今回の「生き物にまつわる言葉を深掘り」のテーマは、「国字で表わされる生物名」です。
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「国字」の意味や語源・用例などを深掘りリサーチし、
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「国字」と「国訓」との違いは?
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生物名を表わすために日本で独自につくられた漢字(=国字)の例は?
などを明らかにし、その結果を以下の目次に沿ってまとめレポートとしました。
以下の過去コンテンツも参考にしてください。
国字一文字で表される動植物の名称は、日本独自の文化や自然を表す上で非常に興味深いものです。
国字とは?
国字とは、漢字を参考にしながら日本で独自に作り出された漢字のことです。
日本語に特有の言葉や概念を表すために、漢字の構成要素を組み合わせて新たな文字が作られました。
動植物名に使われる国字の特徴
- 日本固有のもの: 日本に生息する動植物や、日本の風土を表す言葉に多く用いられます。
- 形象的な表し方: 字の形から、その動植物の特徴や生息環境が想像できるものが多く見られます。
- 訓読みが中心: 国字は、音読みよりも訓読みで用いられることが一般的です。
なぜ国字が使われるのか
- 日本文化の独自性を示す: 中国から伝わった漢字を基にしながらも、日本の自然や文化を表現するために独自の文字を作り出したことは、日本文化の独自性を示す一例です。
- 言葉の美しさ: 国字は、その字の形や意味から、言葉に美しい響きや深みを与えます。
- 覚えやすさ: 字の形から、その動植物の特徴を連想しやすく、覚えやすいという利点もあります。
国字と国訓の区別点
国字 と 国訓 は、どちらも日本語の漢字表記に関わる言葉ですが、その意味は異なります。
- 国字: 日本で独自に作られた漢字のことです。
中国には存在せず、日本独自の概念や事物などを表わすために作られました。 - 国訓: 中国から伝わった漢字に、日本独自の読み方や意味を当てたものです。
漢字本来の意味とは異なる場合が多いです。
【国字と国訓の区別点】
区分 |
国字 | 国訓 |
---|---|---|
起源 | 日本で独自に作られた | 中国から伝わった漢字 |
意味 | 日本独自の概念を表す | 漢字本来の意味とは異なる場合が多い |
読み方 | 訓読みが一般的 | 音読みと訓読みの両方がある |
音読みと国訓・当て字の違いに関しては、以下の既投稿を参照ください。
生物名を表すために日本で独自につくられた漢字(=国字)
日本独自の漢字である「国字」は、日本の自然や文化を表現するために作られた漢字です。動植物の名前にも多く用いられ、その名前から日本の風土や人々の生活を垣間見ることができます。
なぜ音読みがないのか?
- 日本固有の動植物: 日本に固有の動植物は、中国には存在しないため、中国の漢字の音読みを当てることができなかった。
- 形象的な表現: 字の形そのものが、その動植物の特徴を捉えているため、わざわざ音読みで表す必要がなかった。
- 日本文化との結びつき: これらの漢字は、日本の歴史や文化と深く結びついており、日本人の心に響く言葉として定着した。
音読みのない国字一文字で表わされる動植物名の例
鯱(しゃち):
シャチ。マイルカ科の哺乳類。いるかの仲間。
しゃち。しゃちほこ。頭は虎に似て、背中に鋭いとげをもつ想像上の動物。
また、その形をかたどったもの。城の屋根などに飾られる。
「虎のように猛々しい魚」という意味からの国字。
魹(とど):
トド。アシカ科の海獣の名。海生哺乳類の一種。胡獱(とど)。
トドは魚ではありませんが、毛の生えた大きな魚の意からの国字。
トド(胡獱、海馬、魹、Eumetopias jubatus)は、哺乳綱食肉目アシカ科トド属に分類される食肉類。本種のみでトド属を構成する。
鱈(たら):
タラ。タラ科の底生魚。
もとは国字ですが、現在は中国でも用いられる字です。
漢字では身が雪のように白いことから「鱈」と書くが、これは和製漢字である。
日本では古くから、大きな口を開けて他の生物を捕食することから「大口魚」と呼ばれていた。
この和製漢字(国字)は、中国でも一般的に用いられている。なお、福建省の客家語では「大口魚」はバスを意味する。
鰯(いわし):
いわし。ニシン科の海水魚。=鰮
他の魚の餌にばかりなり、又、水揚げ後の傷みも早いことから、「魚」に「弱し(「よわし」"いわし"の語源とも)」を付した国字。
鰰(はたはた):
ハタハタ。ハタハタ科の海水魚。かみなりうおとも。
かみなり(神鳴り)がなるとき、よくとれる魚の意を表す国字。
鱚(きす):
キス。キス科の海水魚。喜は「キスのキの音を表すこと」から、魚へんに喜を旁(つくり)にあてた国字。
鱪(しいら):
シイラ。魚の名。シイラ科の海魚。
魚編に「暑」はあつい季節(夏)が旬であることから、この字ができた。
蛯(えび):
エビ。甲殻類の一種。エビ目の総称。海老。
老人の腰のように曲がっていることから、この字ができた。
榊(さかき):
サカキ。ツバキ科の常緑小高木。神木として、枝葉を神前に供える。
木と、神(かみ)とから成り、神前に供える木の意を表す国字。
樫(かし):
カシ。ブナ科の常緑高木。実はどんぐり。
木と、堅(かたい)とから成り、堅い材質の木の意を表す国字
カシ(樫、橿、櫧)とは、ブナ科の常緑高木の一群の総称である。
狭義にはコナラ属 (Quercus) 中の常緑性の種をカシと呼ぶが、同じブナ科でマテバシイ属のシリブカガシもカシと呼ばれ、シイ属 (Castanopsis) も別名でクリガシ属と呼ばれる。なお、アカガシ亜属 (subgen. Cyclobalanopsis) をコナラ属から独立させアカガシ属 (Cyclobalanopsis)として扱う場合もある。
またクスノキ科の一部にも葉の様子等が似ていることからカシと呼ばれるものがある。
カシとよばれる樹木は地方によって指すものがだいぶ異なり、関東地方ではほとんどの場合シラカシを指し、東海地方ではウラジロガシを指すことが多い。
南紀や四国ではウバメガシ、山陽地方ではアラカシ、四国から九州にかけてはアカガシやイチイガシなどが主なカシになる。
シラカシ(Quercus myrsinaefolia)
栃・杤(とち):
トチ。とちのき。トチノキ科の落葉高木。
字源
国字。廃藩置県後、下野国にできた「栃木県」における用字。確定前は、「杤」が多く使われ、また、「橡」も用いられていたが、明治12年(1879)「栃」に統一。字源は不詳。「杤」も国字であり、これは、「万」=「十(と)」×「千(ち)」であることをしゃれたもの。
旁に垂がついた経緯は不明。漢籍に「櫔」の略字体として「萬」を「万」としたものがあり、それを参考にしたものとも言われる(参考:「励」・「勵」)。
意義
1.「栃木県」の用字。2.(語義1の用法確定後の用例)トチノキ。樹木の一種。
トチノキ(栃の木・栃・橡の木・橡、学名: Aesculus turbinata)はムクロジ科トチノキ属の樹木である。トチ、七葉樹とも呼ばれる。
名称
標準和名はトチノキ。また、木を抜いたトチと呼ばれることも多い。漢字は「栃」が当てられる。
標準和名の由来は、朝鮮語由来、アイヌ語由来、果実由来など諸説ある。
フランス語名は marronnier(茶色い実のなる木)で種子の色に由来する。フランス語名は音写した「マロニエ」という名称で日本でもよく知られており、しばしば通りの名前などにも用いられる。
トチノキの中国名は日本七葉樹である。
笹(ささ):
ササ。群生する細く小さな竹の総称。
国字のなりたち「会意。竹と、葉(世は省略形)とから成り、竹の葉、ひいて、小さな竹の意を表す。」
柾(まさ):
マサ。まさめ。まっすぐに通った木目。また、その木材。
まさき。ニシキギ科の常緑低木。
木+正(ただしい)。木目の正しくまっすぐな木の意を表す国字
国字を学ぶ面白さ
国字を学ぶことは、単に漢字を覚えるだけでなく、日本の自然や文化、そして言葉の成り立ちについて深く理解することにつながります。
漢字一つ一つに込められた意味や、その背景にある歴史的な背景を探ることで、日本語の面白さをより一層深く味わうことができるでしょう。
まとめ
国字一文字で表される動植物の名称は、日本の自然や文化を深く理解するための鍵となるでしょう。
漢字の持つ美しさや奥深さを味わいながら、日本の言葉の世界を探求してみてはいかがでしょうか。
興味深いですよ!「国字で表される生物名」。