今回の「生き物にまつわる言葉を深掘り」のテーマは、「狸寝入り」です。
「狸寝入り」という言葉の意味や用例、語源である「動物の擬死」などについて、以下の目次に沿って深掘りしてみました。
狸寝入り(たぬきねいり)とは?
狸寝入りとは、眠っているふりをすることです。
狸は、驚くと仮死状態になる(擬死する、死んだふりをする)ことがあります。
その様子が、寝ているように見えることから、狸寝入りという言葉が生まれました。
転じて、危険や責任から逃れるために、知らんぷりをすることも狸寝入りと言います。
擬死とは?
擬死(ぎし)は、生きものの仮死状態の一種で、動物が急激な刺激を受けると、あたかも死んだように動かなくなる状態のことです。
擬死は、昆虫のほか、鳥類や哺乳類などにもみられます。
擬死は、外敵から身を守るための防御行動として用いられます。外敵が獲物と思って攻撃してきた時に、擬死することで、外敵が興味を失い、逃げることができると考えられています。
擬死のメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、神経系の反射作用によるものと考えられています。刺激を受けると、脳から筋肉に信号が送られ、筋肉が弛緩することで、動かなくなる状態になるとされています。
擬死の時間は、種類によって異なりますが、短いもので数秒~1分、通常は相手が探索をあきらめる数十分から数時間続く場合が多いです。
擬死を行う動物の例としては、以下のようなものがあります。
- 昆虫:テントウムシ、コメツキムシ、カマキリなど
- 魚類:フグ、ウツボなど
- 両生類:カエル、イモリなど
- 爬虫類:トカゲ、ヘビなど
- 鳥類:ヨタカ、フクロウなど
- 哺乳類:possum、キタオポッサム、ハリネズミなど
死んだふりは、科学用語で「擬死」と呼ばれる硬直不動状態のこと。鳥類、哺乳類、魚類など、多くの動物が擬死を使うことが知られている。おそらく最も有名なのは北米のキタオポッサムで、口を開けて舌を出し、排せつ物を垂れ流し、おまけに死臭のような匂いの液体まで出して、賞味期限切れを装う。
タヌキの擬死
タヌキは、擬死と呼ばれる防御行動をとることで知られています。これは、捕食者に襲われた時に、死んだふりをするというものです。
タヌキが擬死を行う際には、以下のような特徴が見られます。
- 動かなくなる: タヌキは、体を丸めて動かなくなります。
- 目を閉じる: タヌキは、目を閉じます。
- 呼吸を止める: タヌキは、呼吸を止めるように見えます。
- 舌を出す: タヌキは、口を開けて舌を出します。
これらの行動は、タヌキが死んでいるように見せるために役立ちます。
タヌキが擬死を行う理由は、まだ完全には解明されていませんが、以下のような考えられます。
- 外敵を欺く: タヌキが死んでいると外敵が思えば、攻撃をやめてくれる可能性があります。
- 捕食者の興味を失わせる: タヌキが動かなくなれば、外敵は興味を失い、別の獲物を探しに行く可能性があります。
- 時間を稼ぐ: タヌキが擬死をすることで、逃げ出すための時間を稼ぐことができます。
タヌキの擬死は、外敵から身を守るための巧妙な戦略の一つと言えます。
擬死は、数秒から数分間続くこともあります。外敵が去ったことを確認してから、タヌキは元の状態に戻ります。
タヌキの擬死は、古くから日本人に知られており、多くの民話や伝説に題材となっています。
「狸寝入り」を深掘り
「狸寝入り」の意味
「狸寝入り」は、動物の狸が驚くと仮死状態になる様子にちなんでいます。狸が死んだふりをすることで、敵から身を守るという行動から、「狸寝入り」という言葉が生まれました。
「狸寝入り」は、主に以下の2つの意味で使われます。
<「狸寝入り」の意味>
- 寝たふりをする
- ごまかす、知らんぷりをする
では、順番に解説します。
1. 寝たふりをする
本当は起きているのに、寝たふりをする様子を「狸寝入り」と言います。
例:「子供を叱った後、布団に入って狸寝入りをした。」
2. ごまかす、知らんぷりをする
問題や責任から逃れるために、巧みに言い訳したり、嘘をついたりする様子を「狸寝入り」と言います。
例:「会社でミスが発覚したが、上司は狸寝入りをして責任を逃れようとした。」
「狸寝入り」の用例・使い方
「狸寝入り」は、日常会話の中でよく使われる言葉です。しかし、目上の人に対して使うと失礼になる場合もあるので、注意が必要です。
以下、「狸寝入り」を使った例文をいくつか紹介します。
- 例文
- 試験勉強をサボって遊んでいたので、母親にバレないように狸寝入りをした。
- 近所の人が騒いでいたので、窓から様子をうかがっていたが、気づかれないように狸寝入りをした。
- 会社の業績が悪化したので、社長は責任を逃れようと狸寝入りをした。
- 政治家は、スキャンダルが発覚しても、狸寝入りを決め込んでいる。
- 子供たちは、鬼ごっこで捕まらないように、狸寝入りをして隠れた。
- 子供がいたずらをして怒られたのに、親は狸寝入りをしていました。
- 会社ではパワハラが横行しているらしいが、みんな狸寝入りしている。
「狸寝入り」は、ユーモラスなニュアンスで使われることも多いです。しかし、使い方によっては、相手を欺いたり、責任を逃れたりといったネガティブな印象を与えてしまうこともあるので、注意が必要です。
「狸寝入り」の類義語
- 空寝(むね)
- 知らんぷり
- 知らぬ顔
- 見て見ぬふり
- 逃げる
- 避ける
「狸寝入り」の英語表現
- play possum
- feign ignorance
- turn a blind eye
- pretend to be asleep
<例文>
- The thief played possum when the police arrived. (泥棒は、警察が来たときに狸寝入りをした。)
- She feigned ignorance when I asked her about the accident. (事故について尋ねると、彼女は知らんぷりをした。)
- The politician turned a blind eye to the corruption in his department. (その政治家は、自分の部署の腐敗に対して見て見ぬふりをした。)
- The child pretended to be asleep so that she wouldn't have to go to bed. (子供は、寝たくないために寝たふりをした。
まとめ
「狸寝入り」の意味や用途、「タヌキの擬死」などについて、深掘りしてみました。
過激・過剰な死んだふりをする動物として、キタオポッサムが知られていますが、英語で狸寝入りのことは「play possum」と表現されます。ポッサムという動物が分類学上の名称でないことと、ポッサムとオポッサムが頻繁に混同・混称されていることでモヤモヤされました。それこそ「狸寝入りで知らんぷりしてしまおう」と思った程でした。
興味深いですよ!「狸寝入り」。