦略の一例です。

www.sanktgallenbrewery.com

  • 鷲(ワシ): アメリカの老舗アンカー・ブリューイング社の「アンカー・リバティエール」のように、ラベルに大きく鷲(ワシ)を配する例は、「アメリカの伝統と自由」、そして「クラフトマンシップの権威」を象徴しています。なお、同社の代表作「アンカー・スチーム」のラベルは、鷲ではなく「錨(アンカー)」をシンボルとしています。

world-beer.jp

Amazon.co.jp: アンカー リバティエール [ アメリカ 355ml ] : 食品・飲料・お酒

  • 犬(ドッグ): スコットランドの革新的なクラフトビールメーカーブリュードッグ (BrewDog) は、ブランド名自体に犬を冠し、パンクIPAなどの主力銘柄にも犬のモチーフが使われています。これは、「ルールに縛られない野良犬のような自由な精神」と、「日常に寄り添う親密な相棒」というイメージを打ち出しています。

 

第2章:スコッチ・ウイスキー編—高地の王者、伝説の守護者たち

スコッチ・ウイスキーのラベルに描かれる生物は、その蒸留所が立つ地域の風土、水源の清らかさ、そしてスコットランドの誇り高い歴史を体現するシンボルです。

2-1. 高地と王家の象徴—スコットランドの野生【牡鹿(スタッグ)】

スコットランドの高地(ハイランド)の自然を象徴する最も重要なモチーフは、雄大な角を持つ牡鹿(スタッグ)です。

  • グレンフィディック (Glenfiddich): ブランドのシンボルとして、力強い牡鹿の紋章が使われています。
    牡鹿は蒸留所が立つ土地(テロワール)の固有のシンボルであり、「伝統と高地の清らかな水源」を表現しています。
  • ハイランド・パーク (Highland Park): こちらのロゴにも牡鹿が採用され、「野生と勇壮さ」、そして「北の地の厳しい自然」を象徴しています。

 

2-2. 紋章に宿る権威と神秘【ユニコーンとライオン】

  • ユニコーン(伝説上の生物): スコットランド王国の国獣である「ユニコーン」は、純粋で獰猛な伝説上の動物として、スコットランドの「独立心」や「誇り高さ」を象徴しています。
    歴史的なボトルデザインなどに、そのモチーフが見られます。
  • ライオン: スコットランド王室の紋章の一部である「ライオン」も、「権威」や「不屈の精神」を象徴するモチーフとして、多くの高級スコッチウイスキーのボトルやパッケージに採用されています。

 

第3章:ジン・リキュール編—神秘的な守り神と甘い原料の担い手たち

ジンやリキュールは、薬草や香辛料、果実といった多様な原料(ボタニカル)を使うため、そのモチーフは原料の産地や効能、異国情緒と結びついたモチーフが多く見られます。

3-1. 芳醇なボタニカルと変容のシンボル【蝶/ミツバチ】

ジンやリキュールには、その原料であるボタニカルの芳醇さや変容といったメッセージを表現するために、昆虫モチーフが採用されます。

  • 蝶(バタフライ): ジンには、液体の色が変わるボタニカル(例:バタフライピー)を使用したり、華やかな香りを持つことから、「蝶」がモチーフになることがあります。蝶は「美しさ」「変容」「優雅さ」を象徴し、ジンの持つ複雑で芳醇な香りの広がりを表現しています。
  • ミツバチ: はちみつを主原料とするリキュールや、蜂蜜風味を特徴とする洋酒には、ミツバチのモチーフが使われます。これは、「甘美さ」や「自然の恵み」を表現し、製品の味わいをストレートに伝えます。

3-2. 地域の水と個性を表現するモチーフ【オオサンショウウオ】

日本のクラフトジンの中には、地域の水や自然をモチーフに表現を追求する例があります。

  • オオサンショウウオ: 広島県のクラフトジン「桜尾ジン」の限定品などでは、清流のシンボルであるオオサンショウウオが製品全体のモチーフとして採用されました。これは、「広島の清らかな水と自然環境」を強調し、その土地ならではのテロワールを表現する、個性的なアプローチです。

 

第4章:テキーラ・その他編—大陸のシンボルと現代の相棒たち

テキーラやラム、その他の酒類における生物モチーフは、その酒が持つ原料の土着性、生産地の歴史や神話、あるいは現代的なユーモアを伝える役割を担っています。

4-1. アステカの神話と大陸の象徴【鷲とジャガー】

  • 鷲(ワシ): メキシコの国章に描かれる「サボテンに止まり、蛇を咥える鷲」は、アステカの建国神話に由来する重要なシンボルです。
    テキーラやメスカルの高級銘柄のラベルにはこの鷲が使用され、「メキシコの誇り」や「アガベ酒の由緒正しい伝統」を象徴しています。
  • ジャガー: 中南米の象徴的な猛獣であるジャガーは、「力強さ」「神秘性」を象徴しており、ワイルドな風味や熟成の深さを表現するためにテキーラやラム酒のモチーフに使われます。

4-2. 熱帯の風味と海賊の伝説【魚類と海鳥】

  • カジキ・サメ(魚類): ラム酒ブランドの中には、海賊や漁業といった海の歴史を連想させるカジキやサメなどの魚類をモチーフにしているものがあります。
    これらは、ラム酒が持つワイルドさや、航海時代からのロマンを表現しています。

  • 熱帯の鳥: 南米のラムやリキュールには、コンゴウインコやオウムなどのカラフルな熱帯の鳥がモチーフとなることがあります。
    これは、「エキゾチックな風味」や「開放的で陽気な文化」といった、製品の味わいやブランドの個性を視覚的に伝えます。

www.atlanticwinespirits.com

 

終章:生物名に託された「地球の味」

ビールからウイスキー、テキーラに至るまで、洋酒のラベルに描かれる生物たちは、その酒が生まれた土地の神話、自然、そして生産者の情熱を伝えるメッセンジャーです。

彼らの姿は、私たちが飲む一杯の酒が、地球の歴史と生物多様性の賜物であることを思い出させてくれます。

あなたが知っている生物由来のビール・洋酒がありましたら、コメントで教えていただけましたら幸いです。

興味深いですよ!「生物名が冠されたビール・洋酒の銘柄」。