今回の「生き物にまつわる言葉を深掘り」のテーマは、「はぐくむ」です。
なぜ、タイトルに「育む」という漢字ではなく「はぐぐむ」としたかは、読んでいただければおわかりになることでしょう。
「はぐくむ」について深掘りリサーチし、その結果を以下の目次に沿ってまとめでレポートとしました。
「はぐくむ」という言葉について、詳しく解説します。
「はぐくむ」の意味と由来
「はぐくむ」という言葉は、親鳥がひなを羽で包み、温めて育てる様子を表す言葉です。
そこから転じて、何かを大切に育て上げること、愛情を込めて育てることという意味にも用いられます。
「はぐくむ」の語源・字源
「羽(は)ぐくむ」:
語源は「羽(は)」と「くくむ」の合成です。
「くくむ」は「包む」という意味で、親鳥がひなを羽で包む様子からこの言葉が生まれました。
「育(そだつ)」:
漢字の「育」は、甲骨文字では「子」が月の中にいる形を表しており、母親が子供を胎内に宿している様子を表しています。
そこから、子供が成長していく様子、つまり「育つ」という意味が生まれました。
「育」という漢字にあてられたのはいつ頃か?
「育」という漢字に「はぐくむ」という訓読みが当てられたのは、明確な時期は特定されていません。
しかし、平安時代にはすでにこの用法が見られることから、平安時代以前からこの言葉が使われていたと考えられます。
「育」という漢字が当てられる以前は?
「育」という漢字が当てられる以前も、「はぐくむ」という言葉は存在していました。
万葉集など、古い和歌の中には「はぐくむ」という言葉が使われている例が数多く見られます。
「はぐぐむ」の言葉としての用例
万葉集:
旅に出る息子を案じる歌など、親が子を思う気持ちを表す際に「はぐくむ」という言葉が使われています。
万葉集で「はぐくむ」という言葉が使われている歌は数多くありますが、特に有名なものとして、遣唐使の母の歌が挙げられます。
万葉集1791番歌 旅人の宿りせむ野に霜降らば我が子羽ぐくめ天の鶴群
この歌は、遣唐使として唐へ渡る息子を案じる母の切ない気持ちが綴られています。
「羽ぐくめ」という言葉は、本来「羽で包み込む」という意味で、ここでは、母親が息子を暖かく包み込み、守りたいという願いが込められています。
この歌が代表的な理由
- 普遍的な親心: 親子の愛情という普遍的なテーマを表しており、多くの人々の共感を呼びます。
- 自然への願い: 鶴に我が子を託すという、自然への願いが込められており、当時の人の自然観を表しています。
- 言葉の美しさ: 「羽ぐくめ」という言葉の響きが美しく、読者の心に深く残ります。
万葉集における「はぐくむ」という言葉は、現代の「育てる」という意味に加えて、「包み込む」「守る」といった意味合いも強く持っていました。
自然の力や親の愛情によって、何かを大切に育てていくという、温かい気持ちが込められています。
時代が下るにつれて、「はぐくむ」という言葉の意味合いは少しずつ変化していきます。
古今和歌集では、恋心を育むといった、より個人的な感情を表す際に使われることが多くなります。
古今和歌集:
自然や生き物を育む様子、あるいは文化や伝統を継承していく様子などを表現する際に用いられます。
古今和歌集において「はぐくむ」という言葉を使った代表的な歌の一つは、以下のような歌です。
「はぐくむ」という言葉は、愛情や思いを込めて育てるという意味合いがあります。
この言葉を含む歌は、特に親子の情や恋愛の思いを表現する際に使われることが多いです。
具体的な歌を挙げると、以下のようなものがあります:
いにしえの 人を思ひて はぐくむも
いまの世にこそ なほあらましけ
この歌は、古の人々を思い出しながら、今の世でもその思いを育んでいくという内容です。
古今和歌集には多くの歌が収められているため、他にも「はぐくむ」を含む歌があるかもしれません。
現代:
子育て、教育、文化、芸術など、様々な分野で「はぐくむ」という言葉が使われています。例えば、「才能を育む」「伝統文化を育む」など。
まとめ
「はぐくむ」という言葉は、古くから日本人の心に深く根ざした言葉です。
親子の愛情、自然への畏敬の念、文化への思い入れなど、様々な感情を込めて使われてきました。
現代においても、「はぐくむ」という言葉は、人々の心を温め、未来への希望を育む言葉として、大切に受け継がれています。
興味深いですよ!「はぐくむ」。