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「葵」を深掘りリサーチ!その多様な意味や語源・由来、用例・用途をまとめてレポート

今回の「生き物にまつわる言葉を深掘り」のテーマは「葵」です。

葵紋や源氏物語の葵の上などが想起され、古くからおなじみの植物とは推察されますが、私が実際に触れたことがある”葵”は、水草「ホテイアオイ(布袋葵)」だけだったりします。

「葵」を「生き物にまつわる言葉」として深掘りリサーチし以下の目次に沿ってまとめレポートとしました。

 

「葵」という漢字は、植物の名前として広く知られていますが、その奥には深い歴史と文化が隠されています。

今回は、「葵」の読み方、意味、語源、そして「葵」が冠され、また、下についた言葉、さらには「葵」に関連する文化や風習まで、幅広く解説していきます。

 

葵の読み方と意味

ゼニアオイ

「葵」の一般的な読み方は「あおい」ですが、これ以外にも様々な読み方があります。

あおい:

「あおい」という読み方で、多様な意味があります。

アオイ科の植物(タチアオイ、フユアオイ、モミジアオイなどが代表的)の総称の意が一般的ですが、以下にあげるようたいへん多義にわたります。

葵(アオイ)とは? 意味や使い方 - コトバンク

精選版 日本国語大辞典 「葵」の意味・読み・例文・類語

あおい【葵】

  • [ 1 ] 〘 名詞 〙
    • アオイ科の植物、タチアオイ、フユアオイ、ゼニアオイ、トロロアオイ、モミジアオイなどの俗称。
    • 植物「ふゆあおい(冬葵)」の古名
      平安初期に、種子を食用、薬用とするために栽培した。
    • 植物「ふたばあおい(二葉葵)」の俗称
      平安時代から賀茂神社の葵祭の神事に用いられ、また、徳川家の家紋ともなっている。
    • 植物「たちあおい(立葵)」の俗称。近世から盛んに栽培され、現在「あおい」といえば、観賞用のこの植物をさす。
    • 植物「かんあおい(寒葵)」の俗称。
    • ⑥ 植物「てんじくあおい(天竺葵)」の俗称。
    • 襲(かさね)の色目の名。表は薄青、裏は薄紫。陰暦四月に着用する。
    • ⑧ 葵の葉を図案化した模様。
    • ⑨ ( 「青いもの」の略か ) 蕎麦(そば)をいう女房詞。
    • ⑩ 紋所の名。
      • (イ) フタバアオイの葉を図案化したもの。賀茂神社の神紋に由来し、種々変形がある。
      • (ロ) 徳川家の紋所の葵巴(あおいどもえ)。転じて江戸幕府。
    • ⑪ 「あおいまつり(葵祭)」の略。
    • ⑫ 金銭をいう、遊女のことば。
  • [ 2 ]
    • [ 一 ] 「源氏物語」の第九帖の名。
    • [ 二 ] 静岡市の行政区の一つ。
      静岡城・県庁のある中心市街地から大井川の源流域までを占める。

き:

漢字としての読み方。植物の名を指す場合もあります。

あふひ:

古くは「あおい」をこう読んでいました。

それぞれの読み方によって、指し示す植物や意味合いが微妙に異なります。

 

「葵」の語源・由来

「葵」の語源は、植物の葉が太陽の方向に向かって動く様子から、「仰ぐ日(あおぐひ)」が変化したとする説が有力です。

つまり、太陽の光に向かって成長する植物の性質を表している言葉なのです。

「葵」の語源は、植物の「フユアオイ」に由来すると考えられています。

フユアオイは、太陽に向かって花を咲かせる性質があり、その様子から「葵」という字が当てられたと言われています。

 

葵の分類と特徴

葵は、アオイ科に属する植物の総称です。

これらの植物は、花の形や大きさ、生息地などが異なりますが、共通してアオイ科に属し、同じような特徴を持つ花を咲かせます。

葵の代表的なものを挙げます。

タチアオイ:

背が高く、夏に大きな花を咲かせます。

フユアオイ:

冬に咲くことからこの名がつきました。

フユアオイ - Wikipedia

フユアオイ(冬葵、Malva verticillata)は、アオイ科の一~二年草。中国原産。

日本には食用、薬用とするために古く導入され、現在ではあまり利用されていないが、海岸等に野生化している。

名称
冬葵の名は、冬でも枯れない、あるいは冬でも花が咲くためとされる。

アオイ(葵)という名は、少なくとも近世以降はタチアオイを意味するが、元はフユアオイを指し、「仰(あおぐ)日(ひ)」の意味で、葉に向日性があるためという。

ただし『万葉集』の時代にはすでにタチアオイの意味だったとの説もある。

特徴
葉は掌状で浅く切れ込む。花は径1cmほどで白または淡紅色、葉腋に固まってつき、通常は春から秋まで咲く。

利用
生薬および野菜として利用される。種子は生薬「冬葵子(とうきし)」として用いられ茶として飲用もされる。

また葉を茹でて食べることができ、中国等では現在でも野菜としてよく利用されている。

モミジアオイ:

葉の形がモミジの葉に似ていることから名付けられました。

トロロアオイ:

根から粘液が取れることからこの名がつきました。

トロロアオイ - Wikipedia

トロロアオイ(黄蜀葵、学名: Abelmoschus manihot )は、アオイ科トロロアオイ属の植物。オクラに似た花を咲かせることから花オクラとも呼ばれる。

原産地は中国。この植物から採取される粘液はネリと呼ばれ、和紙作りのほか、蒲鉾や蕎麦のつなぎ、漢方薬の成形などに利用される。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/da/Abelmoschus_manihot_Flowers_and_Leaves_3050px.jpg

(参考)↓こちらは我が家で咲いた「オクラ」。

ゼニアオイ:

小さな花をたくさんつけ、葉が円形でザラザラしています。

草丈が高く、大きなハート形の葉が特徴です。

花は白やピンク色で、夏に咲きます。

古くから薬用や食用として利用されてきました。

ムクゲ:

夏から秋にかけて次々と花を咲かせます。

ハイビスカス:

熱帯・亜熱帯地方に分布する大輪の花が特徴です。

大きな花が特徴ですが、葉もハート形をしています。熱帯地域に多く分布する植物で、品種も豊富です。

これらの植物は、花の形や大きさ、生息地などが異なりますが、共通してアオイ科に属し、同じような特徴を持つ花を咲かせます。

 

フタバアオイと葵について

フタバアオイは、アオイ科ではなく、ウマノスズクサ科の植物です。

「アオイ」という名前がついていますが、アオイ科の植物とは異なる種類です。

徳川家の家紋「三つ葉葵」のモデルになったことで、葵の仲間と誤解されることもありますが、植物学的には別のグループに属します。

フタバアオイが葵と混同される理由

  • 家紋: 徳川家の家紋「三つ葉葵」のモデルになったこと。
  • 名前: 「フタバアオイ」という名前から、アオイ科の植物と誤解されやすいこと。
  • 歴史的な背景: 古くから日本人に親しまれてきた植物であり、その歴史的な背景から、葵の仲間として認識されていること。

フタバアオイは、葵の仲間ではなく、ウマノスズクサ科の植物です。

フタバアオイがアオイ科ではなく、花や葉の形も異なるにもかかわらず「葵」と呼ばれていた疑問に対する答えは、歴史的、文化的、そして植物分類学的な側面を総合的に考える必要があります。

1. 歴史的背景
  • 神聖な植物としての位置づけ: フタバアオイは、古来より日本において神聖な植物として扱われてきました。特に陰陽師である安倍晴明が好んだとされ、その神秘的なイメージから「葵」の名がつけられた可能性があります。
  • 徳川家の家紋: フタバアオイの葉を図案化した「三つ葉葵」が徳川家の家紋として用いられたことで、「葵」という名前が広く世間に知れ渡りました。
2. 文化的背景
  • 植物分類学の発達: 近代的な植物分類学が確立される以前は、植物の分類は現在のようには厳密ではありませんでした。
    形態的な特徴だけでなく、生育環境や利用法など、様々な要素を総合的に判断して植物に名前がつけられていました。
  • 文学的な表現: 古代から中世の文学作品では、植物の名前が比喩的に用いられたり、複数の植物をまとめて一つの言葉で表現されることがしばしばありました。
3. 植物学的な理由
  • 形態的な類似性: フタバアオイの葉は、一部のアオイ科の植物の葉と形状が似ている部分があります。
  • 生育環境: フタバアオイとアオイ科の植物は、どちらも湿った場所を好む傾向があります。

これらの要素が複合的に作用し、フタバアオイがアオイ科の植物と同様に「葵」と呼ばれるようになったと考えられます。

つまり、「葵」という名前は、厳密な植物学的な分類というよりも、文化的な背景や歴史的な経緯によって定着した名称と言えるでしょう。

現代では、植物は学名に基づいた厳密な分類体系で整理されています。

しかし、古くから人々に親しまれてきた植物の名前は、その歴史的な背景や文化的意義を継承しながら、現代まで残っているものが多くあります。

フタバアオイと「葵」の関係は、このような歴史と文化のつながりを象徴する一例と言えるでしょう。

 

「葵」が下付きのアオイ科以外の植物名

双葉葵(ふたばあおい):

フタバアオイは、徳川家の家紋のモデルとしても知られる、陰湿な場所に生える多年草です。

フタバアオイ - Wikipedia

フタバアオイ(二葉葵、双葉葵、学名: Asarum caulescens Maxim.)は、ウマノスズクサ科の植物で、小型の草本。葉はハート形をしており、家紋の葵紋のモデルであることで知られる。

概説
フタバアオイは名の通りハート形の葉を普通は二つつける特徴がある。

花は小さくて、地際に俯いて咲く。花の構造などの特徴からカンアオイ類と区別して別属としたこともある。

京都賀茂神社の葵祭で用いられることからカモアオイ(賀茂葵)の異名もある。

標準和名は葉が二枚ずつ出ることに依る。

他に別名としてヒカゲグサ、フタバグサ、カザシグサ(挿頭草)、モロハグサ(両葉草)も知られる。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/57/Asarum_caulescens.JPG

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/ba/Asarum_caulescens2.jpg

山葵(わさび):

辛い香辛料として知られる植物ですが、葉の形が葵の葉に似ていることから「山葵」という字が当てられました。

向日葵(ひまわり):

太陽の方向を追って花を咲かせることから、「向日葵」と名付けられました。

布袋葵(ほていあおい):

七福神の布袋様(布袋尊)の大きなお腹のような形をした葉柄を持つ水草。

  • 特徴: 南アメリカ原産の水草で、水面に浮かんで生育します。
  • 別名: ホテイソウ、ウォーターヒヤシンス
  • 利用: 観賞用として池などに植えられたり、メダカの飼育などに利用されます。
  • 問題点: 繁殖力が強く、日本の生態系に影響を与える恐れがあるため、特定外来生物に指定されています。

 

「葵」に関連する文化・風習など「『葵』の用例」

葵(フユアオイ、ゼニアオイなど)の葉は、薬用や食用、染料など、様々な用途に利用されてきました。

また、源氏物語に登場する女性「葵の上」は、葵の葉を模した模様の着物などを着用していたことからこう呼ばれました。

フタバアオイと葵の上の着物

源氏物語の「葵の上」が着ていた着物の柄の「葵」は、一般的にフタバアオイを図案化したものであると考えられています。

  • フタバアオイの特徴: ハート形の葉が特徴的な植物で、徳川家の家紋「三つ葉葵」のモデルにもなっています。
  • 葵の上の着物との関係: 源氏物語の時代背景を考えると、フタバアオイが最も一般的な「葵」の図案として用いられていたと考えられます。フタバアオイの葉の形状は、古来より日本人に親しまれ、その美しい形が着物にデザインされたのでしょう。
他の「葵」の図案の可能性

ただし、物語の中で「葵」と表現されているからといって、必ずしもフタバアオイだけを指しているとは限りません。

  • 時代背景: 源氏物語の時代は、植物の分類が現代ほど厳密ではなかったため、「葵」という名前で呼ばれる植物が複数存在していた可能性があります。
  • 作者の意図: 作者の紫式部は、読者の想像力を掻き立てるために、あえて具体的な植物名を特定せず、「葵」という一般的な言葉を用いたのかもしれません。

「葵の上」の着物の柄の「葵」は、フタバアオイが最も有力な候補ですが、他のアオイ科の植物や、作者の意図によって異なる可能性も考えられます。

葵紋:

葵の葉を図案化した紋で、武家や公家など多くの人々に用いられてきました。

徳川家の家紋として有名ですが、葵紋には様々な種類があり、植物の葵を図案化したものが多く見られます。

葵紋 - Wikipedia

葵紋(あおいもん)は、ウマノスズクサ科のフタバアオイの葉を図案化した日本の家紋。複数の種類があるが、なかんずく徳川家が用いた「丸に三つ葉葵」紋が著名である。

概要

葵紋の元となったフタバアオイの葉の数は、通常2枚である。

3つの葉をもつフタバアオイは稀で、三葉葵は架空のものである。

葵祭に見られるようにフタバアオイは賀茂県主氏の象徴であり、葵紋は賀茂神社の神紋(二葉葵・加茂葵)になっている。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/2/2e/Japanese_Crest_Futaba_Aoi.svg/800px-Japanese_Crest_Futaba_Aoi.svg.png

 

徳川家の家紋(「三つ葉葵」「徳川葵」「葵の御紋」):

葵紋 - Wikipedia

三つ葉葵
三つ葉葵(みつばあおい)・三葉葵・三つ葵・三葵・葵巴(みつばあおい・みつばあおい・みつあおい・みつあおい・あおいどもえ)は、葵紋のうち、葵の葉を3つ描いた図案の家紋である。

外郭が「丸輪(丸)」であるもののほかに、「隅切り角」や「隅切り折敷」(守山三つ葵・西条三つ葵など)のものや「五環」、「菊輪」とするバリエーションが存在する。

いずれも、徳川家一門が使用した紋であるが、御家門や御連枝の中では替紋の蔦紋や五三桐、唐団扇などを使用することがあった。

由来
由来には、本多家に由来する説と酒井家に由来する説、松平家の元々の家紋であるとする説、などがある。

・・・

肖像画等では松平信光が三蔦紋を、松平清康が立ち葵をあしらった装束を身に着けており、複数の紋を替えた後に家康の代で三つ葉葵に至った

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/7/7e/Japanese_crest_Tokugawa_Aoi_%28old_design%29.svg/800px-Japanese_crest_Tokugawa_Aoi_%28old_design%29.svg.png

葵祭:

京都の伝統的な祭事で、京都の伝統的な祭で、葵の葉を飾った山車など葵の葉を飾った行列が行われます。

正式には賀茂神社のお祭りで「賀茂祭」です、

上賀茂神社と下鴨神社では一年中大切にフタバアオイが育てられています。

  • 葵祭: 毎年5月15日に行われる葵祭で、神輿や行列に飾られる植物としてフタバアオイは欠かせません。神聖な植物として扱われ、葵祭の象徴的な存在です。
  • 神事に使われる: 葵は神事に使われる神聖な植物として、古くから崇められてきました。
  • 賀茂氏とのゆかり: 賀茂氏の氏神である上賀茂神社、下鴨神社にとって、葵は特別な意味を持つ植物です。

葵祭では、神輿や行列に飾られる葵の葉は、すべて手作業で摘み取られます。この作業は、葵の葉を傷つけないように細心の注意を払って行われます。葵祭を通じて、人々は葵の美しさや神聖さを再認識し、伝統文化を継承しています。

葵祭: 賀茂祭

 

まとめ

「葵」という漢字は、様々な文化や歴史と結びついた、奥深い言葉です。

歴史的な経緯や文化的背景によって、「葵」は様々な植物の名前として用いられただけでなく、文化や歴史にも深く関わりのある言葉です。

その多様な意味や用途から、日本人の生活に根付いた植物であることが分かります。

興味深いですよ!「葵」。