今回の「生き物にまつわる言葉を深掘り」のテーマは、「バッタ」です。
「バッタ」の意味や用例などを深掘りリサーチし、以下の目次に沿ってレポートしていきます。
バッタの名称の語源、そして「バッタ」の多様な使われ方
「バッタ」の意味や用例などを深掘りリサーチした結果を以下に記します。
昆虫のバッタの名称の由来
バッタという名前の由来は、はっきりとしたものがわかっていません。
いくつかの説がありますが、有力な説としては、バッタが素早く飛び跳ねる様子を表す擬声語が語源になったという説があります。
- 素早い動きを表現: バッタがぴょんぴょん跳ね回る様子を「バッタバッタ」と表現することから、その言葉がそのまま名前になったと考えられています。
- 他の説: 漢字の「蝗」は、群れをなして作物を食い荒らす害虫を指すことから、その特徴を捉えて名付けられたという説もあります。
バッタという言葉の用例・使われ方
「バッタ」という言葉は、昆虫の名前としてだけでなく、様々な場面で使われています。
昆虫:
一般的な使われ方: 草むらでよく見かける昆虫として、最も一般的な使い方です。
種類: コバネイナゴ、トノサマバッタなど、多くの種類があります。
バッタ(飛蝗)は、バッタ目(直翅目)・バッタ亜目 (Caelifera) に分類される昆虫の総称。
イナゴ(蝗)も含まれるが、地域などによってはバッタとイナゴを明確に区別する。
漢字表記では、「螇蚸」、「蝗虫」や「蝗」とも。英語ではGrasshopper。
トノサマバッタ Locusta migratoria'
比喩:
- 素早く動くもの: バッタが素早く動くことから、物事が素早く変化することや、人が活発に動き回る様子を比喩的に表現する際に使われます。
- 予測不能なもの: バッタの飛び方が予測しにくいことから、不確定な事柄や、予想外の出来事を表すことがあります。
俗語:
- バッタ屋: 正規のルートを通さずに仕入れた品物を安値で売る商人のことを指します。
- バッタもん: 正規品ではない、模倣品や粗悪品のことを指します。
バッタとイナゴの違い イナゴの語源は?
バッタとイナゴの違い、そしてイナゴの語源について深掘りします。
バッタとイナゴの違い
バッタとイナゴは、どちらもバッタ目バッタ科に属する昆虫で、非常に近縁な種類です。そのため、外見が似ており、素人目には見分けるのが難しいこともあります。
イナゴ(蝗、稲子、螽)は、直翅目・バッタ亜目・バッタ科(Acrididae)のうち、イナゴ亜科(Oxyinae)などに属する種の総称。狭義にはイナゴ属(Oxya)に属する種の総称。
稲を食べる害虫とされると同時に長野県伊那谷や群馬県など海産物が少ない山間地では水田から得られる重要なタンパク源として食用にもされた。・・・
語源は稲につくことから稲子(イナゴ)と呼ばれる。
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バッタ科の昆虫の中には、トノサマバッタやサバクトビバッタのように、大量発生などにより相変異を起こして群生相となることがあるものがある。これを「ワタリバッタ」ないし「トビバッタ」(英語では「locust」)という
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漢籍における「蝗」
漢語の「蝗」(こう)は、日本で呼ばれるイナゴを指すのではなく、ワタリバッタが相変異を起こして群生相となったものを指し、これが大群をなして集団移動する現象を飛蝗、これによる害を蝗害と呼ぶ。
殷代の甲骨文字に「蝗」を意味する文字があり、すでに蝗害があったものと推定される。
日本ではトノサマバッタが「蝗」、すなわち群生相となる能力を持つが、日本列島の地理的条件や自然環境では、この現象を見ることはほとんどない。そのため、「蝗」が漢籍によって日本に紹介された際、「いなご」の和訓があてられ、またウンカやいもち病による稲の大害に対して「蝗害」の語が当てられた。
一般的に、バッタとイナゴを分ける大きな特徴として、相変異という現象が挙げられます。
相変異:
環境条件の変化によって、体の色や形が大きく変わる現象です。
- バッタ: 一部の種類では、個体数が多くなったり、食料が不足したりすると、体が大きく、翅が長くなり、群れを作って移動する「飛蝗相」という状態になることがあります。これが、蝗害を引き起こす原因となるバッタです。
※日本ではトノサマバッタが群生相となる能力を持つ - イナゴ: 一般的に、相変異を起こすことはなく、単独で生活しています。
その他の違い:
- 体型: イナゴはバッタに比べて体がやや細長い傾向があります。
- 生息環境: イナゴは湿った草地を好むことが多いですが、バッタは乾燥した場所でも見られます。
- 食性: イネ科の植物を好んで食べる点が共通していますが、種類によって多少の違いがあります。
イナゴの語源
イナゴの語源については、諸説あり、はっきりとしたことはわかっていません。
- 稲につくことから:稲につくことから稲子(イナゴ)と呼ばれる。
- 稲を食べるから: イネを食べることから、「稲食む」が転じて「イナゴ」になったという説。
- 鳴き声から: イナゴの鳴き声に由来するという説もあります。
どちらの説が正しいのかは断言できませんが、「稲」とのかかわりが、イナゴの名前の由来になったと考えられています。
バッタとイナゴは、非常に近い種類ですが、相変異を起こすかどうか、体型や生息環境など、いくつかの違いがあります。イナゴの語源は、「稲」に由来していると考えられています。
バッタと「バッタ屋」「バッタもん」の関係
「バッタ屋」や「バッタもん」と、昆虫のバッタは、一見すると関係ないように思えますが、共通点があります。
- 素早い動き: バッタが素早く飛び跳ねる様子と、バッタ屋が素早く商品を売り買いする様子が共通しています。
- 不確定な要素: バッタの飛び方が予測しにくいように、バッタ屋が扱う商品も品質や価格が安定しないことがあります。
これらの共通点から、昆虫のバッタが持つイメージが、これらの言葉に転用されたと考えられます。
「バッタもん」という言葉の由来
「バッタもん」という言葉の由来は、興味深い歴史と様々な説があります。
倒産品などを扱う業者の隠語説:
- バッタ屋: 不況などで倒産した商店の品物を、一括で大量に安く買い取る業者を「バッタ屋」と呼んでいました。
- バッタもん: バッタ屋が扱う商品、つまり正規品ではない品物を「バッタもん」と呼ぶようになったという説が最も一般的です。
- 語源:「バッタ」が、素早く飛び回る様子や、あちこちに飛び回る様子を表すことから、バッタ屋が商品を次々と移動させる様子に結び付けられたと考えられます。
行き当たりばったりな商売人の隠語説:
戦時中や戦後など、物資が不足していた時代に、盗んだり、不正な手段で手に入れた品物を安く売る商人がいました。
このような、行き当たりばったりな商売人を「バッタ屋」と呼び、その商品を「バッタもん」と呼んだという説もあります。
擬声語説:
バッタがバタバタと跳ねる様子を表す擬声語「バッタ」が、転じて粗悪品や模倣品を表すようになったという説もあります。
「バッタもん」由来諸説の共通点と発展
これらの説に共通するのは、「バッタ」という言葉が、素早く動くこと、不確定な要素、そして正規品ではないというイメージと結び付けられていることです。
戦後、高度経済成長期になると、正規品と模倣品が混在する市場が広がり、「バッタもん」という言葉は、より一般的な言葉として定着しました。
現代での「バッタもん」
現代では、「バッタもん」は、主に以下の意味で使われます。
- 正規品ではない商品: 偽物、模倣品、粗悪品などを指します。
- 質の低いもの: 品質が低いもの、本物ではないものを指します。
- 安価な代替品: 正規品よりも安価な代替品を指す場合もあります。
「バッタもん」は、必ずしも悪い意味で使われるわけではありません。場合によっては、安価で手に入る代替品として肯定的に捉えられることもあります。
現代では、インターネットの普及により、より簡単に「バッタもん」を入手できるようになりました。
まとめ
「バッタ」という言葉は、昆虫の名前であるだけでなく、その特徴から派生して様々な意味を持つようになりました。昆虫のバッタの素早い動きや予測不能な行動が、比喩や俗語に利用され、私たちの言葉の中に深く根付いています。
また、バッタ科の昆虫のうちイナゴ科やイナゴ属の特徴、バッタとイナゴの違いも興味深いものがありました。
「バッタもん」という言葉は、その歴史の中で様々な意味を獲得してきました。しかし、共通しているのは、正規品ではない、質が低い、あるいは不確実な要素を含むものに対する否定的なニュアンスです。
「バッタもん」という言葉は、社会の消費文化や経済状況を反映していると言えるでしょう。
興味深いですよ!「バッタ」。